不死の吸血鬼と神喰いの狼   作:雲海月

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捏造&独自解釈マシマシな継承者達とブラッド達の能力について


王と王

 

 それは敵意も悪意も無く、ましてや抜け駆け目的の打算や黒い裏によるものでさえ無かった。

 寧ろ、それは直向きな程に真面目かつ真剣な意思と努力による挑戦と協力と……そしてうっかりによる事故。……故にこそ、ある意味では大変にタチが悪い所業とも言えた。

 

 

 

 

「お、来たなー!」

「今日はよろしくお願いします」

「……こちらこそ」

 

 約束していた時間にその場所へと向かえば、既にぴたりと揃っていた顔触れ。待たせてしまったのかと謝罪しようとした言葉は、僅かも気にしていないと雄弁に語る声と表情を受けて苦笑へと変わった。

 ――ブラッド隊7名。純粋な強さは元より、その特殊能力によってこの極東でも尚確立した立ち位置を持つ彼等は……けれどその肩書に沿わない独特の穏やかさがあった。

 

「全員揃っているけれど……時間は大丈夫?」

「勿論!」

「元々、ブラッドは極東支部付近での任務が多い。何かあれば、呼び出しがかかる筈だ」

 

 〝こっちこっち〟と呼ばれて、意図的に空けられていた輪の一角に参加する。――模擬戦用のフロアで行う、吸血鬼と神機使いの混合班による検証実験。それそのものは既に何度も繰り返された光景であり、同時に始めて行われる内容でもあった。

 今回のメンバーはブラッド隊の7人に、声をかけられた本人であるレイとそれに同行したイオ、ついでに時間が合えばと呼ばれたジャックとエヴァという顔触れ。そのうち何人かであればこれまでにも同行した事はあるが、このメンバーだけで揃い踏みしたのは始めてだ。

 そして、その内実を知る者が今回の顔触れを知っていれば、まず間違いなく警戒を抱き同行を申し出ていただろうメンバーでもあった。

 

「それじゃ、〝ブラッド〟と〝継承者〟についての検討会を始めようか」

 

 先日、吸血鬼達とヴェインが秘匿していた衝撃の事実が提示され、その中核にある彼等の力もまた、極一部にではあるが共有された。

 それは、【終末捕食】とそれに関連した力や過去を持つブラッド達へも当然伝えられ、そして彼等は、似た経歴と力を持つ継承者達に興味を持った。

 ブラッドの力はあまりにも異質であり強大だ。世界を滅ぼしかけ、そして救ったその力は危険視され、彼等と同じ因子を持つ神機使いの誕生に歯止めをかけていた。単純な興味は元より、似た立場にある者達を知りたいと思ったのは……血の力という繋がりを軸にする彼等にとって、ある意味では当然かもしれなかった。

 そして何より、彼等は皆危急の事態と力の有用性を身を以て知っていた。

 

 

 だからこそ、互いに忙しい身でありつつも時間を作って集まる事にしたのだ。

 

 

「変わった力が使えると聞いた。具体的には、どのようなものだろうか」

「どう、と聞かれても説明が難しいわね……。私達の力はそれぞれの神骸に由来するのだけれど、同じ神骸を継承しても、使える力には差がある事が多いから……」

 

 今更回りくどい言い方はせず、端的に。リヴィの問いに、しかし困ったように答えたのはエヴァだった。

 既に情報が開示され、神骸や継承者についても共有された今、もはや隠す必要は無い。無いのだが、ならば説明出来るかと言われるとまた別問題だった。

 隠したり誤魔化したりしている訳ではなく、ただ単純に説明がし難いのが特徴とも言える力なのだ。

 

「そうなのか?」

「ええ。例えば私は15ある神骸の1つである〝喉骸〟の継承者で、歌を媒体に神骸の暴走を鎮める力なのだけれど……私の前の継承者は、また違った力を使えたと聞いているわ」

「初代喉骸の継承者は、一定範囲内の長期的な封印を得意とし、逆にエヴァの様に既に暴走状態にあるものを鎮める力は低かった。……他に分かりやすいものでは、分身を生み出すような力であっても、本体と強く結びついた単騎から自立行動が可能な複数まで、継承者によってその特性は異なる」

 

 どの継承者がどんな力を持っていたかを直接知っているのは、初代継承者の一人であり監視者でもあるジャックのみ。しかし彼にしても、把握していたのは表に出ている力に限られる。……そもそも、棺の形成能力以外で力を自由に扱える継承者の方が少ないのだから無理も無い。

 

「分身って……え、マジで?」

「ああ。それに……その力が無ければ此処に来れてはいない」

「どういうことー?」

 

 現状最も神骸の扱いに長けるレイもまた、幾つもの神骸を継承しているとは言え活用している力は限定的かつ感覚的なものなのだ。

 現状明確に神骸に由来する力の特性と実行可能な事が判明しているのは、継承者の適合率が高く故に封印だけで無く能力を使う事が出来ていた血、喉、眼に加えて脳髄と心臓の5つ。

 その他としてはニコラが肺骸を媒体にした分身の作成をしていたものの、海溝に居た継承者が分け身をガーディアンとして置いていたりクルスが伴侶達を生み出していた事を考えるに、特定の神骸に由来する力なのかは謎なままだ。

 

「ヴェイン側に、分け身……と言うよりは端末が近いか。……この身体に繋がる器を1つ、残して来ている。赤い霧と地脈の維持を担いながら動く為に、この身体1つでは流石に足りなかったからな」

「ってことは……今も力は使ってるって事で良いのか?」

「まあ……そう、だな」

 

 ただし。原理は不明だとしても、その力は有用であり必要でもあった。

 瘴気と堕鬼の流出、そしてアラガミの侵入を防ぐ為の赤い霧、そして血涙の泉とヤドリギを維持し移動経路を確保する為の地脈。それらを維持しながら白の大樹を……ヴェインを抜ける為に、十年程過ごした場所に置いた分け身。ヤドリギや泉から繋がる地脈を通して状態を把握しつつ、時にはヴェインへ戻り直接的に確認と同期をし続けて既に数年は経つ。

 既に身体に馴染み、日常では気にしなくなりつつあった力を改めて説明するのは奇妙な感覚だ。

 そして、ふと見ればそこにあったぽかんとした表情に、良く考えればあまり気持ちの良い話では無かったかと少し反省する。――吸血鬼という括りの中でも、神骸の継承者は尚外れた存在だ。しかも、分身を作り維持するというのは、人には信じ難い、異質なものと捉えられても無理は無い。……自分については今更どうでもいいが、同じ力を持ち参考にさせてもらったニコラやもう居ないクルスに、妙な認識を抱かれたくは無い。

 

 そう思ったレイが言葉を続けようとした、その直後だった。

 

 

「すっげー!! 何だっけ、ほら……極東のニンジャ? っみたいな事が出来るって事だよな?!」

「ロミオ先輩、ニンジャってなにー?」

「なんだよナナ、極東生まれなのにしらないのか? ニンジャってのはさ―――」

 

「ニンジャ……とは何なのでしょうか」

「日本……極東の、スパイみないなもの、だったような…?」

「名前だけなら、聞いた事はあるけれど……」

「いや……、……後でヤクモかルイあたりにでも聞くといい。恐らく、本来の意味とズレている」

 

 今更遅いかもしれないが、ニコラ達への配慮だけでも頼もうとしたレイの言葉は、直後に響いた勢い込んだ別の声に遮られた。

 どこか張り詰めていた空気が一瞬で霧散し、盛大にスリップして脇道にそれた話題がそのまま加速して突き進む様な幻覚。……ある程度の補足を入れようとしたらしいジャックも、恐らくそういう事ではないのだろうと説明を投げた。――恐らく、いや、確実に。話題となっているのは古い時代に実在した影や草と呼ばれた存在……では無く、旧世代、極東が日本と呼ばれていた時代に溢れたサブカルチャーに存在したNINJAだろう。

 

 極東と呼ばれるようになった後に生まれたブラッド達と、旧世代生まれではあれど国の違う吸血鬼と……ヴェイン生まれのイオ。

 〝日本人〟が存在しないこの場において、下手な事を言えば妙な認識と誤解が広まり定着する未来しか見えない。そもそもジャック自身とて、どちらかと言えば知っているのはそのNINJAの方であり……国籍の差もあって本来のそれについてはそこまで詳しい訳でもない。

 それならば、丸投げであろうと正しい意味も娯楽としての意味も知る2人に説明させた方が良いだろう。……決して、どこまでも加速するボケが飽和したこの状況での説明に嫌な予感がしたからでは無い。

 

 

「ま、それはそれとして……今もがっつり力を使ってるっていうなら、シエルが確認してみたら良いんじゃないか?」

「そうですね。クエスト中にはそこまで個人に合わせていませんし……見せて頂いても?」

「構わない」

「折角だから、こちらからも見て良いかしら?」

「へえ、そっちにも似た力があるんだ!」

「似ているかどうかは知らんが……まあ、比較としても良いだろうな」

 

 幸いというべきか、話は脱線しつつも目的を見失う程呑気極まる面子では無かった。仕切り直しと言うには緩い転換で、それでも当然の様に話が進む。

 取り敢えず、互いの能力について詳しく知らなければ始まらないと言うことでシエルがレイへ、そしてそのシエルへジャックが視線を向ける。

 異質、異端と呼ばれる力なれど、既に何十と使い続けたそれは最早呼吸に等しく行使出来る程に馴染んでいる。その中でも特に制御に優れかつ周囲への影響も少ない観測系の力は〝試し〟に使うには最適であり、故にそれはスムーズに実行された……の、だが。

 

「……えぇと、今も力は使っていますよね?」

「ああ」

「少しそのままでお願いします」

「?」

「シエル?」

 

 眉を寄せたシエルが、レイからジャックへと視線を移す。お互いに無言で視線を向け合う絵面はシュールだが、生憎本人達は大真面目だ。

 それは数十秒か、数分か。

 動きがあったのは、〝こいつらって色彩似てるんだな〟なんてどうでも良い事を周りが思い始めた頃だった。

 

「……違うな」「違いますね」

「「「へ???」」」

 

 〝疲れた〟と言わんばかりの言葉が重なり、間の抜けた困惑の声が唱和した。

 

「すまない、説明を頼んでも?」

「説明、と言ったところでそのままだ。〝力〟を使っている事は分かるがその機序や原理が読めん」

「こちらも同じですね。眼の周囲が活性化しているのはわかりましたが、ブラッドや感応種の様な感応波の拡散などは見られませんでした」 

「感知や精査系という大まかな傾向は同じでも、その実全く異なる能力だという事か」

「恐らくはな。今後どうなるかはわからんが、現状はそれで間違いはないだろう」

「うーんと…?」

「俺の方は監視カメラや衛星画像、シエルの方はソナーレーダーやエコーというところだ。似ているというにはほぼ別物だな」

「なるほど。しかし、そうなるとお互いに協力するのは難しそうか?」

 

 顎に手を当てつつ僅かに眉を寄せたジュリウスに、顔を見合わせたジャックとエヴァがそれぞれの所感を述べていく。

 

「これに関しては、能力の幅にもよるかもしれんな。眼骸の名の通り、俺の力は基本的に〝眼〟に由来している。視覚に関する能力に適性がある反面…他の使い方をするのは適性のある神骸に比べどうしても不得手だ」

「私は喉骸。普段は歌に乗せて使っているけれど、声や音ともとれるわ。けれど、あなた達の様に力だけを使っている訳では無いし適合率もあまり高くないから細かな調整は時間がかかりそう。……だから、やっぱり彼に頼むしかなさそうね」

 

 言葉と視線を向けられた先、わかっていると言わんばかりにレイが頷く。11もの神骸を宿し、更には特定の形を取らない使い方にも慣れ、大半の事をある程度こなせる様になりつつある王は、こと実証試験の始まりを担う先駆けとして非常に便利な存在でもあった。

 

「恐らくだが、資料を読む限りコイツの能力はそちらのジュリウスに近い。特定の使い方や能力に特化し ているというよりは、全体的に高水準と言うべきだろう」

「それなら、まずは特定の力としてよりは感応そのものがお互いに対して可能か試してみるのはどうだろうか。互いに相手を感じ、それに応じるように力を引き出し合わせるイメージになる」

「……やってみよう。慣れていないから、迷惑をかけるかもしれないが」

「気にしなくて良い。それに、合わせられるかわからないのはこちらもだ」

 

 王と王。

 先代より継いだ骸を同朋と共に欠片を分かち終わりを留保し意思を刻み続ける王と、単独での留保にこそ失敗したものの家族と共に遂に役目を果たし終わりを変じさせた王が、今同じ場に並び立つ。

 血に宿り心の臓により増幅される力の源流を、自身の器を扉として表へと引き出していく。それはどこか瘴気と呼ばれるそれにも似て、違いがあるとすれば、その色が鮮やかで透き通った赤色である事。無秩序に拡散しゆくそれを脳髄の制御でもって自身の周囲に留めるのは、赤い霧を保つそれで馴染があった。

 それは奇しくも…あるいは必然に。並ぶその力と良く似通っていた。

 制御オラクルや偏食場の活動そのものを制するとも言える統制の力がゆらりと溢れ、視認できる程に高まった感応波が吸血鬼の王をその力ごと包み込む。

 赤に重なる赤が揺らぎ、殻の様に壁の様に固着しつつあった紅をゆらりゆらりと和らげていく。

 滾々と、尽きぬかの如く湧き出る力。それを御し、あるいは重ね合わせて自らのそれをも強める力。

 

 血に由来する異なる力は、しかし本来どちらも同じ目的の為に宿らされたモノ。終末捕食の起爆剤にして、その行く末を定めるモノ。そして、あらゆる因子あるいはあらゆる血に適合するその器。

 同じ根源を持ちながらも異なる理に至った王達の〝力〟。終わりの始まりを告げ始まりの終わりへ至る力と、終わりの獣にして始まりの母体を組み上げ生み出す力。

 それはあるいは、同時にあってこそ完全となり得たかもしれない欠片の合致でもあった。

 

「「………」」

 

 交差する視線の後、頷きは同時に。

 混ざり合い、重なりあった赤が開く。

 選んだ力は活性化。

 固着や変質よりは影響が少ないだろうと思われるそれの為、使い慣れたジュリウスがその択を任された。

 そこへ、レイが己より汲み上げ純化させた力を帰化させて受け渡す。

 周りが嫌な予感を覚え静止の声を上げるよりも尚早く、拡散と供与は実行された。

 

 

 

 結果として。アナグラを突如として異様な波動が駆け抜ける事となった。

 

 

 

「「「「?!??!!」」」」

 

 観測用の機械が悲鳴を上げる様にして情報を吐き出し、人型でありながら純粋なヒトとは言えない者達が皆々総毛立った。

 不快な訳では無い。だが、余りにも強過ぎる力。――それは、アナグラはおろか極東支部の実に半分以上を覆うほどの強大な感応波。そしてその出処は、アナグラの中心部だ。

 

「この力はブラッドの? いやしかし、これは……」

 

 その力そのものは、アナグラに居を置く者達ならばそれなり以上に慣れ親しんだものだった。――ブラッド達の持つ血の力。感応種アラガミさえも凌駕する程の出力でありながら、神機使いや拠点そのものへの悪影響を及ぼさない制御力と確かな指向性。何より、共に戦場に立つ事も多い神機使い達にとっては、何度となく助けられた感覚だ。

 だから、不快では無いし悪い物でも無い。……無いのだが。

 

「何時もより、強い……上に硬い?いや、安定している感じか?」

 

 違和感の一つはその出力。

 確かにブラッド隊の力は元より極めて強く、それこそ複数を束ね全力を振り絞れば終末捕食という星レベルでの現象にさえ干渉する事が出来るのは実証済みだ。しかし同時に、強過ぎる力を瞬時に引き出す為か持続的かつ安定的な行使は出来る者が限られており、またその幾人でも負担が無いとは言えなかった。

 加えて彼等は力の扱いに慎重であり、普段は必要な分だけを器用に用いていた。なのに先程の力は、非戦闘時であると言うのに対感応種戦闘の只中に居る程度には強かったのだ。

 そしてもう一つの疑問は、その質の変化。

 馴染みのある力と共に感じ取れる異質な力。ブラッドの力と衝突せず、それどころか支えて補強し増幅する様にだけ調整されているそれは、だから悪い物では無いのだろうけれど。瞬間的に広がり感応し影響して効力を発揮する〝血の力〟とはどこか違う、ずしりと根を張り世界に食い込んで在り続ける印象を与える力。そんな力、今まで観測された事も感じた事も無かった。

 

「これは……あいつ等か。ここ暫く姿が見えねぇとは思っていたが」

「何か知っているのか!?」

「知っている、と言うより殆ど直感だけど。……多分、こちら側の数人が関わっているわ」

 

 ざわめき立つアナグラで、どこか呆れ顔の者達が数人。それは吸血鬼達の中でも、比較的落ち着いた振る舞いで対応を買って出ていた面々だ。その言葉から読み取れるのは、この力の持ち主達が彼等の中に居たという事。

 

「え、あんた等も感応能力持ちだったのか?!」

「感応能力?」

「うーん…あなた達のそれと全く同じ、では無いと思うわ。ただ、周囲の特定存在に干渉する力には、少し心当たりがあるの」

「……まあ、本人達に聞くのが早いだろう。悪意が無かった事だけは、保証出来るがな」

 

 何とも言い難い言葉と表情に首を傾げる他は無いが、確かにここで推測を並べ立てていても始まらない。本人達に悪気等無いだろう事はここにいる全員が分かっている。――それは強まったお互いへのもの以上に、己の側に属する者達へのそれぞれの信頼故。

 彼等が共に居るのならば、目の前での悪意を見過ごす筈は無いと。ましてや、力を貸すはずが無いのだと、そう信じるが故に。

 

 

「あ、今度は違う事し始めたな」

「ちょっと!! なんかアナグラ軋んでない!?」

「何かミシミシギシギシいってんなー」

「現実逃避してる場合か!?」

 

 ほんの少し、心配にはなるのだけれど。

 

 

 

 

 

「それで、一体何をしていたんだ?」

 

 そうして謎現象の観測から数十分後。呼び出しを受けてやって来たのは予想通りの男女が11人。どことなくばつが悪そうな者と、けろりとして見える者。ただ、何も分からないという様子の者は居ない事から、自分達が何をしてどうなったのかは理解出来ているらしい。……まあそこ迄馬鹿では無いと知ってはいるのだが、問題はそれでは無い。

 

「ブラッドの血の力と彼等の力について、お互いに使う事、もしくは合わせる事が出来ないかと試していました。先の現象は、感応と干渉に成功した結果の相乗効果によるものです」

「ああ確かに、感応能力実験について一応許可は出していたね。君達が今更力の制御を見誤る事は無いだろうと思っての事だったのだけど……うん?少し待ってくれ、感応と干渉に成功した?」

「はい。レイさんの力にジュリウスが合わせ、ジュリウスが扱いやすい様にレイさんが力の質を調整し、その力をジュリウスが活性化として拡散したものです。私達ブラッドのものとは多少違いますが、オラクル細胞への干渉だけで無く、偏食場そのものへの干渉と操作能力も、彼等は有しているようです」

 

 質問に返ってきたのはそんな言葉。元々、吸血鬼達の使う〝錬血〟とブラッド達の〝血の力〟の類似性は検証・研究されていた。そして吸血鬼達の中で、特にその案件へ深く関わっている数人が居たことも最近明らかになった。より強い協力体制を敷き、お互いの能力開示についても許可は確かに降りていた。その中で、〝彼等〟がお互いに興味を示していた事も知っていた。

 似て非なる、それでいて強力な力。それを活かし、何らかの形で還元できるのならと、周りも止めはしなかった。

 

 だからと言って、こうも短期間でそこまでするのは想定外だ。

 

 何をしているんだとか、鬼札に近い能力を気軽に合体させるんじゃ無いとか似た力という事は色々まずいんじゃないかとか、まあ色々言いたい事はあったが取り敢えず、だ。

 

「放置しておくのでは無かったな…」

 

 まずはそれが、双方に共通した思いだった。今回騒動の中心となっていたのは、ブラッドと呼ばれる若い神機使い達と、継承者と呼ばれている吸血鬼達。その特徴であり共通点は、同族とも呼べる括りの中で尚特異的な力の保有と、それを扱い得る極めて強靭な意思。……そして、その特徴故にどこか感覚がズレてしまっている事だ。

 彼等は、必要と判断すればその力を使う事を躊躇わない。その結果他者に疎まれようと自身への負担が増えようと、だ。決して勝算の無い博打を打つような性格では無いのだが、逆に言えば勝算さえあればぶっ飛んだ事にも躊躇う事なく手を出してしまう。

 そして、普通であれば危険云々以前に実現不能なそれを成し遂げてしまえる力があるという事こそが、何よりも厄介だった。

 

 

 今回の騒動にしても、精々驚きで無駄に緊張した程度で、直接的な被害という被害は皆無なのだ。何かしらの悪影響が出たというならまだしも、許可を取った上で成果を上げている為強く責める事も出来ない。

 それでも、他の……もう少し規律の厳しい支部であれば何かしらの叱責はあっただろう。……が、生憎とここは極東支部だ。異常事態への耐性は他の比では無いし、役に立つというのであれば尚更だった。

 

「まあ、気持ちは分かるわ」

「そうだな。それに、力そのものの活用は元より、その継承という点でもあいつ等が会得出来るってのは大きい。あわよくば俺達にも使えりゃ良いんだが」

「………あんた達もなのか」

 

 そしてそれはどうやら、彼等だけのものでは無かったらしい。……同意を示している吸血鬼達と、そうでない吸血鬼達の差は何なのだろうか。ついでに、使えればと言っているその声音が、ただの羨望では無く何かしらの思案混じりなのは何故なのか。――何か、使える宛でもあるのだろうか?

 

 多少のリスクは承知の上で、それでも確かに有用ならばそれを試す事に躊躇いは無く。進む為には己さえも差し出して、そうして力を求めるその様は確かに絶望に抗い続けた者達なのだろうと分かる。

 

 

「それで、実際にはどんな力を使えそうかい?」

「支部長」

「うん? だってやってしまったものは仕方が無いだろう。それに何か不都合が出た訳でも無いし、これから先の注意をするにしても詳細を知っておいた方が確実だろう?」

 

 そして、その理念を体現するものがここにも一人。嘗てアラガミという存在が確認されたその頃より、あらん限りの可能性と手段を模索し追い求め形と成してきた賢者とも呼ばれた者達の生き残り。知識欲というだけでは無く、生き延びる為に進む為に抗い続けている人の代表だ。

 まあ、知識欲の塊である事も否定は出来ないけれど。

 

「俺とエヴァに関しては、元々の力を強力にした様なものだ。こいつに関しては、やや変則的にはなるがほぼ全種、だったな」

「……流石に全く同じだけの力を同じ様には無理で、同時行使も難しいけど」

「彼の力は、特定の何かというよりはジュリウスの統制に近いと思います。力そのものを制御し、それによって様々な効果に近付ける事が出来るタイプですね」

「更に言えば、こちらが変化を助長するものとすればあちらは差異を抑え整えるものに近い。異なる複数の力や因子を一つの坩堝に溶かし、誰にも扱いやすい力として留める事が出来る」

「ただ…瞬間的に作用させるのが苦手だから、喚起能力は不得手かしら?」

 

「十分というか、ぶっつけ本番でそこまで出来るのは異常な気もするんだが?」

「あー…まあやってやれねぇ事も無いだろうが、本気でやるたぁな」

「いやいや、そもそも普通は出来無いからな?!」

 

 ブラッド隊が持つ、血の力と呼ばれる特異な感応能力。核とする偏食因子そのものの差によって発現したそれらは、ただ感応能力があるだけでは決して真似の出来なかったものだ。ブラッドアーツやブラッドバレッドにしても、それはあくまで彼等からの借り物であり力の一端のみ。――第一、第二世代の中でも感応能力に長けた者達は居る。…それでも、〝血の力〟だけは取得する事が出来なかった。

 それを擬似的にとは言えど使えるというのは、出来なかった事を知る神機使い達程驚く内容だった。

 

 加えて、異なる他人の力を受け入れ1つとし、特定の権能を削ぐ代わりに何ともなれるし誰でも扱いやすいものとして再表出させられるというその力。

 恐らくは、ノヴァの根源となる権能を支える力なのだろう。今にある何もかもを喰らい受け入れ、何ものでも無く故に何ものにでもなれる始まりの為の材料を生み出す為の力。

 そこにブラッドが…他者が方向性を与え、その形を定められると言うのなら。1人では足ず実現できないものさえも、あるいは実現できるようになるのかもしれない。それは未だ安定とは程遠くあらゆるものが不足し限られる世界において、確かな資源となるだろう。

 ……正直なところ、今はまだ何も考えられる余裕も無いのだけれど。

 

 

「逆も挑戦してみたが、此方はやはり中々難しいな」

「……逆?」

「物質として確立しているオラクル細胞の、加工と固定だ。機材や道具を使わずに行うそれが俺達にも出来るなら、サテライトの建設等に有用だと思ったんだが」

「何て????」

「まさか、神骸の力を使えそうなのか?!」

 

 そんな周囲の混乱を置き去りにして、彼等の話は続いていく。今度の話題には、吸血鬼達も驚きを顕にしてみせた。しんがい……とは、確か彼等が特異である理由だった筈だ。ブラッドがその因子によって特徴的な力を得た様に、彼等はそれを継承する事で後天的に変じるのだと。

 その根源にある力は確か……非活性状態のオラクル細胞を組み替えるというもの。いつだかの防衛戦とその後処理で、壁の穴を塞ぐためにと彼等が使ってみせた特殊な力。

 

 ジュリウスが言う様にそれが可能ならば確かに有用で、けれど血の力以上に馴染み無く、原理さえ想像も出来ない特異なる権能だ。

 

「あちらの力ばかり開示を求めるのは、道理ではあるまい。それに、固有の権能は兎も角棺の形成能力……再構成とでも呼ぶ力は確かに有用だ」

「ふふ。それに、真似をされた所で役には立っても困る事は無いでしょう?仮にヴェインの赤い霧へ干渉するとしても、彼等に出来るのは消す事のみ。再展開、そしてなにより維持が出来ない以上、それをするメリットは何も無いわ」

「それに、今でも彼等が干渉しようと思えば、多分出来る。……あの時の干渉も、幾らかは彼等が関わっている」

「誓って、何かに悪用するつもりは無い。しかし、いつ何が起こるか分からないのがこの世界だ。力があるに越した事は無い」

 

 ジャック、エヴァ、レイ、そしてジュリウスとギルバートの言葉に対し、他の面々も一様に同意を示す。……出来る出来ない以前に、それにいきなり挑戦するそのチャレンジ精神にも驚いているのだが、そこは伝わっていないらしい。

 勿論、ブラッド達でさえ困難だというその力にも興味は尽きなかった。……彼等は、その能力の幅や自由度という点で神機使いとしては破格なのだが。

 

「こー、ふんって感じで崩すとか寄せる? 位なら何とかなりそうだけどさー。これで細かい形を作るのは無理だって」

「そんなにかい?」

「神機の捕食形態を花型にでも変える方が、まだ現実的なレベル……で伝わるだろうか? 力は繋がっていて、動かせもするが、 出来るかと言われると…難しいな」

 

 ロミオ、リヴィの補足がある程度でも伝わったのは近接が可能な神機使い達だけだったが、それでもその困難は何となく理解出来た。

 継承者と呼ばれる彼等の力は恐らく、コアの代わりに半ば以上を人力でアラガミの形やアラガミ装甲壁や神機を組み上げる様な物なのだ。イェン・ツィーがチョウワンを生み出す力に似ているが、形状や大きさ、バランスや能力面までもをフルスクラッチで調整しなければならない辺り、より難易度は高いだろうか。

 加えて本能的にそれが可能なアラガミと違い、使い手の感覚は人のそれを元にしているのだ。

 考えるだけでも頭が痛くなりそうな内容だが、まずそれに手を掛けられる前提条件が厳し過ぎる。

 自分自身と適合し繋がっている神機の操作さえ適合率によっては難度が高いと言うのに、その辺にある元が何かも分からないオラクル細胞を操作するなど、既に難易度がどうこうという問題では無い。――ロボットアームでロボットアームを操作してその辺の廃材からロボットアームを作る様な……なんならそのロボットアームを更に複数使って巨大な建造物を作り上げる様な、最早狂気の曲芸としか言えない所業だろう。

 

 つまりは。

 例え出来る資格があったとしても、並の頭では処理が追いつきそうに無い。

 

「ついでにいや、こっちだと今のとこジュリウス以外無理だ。多分、他だと掘っ建て小屋が出来れば良い方だな」

「壁の穴を棘を均して塞ぐくらいなら今でもなんとか出来るかな?ってくらいだよねー。それも凄く疲れるし吸血鬼の皆にやって貰った方が早いし楽だよー」

「いやそれでも十分だと思うけどな!?」

 

 ブラッド達にその資格があることそのものは、驚きはしてもその所業を思い返せば不思議では無い。神機兵の遠隔操作や終末捕食の留保等を見れば寧ろ納得だ。

 ただ、資格と力があっても無理と言い切るという事は……その項目を弄れる様になる事と、思いの儘の物を造れる事は違うという事なのだろう。

 

 

「やれやれ。それにしても、キミ達の行動力には驚かされるね」

 

 それぞれの陣営の切り札とも言うべき力。それは普通であれば、交渉の手札として提示するなり対価として差し出すなりに使うものだ。他者への能力の拡散と習熟はその希少性や機密性を低下させ、対応策の立案や類似者誕生等の不利益を生じさせる可能性を孕む一手。――何より、その力は互いの防衛機能に直接干渉が出来る。

 普通であれば、そういった力が〝在る〟事を明かしはしても、能力自体の共有や教導等はしないだろう。……そう。普通であれば、だ。

 

「能力の最大強度と拡散速度、最大効果範囲はあちらの方が上だ。…何かの非常事態、咄嗟の応急処置に関しては任せた方が良い」

「逆に、あちら側の……神骸の力は持続性と安定性、耐久性に長けています。一定の範囲に長時間……いえ、長期間作用し続ける特性は、彼等の寿命も考えればとても有用だと思います」

「あくまでも理論上でしか無いが、赤い霧に似せた力による障壁や、血の力を作用させ続けられる領域の展開等も考えられる」

「それに、ブラッドの増員が出来ないなら、もしもの為に力だけでも残しておいた方が良いかな?って。この人達なら、力を悪用したりはしないだろうし」

 

 そして残念ながら、彼等はその〝普通では無い〟者達の集まりだった。

 文字通り自らの全てを賭して世界を護る覚悟。そして空論だけでは無く、時には星の意思にさえ抗いそれをやり抜いた、確かな力と実績を持つ逸脱者。所属や下らない意地や体裁よりも、その時その場で必要ならば己の命さえ賭ける彼等にとって、技術と力の共有はごく当然の事だった。――それが、可能であるのならば。

 

「今は使いこなくても、その存在と使い方を知っていれば、その内使う事が出来るかもしれないからな」

「私達が、どれ程神機使いでいられるかなんて分かりません。そして、今後ブラッドが増える事があっても、今の私達と同じ力を宿せる可能性は低いでしょう」

「……逸脱した力を使う機会なんて、本当は無い方が良いわ。けれど、必要な時に使えず後悔するよりは、ずっと良いと思うから」

 

 互換性が無く、余りにも個人に依存する力。終末捕食の担い手として、量産性も安定性も度外視し、ただその出力を求められて生まれた神機使いの異端種たるブラッド。……実際に起きたその〝何か〟に対応した彼等だからこそ、説得力が半端では無かった。

 

「統制、喚起、対話。このあたりだけでも残せれば、きっと未来で助けになる」

 

 オラクル細胞及び偏食場そのものの制御を可能とする統制。世代を問わずに新たな力を発現させ得る喚起。オラクル細胞や偏食場の抑制に特化した対話。……どれも有用だからこそ、いつか来る彼等の引退が案じられていた力だ。

 

「他の力も、あって助かる事はあっても困る事は無い。神機使いやアラガミの根底が変わらない限り、この先もブラッドの力は役に立つ」

 

 終末捕食の安定化により、感応種の脅威は低下した。それでも、ブラッド達の力はどのアラガミを相手としてもただ純粋に強力で有益だ。例え感応種全てが消えたとしても、彼等の力が消えない限りそれは変わらない。それはきっと、数十年数百年先の未来でさえ、アラガミがいる限り変わる事は無いだろう。

 

 惜しむらくは彼等に許された時間の短さと、再現性の無さだった。

 

 本来その力は、役目を終えれば一代で潰える筈だったのだろう。

 終末捕食が起動した後の今でさえ、同じ力が宿りはしたけれど。……ほぼ常時やブラッドアーツの使用と共に発動可能な6人と、一度の任務で一度しか使えないリヴィという差が既にあるように。この先にもしブラッド因子への適合者が現れたとしても、彼等程の力を使える可能性は低いのが現状だ。

 

 つまり後数十年もすれば、その圧倒的なまでの力は失われてしまう。

 

 それでも、今まではそれで仕方が無いと思われていた。神機使いは、その力を除けばほぼ人なのだ。何なら、偏食因子のリスクや現役時代の無茶等によって、殉職を除いてもその平均寿命は短い方に入る。再誕を経たブラッド達はやや特殊事例だが、それでも後20年現役でいられるかは厳しいだろう。……それが、時と共に生きて老いる者の在り方だ。

 

「元々俺達は、色々な意味で〝死ねない〟。……だから、その〝ついで〟に、皆の力も役目も意思も、継いで伝えて……残す位は出来る」

「聖域が世界へ広がりアラガミが消え去れば、この力も必要では無くなる。……そうなれば、この役目も終わるだろう」

 

 そこへ現れたのは、不老不死たる吸血鬼達。寿命も衰えも無い彼等は、元々知識や技術の保管や継承を任せるのに適していると考えられていた。――実際、それを前提とした話も裏で進みつつある。

 その中で更に、身勝手な終わりを許されない器である事を自覚し、不死身に近い再生力を誇る者達。継承者と呼ばれる彼等にその適性があった事は、偶然というには些か出来過ぎだろうか。

 

 

「それに、やってみたら楽しいし! こんな事も出来るんだーとか、こうしたらどうかなー?とか!」

「ナナはそっちが本音だろー?」

「先輩だって、何だかんだ楽しんでたじゃん?」

「ね。寧ろ一番?」

「ヒロまで!」

「どっちもどっちだろ」

 

 やらかす事の大きさに比べて軽いやり取りは、最早何時もの事だ。じゃれ合うように言葉を重ねるロミオとナナとヒロにギルバートが軽く突っ込み、ジュリウスやリヴィがどこか楽しげに見守る、ブラッドの日常風景。アラガミの討伐任務さえピクニックと称する彼等にしてみれば、大抵の事は楽しむ余裕のあるものだった。

 

「私達で何か役に立てそうな事なら、貴方達も声をかけてね?」

「手伝う」

「ヴェインでの用事が無い時期であれば、特に問題は無い」

「…私も、お手伝いします」

 

 対応する継承者達も、吸血鬼としてはその能力を別として尚やや外れ気味だ。

 本来、継承者は器としての役目を果たせていれば問題の無い存在だ。しかし彼等は、それを外れていた一部の中で、更にはっきりと意識を保ち別の役目を担っていた為なのか、兎に角多くの役目を当然の様に負おうとする。これ以上更に仕事を増やしてどうするんだと思わなくも無いのだが、放って置くとしれっと討伐部隊に混じって最前線に居たりするため、いっそこうしていてくれた方が安心できるかもしれない。

 それに寄り添うイオもまた、生来の性質と性格故にストッパーにはなり得なかった。

 

 意外にもと言うべきなのか、ブラッドと継承者達の性格的な相性は悪くないらしい。それに……どこにすっ飛んでいくのか分からないという危惧はあるが、彼等の力とその発展が有用であることもまた事実だ。ならば、なんとか制御が可能な範囲内で、好きにさせた方が大枠で見れば有益なのだろう。……些か、見張る側の心労と疲労が心配にはなるのだが、それは人類存続の為の必要経費として割り切るしかないのだろう。

 

 

 

 同族の中でも尚異端の力を持つ、変わり者と変わり者。――周囲に迷惑と心配をかけない範囲内でと許可された彼等の試行錯誤は、数年後のとある事態において、大きな意味と成果を結ぶ事になる。

 

 




神骸の権能と血の力って何となく似てるよね?→なら相手側のも使えるのでは!?→それっぽいの出来ちゃった
瞬間的な出力や偏食場・感応波そのものといった非実体への干渉・操作・変換ではブラッド。持続性や安定性、物理的に存在するオラクル細胞の干渉・操作・維持では継承者。

ここでのジュリウスは統制と分化、レイは回帰と帰化。
他者を教え導き先へと進める者と、受け入れ溶かし合わせる者。
終末捕食のコアと、終末捕食のノヴァのどちらにより適性があるかとも言える(単独でも王となれるように2人ともどちらにも適性そのものはあるが、それでも得意分野は分かれているイメージ)。
物凄くざっくり言うと、材料から色んな物を作れる存在と色んな物を最初の材料に戻せる存在。


◆ブラッドと継承者の能力について
力そのものに特性を持たせて扱いその為形のないそれを使うのに長けたのがブラッドで、物理的な書き換えや干渉に長けているのが継承者。
シエルとジャックで比べた場合、ソナーやエコロケーション的な波形や反射でレーダー的な感知をしているのがシエルで、監視カメラや衛星画像やストリートビューの様に視覚情報で処理しているのがジャックというイメージ。感じているか視ているかとも言える。
シエルは自身を中心とするため飛び地の感知や視認は出来ないが、反面能力範囲内であれば全方位かつ隙間なく探知出来、またレーダーに同期して反映する事も出来る。
ジャックはその逆で、特定位置や相手であればほぼ距離を問わない反面、視えない場所や角度は認識出来ず、またレーダーとの同期等も出来ない。
エヴァとロミオに関しては、ロミオが相手の状態問わず一律あるいは割合で低下させるのに対し、エヴァは一定以上の活性状態にある場合のみ安定値へ近付ける事が出来る(一定値以下にはならない)。
出力・範囲共にロミオがまさるが、エヴァの力は受ける側が活性・暴走状態になければ特に意識せずとも影響を受けないという利点を持つ。
レイが統制に近い力を使えたのは、心骸の生むエネルギーを髄骸で無理矢理制御・変換したため。
神機使いや吸血鬼といった物理的に存在する相手への作用なので何とかなったが、偏食場そのものへの干渉能力では大きく劣る。逆に螺旋の樹のように、物理的に現出したオラクル細胞を弄る能力は高い。

今話では書ききれなかったが、イオに関しては神骸を継承していないため特殊な権能は無い。が、寄り添うだけでなく支えたい・力になりたいという意志と願いにより補助能力を開花させた。
神骸の力を行使する際の負担を幾らか肩代わりする事で、継承者側はより大きな力をリスクなく使用出来る。複数の伴侶達の血英を取り込んでいるため、レイ以外の継承者達の補助も出来る。が、効率は大きく落ちる。

◆再構成
継承者達に共通する、棺を作る力あるいは権能と呼ばれていたそれに名を付けたもの。
物質的に存在するオラクル細胞へ干渉し、その形状や役目を書き換えて定着させるという力であり、力の大小はあるものの継承者全員が保持している。
継承者としての適合率の他、干渉強度・干渉範囲・干渉精度等に差が存在する。
・干渉強度が強ければ、棘だけでなく他人の棺やフェンリルの建物等既にある程度の形や役目を与えられたモノの書き換えが可能となる。
・干渉範囲が広ければ、より多くの材料へ同時に干渉出来る他、大規模な再構成での負荷が大きく軽減される。
・干渉精度が高ければ、複雑な形状や役目を細分化させたモノを構築しやすくなる。
※干渉強度以外は、負荷を承知で無理をすれば引き上げる事は可能。

尚、ブラッド達は非活性状態のオラクルに対する物理干渉が苦手なので、力の強さの割に再構成能力はかなり低い。
反面、螺旋の樹や聖域を造った時の様に既に動き出している流れを誘導して巡らせる様な力技はブラッド達の方が得意としている。


聖堂や塔という、他とは明らかに作り込みの違う2つの棺を見るに、再構成能力は継承者としての適性や権能とは別枠の適性が必要な可能性。
アウロラはあまり適合率が高くない&干渉規模だけなら地脈+泉を維持するカレンや、ヴェインを囲む赤い霧(血界)を維持するシルヴァの方が上な筈だが棺の形状は複雑→干渉出来る範囲や量、負担は適合率次第だが、干渉後の形状や精緻さは単純に造り手のセンス&能力では?という点から。あれを内側から短期間で造るとなると、天才建築家とか天才彫刻家的な空間認識能力やセンスが必要だと思う。
これを造る、という見本や模型的なものがしっかりあれば、継承者3名は造れはする。サイズだけならより大きな物でも制御できるが、構造や繋がりなんかのあれこれは別枠。
繋ぎ目の無い単純な防壁位なら、多分ジュリウスあたりは造れる様にはなる。ただ、範囲は兎も角細かいのは向かないので、聖堂や塔の様な建造物は厳しい。

Q.白い血の聖堂や棺の塔を、棺の間に籠もった状態(外から確認出来ない)で組み上げられますか?
A1.同等量以上の棘や範囲を弄る事や真似は出来ても、あのレベルで細かいのを自分で組むのは無理(監視者s+主人公)。
A2.気合を入れれば何となく動かせるし、範囲や量的には干渉出来るけれど、操作の感覚が違い過ぎて無理(ブラッド)。
A3.動かす感覚は分かるけど、動かす為の力が無くなったので大規模なのは無理。小さな物なら、青涙通してなんとか出来る(元継承者s)。
A3'.動かせるらしいし何となく取っ掛かりは感じるけど、やったことが無いので操作自体から手探り(継承者適性ありの吸血鬼)。
A4.自分に繋がっていないオラクル細胞の操作なんて無理(一般神機使い)。
A5.牙装でさえ一定の形状を再現しているだけなのに、細かな操作や干渉が出来るとでも?(一般吸血鬼)
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