不死の吸血鬼と神喰いの狼   作:雲海月

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※長めです。主人公ががっつり出ています。
※能力や錬血の使い方等に、かなりの独自解釈や使い方が混じっています。


今できる最善と全力を

 

 荒ぶる神々の名を冠し、実在と幻想の形を溶かし合わせて現出させたバケモノ達が咆哮し侵撃を開始する。壁を喰い破り路を踏み割り、建物を崩壊させながら突き進む異形の前に、人々はあまりにも無力であり、だからこそ人ならざる力を宿した兵士達が必要であった。

 フェンリル極東支部の神機使いと言えば、世界の同業者に名を知られる実力者揃い。単体で支部を壊滅させ得る上位アラガミを複数相手取って戦える彼等が居ればこそ、極東の地で人々が生きる事が出来ていた。

 それでも、届く腕には限りがあった。

 アラガミ襲撃の報を飛ばし、緊急出撃準備を整えた神機使い達が現場に辿り着くまでの十〜数十分。事前に探知出来ていれば避難の誘導や対策も可能とは言え、絶対というものはあり得ない。

 外部居住区と呼ばれるそこの更に外縁部は、壁外の次くらいには危険が多い場所だった。

 

 

 

 

 

 転移、再生。直後に開いた感覚が捉えた周囲の現状に、見開いた瞳の中で瞳孔が収縮した自覚は、我が事ながら遠かった。

 悲鳴を上げながら駆けてくる人々と、その背後に迫るバケモノの影。異形の咆哮と、助けを求める声と、焼け落ちて崩壊した家屋の臭い。……その大部分を落してしまった記憶が、それでも金切声の様な警告を上げる。

 そして、狭い通路から転げだして来た女性とその背後に迫るアラガミの姿を視認した瞬間、逡巡はほんの一刹那で解けて消えた。

 

 

「逃げろ! アナグラへ向けて走れ!!」

 

 もう久しく出していなかった様な大声と共に、両者の間へと割って入る。腕輪のない、武器さえも持っていない相手の言葉に訝る様な視線は無視して、牙装を急速展開。都合よくというべきか、前の任務に合わせて装備したままだったアイヴィ型のそれは、一瞬の壁としては優秀だった。

 ジャギン、と立ち上がった槍衾じみたそこへ無防備に突っ込み、もんどり打ったオウガテイルに錬血でトドメを刺しながら、遅れて周囲の状況を確認する。どうやら先の女性は無事に逃げてくれたらしいが、肌を刺すような空気感は未だ重く残っていた。

 

「……防壁が、突破されたのか?」

 

 見渡した範囲の状況と、探査錬血による簡易的な調査の結果から引き出した現状に眉が寄る。……微かな違和感を頼りに選んだヤドリギ。先程の人々は無事に逃げられた様だが、ここは外部寄りとはいえ防壁の内側だ。こんな場所でアラガミと遭遇するのは、緊急事態と言っていいだろう。……転移からそのまま参戦したせいで極東のオペレーター達と繋がっていない現状、頼れるのは自身の耳目だけだった。

 見る限り、神機使い達はまだ到着していない様子だった。襲撃が始まって間もないのか、それとも末端に人員を避けない程大規模な襲撃か。ジャックが居ればその眼を貸して貰うことも出来ただろうが、生憎エヴァ達と共にまだヴェインに居る筈だ。……いっそ、一度上空に転移して探してみた方が早いだろうか。

 そんな疑念と思考は、しかし長くは続かなかった。

 

 

―― きゃああぁっ

―― ガアァァアッ

 

 

 重なる咆哮と悲鳴に、視線を跳ね上げる。先の会敵に比べどちらの数も遥かに多いそれに、どうやら事態の予測は悪い方に的中した様だと知った。規模や数の詳細は知れないが、聞こえる咆哮の数と大きさを鑑みれば、被害はかなりの広範囲に及んでいるだろう事は明白だ。……効率だけを見るのなら、此処だけを守るよりアナグラへ合流した方が良いだろう事、もしくは一度連絡を取るためにアナグラを訪れ、その後再度此処へ来たほうが良い事もわかっていた。

 ――それでも。

 

「……死に戻ったら、そのまま合流する」

 

 今、この場所を自分が離れれば、今聞こえている悲鳴の主達は、その多くが命を落とす事になる。人が襲われていると分かっている状況で、自身が戦える状態で見捨てて立ち去るという選択肢はあり得なかった。

 長期間有名無実化していたとはいえ、吸血鬼は本来バケモノから人を護る為に生み出されたモノだ。……記憶の欠落が影響しているのか正直な所そのあたりの意識は鈍いのだが、それでも皆を救って欲しいという彼女の遺志を継いだ者として、そして人を護る為にとヴェインを閉ざし続けた1人として、それを放棄するつもりは無かった。

 賭けるのは一回分の命。今あるこれを失った時は神骸に頼らずヤドリギで再生し、例えこの場に未練があっても極東の指揮下に入る事を決める。……もしくは、神機使い達へ場を引き継ぐ事が出来るまで。――どれ程の事を成し、何人の人間を逃がせるかは、自分の腕次第という事だ。

 

 

 

「……見付けた」

 

 外部居住区特有の、雑多で入り組んだ道を駆けること数分でその場所へと到着した。

 少し開けた、多くの道が交わる場所。其処から極東支部の中心へ向かう道へ逃げ込む数十人の人々と、それを追う複数のアラガミ達。既に大分厳しい状況だが、やれるだけはやってみる事に決めている。何、仮にしくじったとしても多少の倦怠感と、悪くて記憶を幾らか落っことすだけの事。それさえも、2度目の目覚めからこちらの体質で、一時的な喪失以上の不便は無い。……心臓さえ無事であれば、たったそれだけの損失で終わりを退ける事が出来る。

 ただ1度で終わってしまう数十と、数十を失っても終わる事の無い1つ。何ならその1つでさえ、人としては既に失った再現物だ。……あぁ本当に、ムラの多さと論理感を抜きにした吸血鬼の理論と特性は、この世界の戦士として理に適っている。

 そんな思考を挟みながらも、動きそのものは遅滞なく。アナグラへ続く道の入口に、駆け込む人々をすり抜け逆走する様にして布陣する。避難民の最後尾とアラガミの戦闘の距離は目測で約50m。……これならば、ぎりぎりだがあの手が使えるだろう。

 

「おい、あんた!!」

「足止めする。……何時まで保たせられるか分からない。走れ」

 

 こちらへ呼び掛け、足を止めそうになった男性へ、言葉を投げて避難を促す。気がけてくれるのは嬉しいが、頭部を吹き飛ばされても再生出来るナマモノより自分の心配をして欲しいと思う。……吸血鬼の存在がアナグラ内にしか知られていない以上、無理もない事だとは分かっている。それでも、ここまではっきりと戦う姿勢を見せているのだから、こちらが戦える事は伝わっている筈だ。……だからこの男性は、きっと神機使い達の事をちゃんと同じ人として心配出来る人なのだろう。

 あぁ、ならば。尚の事引けなくなってしまった。

 神機使いなのだから戦うのが当然と、年若い子供達を追い立てる大人が多いこの世界で、身内で無くてもその心を持ち続けられるヒトを守れるのなら。それは、今此処に許した命一回分には十分だ。

 そして。最後の一人が傍らを抜け、眼前にはアラガミだけが残る。念の為にと発動させたソナーにも、もう生きた人間の反応は返ってこなかった。ならば、多少雑に振る舞っても物的損害だけで済むだろう。

 

「………」

 

 意識を集中させて血を練り上げ、槍というには程遠く、杭と呼んでもまだ足りない程に巨大な〝棘〟を呼び起こす。伏せた瞼の裏に思い起こすのは嘗て眼にし……そしてこの身で味わった女王の錬血。機動性を引き換えとした、ただ眼前の殲滅だけを目的とした質量と物量による面制圧。――それを今、此処に。

 十を超え二十を超え……百にも届こうかという真白い棘が宙空に顕現する。嘗て、数多くの人や吸血鬼を貫いてその命を奪った絶望の象徴。数を優先した展開でさえ、長さ凡そ3m、直径約数十cmはあるそれは、やはり人間サイズに向けるには大きすぎる物だと思う。まあ、それを言ってしまえば吸血鬼の力や武装全般がそうだと言えるのだけれど。

 そして、そんな自身の思考に(……当然か)と心の中で密かに言葉を落として自己完結する。

 吸血鬼本来の存在理由は、人間の盾となり矛となってバケモノと戦う事。彼女……クルスもまた、本来ならば人や吸血鬼の敵では無くその最たる護り手となる筈だった存在だ。そうであるならば、この棘は二十年以上の時をこえて、今漸く本来の敵に向けられていると言えるだろうか。

 

 当時、ほんの僅かな期間だけ吸血鬼として戦線に参加していたという彼女の姿を、自分は知らない。自分が吸血鬼として目覚めた時には実験の負荷が重くなっていたらしい彼女は、既に中央研究所から出てくる事が出来なくなっていた。だから、同世代の吸血鬼でこそあるものの、その存在について詳しくは知らなかった。

 最前線にこそ立たずとも、ヤドリギを生み出し、その血を以て武装の強化や様々な薬剤の開発に寄与したというその恩恵。……何も分からず、何もかもが足りなかった最も古い吸血鬼達にとって、その存在は確かな希望だったのだと、随分後になって知った。

 ただ絶望的な脅威として、絶対的な敵対者としての姿しか知らないけれど。……叶うのならば、その時期に自分も立ってみたかったと、そう遠く思う。――今はせめて、その願いの一端を。

 

【粛清の棘】

 

 放つ先は、崩落した壁に挟まれた通路から侵入を試みるアラガミ群の先頭。丁度良く飛び出してきたヴァジュラの鼻っ面に円錐形の先端が激突し、名状し難い悲鳴じみた咆哮と共にその巨体が怯む。貫通出来ない以上ダメージとしてはそれなりでしか無いだろうが、鋭利な先端を持つ大質量の飛翔体は単純に重いし邪魔だ。……どちらも早々に砕けないからこそ、質量を質量で殴り飛ばす事は出来る。

 

「……大型5、中型12、小型多数」

 

 数を犠牲に形態維持を高め、更に巨大化させた棘をヴァジュラを退かせた通路の出口に突き立てて、簡易の柵を作る。高さにして約数m。無駄に固く大きなそれが後続のアラガミ達の勢いを削いでいるが、それも所詮は時間稼ぎ。身軽なモノや飛べるモノ達を筆頭にとび越えてくるアラガミに向けて、今度は強度よりも速射性重視で生成した棘を連続射出し、柵の向こうへと送り返す。……それを、何度となく繰り返す。

 冥血消費の重さと使用間隔の長さを、心骸・血骸の活性により軽減し、それでも足りない分は生命力を置換して補いながら壁を担う。広場に繋がる通路は大きく4つ。丁度アナグラ側の通路入口から全てを見渡す事が出来る配置であったお陰で何とかなっているが、正直に言ってあまり余裕は無かった。

 

 潤沢な冥血と十分な制御能力よって可能となる、数と質量による面攻撃。嘗て何百何千という討伐部隊を送り返し、そして灰と成した力。……神骸の統合と融合が進み、更には錬血の習熟が進んだ事で漸くあ8割程度再現の叶ったものだが、それでも足止めが限界だ。

 結合力の低い個体であれば、致命傷を与える事は出来る。小型であれば、そのまま倒し切るも出来る程度にはなってきた。だが、それでも……本来想定されていた程の戦果は引き出せていない。

 それは威力そのものの不足というよりも、その性質によるものが強い。……この棘の特徴は"質量攻撃"。余りにも物質的で強度に特化しているが故に、物理的な衝撃と貫通力にその特性が偏っていて、それがオラクル細胞の耐性に引っ掛かってしまっている。

 とはいっても、それは何もこの棘だけではない。吸血鬼の持つ力は、成長の遅さ以前の問題でアラガミとの相性が悪かった。

 

(オラクル細胞の天敵は、同じオラクル細胞。……燃焼や凍結現象そのものじゃなく、それを引き起こすオラクルによる捕食こそがダメージ源)

 

 錬血は冥血を消費して行使される。冥血そのものは神機使い達のオラクルに近いのだが、オラクルをほぼそのまま撃ち出すオラクルバレットと違って、錬血は何かしらの変換を経ているものが殆ど。神機使いのそれが火属性のオラクルなら、吸血鬼のそれは冥血から変換されて生じたより純粋な炎だ。……だからこそ、少しの改変で着火や物理的な刃の形成も出来るが、同時にオラクルとしての特性は薄れてしまう。

 それこそ、この棘が顕著だろう。錬血としては消費の重い技ではあれど、消費する冥血の量と棘の質量は、比較するのも馬鹿らしい程に乖離している。棘1つの質量でさえ人の身体に収まる血液量を超えているというのに、少量の混合冥血で補える程度の冥血(オラクル)で数本は撃てるのだ。……1lの水から1tの氷を作り出している状態に近い乖離の異常さは明らかであり、そしてその乖離こそが、吸血鬼の攻撃性能に枷を掛けていた。

 

 単純な対人や対物なら、それで良い。100の炎属性オラクルでも100の炎でも等しく壊れる相手なら、少ない元手を大きく増幅させて行使出来る錬血は寧ろ便利と言えただろう。……けれど、オラクル細胞が相手となれば話は変わる。

 100のオラクルに対抗する最も簡単な方法は100のオラクルをぶつける事。だから10の冥血を1000の炎に変換する錬血でも、入るダメージは10〜15、余程炎に弱い個体だとして30も行けば良い方だろう。……それでもダメージそのものは入るし、元の冥血よりは増えているから無駄では無い。だが、吸血鬼の冥血保有量はそれ程多くない為連続行使できる数は少なく、数が必要ということはそれだけ戦闘時間が伸びる。更に言えば、その伸びた時間で痛打を受けるリスクも高くなる。……100を1回当てるよりも10を10回叩き込む方が、単純な消費以上に負担が増えるからだ。

 そして吸血鬼の行使する錬血は、その殆どが変換型だ。……よりにもよって、最も抵抗の手段が必要な相手に対し有効打の乏しい現状に、最早苦笑する他無い。守るべき相手やその被造物にばかり強く在って、一体どうすると言うのだろう。余りにも早く閉ざされて吸血鬼と堕鬼だけを相手にしていたものだから、妙な方向に寄生体が学習でもしたのだろうか。

 

(非変換型の錬血は……保持可能な冥血量が増えなければあまり効果が無いな)

 

 棘が打ち放たれる鋭い風切り音と、アラガミの咆哮、建物の崩落と地の抉れる音が重複し重奏し、何とも表現のし難い戦場音楽となって周囲に満ちる。これだけ騒々しければ、人々への警告とアラガミの誘引には多少効果があるだろうと攻撃を緩めはしない。此処へ、自分へ食い付いてくれるのであればそれで良い。

 心骸と血骸の力を何時もより多めに引き出す事で、擬似的にかつてのクイーンを再現する。何度も何度も、何百ともしれない棘をアラガミにぶつけながらこんな思考が出来るのは、意識を分割する事に慣れて来たからだろう。……いよいよ外れてきているなと遠く自覚しながら、思考も錬血も止めはしない。

 

(保有冥血量の増大。冥血そのものの変性。武装の見直し。……生きた細胞の制御)

 

 神機使い達の強さは、当人達の実力は当然として、ほぼアラガミそのものを自身に接続するというリスクと引き換えに得た神機という武装にある。オラクル細胞の天敵がオラクル細胞であるならば、確かにそれ以上適切な物は無い。……しかし、それが適切であり効果的だと分かったとしても、吸血鬼の強化に繋げるには幾つもの課題があるのが現状だ。

 何せ、身体の作りそのものが違う。神機のコアにあたる部分は吸血鬼にとっては心臓とそこに根を張る寄生体であり、神機の刀身や砲身にあたるのは即ちこの身体そのものに他ならない。強いて言えば血を共有する牙装は近いのかも知れないが、取り替えるだけならば兎も角外し続けていても問題が無いあたり、神機の結び付きには劣る。

 ……ああそう考えるのならば、身1つで軍に抗ってみせたクイーンは確かに目指すべき形の1つだったのだろう。次点で、暴走した肉体のままに意識を取り戻し、保ってみせた継承者達だろうか。

 

(人型アラガミやリンドウ氏。……いや、流石に厳しいか)

 

 それらから考え、この肉体そのものが神機に近いのならば、この体そのものを武器とする、もしくは武器や牙装を肉体の一部と出来れば戦力の向上は容易いだろう。……しかしそれでは、自我こそ残っていても肉体的には堕鬼とさして変わらないモノになる。――吸血鬼を神機とするなら、堕鬼は制御を受けていないアラガミだ。暴走の危険と隣り合わせの上、人の心を維持するという形で自我を保つ吸血鬼に人を捨てろと言うのは、色々な意味でリスクが高い。

 それでも、確実に制御出来るのであれば一考の余地もあるが、現状で無理を通す程では無い。神機使いという戦力が存在する以上、嘗ての様に何もかもを捨ててでも吸血鬼を引き上げる必要性は低い。あまり無理に事を急いて、クイーンやミドウの二の舞いになっては元も子もない。

 やはり暫くは武装の強化に注力し、牙装の補正と自身へのヘイズ蓄積で地力を高めるしかないのだろう。それでも思い付いた事位は、ルイ達に話しておこうか。

 

 

 そんな思考の傍らでアラガミを送り返すこと、果たしてどの位程度だっただろうか。

 

 

―― gGAAaara!!

「……!」

 

 ……流石に、思考に意識を割き過ぎたらしい。

 気が付けば十m程にまで積み上がっていた棘の壁を飛び越えた巨体。確か、カリギュラという名の青いアラガミが落とす影が、自身の影を喰らって落ちてきていた。……避けなければ潰されるのは必至だが、避けるには通路の幅が狭すぎる。咄嗟に防御や回避の錬血を使おうにも、今まさに生成をし始めてしまった棘の完成までは動けず、そしてその棘での迎撃よりも早く相手が落ちてくるのは明白だった。

 

 ――ああ、これは駄目かと、この時点で完全な回避や防御をすっぱり諦める。

 些細な読み違えが大きな損壊に繋がるのは、戦場ならばありふれた事だ。振り被られた巨大な刃と自身の立ち位置・体勢から、どう足掻いても負傷を免れ得ないと直感。ならばせめて、死に戻りではなく再生が叶う程度の損壊に抑えるべく身体を繰るのもまた、慣れた動きだった。

 

 (……左肩から腿まで持っていかれるか)

 

 言葉にしても実際に目にしても疑いようの無い重傷だが、心臓は当然として頭部も無事であり、右腕を裁ち落とされた時の様に武器を取り落とす事も無いのならばさして気にする事も無い。問題としては足をやられる事による機動力の激減であり、考えるべきはその状態でアラガミの攻撃外へと逃れるにはどうするか。

 右手に握る片手剣を盾に、直撃だけは避けるべく可能な範囲で身体を捻る。意識を司る頭部と核である心臓さえ無事であれば、下半身や四肢欠損程度の損壊は再生でどうにでも出来る。そして再生出来る程度であれば、命一回分にも届きはしない。……ああけれど、回避や再生に重きを置くならば、今のような足止めは難しくなるだろう。再生力を使い切るよりも早く、囮としての役目が終わってしまいそうだ。とはいえ、ここまで来たら後はなるようにしかならないだろう。

 

 そう思い、落ち来る死を眺めていたのだが……どうやら今回、運はそれなりに向いていたようだった。

 

 

 

 

「――危ない!」

 

 聞き慣れた声が、珍しい強さで響いた直後。今まさにカリギュラが向かってくるその場に、突如として赤い障壁が出現する。――それは、どこか懐かしい光景だった。

 不規則に並ぶ細胞か、もしくは水面の泡飛沫の様な非実体のそれは、しかし確かな強度で氷帝の突撃を防ぎ止める。取っ掛かりの無い障壁にそれでも爪を立ててしがみつこうとするカリギュラの、どこか恨めしげな双眸と視線が交差。直後、高速で飛来した炎剣を模した錬血がその巨躯を障壁上から弾き飛ばした。それでも尚体勢を整えて着地しようとしたそこへ、漸く生成の終わった棘を纏めて叩き込む。……加減なく打ち込んだせいで剣山じみた外観になってしまったが、まあそれを見て悲鳴を上げるような者も居ないのだから良いだろう。

 

 

「イオ。それに、エミリーとシルヴァも。……すまない、助かった」

 

 ほうと一息をつき、次いで言葉を投げかける。……視線を向けた先、駆け寄って来ていたのは声や錬血から想像していた通りの面々だ。

 薄い表情にそれでもそうと分かる程の心配と安堵を滲ませたイオと、まるで出来の悪い弟でも見るかの様な呆れの表情をしたエミリーと、未だ険しさの滲む表情をしたシルヴァ。……珍しい顔触れだなと思いつつ、助けられた礼の言葉だけを投げて軽く頭を下げた後、再度前へと向き直る。何か物言たげな空気も分かってはいるが、まだアラガミの掃討は終わっていないのだ。――あまりエミリーやシルヴァと共闘した経験は無いが、大丈夫だろうとなんの気負いも無く信じられたのは、きっと彼等に近い者達だからであり、何となく既視感があるからでもあった。……彼等は、もう記憶にしか残っていない討伐部隊の皆に似ているのだ。

 

 

 

「間に合っただけ良しとしとくか。……守りは俺が引き受ける。存分にやれ」

「細かいのとか早いのは任せてよ。これでも、射撃にはちょっと自信があるんだから」

「……神機使いの方達もこちらへ向かっています。それまでは」

 

 期待通り、と言っていいのか。呆れ混じりにそれでも戦闘態勢をとった3人に頷いて、再度棘を生成し展開する。足を止めての囮と防衛。吸血鬼にとっては些か以上に苦手な役回りだが、彼等とならば果たせるだろう。神機使い達が駆け付けてくれるというのなら、尚更気は楽になった。

 

「後でこってり絞られるのは、覚悟しとくんだな」

「……、………」

 

 にやり、と。意地の悪い笑みで告げられたシルヴァの言葉は、取り敢えず意識の脇に置いておこうと思う。

 

 

 

◆ ◆ ◆

 

 

 

 駆け付けて、目にしたその光景に。ここが戦場だと分かってはいても、瞬間的に呆けていた。

 

 

「チッ、数が多過ぎるな。そら、次の団体さんがお出ましだ!」

「……イオ、地上の足止め頼む。上は自分が」

「分かりました」

「あ、何か良さげな奴何体か抜かせといて!そろそろ 冥血回復しないと不味いから!」

 

 まず目に付いたのは、あちこちが崩れ落ち白い棘が突き刺さった元居住区の惨状だ。アナグラ方面と繋がる道の一部を堺にしてより壁側に広がるその光景は、アラガミだの聖域だのに慣れた極東神機使いであっても僅かに気圧される程の異質さで。アラガミが向かってくる経路にだけ集中的に景色が変わっているものだから、いっそコラージュか合成写真かとさえ思えた。

 そしてそれを背景に、現在進行系で乱れ飛ぶ白く巨大な棘を主軸とし、高速で飛来しては爆散する炎剣と炎の撒菱が牽制と足止めを担い、武器を媒介とした血色の刃と地面から突き立つ剣山が隙間を埋める様にしてアラガミの侵攻を抑え込む戦闘風景。それでも尚止められなかった波状攻撃は、ドーム状に展開された赤色の障壁が防ぎ止めていた。――何と言うか、そこだけを切り取って文字で表現した場合アラガミ同士の縄張り争いか何かの様な攻防戦だ。

 実際、壁側に集中した世紀末じみた光景はアラガミの所業に見える。……けれど同時に、一定位地帯以外に損壊が無い事が、アラガミによる無秩序な破壊ではなく彼等が選んだ行動の結果だと示していた。

 

 攻撃と防御をそれぞれ担う男性2人の立ち位置を中心とし、遊撃と妨害を担う女性2人の動きは比較的大きい。が、それでもほぼ定点に留まって戦うその動きは、大立ち回りが基本となる神機使いにしてみれば、いっそ自殺行為にさえ見えてしまう程だ。

 自分達を囮にすることで後逸を減らし、損壊と再生さえも織り込んで戦線を固定し、後方を防衛する。…それは、それなりに吸血鬼達との共闘を経たと思っていた矢先に初めて見た戦い方だった。――それが、吸血鬼の中でさえ珍しいといえるものであることを知ったのは、暫く経ってからだ。

 

 

「タツミ!」

「あ、ああ! 行くぞ!!」

 

 呆けていたのは数秒足らず。それでも、戦場を前にして立ち止まりかけた事は変わらず、ブレンダンの叱咤に応じて意識を切り替える。なんとか抑え込めているとは言っても、アラガミはまだ掃討出来ていない。先の会話を聞く限り、彼等のリソースも厳しくなってきている筈だ。ここで呆けて役目を果たせませんでした……では、神機使いとしても防衛班としても名折れだろう。

 

「すまん、遅くなった! 大丈夫か?!」

「無事! だけどちょっとキツい! 攻撃に回りたいから、ここお願い!」

「おう!」

 

 明確かつ簡潔なエミリーの言葉に応えて、代わりとばかりにその場所へと走り込む。女性2人は、どうやら少し離れた位置でアラガミ相手に武器を振るい始めた。……どうやら、尽きたアイテムの代わりに実地で冥血の回復をしている様だ。

 残っているのは、男性2人。近くで見れば、やはり流石に厳しかったのか、どこか険しい表情と乱れた呼吸に気付く。……当然だ。足を止め、自身を囮として常にアラガミの正面で注意を引くというのは、単純な討伐戦よりも疲労が嵩む。それは、防衛班だからこそ良く知っている疲労だった。

 

「状況はどうなってる」

「レーダーをすり抜けられて、この先を含めて4箇所防壁が破られてる。クレイドルとブラッドが外に出てるのが痛い。防衛班と第四部隊が出てるけど、アラガミの処理はともかく防壁の補修に手が回らない感じだ」

 

 飛びかかってきたオウガテイルをブレードで切り捨てつつ返す刃でドレッドパイクを貫き、ブレンダンのバスターがコンゴウを跳ね上げつつ両断する光景を確認しながら、手短に伝達を行う。槍と障壁の展開が止まっているのは、一時的に戦線を任せて回復に専念しているからだろう。……後発のシルヴァ達が飛び出して行ってからでさえ、20分近くが経っている。先に来ていたというレイに至っては、下手をすれば1時間近く戦っていた計算だ。

 それを分かった上で、その戦力を前提にしているのだから、自分達も大概外道じみている。……近接型2人という偏りは、いつも組み慣れているからという以上に吸血鬼達の錬血を当てにしていたからだ。

 

「それで……悪い! 疲れてると思うんだけど、手伝って欲しい。このエリアの防壁をどうにかするまでで良いから、頼めないか?」

 

 一先ず周囲の安全を確保した後に改めて声をかける。それを確認するのは、純粋な心配と後ろめたさが半分ずつだ。……頼まれ無くても囮と足止めをしてくれていたその気質から、まず断られる事は無いとは思っていても。大丈夫なら戦って当然だとは、流石に言えなかった。

 

「勿論! 皆も良いよね?」

「ああ」

「はい」

「異論はねぇな」

 

 数体のアラガミを倒して戻って来たエミリーの言葉に、迷い無く返される同意の声が頼もしい。少し間が空いて一息つけたのか、荒れていた呼吸も既に落ち着いてその表情も幾らか和らいでいる。聞けば、近接よりも錬血での攻撃を優先した結果枯渇した冥血回復薬を除いて、それ以外のアイテムや再生力には余裕があるという。キツく無いのかと尋ねれば、此処に来る前に血涙を摂取しているから大丈夫だとの答え。……そういう意味では無いのだが、彼等にとってはどうやらそれが一番重要な事らしい。――精神的な疲弊と冥血の枯渇にさえ気を付ければ、数日程度は連戦出来る。何時だったか軽く告げていたそれが冗談じゃ無かったのだとそう証明するかの様な継戦能力と精神的なタフネスさに、今は頼らせて貰おうと思う。

 

 

 

「で、防壁を塞ぐってぇ話だが、具体的には何をすりゃ良い? 工作員の護衛でもすりゃ良いのか?」

「ああ、それなんだけd……――ガギャィイン!!――いや、ブレンダンさん??」

 

 会話に割り込んだ轟音に視線が集中する。硬質な物を重量物でぶっ叩いた様なそれは、鼓膜に地味なダメージを入れる程の大音量。何の音だ音源はと見れば、近場に突き刺さっていた真白い棘の側に立つ人影が2つ。その中でも、バスターソードを今まさに振り下ろしましたと言わんばかりのブレンダンに、音の正体と原因は判明した。……なぜいきなりそんな暴挙に出たのかという理由だけが、ものの見事にすっとんでいる。

 

「タツミ。……見てくれ」

「いやほんと、いきなりどうしたんだよっ……て、これ……」

 

 幸いというべきか、先の轟音に釣られたアラガミはいなかったらしいが、不用意な行動なのは変わりない。虫の居所が悪い日のシュンなら兎も角、お前そんな事をする奴じゃなかった筈なんだがという疑問は、呼ばれて示されたソレを見た事で頭から消えていた。

 

「最大威力のチャージクラッシュで、漸く罅が入る硬度だ。確認したが、ある程度角度や大きさは変えられる上に後々撤去も出来るらしい。使えるんじゃないか?」

「そ、だな……」

 

 仮にも極東の最前線で、10年以上やってきた前衛特化型神機使いの全力を以てして砕けない物質。それだけなら、アラガミを始めとしてオラクル由来の物なら正直珍しくは無い。けど今受けた衝撃は、その"最低限以上の強度と質量がある物体"を、"ほぼ自由かつ多量に作り出せる個人"が此処に存在しているという事実そのものに対してだ。

 周りを見れば目に入る、通路を塞ぐ白い壁。即席のバリケードじみたそれを、アラガミは確かに破壊では無く"飛び越えて"いた。つまりは、アラガミにとってもそれなりに邪魔なモノなのだ。……これを、防壁の穴に対しても行えるなら。仮に完全には防げないとしても、流れ込んでくるアラガミの幾らかでも押し留められれば十分だ。一度に交戦するアラガミを減らせるだけで、負担は遥かに軽くなる。

 問題……いや、心配があるとすれば、それを担う本人の負担と消耗だけ。そしてそれも、恐らくは自分から検証に付き合っていたのだろうその表情を見れば杞憂だと分かった。

 本人が任せて良いと……出来るというのなら、活用しない手は無いだろう。

 

 

「分かった。支部長には俺が連絡しておく。……頼んで良いか?」

「ああ」

「話は纏まったみてぇだな」

「だね。それじゃ、走ろっか」 

「はい」

 

 第何波とも知れないアラガミの咆哮が近付いてくる中、それまでの常識では考えもつかなかった奇策が一つ採用された。応じて、それまで行っていた領域の維持から、アラガミが向かい来るその奥へ向けての侵攻戦へとその方針を切り替える。……駆け出すのに、それ以上の掛け声は必要なかった。

 

 

【炎百合】【種火返し】【アイスソーン】【ライトニングソーン】

 

 冥血を回復したエミリーとイオが、出が早く更に弾速に優れた陰錬血を連射し、主に飛行型や跳躍して襲いかかって来る小型・中型を叩き落としていく。ザイゴートやオウガテイル程度であればそれだけで倒す事も出来るが、シユウやサリエル神属系統ともなれば陰錬血特化型では無い彼女達のそれでは、怯ませて落とすのが限界だ。だが、今この時において言えば、怯ませて落とす事こそが目的だったのだとすぐに分かった。

 

【エルダーコンタラクト】【牡丹灯影】

【オルドマンウィンター】【迅雷の鉄槌】

 

 血色の柱が屋根を超える程の高さで吹き上がり、爆発とそれに伴う業火が諸共に焼き尽くす。吹き荒れる極寒の冷気が白銀の腕を以て氷像と成さしめれば、地を這い空中を奔った雷撃がその身を砕き割った。

 自身を中心として広範囲を攻撃する陰錬血の連続行使。強固な識別機能によってそれらがアラガミ以外を砕く事は無いが、それでも爆炎や雷撃の只中に居ると言うのは中々に貴重かつ緊張する体験だ。それでも軽い驚き程度でタツミ達の動きが止まらなかったのは、彼等自身の練度や信頼は勿論として……何とも言い難い事に味方からの誤射に慣れがあった為だろう。大口径のブラストから放たれたバレットに背中を撃たれ、避けた日々は、色々な意味で彼等を鍛え上げていた。

 

「豪胆だな」

「当たらないなら、騒がしいネタバレットと同じだろ? ……いや、ほんとにさ」

「ああ。少なくとも、背後を気にしなくて良いだけでも助かる」

「戦場でそれはどうなの?」

「………」

 

 勿論、近接組も何もしていない訳では無い。何せ、彼等が相手取らなければなら無い相手と言うのはつまり、先の錬血群を抜けた強力な個体だ。錬血の弾幕を張る3人に手を止めさせない為にも、確実に倒し切る必要があった。

 

「はぁっ!」

「ふんっ!」

「ははっ! 頼もしい、なっと!」

【ブラッドアーツ/CC・ブレイカー】

【降竜伏虎】【エクスキューション】

【ブラッドアーツ/フェイタルライザー】

 

 バスターブレードと両手剣という重量武器が力任せに叩きつけられ、アラガミの顔や手足を砕き割る。大振りな斬撃の隙間に差し込まれたヴァジュラの前足をブレンダンがパリングアッパーで弾き、合わせてタツミが後ろ足から尾を切り裂いた事でダウン、そこへシルヴァが展開した血の刃と大剣が叩き込まれて止めとなる。……止まる事なく更に次へと向かいながら、タツミは思わず軽く目を見開いていた。

 意外に、と言っては失礼かもしれないが、シルヴァの手札が予想以上に多彩だ。基本はその体躯と武器に見合った重装近接型なのだが、錬血や武器由来の血刃等中距離の攻撃手段も多く、立ち回りも器用な、と思えるものが中々に多い。視野も広いようで、総じて安定感が強かった。――人は見かけによらないなぁなんて言葉を、心の中だけで呟いておいた。

 

 

 

 

「見えた、あそこだ!」

 

 数分後、遂にその場所へと到着する。防壁に空いた穴を潜り、今まさに入り込もうとしているコンゴウをフルスイングで外へと打ち返せば、丁度良く巻き込まれたウコンバサラと共にもんどり打って転げ出していった。そしてそれにより、束の間ではあるが安全地帯と時間が完成する。

 穴は縦5m幅10m弱といった所だろう。アラガミの襲撃による被害としては軽い方だが、それでも補修資材はそれなり以上に必要だ。何より、資材の準備やその運搬、人員をここまで護衛する手間や時間を考えれば、やはりどうしても期待してしまっていた。

 

「やれそうか?」

「ああ。……下がっていてくれ」

 

 促され、数歩下がって警戒を続けながら様子を見守る。レイが纏う気配が鎮まり、ほんの数秒空白の時間が過ぎる。……やはり疲労があるのか、難しいのか、という微かな落胆は、直後に展開した光景によって綺麗にかき消えていた。

 

「この棘を、こんな気持ちで見ることになるたぁな」

 

 ぱきり、ばきりと音を立てて真白く巨大な棘が生成されていく。普段よりも時間をかけて形作られるその大きさは、普段のそれの数倍近い。明らかに宙に浮くような質量では無い筈のそれが5本、半円を描く様にして展開されていく。その切っ先が僅かに微動しているのは、打ち込む先を調整しているからだろうか。――そして。

 

【粛清の棘】

 

 響く音は、しかし質量の割には小さかった。鋭い切っ先を以て地面へと滑り込んだ棘が僅かに傾く形で停止し、半分程を地上に残して屹立する。……土埃が晴れて確認できたのは、想像した中でも殆ど最良に近い光景だった。その形状からどうしても上部に隙間が出来るが、互い違いに傾けられた事によって粗い格子に似た形となったそれを通り抜けられるのは、細身の中型種以下程度だろう。そんな事を考えていれば、今度は小型の棘が下から上向きに壁へと突き刺さり、その穴を小型種サイズにまで縮小してみせた。

 これで良いか?と言わんばかりに向けられた視線に、気が付けば隠しようも無い笑みが溢れていた。

 

 

 そうして防壁の応急処置を終えた彼等は、その後他の損傷箇所にも赴き同様の処置を実行。後半、冥血の過剰消費と連続した回復剤摂取の副作用によってレイが戦闘に参加出来なくなるアクシデントが発生するも、合流した神機使いや吸血鬼達が護衛を請け負う事で完遂。

 結果としてかなりの被害軽減と修復作業までの時間稼ぎが出来たが、単純に無茶な行動であった事に加えて、死を回数で数えて当然の様に動こうとしていたレイに対し、主に神機使い達が反論。ついでに似た感覚だった吸血鬼達も込みで説教をくらうという一幕があったが割愛する。

 

 そして数日後、資材と人員の手配が完了したとの知らせを受けたレイは棘の撤去に向かおうとするも、流石に無理をしすぎだとイオと共にアナグラの一室に軟禁される。その代わりにと、青涙によって棘への干渉が可能な元継承者達や候補者達が出立し、やや時間をかけながらも各所でその役目を達成した。

 そしてこの一連の出来事により、粛清の棘と呼ばれる錬血と棘への干渉能を持つ吸血鬼達への認識が変化していく事となる。

 

 

 

 冥血というリソースを物質に変換し、更には固定するという特徴を持ったととある錬血を応用した即席障壁と、それに干渉し得る力。それらは全て、今は亡き一人の少女に由来するものであり、血塗られた女王の槍と呪われた骸は、敵を穿つ矛にして白亜の護壁として認識されて行く事になった。――それはやがて、きたる災厄を前に大きな役目を持つ事となる。

 




ヴェインでの用事を済ませた後、一足先に極東に渡ろうとした時点で異変を感知し転移先を変えて駆けつけた結果、孤軍奮闘する事になって最終的にしこたま怒られた主人公と他3名。つまり大体自業自得。
【命】とは……
周りから見れば大切なものを軽く捧げて奉仕する自己犠牲精神に溢れていても、当人達にしてみれば合理的で効率的かつ軽い対価となっているもの。


※主人公転移→少し遅れてイオが極東へ転移→先に来ている筈の主人公が居ない事に気付く&ついでに襲撃も起こっている→極東に残っていた中で戦闘が可能なシルヴァとエミリーを見付けて状況説明→探しに行きたいがどこに居るか分からないし、距離が遠すぎて友誼の血針が使えない→見付け出したシエルに頼んで探知して貰う→一番近いヤドリギを突き止めて転移し後は走って駆け付けた。

※とある事情により大半の吸血鬼がヴェインに帰還していた上、ヴェイン中に散らばっていたのも今回の要因。
相手がどのエリアに居るか分かっていれば、同エリアへ転移後に友誼の血針で合流出来るのだが、分からない場合まずエリアを探す所からになる。ジャックがいれば比較的楽だが、赤い霧の内外では能力が通らない(ヴェイン内から極東は見えない)上、そもそも本人が能力上行動範囲が広い筆頭なので、どちらかの拠点にいない場合は逆に手間がかかる(誰かを探す手段としてのジャックを探す所から必要になる)。

※普段からヴェイン(赤い霧とか地脈とか)を維持しつつ色々やっているので、並列思考は可能なものの微妙に抜けているCV主。慢心や油断というよりは、空き容量が少なくて動作が遅くなっている端末の様な状態(その状態で戦場に出ているという事が、ある意味での慢心かも?)。危機意識の低さには、主に討伐戦時代に死に慣れたのと、吸血鬼&クイーンに程近い継承者故の不死性、人としての記憶の少なさ等が影響している。

※吸血鬼の命一回分≠人や神機使いの命一人分。
死に戻れるというのも勿論あるが、致命傷やその一歩手前が致命傷にならないのも大きな要因。両腕がモゲても両足が潰れても内蔵破裂しても再生出来るので、普通であれば死なないだけで戦力外となったり、即死でないだけで普通に命に関わるような負傷が一時的なダメージにしかならない。十数秒以内に命を落とす様な実質ほぼ即死扱いのダメージでも、十数秒あれば再生出来る。
理論上、再生力をフルに活用出来るだけの腕がある吸血鬼なら、再生力一回分≒命一人分にさえ近い。死ななきゃ安い。

※シルヴァ、エミリー
ゲーム本編では同行者に出来ないものの、明確に戦闘が可能だと思われる軍属上がりな吸血鬼。
ブラッドコードを見るにタイプとしてはシルヴァはヤクモと、エミリーはルイ+ミアに近いが、どちらももう少し錬血寄りの構成で出の早いものやトリッキーな錬血が多い。シルヴァは、攻撃用の錬血が2つある上に武器にも飛び道具機構あり、ブラッドコードの補正も器用が高かったりと意外に?多芸。
ちなみに、シルヴァが使う障壁はブラッドコードで取得出来ない謎の錬血。討伐戦時代に使っているので神骸由来のものでも無く、多分展開中は動けない(+多少負荷がある?)もののクイーンの棘の乱射を防ぎ続ける事が可能な防御力と持続性を持つ障壁。ついでに軽く直径100m以上の範囲を覆ってたりもする。
ある意味クイーンと同等かそれ以上の理不尽錬血。

※比較的珍しい戦い方≒討伐戦時代の戦い方。
自身とバディの生存に重きを置き、場合によっては逃走や隠密も手段に入る探索者としてのそれでは無く、自身や仲間を囮や壁として防衛線を維持したクイーン討伐部隊のそれ。経験者である第1、第2世代の他、エミリーやヤクモ等軍属経験者が実行可能。
吸血鬼達の大まかな戦い方を物凄く雑に分けると、戦線型(討伐戦タイプ)の討伐or防衛型と、探索型の調査or生存型。

※髄骸→制御全般、心骸→力の源泉、血骸→抑制・力の器。
今回なら、
髄骸の活性→錬血の特性変更とその制御。
心骸の活性→体力・冥血の高速自動回復。
血骸の活性→体力・冥血の最大値増加。能力行使時の負荷軽減による再使用時間の短縮。
で無理矢理討伐戦時代のクイーンを再現している。
この状態が長引くと、赤い霧が薄くなったり血涙の実りが悪くなったりするので、あまり長時間の多用は出来ない。ついでに制御がしこたま面倒なので、体力や冥血以外にも、主に精神的な疲労が強い。

※棘と棺と防壁
クイーンの棘、戦闘ムービーだとサイズ小さめ&数多&速射だけど、アウロラとかの血英だと地面に残ってる&フィールドの白い終末の棘?もクイーンの質量攻撃(≒粛清の棘?)らしいので、サイズ変更は元よりフィールドに残存させるか否かも調整可能ではないかという仮説。なのでサイズ大きめの残存型にすれば、即席バリケードに出来るのでは?という案。後、終末の棘に近い物とするなら、棺形成能力とかである程度はいじれるのでは?と。
操作は兎も角として粛清の棘そのものは錬血なので、そのうち1〜3本程度かつサイズ固定の残存型みたいな廉価版?がマスタリー化出来たりしたら、一部吸血鬼が土木作業員モドキになる可能性も?
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