ありふれてないアークスはその力で何を守護るのか 作:時空 雄護
~???階層~
「Gruaaaaaaaaaaaaaa!!!!!」
通路側の魔法陣から現れたトリケラトプスに近しい魔物「ベヒモス」が凄まじい咆哮をする。
その咆哮を聞き、メルドが指揮を出す前に、累斗と廻斗が動き出す。
「「っ疾!!」」
騎士団の団員の一人に持ってもらっていた大剣型のアーティファクトをそれぞれで一本ずつ抜き取り、通路側…ベヒモスの正面に立つ。
「!?おい二人とも何を」
指示を出している途中で動き出した二人に驚くメルドだが、二人が持つ大剣を見た瞬間に察した。
「…!カイル、イヴァン、ベイル!聖絶の準備早く!アランはみんなを落ち着かせて連携させるように言うんだ!トラウムソルジャーを突破しろ!光輝たちも撤退するんだ!」
メルドの指示によって騎士団員たちが動き出す中、光輝が抗議する。
「待ってください!累斗と廻斗がいるのなら俺たちも」
「いいから早くいけ!今のお前らじゃベヒモスに傷どころか抑えることもできないんだぞ!」
「でも!」
「でもじゃない!」
メルドと光輝が口論する中、ベヒモスの正面に立っている累斗と廻斗が交互に詠唱を始める。
「刀身に魔力注入開始及び、全身の魔力による身体能力強化を起動…!」
「魔力属性変更、光属性に変更及び光エネルギーの増幅を開始…」
「刀身への供給完了。大剣型アーティファクトの機能を起動。」
「魔力による身体能力強化、最大値……不足を確認。限界突破を起動…!」
二人の体と大剣が淡く輝き、防御態勢をとる。
そして、ベヒモスが咆哮をしつつ突撃してくる。
「Gruuuaaaaaaaaaaa!!!!」
「「起動せよ――――『光の護封壁』――――!!」」
ここまで来てネタ技かと思うだろうが、これでもまじめな方である。
二人の持つ大剣型のアーティファクト、「バウンサー」は魔力を流すことで刀身の強化だけでなく、二人がやっているように防御に使用することができる。
それによって現れた光の壁とベヒモスの頭部がぶつかり、周囲に衝撃波を発生させる。その衝撃波で何人かのクラスメイト達が転倒したりするが、騎士団員たちに起こされトラウムソルジャーたちの撃破に向かう。
「「――――――――!!」」
ベヒモスが何度もぶつかってくるが、そこはアークスの二人。歴戦の戦士の顔をして耐えようとする。
「累斗、廻斗!!メルドさん、俺は絶対残りm「光輝ぃ!」!?」
なおも駄々をこねて残ろうとする光輝に、ベヒモスの攻撃を耐えている累斗から叱咤が飛ぶ。
「お前は早く階段の方に行け!あいつらに必要なのはお前のカリスマなんだよ!」
「!!」
その言葉を聞いた瞬間、光輝は過去に累斗に言われたあることを思い出した。
~過去 八重樫道場にて~
「俺がリーダー?」
いつも通り無謀に累斗に挑み、ぼっこぼこにされた光輝が聞いたのは、いつか分からない未来に対しての助言だった。
「そうだ。今はなぜか俺と廻斗がリーダー染みてるが、何かがあって俺たちが動けない時はお前がリーダーだ。」
その言葉を聞いた時、光輝は何を言ってるんだと思っていた。
「冗談にもほどがあるよ累斗。そんなことがこの日本で」
「起きる可能性なんて小数点以下の確率でもあるにはある。」
「!?」
累斗の目を見たとき、光輝は一瞬気圧された。その目は、完全に戦士の目であったのだから。
「俺たちが動けない時はいつ起きてもおかしくない。その時に誰かを導けるのはお前だ。」
~???階層~
「………!!」
それを思い出した光輝は階段の方へ走り出す。その後ろでは下がった累斗と廻斗の代わりに騎士団による純白の障壁「聖絶」によってベヒモスから身を守っていた。
階段側へと着いた光輝は手始めにトラウムソルジャーを数体切り伏せ、声を張り上げる。
「みんな!訓練でやったことを思い出すんだ!連携を取るんだ、早く!」
光輝のその言葉に全員の目が元に戻る。頼れる仲間が戻ってきたのだ、という思いが彼らの動きを活発にさせる。
次々に倒されていくトラウムソルジャーの軍団。無論魔法陣からの増援もあるが、だんだんと押し返しつつある。
すると、“錬成”を駆使して戦っていた南雲が通路側の方へ走っていく。
騎士団員たちが止めようとするが、南雲は止まらずメルドの元へ向かう。
光輝はそれを止めようとせず、ますはこっちをと言うようにトラウムソルジャーを切り伏せる。
(あの感じは、何か策があって向かったに違いない。ならこっちを終わらせる!)
一方通路側では、障壁がベヒモスの攻撃によって罅が入りつつあった。魔力にまだ余裕があったメルドと、
そこに、階段側から走ってきた南雲が到着する。
「坊主!?なんでこっちに来た!」
「策を持ってきたんです。全員生き残れる、唯一の策を」
その言葉を聞いて、メルドはマジかといった顔をする中で、累斗と廻斗はその顔を緩ませる。
「メルドさん、あんたは南雲の策を聞いといてくれ。その間は…」
障壁の展開を止め、両腕の力を抜いてだらっとさせる。そして…
「「俺たちが、あんのクソ魔獣を足止めする。」」
二人は、本来の力を解き放つ。
二人の足元に青い光のリングが出現し、そのリングが二人の足元から頭頂部まで通り抜ける。それと共に二人の衣装が変わる。
累斗は
「え、え、えぇ!?」
「詳しいことは後で説明する。」
そう言いながら、その手に
「すまない南雲、この姿については後で説明する。メルドさんは南雲から策を」
そう言い、
「………ハッ、坊主。策があるって言ったな?一体どんなのだ?」
「…はい!単刀直入に言います……僕がベヒモスを埋めます。」
戻って階段側。
こちらでは戻ってきた光輝を筆頭に、連携しトラウムソルジャーの群れを撃破しつつあった。そこに、通路側から疲弊した団員と共にメルドが戻ってきた。
戻ってきたメルドに団員が驚くが、通路側を見てテキパキと動き出す。
「待ってください!南雲君たちがまだ!」
「坊主の作戦だ!ソルジャーの群れを突破して安全確保、そして魔法での一斉攻撃でベヒモスを抑える!坊主たちがこっちに戻ってきたら中断して上階に避難するんだ!」
メルドから教えられた作戦に驚く一同だが、直後の光輝の発言で目の前に集中する。
「俺たちがこいつらを突破するまで時間を稼いでくれてるんだ!急ぐんだ!」
その光輝の言葉でクラスメイト達の動きが鮮明になり、一気に階段への道が見えるようになった。
「今だ!階段前を確保するんだ!」
メルドからの指示によって、怒涛の勢いで階段前を確保することに成功した。
「前衛、ソルジャーをよせつけるな!後衛は遠距離魔法の準備!坊主の魔力が尽きる前に三人が撤退する!その時に一斉攻撃で足止めだ!」
クラスメイトの中には今だ南雲が?という思いが顔に出ているのもいるが、メルドからの催促で意識を戻す。
だが……一人だけ、ほくそ笑むやつが一人。
絶好のチャンスでもあるこの場面で、
しかし、それを見るものが
そして通路側。そこで錬成でベヒモスを拘束していた南雲は、自分の魔力が尽きるのを感じていた。累斗と廻斗の援護があったとはいえ、もう限界であった。
すると、援護を行っていた二人が地上に降り、南雲の方に走ってくる。
「下がるぞ!向こうは準備ができてる!」
累斗の言葉を聞いて、南雲は錬成をやめ、後ろへ走り出す。しかし、まだ余裕がある累斗と廻斗と違い、南雲は満身創痍である。それ故遅れて二人に着いていくように走り出す。
無論、錬成が止まったことによって拘束から脱出したベヒモスが三人をその目で捉えるが、そこに無数の攻撃魔法が雨のように殺到する。
効いてはいないが、足は止まられている。
何とかなった、と思い顔を緩めた南雲だが……次の光景に目を疑う。
ベヒモスに向かっていた攻撃魔法のうちの一つ、火球がベヒモスへ向かう軌道から曲がり…ハジメの方へ向かうようになる。
「避けろぉ!」
累斗が声を張り上げ回避するように言われるが、咄嗟では避けられず、眼前の地面に火球が直撃する。
着弾時の衝撃で元いた方向に吹き飛ばされる。対してダメージはないが、三半規管がやられバランスがとれない。それでもなんとか立ち上がるが、その後ろでベヒモスが攻撃態勢を取る。
そして、赤熱化した頭部をハジメに向け、突進する。
振り返り、ベヒモスを止めようとする累斗と廻斗。遠くから聞こえるクラスメイト達の怒号と悲鳴。
それらが見え、聞こえつつ最後を振り絞りその場から飛び退く。そして、ベヒモスの攻撃が橋に今まで以上の衝撃を与え、亀裂を大きくしていく。そう、橋が完全に崩れ落ち始める。
ベヒモスが抗うもあっけなく奈落へと落ちていく中、南雲の元へ崩れ落ちていく橋の残骸を飛び移っていき、南雲の手を掴もうとする累斗と廻斗。
しかしもう遅く、南雲の体はすでに奈落の底へ落ちようとしていた。
急いで戻れ、というメルドの声が聞こえ、廻斗が崩れ落ちる橋から退避する中、累斗はその手に精製した合奏の指揮に使うような棒を南雲の懐に入るように投げた後、その場から退避する。
こうして、南雲ハジメの
だが、技嶋累斗が渡したたった一つの者と、これから地上で起こる裁きによって、この世界の運命は歪な形として、修正されるのであった……。
ということでようやくこの段階まで来れました。この先からは奈落のハジメ君の視点が主になりますが、次回の最初は檜山君の最後(笑)からになります。