クロスのGE3軸続きです。
本来ならこの話と前話との間に「吸血鬼達とハウンド達の交流と共闘」「吸血鬼達からアインへの知らせや極東報告」が挟まる筈だったんですが完成の目処が立たないので、先に完成したこちらを失礼します。
ざっくり言うと前話から少し経ち、ハウンド達や吸血鬼達は無事ミナトへたどり着いた後の時間軸です。
「アイン!用事があると聞いたが…彼等は?」
ミナト・ダスティミラーのエントランス。多くの人員と活気に満ちたその中に、すっかりと見慣れた姿を見つけて声をかける。――可能であれば早めにミナトを訪れて欲しいという、珍しい依頼。不思議に思わないでも無かったが、何かと世話になっている相手でもあり、それを断る理由は無かった。
だからそれに従ってここへ来た訳なのだが、見慣れた姿の近くに見慣れ無い相手を見付けて首を傾げる事になった。アインと同年代かもう少しだけ若く見える7人の男女は、明らかに彼と一緒に自分達を待っていたのだろうと分かる。腕輪は右手に一つだけ。つまりはAGEではくGEなのだろうが、だとすれば気になる点がある。
「黒い、腕輪……?」
それは黒に金の差し色を持つ、やや大振りなその腕輪だ。
腕輪は、神機使いの型を示す物。色は世界共通で赤であり、一つならGE、二つならばAGEを示す。そして神機使いの身分証でもあるそれを勝手に改変する事は許可されていない……筈だ。――ならば色だけならばまだしも形さえ異なる、見た事も無いその腕輪が示す事とは?
7人全員が同じ物をつけている事から、恐らくは彼等全員が同じ型の神機使いなのだろうとは推測出来る。……最近誕生したばかりの新型か、という考えはすぐに消えた。適合したてと見るには流石に年嵩であるし、何より纏う空気が明らかに実力者のそれだ。
だからこそ、余計に分からなかった。
「ああ、来訪感謝する。今回は、お前達に紹介したい奴らが居てな。……以前少し話したと思うが、最近ミナトへ合流した昔馴染み達だ」
「それは構わないのだけれど…態々呼び寄せて紹介したい程?」
依頼と銘打って置きながら、実際は見慣れないGEの紹介。イルダの疑問も仕方が無いが、迷いなく肯定が返される辺り巫山戯ている訳でも無いらしい。それでも、それなり以上の知名度と共に精力的な活動を続けるハウンド全員を集める理由としては弱いだろう。
ちらりとそちらを向ければ、ぱちりと交わる視線。途端に、にこにことした笑顔を向けられ手を振られて少し混乱する。嫌悪も侮蔑も好奇心も驚嘆も無い、いっそ無邪気とも言える笑顔。……正直、あまり向けられたことの無いそれにどう返したものかと思っていれば、アインが紹介をしてくれた。
「こいつ等は極東支部所属の特殊部隊である〝ブラッド〟。AGE以上に感応能力に特化した……嘗て、第3世代の雛形として生み出された神機使いだ」
「よろしく」
「「………は???」」
聞いた事の無い名称と共に投下されたそれは、爆弾に等しかった。
――第3世代の神機使い。
それは、嘗て確かに研究されていたものではあるだろう。より強く、より強力な神機使い。第1世代から第2世代へ繋がった様に、先を見据えて目指すのは何も可笑しな事では無い。
しかしそれは、災厄によって灰域への対策が最優先となる中でAGEにとって代わられたものの筈。そして、AGEの後に新たなタイプの神機使いが生まれたという話は聞いた事が無い。……と、そこまでを考えていたユウゴの意識に、ふと違和感がかかった。
――神機使いの世代についてでは無く、もっと別の項目で、同じ名を見た事があった気がする。
その感覚だけを頼りに、必死に記憶の糸を辿り知識を掘り返していく。相変わらずの忙しさで今一頭が回りきらないが、そんな事を言っている場合でも無い。
そうして考える事数分。不意に浮かび上がってきたのは、一つの項目だった。
「ブラッド……ってまさか、聖域の?」
「知ってんのかユウゴ?!」
AGEの後に生まれた新型は居ない。……第3世代が実用化されたという記録も無い。だから引っ掛かったのは、〝ブラッド〟というその名前の方だ。
「あ、あぁ。つっても、ノルンも曖昧だったし詳しくは知らないんだが。……確か、十数年前に極東だかなんだかで起きた騒動の中心、かなんかになってた部隊じゃ無いか?」
「えっ?! つまりAGEよりも前って事!?」
牢獄のようなあの場所で読み漁った知識の断片。その中に、確かにその名前はあった。……〝クーデター〟やら〝終末捕食〟〝聖域〟やらと、随分大袈裟かつ物騒で突飛な単語と一緒に並んでいたと記憶しているが、第3世代の神機使い等という情報は無かった筈だ。だから、ただの部隊名だと思っていたのだが……。
「その辺りの紹介もかねて説明する。…まずは部屋へ来い。ここで話すのは流石に目立つぞ」
そうして考え込んでいれば、苦笑混じりのアインに促されて応接室へと通される。そうしてそこで改めて行われた説明と紹介は、様々な感情を呼び起こす事となった。
「ブラッドは、十数年前まで存在した【フェンリル極致化技術開発局】が設立した特殊部隊の名称であり、現在はフェンリル極東支部に籍を置く部隊の名称となっている。基本的には第2世代のGEだが、第1、第2世代とは全く異なる偏食因子と特性を持つ事から第3世代の雛形と呼ばれた事もある。本来は部隊の名称だが、実用化されなかった為に型そのものの名称としても使われているな」
「あー正式に採用された第3世代って事じゃなくて、試作型?みたいなものか」
「そうだな。だから第3世代というよりは、感応能力へ特化した第2世代と言った方がわかり易いかもしれない」
「ん? けど偏食因子は違うんだよね?」
「ああ。ブラッドはP-66偏食因子に適合した神機使いの総称でもある。そういう意味では、AGEに近いかもしれないな。特徴としては、ブラッドアーツやブラッドバレットの使用…そして、〝血の力〟という固有の感応現象を各々が有している事だ」
「ブラッ……何だって??」
「ブラッドアーツとブラッドバレット、それに血の力、だな。ブラッドアーツに関しては…そうだな、君たちAGEの使うバーストアーツに近いものだと思えば良い。違いは、会得に時間がかかるが一度会得してしまえばバーストを必要せず任意のタイミングで使用出来る、という点だな」
「マジか」
「……便利だな」
はじめはぎこちなかった会話も、慣れれば興味が勝り続くようになってくる。その理由の一つとして、彼等の態度が関係していると言って良いだろう。
――彼等は、AGEを一切特別視しない。
AGEへの差別や偏見は根強い。以前よりは改善し始めているし、アインやイルダ達の様に変わらず扱ってくれる者達もいるが、それでもまだまだ少数派だ。
それに彼等は、良心と倫理観によって平等な扱いを行える者達ともまた違うように感じた。感覚としてはイルダよりもアインのそれに近く、そしてそれ以上に慣れない扱い。――まるで、GEもAGEも同じだと心から認識しているかの様に、余りにも自然な言動。……その理由は、会話の中で知れた。
「ブラッドバレットは、血の力によって特殊な効果や挙動を後天的に会得したバレット、及びそこから抽出したブラッドチップを組み込んだバレットの事ですね。これについては、カスタムバレットの変種あるいは拡張機能と思っていただければ良いと思います」
彼等は特に隠す事も無く情報を開示していく。そこから浮かび上がるのは、ある意味ではAGEよりも尚既存のGEから外れた存在だ。
「で、血の力ってのがブラッド一番の特徴だな。感応能力を利用して、仲間をサポートしたりアラガミの妨害をしたりする力だ。……そうだな、感応種アラガミが居るだろ? あれが、神機使い側に居ると思えば良い」
「感応種……って言うとマルドゥーク?」
感応種。その括りを聞いて思い浮かぶのは、狼にも似た姿の大型種。感応〝種〟と言いながら、灰域種と違ってその一種だけを示す名。その特性はアラガミの活性化であり、単独の脅威では灰域種に及ばないながら、群れを作られればそれなり以上に厄介な相手だと認識していた。
「そっか。もうこっちだとそいつしか残ってないんだっけ?」
「へ?」
「十年位前まではさ、感応種って沢山居たんだよ。マルドゥークはその頃から有名だったけど、シユウっぽいのとかグボロっぽいのとかハンニバルっぽいのとか色々」
「極東にはまだ残っていますよ」
「だねー。あれ、元々極東に偏ってたんだっけ?」
「こえーよ」
からからと笑う彼等の言葉に、嘗て居たと言うその感応種達へ思いを馳せる。
聞けば、極東と呼ばれていた其処は兎に角アラガミの数と種類が多く、固有種とも言うべきアラガミも未だに多いのだと言う。アラガミ動物園と揶揄された場所なのだと笑うけれど、正直洒落になっていないと思う。
「けどまあ、マルドゥークがわかり易くて良いだろ。そもそもイメージどころか、ブラッドは神機使いという形をとった感応種そのものと思った方が早い」
「え??」
「それぞれ違う感応能力を、それぞれの意思で使えるのが俺達の特徴なんだ」
感応種の力が、感応能力によるものである事は勿論知っている。けれどその力は苛烈で、暴力的で、感覚的だ。……感応レーダーやエンゲージといったAGEに馴染みのあるそれとは、やはり違うものだと思っていたのだけれど。
「具体的に言うとなー、ジュリウスだったら作戦領域の神機使いみ―んな一気にバーストさせられるし、ナナはアラガミを呼んだり引き付けたりできる」
「ギルが神機の攻撃性能強化、シエルが機材を必要としない感応レーダー、私は遠隔かつ消耗の無い反応型のリンクエイドだ。……私の力はそう連続では使えないが、他の皆の力には、基本的に使用制限が無い」
「隊長やロミオの血の力は少し分かりにくいのですが……オラクル細胞の活動や性質自体に作用するもの、でしょうか。ジュリウスの力も、本質的にはそれに当たります」
「なにそれこわい」
「殆ど知られて無いし、情報があった筈の本部も壊滅してるから」
「一応極秘情報だったもんねー」
「そうじゃない」
ごく自然に気負いなく提示される彼等の力。個々人の資質へと完全に依存し、作戦エリアを満たして作用するという、彼等の言葉通り感応種のそれに似た力。
それは、強いてAGEで例えるならエンゲージが近いだろうか。……違うのは、双方向の感応では無く彼等からの一方通行で即座に行使出来るという事。そして、あまりにも彼等だけの力であり、強力で異質なものだという事。相手の同意や抵抗を必要とせず一顧だにしないそれは、最早感応能力というよりも干渉能力や強制能力とでも言ったほうが正しいような代物だ。
「んー…やって見せたほうが早いかな? ジュリウス、お願い」
「ああ」
「「「!!??」」」
なんという事の無いやり取り。しかしその直後、"今"あり得るはずの無い感覚がハウンド達を襲った。
「これ、バースト!?」
「はぁ!?」
体の内側から湧き上がるような力と感覚は、紛れもなくバースト状態のそれ。戦闘ともなれば何度も何度も使い慣れたものだが、ここで感じる筈は無い物だ。
何故なら──
「嘘だろ、捕食どころか神機も無しに…?!」
バーストは、神機を用いてアラガミを捕食する事で可能となる一時的な強化状態だ。特殊な携行アイテムで無理矢理に励起させる事も可能ではあるが、体力消費というデメリットが存在する。
何を間違ったとしても、ミナトの内部で、神機も持たず、アラガミの一体も相手にせず、アイテムすら使わずに発動出来るものでは、無い。
「つまり、こういう事だ。俺達ブラッドは、俺達自身の感応波によってアラガミや神機使いへ干渉出来る。この感応波の事を、〝血の力〟と呼んでいると思って貰えたら良い」
「範囲としては一応、標準的な作戦エリア内ならカバー出来るかな。灰域の濃度次第じゃ多少増減するけど……うん、ある程度は何とかしてみせるよ」
「まじかよ……」
始まったときと同じ唐突さで、力もバーストも掻き消えた事に思わず脱力する。活性だけでなく鎮静化まで自在とは、もはや羨む気持ちすら湧いてこない。
距離も人数も問わず、相手側の了承さえ必要とせずに齎される恩恵と、アラガミの耐性さえも貫通して作用する妨害。フィムのエンゲージならば近いが、それは人型アラガミと同等だと言うことであり――つまりは、化け物と……アラガミ寄りだと散々罵られ恐れられた自分達よりも、尚外れた力であり存在である証だ。
AGEに似た力を、ほぼ何の制約も代償も必要とせずに行使する存在。吸血鬼達の話を聞き、共闘した時も思ったが。そんな存在が居たのならば何故と、どうしても思ってしまう程の力だった。
「AGEの事は少し聞いたけど……俺達からしたら普通のGEとあんまり変わらない、かな? 特定の相手を想定した神機使いっていう点はブラッドに似ていると思うけど」
「似てるって……どこが?」
「かつて感応種が確認されたばかりの頃、神機使い達は戦えすらしなかったんだ。神機の機能そのものを停止させる感応種には、実力や経験以前の問題だった。……そうだな、灰域適性がないまま高濃度の灰域で灰域種を相手にするようなものだったと思って欲しい。実力云々以前に、戦いの土俵にさえ上がれない存在。それを相手に、当時唯一普通に動く事が出来た神機使いがブラッドだ」
アラガミそのものへの対抗策として造られた神機使いの中で、特定のアラガミに対する対抗存在。……実力や経験等関係なく、耐性や対抗手段が無ければそもそも戦えないという、絶対の不条理を覆す者。その〝副産物〟として特異な戦技や能力を獲得した事まで含め、AGEとブラッドは似通っているのだと言う。
しかし同時に……あくまで耐性を目的とされたAGEに対し、ブラッドはその力そのものを目的として造られた世代でもあるのだと。
「耐性もあるんだけど……俺たちのは迎撃とか対抗力とかの方が近いかな。全部受けてそれに耐えられるっていうより、相手のそれに自分の力をぶつけて跳ね除けている感じだから」
「力が使えなかった頃とか、不調な時とかだとやっぱ影響受けてたもんなー」
「その代わり、力を展開する事で相手に対抗する領域を作る事も出来る。かつての感応種が近付く神機使い達を無力化する領域を展開していたように、自身の感応波によって相手の感応能力を相殺出来るからな」
AGEの様に特有の偏食因子で以て身体そのものに耐性を付与するのではなく、同等以上の力を纏う事で干渉そのものを弾き或いは無効化するのがブラッド達だ。だからこそ力に覚醒する前はただの神機使いと変わらず、そして覚醒すれば感応種アラガミと同じ様に仲間達さえもその庇護下に置く事で守る事も出来たのだと言う。
彼等自身が感応種と遜色無い力を行使可能出来るからこそ、その力で覆ったり身体に込める事で他の神機使い達を感応種の干渉から引き剥がす事が可能で、挙げ句は力を目覚めさせる事さえ出来たのだと。……アインが使う、バーストアーツに似て非なるものと思われていたもの……ブラッドアーツを目覚めさせた古い友人というのがブラッド隊を纏める青年だと、今明かされた。
「だから、見方によっては俺達の方が君達より遥かにアラガミに近い。AGEが蝕灰そのものを自在に操れる、捕食で極度に強化されるというのなら別だが……現状、お前達を人として扱わないと言う事は、感情面を抜きにしてもそのまま俺達自身に跳ね返る」
「まー、最初は色々言われたけどなー。けど、やれる奴がやらないとどうしようも無かったし」
「……そうかよ」
それが、きっと彼等の在り方の理由。
ヒトとアラガミの間に立つ存在の中でどちら寄りかと分けた際に、AGEよりも尚アラガミ側に立つ者達。
彼等から見れば、普通のGEもAGEも人間よりの存在でしか無いのだと彼等は何の含みも無く笑う。AGEを区別し蔑めば、それはそのまま自分達へと返るからと。
だからこそ、本心からAGEをGEと同じ様に認識して扱えるのだろう。
「何を話しているんだ?」
「ルイ。それにヤクモも。あんた達もこっちに来てたのか」
「先程な。……ああ、偏食因子を預かって来ているから、後で確認しておいてくれ」
会話の境に加わった、もう一つの声に視線を向ける。そこに居たのは、先日対面を果たした吸血鬼と呼ばれる者達の代表者達。どう見ても二十代前半か半ば位なのに、実際はアインよりもずっと年上で五十も半ばを越えているという前時代の生き証人。元死人で死んでも死に戻り、距離も灰域をも気にせず世界を巡る、最も古いアラガミへの対抗種。
ブラッド達の偏食因子は特殊だという話だから、東の果てにあるという彼等の拠点から運んで来たんだろう。……ああそうだ。彼等もこのブラッド達も、同じ場所から来たと言っていた。
神機使いでさえ無い彼等を受け入れ、そして十年を越えて交流を続ける場所。其処で暮らし共闘し生き延びてきたのなら、彼等自身の特性も併せてAGEを区別するという感覚そのものが無いのも幾らか納得出来た。
「そうだ! 2人はさ、AGEをどう思う?」
「?……ああ、その話か。彼等とも先日少し話をしたが、俺達にしてみればお前達にそれ程の差は感じないな」
「だな。俺達にしてみれば、神機使いっつー括りの一つだ」
「能力や役目が明確に異なるというのも、吸血鬼から見れば当たり前の事だ。対感応種や対灰域で差があっても、やり方が変わるだけだろう」
「やっぱそうだよなー!」
そして吸血鬼達は以前と変わらない意見だった。気遣いや建前等ではなく、あまりにも当然の事として彼等はそう語る。――そして事実、彼等にとってそれは唯の本心であり常識でしかない。吸血鬼達にしてみれば同族間でさえ異なる力を持っているのが〝普通の感覚〟であり、何より自分自身こそがより人から外れている自覚があるのだから当然だ。
「俺達を普通に受け入れている時点で、彼等が君達をどうこう言う事はないだろうな」
吸血鬼【レヴナント】。
そう呼ばれる彼らの不変を根源とする身体は喰灰の侵食さえも受け付けず、コアたる心臓を潰されぬ限り再生し、自身と結び付けた装束を手足の如く操って、血を対価に魔法のごとき力を行使する。……ごく一部だけが使える異能を除いたとて、その能力と性質はあまりにも人のそれからは逸脱している。
人として終わりを迎え、ヒトならざる者として蘇り在り続ける生ける死体、地獄から這い出した亡者の群れ、或いは……人1人の記憶とカタチだけを丸ごと継承して再現した、自身を人と思い込んでいる人型アラガミ。長い時間の中で、ある種の諦念と理解をもって自らの異質さを受け入れた吸血鬼達にしてみれば、一見自虐じみたそれも軽く話せる程度の事でしかない。
そしてそれは、吸血鬼達と十年以上の付き合いがあり、またそれぞれが異なる力を持ち、幾度もの危機を乗り越えたブラッド達にしても同じであるというだけの話だった。
「そもそも俺達の分類って、ぶっちゃけ吸血鬼【ヴァンパイア】ってーより、腐ってないだけで唯の【ゾンビ】だしな」
「言い方!!」
「事実だろ?」
死んで墓から掘り起こされ、或いは打ち捨てられていた死体を拾われ、よく分からない寄生体を勝手に埋め込まれて蘇ったモノ。陽の光も銀も十字架もニンニクも弱点とならず、同族の血を求めるその性質も、見方を変えれば人肉を貪るそれと大差は無い。そう考えれば確かに、吸血鬼と言うよりも既に旧世代と呼ばれるその世界で娯楽としてあった映像作品に蠢いていた生ける屍に似ている。
なんなら一度完全に死に絶えた後に蘇る分、ゾンビよりも更に妙な何かなのだと笑う。自分達の事の筈なのに、余りにも気負いなく。そして――そんなナマモノさえ受け入れられた場所と人なのだから、AGE程度の異質など容易く受け入れられるだろうと。
「流石に初めは驚いたが……アラガミから人々を護る仲間である事に変わりはないだろう?」
「別に取って食われる訳じゃないしね!」
「それであっさり受け入れられるのかよ……」
呆れ混じりに愚痴れば、〝何か変だろうか?〟と言わんばかりの表情の横に、〝ほらな〟とでも言いたげな表情が並ぶ。
珍妙で奇妙な、異端で異質な存在。
違う事は違うと理解した上で、扱いは同等にとする在り方。優先順位は明確に、相手に求めるモノは少ない分確実に。敵対する人間よりも、確かな味方であるならばアラガミの傍らで刃を握る。共に同じ目的の為に立てるのならば、多少の違い等瑣末事だと彼等は告げる。
「流石に全員諸手を挙げて、では無かったが……せいぜい陰口や日常レベルでの隔意程度だ。対アラガミ戦にまで、持ち込む者はそう居ない」
「あそこでそれをやったら、結局自分達に返るからだな。戦える奴には気持よく戦って貰わないと、自分達にその席が回ってくるだけだ」
彼等の言い分は何も間違ってはいない。だけど、それならば尚更、何故AGEだけがと思ってしまう。人を、そして同じ神機使いである筈のGE達さえも護る為にと生み出され、戦い、なのにその相手から蔑まれ使い捨てられたのは何故なのかと何度でも思う。
人である以上、未知や異端への確執が無かった訳では決して無い。そもそも同じ人間同士でさえ性格の相性その他で揉めるのだから、完全な理解と受容などはあり得ないのは当然だ。きっとどこに行ったって、それは変わらないんだろう。……それでも、彼等の語るその地は劣悪なミナトのそれよりは余程健全だった。
そして何より彼等には、他人の目や評価よりもお互いを縁として立つだけの割り切りと、そして他者が無視できないだけの力が確かにあった。
「ま、あの場所は大分特殊だったらしいけどな」
「うん。私達の時も、始めは色々言われたけどすぐに馴染めたし!」
「それも、実力があってこそだ。……あの場所で生き残る為には、人同士の争いをやっている場合じゃ無ぇしな」
「勿論、軋轢が全く無かった訳では無い。しかし結局、共通の敵が居るという状況は変わらない」
「立地の関係もあるんじゃないかしら?」
「そうですね」
ミナトではなく、まだフェンリル支部が各地を統括していた時代から残る場所。本部から遠く離れ、大陸と海に隔てられ、強大なアラガミが跋扈する領域。本部どころか他支部からの援助さえまともに見込めないその場所で生き残る為には、その支部自体が力を付ける他無かった。そしてその為には、下らない人の争いをやっている暇等無かったのだと彼等は語る。
勿論、全てが全て完璧だった訳ではない。
彼の地に生きる者達とて人間であり、力を恐れ排斥する動きが無かった訳ではない。何なら語られないだけで、より大きな暗部を抱えていた可能性もあるだろう。……それでも、理不尽極まるこの地よりはマシだと断言出来る。
唯でさえ不利な立地条件に、一体でも支部を壊滅させ得るレベルのアラガミが群を成して襲い来る場所。故にそこで生きる者達は、否が応でもそのアラガミに対する事を強いられ続けた。自然、その討伐部隊は各支部のエース級をようやく一人前とする程の実力者揃いとなり、ベテランともなれば大型種や接触禁忌種を単独やごく少数で討伐する事さえ珍しく無い。灰域種でさえ、灰域への耐性を獲得した後は危険でこそあれど討伐出来ない相手では無かったと聞けば、もはや嫌味すら浮かばなかった。
その討伐情報や、灰域種のデータを送れなかった事を謝罪されて苦く笑う。確かに、GEで討伐出来ていればAGEの不遇は違ったかもしれないけれど、その場合自分達の飯の種も失っていたのだから手放しには喜べない情報だ。……それがデタラメや自意識過剰では無い事が分かるからこそ、そう思う。
「お前達に関してはまた特殊だと思うがな」
「?」
ただ、呆れ混じりにアインが最後に告げたその言葉の意味が分かったのは、また別の日の事だった。
実はCV×GEクロスの前に構想していたのがGE2×GE3の同軸クロスでした。
ハウンド始めAGE達の設定とか見ていてここクロスさせたらどうなるかな?という疑問。そこに更に吸血鬼達を加えたらどうなるかな?というネタからスタートしています。
ブラッド達の外見年齢とか何故まだ現役なのかとかどうやってミナトまで来たのかとかはおいおい書いていけたらと思います(ネタだけは既にあるので後は本文……)。