本話ラストと設定部分に、ゴッドイーターサイドのとある設定が思いっきり食い込んでいます。
臨時総督府が白の大樹へと変貌して十年。かの騒動から三年が経った。
血税が吸血鬼達の血でも可能となった事、そして泉の再活性によって、遂に血涙に余裕が生まれ始める。その事により、吸血鬼同士の無駄な争いは減り、自己研鑽と開拓の為に注がれるエネルギーは健全な物へと近付いていった。
その中で明かされた、バケモノの脅威やその進化、外の危険性についての情報。シルヴァと臨時総督府の名のもとに開示されたそれは、牢獄と捉えられていたヴェインの認識を幾らか変化させた。……それでも外を望む者達は多く、より一層の熱と活気となって世界を彩った。
反総督府を掲げていた者達も、従う事は無いながらも表立って対立する事は無くなった。僻地を拠点としていた彼等の情報や活動が、確かな対価を以て買い取られた事。そして、どれ程の非難や敵意を向けられようと弁明も言い逃れもせず、それでも確かな目的と手段と必要性を説いたシルヴァの言葉によって。
生活の余裕と心身の安全と正当な対価。そして、強大なリーダーの存在。それにより、荒み崩壊しかけていたヴェインの空気は、確かに変わり続けていた。
「忠誠や信頼だけではなく、不信や敵意さえ利用して引き込み、目的へと向かわせる。…流石、と言うべきかしらね?」
「まさか本当に、十回以上殺されて戻ってくるとは思わなかったけれど」
「なに、吸血鬼や人間に苦労をかけたのは事実だ。心臓をくれてやる訳にゃいかねぇが、この頸位は何度でも刈らせてやるさ。それでヴェインが纏まるなら安いもんだ」
「何か…やっぱり凄いな」
「討伐戦の部隊やサーベラスには、シルヴァに忠誠を誓う者達も多い。…その後の施策で崩れたとしても、その本質は変わらんという事だろう」
「私はあんまり気にしてなかったけどさ。よく考えたら防衛班や掃討班は兎も角、斥候部隊や直接打撃部隊に脱走兵が殆ど居なかったのって凄いよね。死に戻れたらラッキー!位の場所だったのにさ」
「討伐戦後にサーベラスとなった者達は、討伐部隊だった者達が殆どだ。シルヴァの立ち上げに従った、という事だろう」
「私が継承者になった時には会えなかったのだけれど、ジャックから聞いていた通りね」
「……大きな人、ですね」
「俺達にしてみれば、良く知らない奴…なんなら吸血鬼を追い詰める独裁者…っつー感じだったんだけどな」
「必要だった事、説明しようが無かった事は分かってる。…それでも、あの人のやり方で苦しんだ人がいた事も事実よ」
「そうだな。…そして、誰かが背負わなければならなかった重責と罪過を、率先してやり遂げた事も」
「良くも悪くも…ってやつだろうね」
定例となった棺の間での報告会。呆れ混じりにシルヴァと話すアウロラ、カレンの上層部組。そしてそれをネタに会話を進める討伐戦経験者達+αに混ざりながら、改めて世代間に横たわる差を実感する。
シルヴァという男は、自分達第三世代の吸血鬼にとってはあまり良い印象の無い相手でしか無かった。勿論、ヴェインの真相と真実を知ってからは見方も変わったが、それでも第一や第二世代の彼等とは埋め難い溝が残る。こうしてその真実を知る自分達でさえそうなのだから、最低限度しか明かされなかった一般吸血鬼達は尚更だろう。――それでも、ヴェインは確かに纏まりを取り戻しつつある。
裏から個人的に動くだけでは足りない部分を、シルヴァは確かに補っていた。
「にしても、本当に良かったのか?血涙や赤い霧についての功績位、お前等の名前で出せば良いだろうに」
「嫌よ。面倒事はあなたに任せるわ」
「……向いていない」
それは、シルヴァと臨時総督府の名で開示された情報と、新たな施策。その有用性と改善によって支持が回復したのも確かだ。ただそれも、これ以上目立ちたくは無いという継承者・元継承者達の希望によるもので。シルヴァ本人は泥だけを被る覚悟をとっくに決めていた。……その潔さや豪胆さが、より人を惹きつけるのだろうか。
「深層のバケモノを、相手に出来る様になったと聞いたが」
「どんな感じ?」
「相手に……つっても、何とか死なずにやり合えるって位だけどな」
「やはり、完全に人や吸血鬼とは異なる存在だ。3体とも大型で、堕鬼とはまた違った戦い方が必要だな」
「聞いていた通り、属性は炎と氷と雷。それに、かなり大きく動き回る感じ。攻撃も重いし、よっぽどの重装備じゃないなら回避が最善だと思う」
次の話題は深層に封じられていたバケモノ達について。あの日からこの棺の外に出る事が叶わなくなった彼等への、情報提供兼暇潰し……兼相談だ。なにせ、バケモノと実際にやり合った経験者が2人も(しかも片方は深層のバケモノそのものとの戦闘経験ありだ)居るのだから、活かさない手は無かった。
「それにしても、第一世代の吸血鬼って本当に少ないのね。……まあ正直、第一世代と第二世代って区別つかないんだけど」
「確かに」
確実にバケモノとの戦闘経験がある第一世代の吸血鬼。その経験や知識を得ようとした際に直面したのがその数の少なさだった。
何せ、兎に角数の多い第二世代は当然として、殆ど偶然によって誕生した第三世代よりも尚、その数は少なく。……それこそ自分達がはっきりそうだと知っているのは、此処に居る2人だけだ。
今更増やしようが無い上に、例え居たとしても世代を公言している吸血鬼の方が少ないのだから見つけようも無い。そもそも、スタートが少し違うだけで経験を積めば吸血鬼に世代差による格差は無い。……それでも。明らかに第三世代よりも少ないその数が、気にならない訳では無かった。
なので、丁度そこに居るのだからと当人達に尋ねてみた。
「? ……ああ、生き残りは少ないだろうな」
「生き残り?」
何の事だ、とばかりに寄せられた眉はすぐに解けた。あっさりと返された言葉は、第一世代吸血鬼の少なさを肯定するもの。それは良いのだが、“生き残り”というその言葉が少し不穏だった。
「言葉通りの意味だ。……第二世代には劣るとは言え、第1世代の“施術総数”は第三世代より確かに多い。だが、今尚活動出来ている者達の数では、最も少ない筈だ」
「元々、吸血鬼の能力も戦い方も確立していない時期に、バケモノを相手にしていたのもある。……武器や牙装も、今に比べれば貧弱だった時期だから、死に戻りが前提だったし」
「そもそも、ヤドリギやクインスチール、浄化マスク、回復剤等の技術もQUEEN計画により開発されたものが殆どだ。当時はまだバケモノ共も弱かったとは言え、唯の人間に毛が生えた程度の吸血鬼ではそれ程変わらん」
それは、失われた命の多さを示す言葉。それも、良く考えれば不思議では無い。
大崩壊のバケモノという明確な敵を想定して生み出された第一世代は、当然技術や経験、知識の蓄積等ある筈も無く、半ば以上人体実験じみた方策で作り出された不死の尖兵だった。
彼等は、目覚めると同時に対バケモノの戦力として前線に立たざるを得なかった。その関係上、戦場を知らない一般人では能力の過小に関わらず戦力としては心許無い。何より、勝手に死体を利用された上にバケモノとの戦闘の矢面に立てと言われて、踏み留まれるだけの強さが必要だった。……故に、初期の被験者となったのは、その多くが軍人や技術者達であったのだ。
目覚めこそ遅れたものの、ヤクモやエミリーも本来の目的や施術時期的には第一世代寄りだ。確かにムラサメの様に、能力や戦い方に習熟してしまえば過去の経歴は関係なくなる。が、矢張り初速……もとい戦闘への順応速度は経験者には及ばない。
何より、戦い護る者として存在していたその在り方が、バケモノへと立ち向かう縁となった。
だからこそ彼等は最前線に立ち、そして散っていった。吸血鬼の特性も能力も全てが手探りで、装備も整わない状況で。最初期に至ってはヤドリギの恩恵すらなかったのならば、つまりその時期の吸血鬼達は、今に比べ不死とは呼べない状況だったと理解出来た。
「それに、討伐戦で第二世代が目覚めて、そして戦える様になるまでの最前線。赤い霧が無い時期だから、バケモノも当然存在していた。……戦えるからこそ、逃げる訳にはいかない。だから、そこで沢山の人達が灰になっていった」
加えて、クイーンの暴走。
当然だが、第二世代が目覚めるまでクイーンの相手を務めていたのもまた、第一世代の吸血鬼達だ。バケモノの相手を行いながら、本来味方であった筈のクイーンに後方を脅かされる日々は、その損耗を早めていった。
そして、彼等だけでは間に合わなくなり生まれた第二世代。初期こそシルヴァやカレン達の様に第一世代に近い者達が占めているが、後半になるにつれてケビン達の様に本来戦場には向かないだろう人々までが吸血鬼となっていった。……それよりも適した者達は、既に吸血鬼化した後だった為に。
「生き残った者達も、その多くはサーベラスとなった。……臨時総督府や棺の塔を護る、精鋭としてな」
そして止めとなったのが、ミドウの反乱とシルヴァの暴走による棺の塔、及び臨時総督府の壊滅。それは、そこを護っていたサーベラス達を諸共にしていた。
サーベラスの中でも、継承者や神といった骸といったヴェインの真相を知る者達。彼等の多くは、バケモノの掃討やクイーン討伐戦でシルヴァの下に集った、第一・第二世代の吸血鬼達で構成されていた。……その実力と忠誠を以てそこを護り続けていた彼等は、それが為に二度の騒動でほぼ壊滅していた。
つまりは、それこそが第一世代と呼ばれる吸血鬼が激減した理由だった。
「なんだかごめんなさい」
「別に構わん。……既に終わった事だ」
「それに、シルヴァ達も殆ど同じ条件だから。……討伐部隊の人とか、もう一度、会ってみたい人達は居たけれど」
今更嘆き、悔いたところで仲間が戻る訳では無い。
恐らく最も多くを見送った“生き残り”と、見送る事さえ出来ずにただ残滓を見届け引き継ぐ“王”はそう言葉を締め括る。忘れる事が無いからこそ、他者の記憶さえ背負うからこそ。あまりに数の多いそれに捕われて、動けなくなってしまわない様に。――例え心の奥底で、どう思っていようとも。
「……そう言えば、青涙には随分と余裕が出来た。今、何かに活かせないかと調査中だ」
「正直、それだけはこの状態になって良かった事だから、何かに使えるなら嬉しいけど」
「ヤドリギや泉の再生も、主な活動地域では殆ど終わったからな。…まあ、単純に供給量が増えたってのが大きいけどよ」
何とも言えない空気となった話題から、更に別の話題へと切り替える。多少無理矢理感は否めないが、そちらもまた決して無関係なものでは無い。
白の大樹が変質し、不完全ながらも王が目覚めた影響。その一つが、大量に実り出した青涙だ。
それまで一つから二つ程度であったものが、この空間に限るとは言え数十の単位で存在する状況。元々、ヤドリギや泉の再生に区切りが見え始めていた事もあり、余剰分は着実に増え続けていた。
「最大の利用先は武器や牙装の強化資材の生成。そしてピュアブラッドや再生剤などの精製、錬血のマスタリー化等になる。吸血鬼全体の、底上げが目的だ」
「そうそう。ただ、今までのクイン系素材とはまた少し違うから、技術班はそれの対応と習熟に力を入れてるよ。もう少ししたら、安定して使える様になると思うから楽しみにしてて!」
「ええ、楽しみね」
クイーンの血を練り込み精錬した金属を必要とする、武器や牙装の強化及び量産。そして、回復薬等の製剤の精製。彼女の暴走は甚大な被害と同時に、その血を前提とした技術や資材もまた失わせた。青涙はそれを補い、そしてより先へ進める程の量へと到達しつつある。クイーンそのものでは無い事、そしてより高度な領域を目指す為に扱う新たな技術も当然求められる。が、その程度の障害は彼等にとっては障害でさえ無い。
緩慢な終わりを予期しながら、それでも僅かな延命の為に全てを犠牲にし続けた時間。……それと比べるならば多少の困難や危険等、苦にはならなかった。――そう、多少のリスクでさえ、だ。
「あはは。けど、一番吃驚なのは神骸の力に似た力を使えないかって方法を探してる事だと思うな」
「は?」
エミリーから飛び出した言葉に驚いたのは、その場に居る凡そ全員。元より反応の薄いイオと、恐らくは研究班として内容を知っていたルイ、そしてエミリーと同じく元継承者の括りに入るニコラが例外だ。若干呆れ気味なのは、彼等にしてみても吹っ飛んだ内容なんだろうと察しがついた。……一体、研究班は何をやっているんだか。
「勿論、本来の神骸に比べれば微々たるものだが、赤い霧や終末の棘への干渉力がある事がわかってきた。……上手く行けば、赤い霧を維持したままでも外への出入りも出来る筈だ」
「ただ、力をつかうのがむずかしいんだ。自分の外にある青涙をつかわないといけないから」
「私なんかは元々、神骸の力を意図的に使った事が無かったから尚更かな?シルヴァさんやカレンさんが中心になってるけど、あの2人は流石だよ」
「適合率があれば理論上は扱える筈だ。お前達も、今度試してみると良い。……継承者としての経験が無いと、感覚を掴むのに時間がかかるからな」
内容を聞いて、理解は出来ないが必要だっていう納得は出来た。それは継承者3人も同じだったのか、興味深そうな……感心する様な表情になっている。使い方さえ間違わなければ、神骸の力は有用だと誰よりも知っている存在だ。
――継承者が全員棺に居る事で、継承者の力を前提とした封印やその解除は不可能となった。当然、血界の一種でもある赤い霧も同様だ。一度完全に解除すれば出る事は出来るだろうが、帰還が困難となる上に再展開の負担も大きい。何より、解除中どこからバケモノが侵入してくるか分からないというリスクがあり、手立てが無い状況が続いていた。……それを、一部だけの解除で賄えるのなら。
「それが出来るのなら、良かった。今の状態で、此処から細かい調整までは出来ないから」
「感覚に関しては……頑張って、としか言えないわね。神骸の使い方は、本当に“感覚”だから」
「錬血の使い方を口頭のみで説明する様なものだ。……説明したところで、役には立たんだろう」
「やっぱり頑張るしかないかー」
何か参考に出来ないかと考えた継承者達の言葉は、何とも無情なものだった。
まあ確かに、自分の錬血の使い方を教えてくれと言われても説明の仕様がない。マスタリー化したものだって、身体に取り込む事で使い方を覚え込ませる、みたいなものだ。……それにしても、ごく一部とは言っても神骸の力を使える様になるというのは、流石に想像もしていなかった。
「あの2人が取り掛かっているなら大丈夫…じゃないか?赤い霧や地脈の維持を、ずっとしていた人達だ」
「まあ…それはそうなんだが。いきなり試作品だといって加工した棘の破片を渡されるのは流石にな」
「もう実際に出来てるのかよ…」
何とも思い切りが良いと言うかなんと言うか、だ。聞いてみれば、どうやら元々思い切りの良い性格だったらしいその2人は、ヴェインの状況が落ち着くにつれ率先して新しい事を始めてたって事で。なまじ適合率が高くて多少の事は無理も通せるものだから、半分以上自分達を実験体にしている状況らしい。
……まあ確かに、吸血鬼の実用化やQUEEN計画、クイーンの討伐戦の責任者だった奴等だ。どれも並の胆力と行動力で出来る事じゃ無いだろう。袂を分かったとは言っても、そんな気質だからこそミドウともある程度やっていけてたんだろう。
ヴェインの見回りをして研究に協力して。時々継承者達の所で報告がてら気晴らしに雑談をして。
そうして、それなりに忙しくも緩やかに月日は過ぎていった。
それは、あの日と同じ様に唐突に訪れた。
「――。………?」
「どうか、しましたか?」
「これは…」
「干渉が、消えたわね」
数度の大きな干渉を越え、そろそろ不眠の状態にも慣れた頃。日常的なそれは最早一部となり、仲間達や互いの話へ意識を向ける事で意識から切り離して。一際大きな干渉を、またかという思いで乗り切ったその後の事だった。
「本当か?!」
「ええ。…いっそ、不思議な位軽くなったわ」
それまで、鬱陶しい程に向けられていた干渉の完全消失。重力が何倍にも増したかの様な感覚が不意に消えた影響は、自分の身体はここ迄軽かったかと驚く程。他の2人も同じだと確認して、これが気のせいや自分の変調では無いのだと確かめる。
そうして。駆け付けてくれた仲間達へと、確かに頷き返した。
――棺及び継承者への、外部干渉の消失。
それは、長く停滞し続けていたヴェインの時間を進める、新しい始まりを告げていた。
――崩壊都市・赤い霧外縁部――
「やれやれ。この光景もいい加減見飽きてきたな」
「ですねー。もう20年以上でしたっけ?」
「2050年代には確認されてたらしいから、ほぼ20年だなぁ。……動きこそ無いが、もしアラガミの巣だとすれば相当な大物だろう」
「自然現象という説もあったのでは?」
「だったら良いんだが。どうにもそうじゃあないらしい」
荒涼とした文明の廃墟の只中で、いっそ場違いな程にのんびりとした声が交わされる。音源となっているのは4人の男女。まだ少年や少女とも呼べそうな年頃の者も混じるその様は、ぱっと見は行楽か何かに訪れたかの様だ。――荒れ果て傾いた高層ビルや裂けた地盤、そして彼等の手に在る巨大な武器の数々を気にしなければ、という条件は付くが。
「何か問題でもあったんですか?」
「……サカキ支部長の話によると、この霧は確かに20年以上保たれているが、その中で数度揺らいだ事があるらしい。そしてそのタイミングは、2060年代半ばに観測された一度目を除き、凡そ終末捕食の起動前後、だ」
「なる程…それに反応しているのなら、唯の自然現象とは言い難いな」
一般に極東支部と呼ばれる地から派遣された彼等の役目は、この地を隔てて存在する赤い霧の調査と監視。ヨーロッパでも西端に近いこの場所に、何故わざわざ極東くんだりから派遣されているかと言えば答えは単純だった。
一つは、ちらちらと話題に上がる通りとある機密情報に繋がっている可能性が高い事。
そしてもう1つが……
―― ガアァァァァッ
「またか」
「ハンニバルとピターか。…全く、ハードだよなぁ」
「それだけ、ここに何かがあるんですかねー?」
「だろーな」
遠く聞こえた咆哮に、揃って手元へ神機を引き寄せる。簡易的なレーダーに表示された反応とその種別から、相手を割り出して苦笑する。どちらも接触禁忌種。並の支部ならば、それだけで壊滅の危険性がある明確な脅威だった。
それこそが、嘗てイギリス…スコットランドと呼ばれたこの地の管理を彼等が行う最大の理由。……何故かは分からないが、この場所は強いアラガミを引き寄せるのだ。その程度は流石に極東にこそ劣るものの、欧州地域としては異常な程であり、故にそこに長期間滞在して活動出来る神機使いは残念ながら近隣には居なかった。
とはいえ、それはあくまで他支部での話。
アラガミ動物園などと揶揄される事もある極東で生き抜いた者達からすれば、強敵ではあっても討てない相手では無い。現に彼等も、この地に到着してからのここ半年で、何度も大型種や接触禁忌種を相手にしていた。だから今回も、いつもの討伐となる……筈だった。
「極東支部の異常さも、元々はエイジスが原因だったと聞く。…もしもそれと条件が同じならば、此処には相当な個体が眠っている可能性が高い」
「わかってますよー。だからこそ、刺激しない為にアラガミを間引いてる訳ですよねー?」
「そういう事だな。ん?……はぁ?!」
不意に、レーダーが新たな反応を示した。
2体のアラガミの向こう側に現れた4つの反応。神機使いの識別反応とは少し異なるが、大きさや波形から、ほぼ“人”であると確定出来るもの。命知らずの同業者か、それとも迷い込んだ地元の生き残りか。……そんな考えは、一瞬で消えた。
「うっそだろ……」
駆けつけた先。予想通りに暴れまわる2体の接触禁忌種は別に良い。問題は、それを相手に立ち回る人影だ。
「神機使い…にしては妙だな」
「いやいやいや、それどころじゃ無いよな?!」
極東基準で見ればどこか覚束ない動きで、それでも決定的な致命傷は受けずに立ち回る4つの影。その手元にある巨大な武器は、神機使いのそれに良く似ていた。
そして何より彼等の目を奪ったのが。
「何で赤い霧に穴があいてんだよ?!?!」
見ている間に塞がってはしまったものの。その人影の背後には、丁度人が通れる程度に開いた霧とその奥に広がる廃都市が、確かに見えていた。
「お前達は……」
「「喋ったーー!!?!」」
それが、神喰いの狼と不死の吸血鬼の初コンタクトだった。
これにて、ヴェイン側オンリーの前日譚は一先ず終了となります。
次話からは、極東支部面子を中心にしっかりとクロスしていく予定です。最低限の要素は抑えつつ、ご都合設定から捏造、妄想をトッピングしていくので、何でも楽しめる方はまた読んで頂けたら嬉しいです。何せ、GE側もCV側も本編後の時間軸設定なので、あらゆる物事が妄想と捏造です。
青い血涙→CV原作の闇の住人ENDで、イオが残した琥珀の血涙と似た物。ヤドリギや泉の再生能力を持つ主人公の血の特性と、限定的ながら神骸への干渉が可能となるブツ。棘の加工云々は、本編で手に入る棺由来のマテリアル的なあれを意図的に作る感じ。
ラストの4人→ルイ、ヤクモ、ミア、エミリー。先遣隊として霧の外側を調査すべく出立した直後にアラガミと交戦。霧に穴が空いた状態での戦闘なので逃げる訳にもいかず応戦していたところ、極東から派遣されていた神機使い達(モブ)と出くわした。
神機使いs→20年以上赤い霧が立ち込め続ける、何かヤバい場所として認識されていたヴェインの監視役として派遣されていた極東の神機使い達。極東最上位陣程では無いが、チームであればミッションの危険度で8位までは何とか対処出来るだけの実力者達。この時点では、対アラガミであれば吸血鬼達より普通に強い。