神隠し
高校入学も近くなった春休み。
俺は新しい生活を迎えるために部屋の掃除をしていた。
そこであまり手を付けてないとこも掃除しようと、自分の部屋の押し入れを開けた。
色んなものがある。
今の俺はあまり物は持たない主義だが、去年集めたコレクションがいくらか仕舞われていた。
ぶっちゃけ今使わないし、この機会に捨てておくか。
その中で俺は奇妙なものを見つけた。
「あん?これって刀か?」
市松模様の布に包まれた長物。
取り出してみると一本の刀のようなものがあった。
鞘と柄は年季を感じさせるような薄い黒。おそらく元は漆黒色だったんだろう。
「かなり重いな」
大体、鉄バット2本分くらいだろうか。
ズッシリした重さはソレが鉄製だからだろう。
もしかして本物か? いや、流石の俺も本物の刀を買おうなんて思わない筈だ。
というか本物ってかなり高いよね?確か無名の刀でも百万は下らない筈。そんなの中学の頃の俺が買えるわけないか。
「……抜けねえ」
本物かどうか確かめるために抜こうとするが、ビクともしない。
どうやら刀身が錆びているようだ。
なら仕方ない。押してダメなら諦めろ。抜いてダメでも諦めろ。
さ、掃除を続けるか。
とりあえず刀を置いて掃除を続ける。
全部終わったのは夕方くらいだろうか。
夕飯食った後に風呂が沸くのをゆっくりまってると、閉めたカーテンの隙間から月が見えた。
綺麗な満月だ。空気が寒いせいかハッキリと見える。
そんな月につられて、俺は刀を持ったま夜の町を散歩しに出かけた。
「………綺麗だ」
夜空で静かに輝く黄金の月。
川のせせらぎと髪を撫でる夜風。
葉と土の匂いが心を落ち着かせてくれる。
俺は土手で横になって、飽きるまで月見を続けた。
さて、帰るか。
気が済んだ俺は横に置いていた刀を拾って立ち上がる。
けっこう遠くまで来てしまったな。小町には何も言わずに行ってしまったし、さっさと帰るか。
「ん?なんで俺、この刀持ってるんだ?」
ここでやっと俺は刀を持ってきたことに気づいた。
この刀はかなり重い。少なくとも手荷物代わりに持って来れるのではない。ならなんで持ってるんだ?
「ま、いっか」
こんな珍品を発掘したのだからテンションが自覚なしに上がったんだろう。それに月夜で刀を引っ提げるのってかっこいいし。…って、もうそういうのは卒業してる筈なんですけどね~。
土手を登って橋を渡る。
結構年季の入った橋だ。確か大正時代に作られたモンだっけ?
まあ、流石にいきなり崩れるなんてことはないと思うが。
「………あ?」
橋を渡った途端、景色が変わった。
住宅地だった場所が全部なくなっており、辺り一面が田んぼになっている。
橋もかなり年季が入っている筈なのに、朱塗りの新品になっている。
「なんだ、ここ……?」
赤い月に照らされながら、俺は混乱した。