主に世界観と継承者達の能力について、捏造と拡大解釈と強化がもりもりです。
オリ主の主張が強くなってきます。
Name:レイ age:20代前半 178cm ボイス1
それは、王の代替わりから十年近くが過ぎた時期。天頂にある月が突如として色を変えた、その幾らか後の頃だった。
「「「!!」」」
ぐらり、と地面が揺れた様な感覚。
一瞬地震か、と感じたそれがそんなものでは無いという事は、直ぐに分かった。
「チッ…エヴァ!」 「ええ!」
がたりと立ち上がったジャックが、エヴァと共に姿を消す。二人だけでは無い。そこに居た全員が立ち上がり駆け出した。そのまま目的地へ駆けつつ、険しい視線で周囲を睨む。
「外の建物は動いてねぇな。……白の大樹だけが鳴動してやがる」
「それって、まさか…!」
あの日から、安定と不変を保ち続けた大樹が軋み鳴動する。その理由など一つしか考えられなかった。…そしてそれは、決してあってはならない事の筈だった。
「この前までは何とも無かった筈だろ?!」
「神骸に理屈を当てはめる事は出来無いわ!何が何時起こっても、可笑しくは無かったのよ!」
「あそこには今イオも居る。ただの侵入者や堕鬼程度の問題じゃ無い筈だ!」
牙装を纏い武器を具現化し、嫌な予感に跳ね上がる鼓動を無視してそこへと向かう。王に絶対の忠誠と敬愛を捧げる少女が傍に居た以上、ただの変事ではない事だけは分かっていた。……駆ける最中、どうか杞憂であってくれと願いをかける。けれど同時に、それが叶わないだろう事も知っていた。尋常ならざるモノとして在るこの大樹を揺るがすものがあるとすれば、それは唯一人だけなのだから。
――だからせめて。この刃を突き立てなけらばならない"最悪"だけはありませんようにと、そう願う彼等のその眼前で。嘗ての始まりでは中央研究所と呼ばれた場所は、四度目の変貌を遂げようとしていた。
みしりぎしりと軋み、歪む音が方方から押し寄せる。つい先日まで、まさに大樹の幹の様に悠然と在ったその玉座。そこは今、隆起し暴走した枝根がまるで締め上げるかの様に絡みついてねじ曲がりつつあった。――その至近にある、二つの人影を諸共にして。
「っ駄目!」
「新入り!」
迷う暇などありはしなかった。
一足飛びに距離を詰め、イオと共にその力なく垂れた腕を掴んで玉座から引き剥がす。まるでそれを追うように伸び上がる枝に、躊躇う事無く刃を振るった。……眼を使う暇も無かったが、そんな事をするまでも無くただの暴走で無い事は分かっていた。本人は安定したままだというのに。本来継承者に従う筈の棺自体が、まるで主たる相手を喰らうかの様に暴走する。……そんな事、これ迄一度たりともありはしなかった。どれ程に適合率の低い継承者であっても、彼等が生み出した棺がその主に牙を剥く事等無い。同じ継承者であれば干渉出来るが、自分達以外に継承者はもう残っていないのだ。
明らかで、そして異常な。何かが起きようとしていた。
「何が起きたの?」
「…わかりません。突然、棺がこの方を呑み込もうと暴走を…」
「…一先ずヤドリギの近くへ退くぞ。イオはそいつを。エヴァ、歌と援護を頼む」
「わかったわ」
一体何が起こっているのか。それを確認し、考えている余裕は無い。どれ程に切り払い突き倒しても、次々と伸び上がるそれは際限が無い。……当然だ。足場も壁も天井も、この空間全てが王の棺であり、此処はその中心部。それが牙を剥くと言うのならば、此処に逃げ場など存在しない。
それでも、最も暴走の激しい玉座から遠ざかる為に後退する。ヤドリギがどれだけ役に立つかは分からないが、神骸よりも以前に生み出されたそれはまだ信頼が出来た。
(どうする…?)
エヴァの歌が響き始め、僅かに枝葉の動きが鈍る。その隙に、ついにヤドリギへと辿り着いた。……が、そこから先への道筋が無い。此処に留まり続けるのは無謀だ。だが、継承者本人の同意無しに棺から連れ出す事は出来ない。かと言って、此処に放置してどうにかなるとは思えなかった。
エヴァの歌も、完全に抑えられる訳では無い。一対一ならばまだしも、数だけでも十三対一となる質量差は拭い難いだろう。そもそも、今回は神骸そのものは安定している状況下での、"棺の"暴走だ。神骸の鎮めに特化したエヴァの力では、最適から外れている。
だが、硬く、重く、多いその枝葉を切り払い続けるのも無理がある。……足を止めた、正面からの打ち合いに向かないこの身を、今は呪っている暇も無い。
どうすれば。その答えは、意外なところから齎された。
「……!」
いよいよ激化する侵食が処理の手を上回り始め、突き出された一枝が槍の鋭さで頬を裂く。瞬間奔った怖気に、背筋が一気に粟立った。
感じたのは、余りにも異質な意思による侵食。――全てを喰らい、破壊し己がモノとせよという、人とも吸血鬼とも堕鬼の渇きとも違う命令染みた声無き言葉。内容は、決して従える筈の無いもの。なのに、不気味な程抗い難く魅力的にさえ感じる異質な何か。その正体は分からないが…それこそがこの変事の原因であると直感する。そして同時に、干渉を受けた事でその流れを掴む事に成功した。
干渉の核となっているのは、神骸。まるで中継局のアンテナの様に、その何かは神骸を目印に注がれていた。……神骸が同化している以上、逃げようは無い。ならば手段としては、目印を隠すか干渉波を遮るか。――思い至ったそれは、殆ど賭けに近かった。しかしもう、余裕と呼べる時間も力もありはしなかった。
「エヴァ」
「何をしたら良いかしら?」
「歌と掩護を。恐らく外部からの干渉だ。…イオ、そいつを頼む」
「ええ、わかったわ」
「はい」
多くを説明する時間も必要も無い。一際大きく刃を振るって伸び上がるそれを切り払い、生まれた間隙についにぐらつき始めた石の部隊へ片膝と右手を付ける。掠めた程度とはいえ、触れた事で此方へも及び出した干渉を、再度響き始めた歌に紛らわせて意識を絞る。……僅かに空いた処理の隙は、エヴァの銃弾とイオの牙装が埋め合わせた。
外部から向けられた不可視の干渉と、暴走状態にある棺からの物理的な攻撃。その双方を、遮断し封鎖する為の手段。権能として持ちながら、これ迄一度たりとも使う事の無かったその力を最大限に引き出した。
直後。ごご…ん、とそれまでとは異なる軋みと衝撃が、空間を揺らした。
――棺の生成。
正しくは、棺の中央にある棺の間と呼ばれる空間。棘に囲まれ、虚ろに揺らぐ血界に守られた、多くの継承者達が眠る場所。その最大の特徴は、内部と外部の行き来全てを遮断し封じ込める事にこそある。…暴走した継承者が外へ出ていかない様に。そして、ただの吸血鬼や堕鬼にその眠りが妨げられる事が無い様に。同胞たる継承者か、半身に近い伴侶達以外では、言葉を届ける事さえ叶わない絶対の防壁。故にそれは、あらゆるを拒絶する砦と成り得る。……勿論、確証の無い賭けではあったが、それでも全く勝算が無い訳では無かった。
果たして。初めて引き出したその力は、何のラグも無く身体に馴染み、意思を反映した。
赤い池を割って突き出た灰銀色の棘が、石橋を囲うように伸び上がる。その範囲は決して広くは無く、寧ろ最低限度に留まっていた。……それは、ジャック自身が意図した通りのものだ。
既に三人の継承者によって作り変えられ、棺と化している臨時総督府。時間とその意思でもって、複雑かつ広大な棺を作り上げたヴァレリオ。暴走に巻き込む様にして、自身の周囲と建物を変容させたシルヴァ。そして、王としてその二つを統合し、組み上げ直したレイ。彼等の干渉によって在る大樹の強度は、並の継承者のそれを遥かに超えていた。……それを、更に改変し改築して支え直す程の力は端から期待していない。だからこそ、初めから目的は一つに絞っていた。
――イメージするのは、核の焔や宙の果ての真空にさえ耐え得る強固なシェルター。内部と外部を完全に遮断し、特定の手順を踏まなければ僅かな空気の通り道さえない様な殻。
大崩壊前に存在していた人類の技術。嘗て人であった頃。軍人として目にした事のあるそれを元にして、限られた範囲の気密性を跳ね上げる。
総数では両手両足の指を合わせても、尚足りない程に存在した継承者の中で、五指に入る適格者。その適合率は、ごく一部とは言え王の棺の改変にさえ手を掛けた。
瞬く間に形成された棺の間により、明らかに意思への干渉が鈍化する。何者かも知れない相手もそれに気が付いたのか、白の大樹を変容させての物理攻撃が激化した。それを、血界の外に形成した鋼板にも似た壁で防ぎ止める。何とも形容し難い轟音と異音が轟いている筈だが、血界の内側は静かなものだった。……どうやら、一先ずの賭けには勝ったらしい。
「…………」
そうして、漸く生まれた余裕に息を吐く。――安全地帯を作れただけで、まだ何も解決はしていない。それでも、多少なりとも余裕が生まれれば、考え試す時間が取れるだろうという対処療法。だから次は、何をするべきかをエヴァやイオも含めて話し合う。……その筈だった。
「……すまない、助かった」
ふと聞こえた“4人目”の声に息を呑む。それは、もう十年近くも前に聞いたものが最後となっていた音。まさかと思う思考よりも早く、軋んで歪み続けていた棺が更に変動を始める。無秩序に伸び上がり侵食し暴威を奮う枝葉へと、更に絡みつきねじ伏せる真白の鎖樹。絡み合い抑え込み引き千切り癒着し分離しながら、それでも徐々に徐々に真白の領域がその勢力を増していく。……この場で、そんな力技が可能な存在はただ一人しか居ない。――それこそが、その相手の正体を教えていた。
そして。
ごぉん、と一際大きな地鳴りを最後に鳴動が収束。歪み捻じ伸びた枝葉へ絡み、同化して硬化したもう一つの枝葉が薄闇に浮かび上がる。……棺と血界の向こうに見える光景は、随分と変わり果ててしまっていた。それでも、目に見える動きは完全に止まっていた。
「……。起きたか、新入り」
「中々刺激的なお目覚めね。大丈夫?」
「…おはようございます。気分は、どうですか?」
「ああ、うん…おはよう。取り敢えずは大丈夫、だと思う」
嘗て覚悟を以て役目を別けたその場所に、何とも気の抜ける会話が落ちる。予想していたどの目覚めとも異なる再会に、数年ぶりの会話はそんなやり取りから始まった。
「……それで、こうなった、と」
「すまない。他に、気を回す余裕が無かった」
「………」
真白の樹皮を持つ枝葉に囲われた、鋼の壁と灰銀の棘で形作られた棺の内側。石橋を構成していた石材を椅子と机代わりにした、ワイルド過ぎる会議場で彼等は顔を合わせていた。……かの騒動からから実に一週間が過ぎていた。
「何とかもう少し動かせない?」
「やってはみるけど、正直自信が無い。……今も力尽くで抑えているから、細かな調整が難しい」
「俺が制御出来ているのは、この棺の範囲内だけだ。外へ出て直接干渉出来る状態ならば兎も角、現状で昇降機の経路にまでは手がまわらん」
「私は、そもそもこの棺には関わっていないから。それに、私の適合率で活性化している彼等の棺に干渉するのは難しいと思うわ」
「……私は、神骸の力を使えませんから」
「手詰まりね」
一週間もかかった理由は、この空間への経路が寸断された為だった。石橋の上にあった唯一のヤドリギと、上層から貫いて設置されていた昇降機。そのどちらもが、先の騒動で使用不能となっていた。
ヤドリギは、白の大樹の鳴動とジャックの棺によりその根を寸断されて枯れ果て。昇降機は、捻じくれて変容した白の大樹そのものによって押しつぶされ、その空間自体も捻り潰されていた。
友誼の血針も、対象となる4人が揃って棺に籠もった為に不発に終わった(イオだけならば外へ出る事も出来たが、4人ともそこまで気が回らなかった)。結局、僅かに残っていた隙間や、時には外壁さえも利用して、フリークライミングよろしく人力で辿り着いたのがつい今朝方の事だ(ちなみに先陣きって辿り着いたのは、シルヴァ・ヤクモ・エミリーという軍属経験者達だった)。
今は、棺の内側に作られた新しいヤドリギが、辛うじて外との繋がりを維持していた。
「今は、大丈夫なの?」
「多分。……棺からは、出られないけど」
白の大樹の突然の鳴動に、玉座に控えていた筈の神骸の伴侶と、向かったまま連絡の途絶えた監視者達。変容が収まり、それ以上の悪化が見られなくなっても戻らない彼等に、最悪の想像が頭を過ぎったのは無理もないだろう。……実際、先行した三人により状況が確認されるまでは、最悪討伐戦の再来さえ覚悟されていた。
結果として、その危惧そのものは杞憂に終わった。しかし、楽観視出来る状況でも無い。
「外部からの干渉、か、盲点だったな」
「そもそも…いくら赤い霧や地脈の制御に力を注いでいたにしても、よ。彼の制御を越えて暴走させるなんて、尋常の相手では無いわ」
「どんな感じとかどんな相手とか、何か覚えてる?」
外部からの干渉による暴走の誘引と棺の変異。それも、棺の間の副産物として変化した訳では無く、明確な目的を以て形成された王の寝所だ。それを暴走させ、棺に呑ませて一体何をしようとしていたのかは分からない。だが、決して友好的な目的で無い事だけは確実だろう。
「詳しくは全く。ただ、人や吸血鬼、堕鬼とは違う気がする。もっと大きくて異質な…統合体みたいな相手に感じた」
「ああ。それも、明確な生命体としての意識では無く、何かシステムの一部にでも取り込まれかけた感覚だ。……それが何かは、分からんがな」
「あとは……そうだ。何となくだけど、外…ヴェイン以外からの干渉っぽかった、かな。それこそ、ヴェイン以外の外全体から圧をかけられた…ような?」
「私はそこ迄強くは感じないわね。けれど、確かに何かの意思を感じたわ」
「大分大問題だと思うんだが。しかし、外は一体どうなっているんだろうな……」
実際に干渉を受けて退け、現在進行形で抵抗し続けている三人の言葉に全員で唸る。
ヴェインの外。それはいずれ赴く…いや、帰還する事を目標としている世界。嘗てよりも尚強大化したバケモノが蔓延り、それでも尚滅びる事なく続いている事は知っている。最近ではヴェインの状況も安定し、深層に封じられていたバケモノの内の一体を相手に研究と鍛錬が始まっていた。……その、矢先だ。
もしも万が一、外の世界が――バケモノが、彼等継承者達へ悪影響を及ぼすのであれば。例え外へ赴く目処が立ったとしても、彼等三人はヴェインから出られない事になる。下手をすれば、ヴェインどころか棺からさえ出られないだろう。――折角、手札が揃い始めた所だと言うのに。
「それは別に良いけど」
「そうね。深層の解放が済んだ後で良かったわ」
「幸い、こうしてやり取りは出来る。…今のヴェインで、新たに継承者の力が必要な案件もそう無いだろう」
「……泉の活性も、殆ど目処は立ちました」
「おい」
そんな落ち込みかけた空気を壊したのは、当の本人達だった。まあ良いかと、仕方が無いなと。酷くあっさりと、果ての知れない幽閉紛いの扱いを受け入れて頷き合う。悲壮感や悲痛な覚悟なんてものさえ無く、ただそれが当然の事かの様に彼等はそうする事を決めていた。
「少し予想外だったけど、取り敢えず起きて皆にも会えたし、俺としては十分?……巻き込んでしまったのは、申し訳なかったんだけど。あまり言うと、3人に怒られる」
「当然だ。……そもそも、此方へも干渉が及んでいる時点で他人事では無い」
「…許されるなら、傍に。何か出来る訳でもありませんが……」
「エヴァまで同じ場所になってしまったのが、申し訳無いけど……」
「あら、私では駄目かしら?それとも、何か悪い事でもする?」
笑い混じりのエヴァの言葉に全力で首を振る。誂われているのだとは分かってはいても、3人を巻き込んでしまった事実は心の隅を引っ掻いた。イオはまだ、外へ赴く事も出来る。けれども継承者である2人に関しては、殆ど自分と同じ条件だった。…あの日、せめて2人の分だけでも無理矢理にでもその神骸を引き受けていればと今更に思う。けれど同時に、それを言えば尚怒られる事も、そしてその選択に救われた事も事実だった。
寝起きに詰め込まれた非常事態。自分1人では手に負えず、なすすべも無く呑まれかけたあの濁流から逃れられたのは、確かに3人のお陰だった。…それには、本当に感謝している。3人が居てくれるなら、何より心強いのも確かだ。
ただそれはそれとして、3人の時間を奪ってしまう事に申し訳なさが募った。吸血鬼の体質と、何より気分的にも絶対何かをするつもりは無くても、男女で密室染みた場所に居続けるのも、どうなのだろうかと思う。……あまり言うと怒られるので(一週間で散々言われた)、もう言いはしないけれど。
不自由な自由を得て、王は目覚めを果たした。
本作内での世代について。()は故人。
第一世代
ジャック、レイ ※主人公
(クルス、ヴァレリオ)
第二世代
シルヴァ、アウロラ、カレン、ムラサメ、デイビス、エミリー、ココ
(ミドウ、ケビン、ミゲル、オリバー、カーミラ、ナオミ)
第三世代
ルイ、ヤクモ、ミア、ニコラ
エヴァ、イオ ※特殊枠
(リキ、神骸の伴侶達)
◆追加
・第一世代の中でも、ジャックとヴァレリオはクイーンより前の初期組。レイ(CV主)はクイーンよりも後の後期組。なので、現状ではジャックが一番の古株。
・第二世代の中でも、シルヴァ、アウロラ、カレン等の中核人物達は初期組。元が完全な一般人である上に若いムラサメやケビンは、中期〜後期組。ココは最終期でほぼ第三世代。
・第三世代の中でも、ルイやニコラは比較的早く、ヤクモやミアは遅かった部類。
・ヤクモ、エミリー、ミゲル、リキ達は、施術時期としては第一世代と同時期。