テイエムオペラオーの家臣・従者を名乗るトレーナー 作:ケルヌンティウス
ウマ娘達がトレーナーに実力をアピールする場である『選抜レース』。その時期が近づくと、ウマ娘たちは熱心にトレーニングに打ち込み、自身の力をトレーナーや周囲に示していく。
その中でも異彩を放っていたのが、選抜レースが始まる前から既にスカウトを受け、それでもなお選抜レースへと出走した1人のウマ娘。
レースは終始混戦状態だったが、ゴール直前で抜け出したそのウマ娘が危うくあったものの、1着で勝ち切った。2着でゴールしたウマ娘や最下位ではあったものの諦めることなく走り切ったウマ娘から賞賛の言葉を送られるが、そのウマ娘の表情は沈んでいた。
「ふっ……ふっ……はぁ……っ」
「無様だね、我が覇王」
未だに整わない呼吸と表情に苦闘しているウマ娘へと声をかけた男に、覇王と呼ばれたウマ娘、テイエムオペラオーは目線を向ける。
「……あぁ、全くだね」
男の言葉にテイエムオペラオーは素直に頷いた。
覇王としての貫禄を示さなければならないと自らを律している彼女にとって、この結果は芳しくないものであった。覇王たるもの他者を圧倒し、優雅に勝たなければならないと思っているが2着との差がたった数センチという僅差。とても'覇王'とは呼びがたい結果であった。
「オペラオーさん……」
普段は見せない沈鬱な顔を見せる彼女に、メイショウドトウが心配そうな声で話しかける。そんな彼女を安心させるように笑みを浮かべると、オペラオーは再び男の方を見る。
「さて、こんな醜態を見せてしまってもなお……キミはボクの従者になると言うのかい?」
自嘲気味に笑うオペラオーに対して男は迷わず首肯した。
「あぁ、無論だとも。覇道にはいつだって苦難がつきもの。しかし、障害物を乗り越えたら取り払い、打ち払ってこそ……覇王というものだろう?」
男の返答にオペラオーは小さく口角を上げる。
「そうか……。ならばこの覇王の従者よ、共に歩もうじゃないか! 共に覇道を!」
覇王が高らかに宣言すると、トレーナーという名の従者は仰せの通りにと膝まづいて恭順の意を示した。その姿を見たオペラオーは満足げに微笑む。
「それでは諸君また会おう! 今度は完全に完璧に、覇王としての勝利を見せることを約束するよ! ハーッハッハッハッ!」
覇王のトレーニングに励むため、高笑いしながら立ち去るオペラオーの後を追うようにして、男もまたその場を去った。そして取り残された2人のうち濃い桜色の髪が特徴的なウマ娘は、覇王に付き従い後ろを歩く男を見ながらメイショウドトウへと尋ねた。
「すごいね覇王の従者だって! ……ねぇ、従者ってなに?」
「えっ!? あ、従者っていうのは多分……と、トレーナーのこと、かなぁ……?」
質問を受けたメイショウドトウは慌てて答えるも確信はなく、曖昧に返すことしかできなかった。しかし、それは彼女以外のウマ娘やトレーナーも分かっておらず、事実を知っているのは当の本人たちだけであろう。