「ちょいとアンタ。アタシと遊ばないか? お兄さん格好いいから安くしとくよ」
とある夜道、八幡があてもないような様子で歩いていると、女に声を掛けられた。
いわゆる夜鷹という奴である。
「ああ、いいぜ」
「あら嬉しいわお兄さん」
八幡はニヤニヤしながら女に近寄ると、女は八幡に抱き着いた。
「近くの宿に泊まってるんだ。そこでヤろう」
「ええいいわよ。けどその前に……」
女は八幡に手を伸ばし……。
「お前の肉を食わせ…ぐぇ!?」
八幡の首に噛みつく前に、女の首を刀らしきもので刎ね飛ばした。
「………え?」
ゴロゴロと転がる女の首。
一体何が。そう思う前に女は黒い灰となって消えた。
鬼殺隊に入って三年が経過した。
相変わらず鬼を狩って次の任務に行く毎日。
鬼を一体倒せば、すぐさま次の任務に駆り出される。
だから適度に手を抜いて休まないと、マジで倒れてしまいそうだ。
無論、俺は自愛してサボ……休みを取ろうとしてはいるのだが、監視の目が日に日に目厳しくなっている。
全く、本当にブラックにも程があるぜ。
今回の任務は夜鷹のフリをした鬼、夜鷹鬼を狩れというもの。
相手が夜鷹、つまり娼婦と分かった時点で大体の作戦は決まった。
最初は俺の稀血を使っておびき寄せようと思ったのだが、通じなかったので、客のフリして油断させる方向にチェンジ。隙を見せたら首を刎ねてハイ終了だ。
楽な鬼退治だ。ずっとこのままだったらいいのにな……。
「お、もう終わったか。……って、お前またそんな恰好で鬼狩りしていたのか」
「うるせえ八雲。あんな恰好で町歩けるか」
普段、俺は隊服を着ないし、日輪刀もそのままでは持たない。
この時代の普通の恰好をして、杖や天秤棒に仕込み刀として持ち歩いている。
よく鬼殺隊がやくざ者と間違われるが、そりゃあんな仰々しい格好して、日輪刀をそのまま持ち歩いていたら怪しまれるわ。少しは隠せよ。
「まあいい。じゃあ次だ次。お前に割り当てられている仕事はまだあるからな」
「……まだあるのかよ」
いや、マジでブラックすぎるだろ鬼殺隊。
次の任務はとある町に出る鬼らしき存在を狩れというもの。
ここ最近この町には行方不明者が多発しており、鬼が絡んでいる可能性があるとのこと。
現地で調査を行い、もし鬼がいるのならすぐさま狩れ。ソレが今回の任務だ。
「らしきとか、可能性があるとか。イマイチはっきりしてねえな」
「仕方がないだろ。いくらお館様のお力でも限度がある。それに、こういった不明要素の多い案件は得意だろ?」
ふざけんな。ちゃんとハッキリしてから実行部隊に命令しろよ。
ちゃんと鬼の情報と人相、あとどんな血鬼術を使ってくるのかちゃんと調査してな。じゃねえと、どう動けばいいのか分からねえだろ。
「……愚痴っても仕方ないか。じゃあ、早速調査するか」
鬼殺隊がこの事件をただの行方不明ではないと判断したのは三日前にこの町で殺人事件が起こってからだ。
夜中、怪しい三人の男に一人の女性が囲まれ、抵抗した女性が殺されたという事件があった。
警察は殺人事件として男を捜査中、同時に行方不明事件とも関係ありと捉えているらしい。
ここまでならただの事件止まりだが、鬼殺隊のトップであるお館様は鬼の繋がりの『予感』がしたと仰りだ。
お館様の勘は恐ろしい程に当たる。
先見の明。未来を見通す力と呼ばれ、この超能力で一族代々から財を成し、様々な分野から情報を得、人脈を形成し、鬼殺隊を導いてきたという。
ここまでくれば眉唾だと思うが、俺は全てがウソだとは思ってない。
だって俺にもこの世界に来て特殊能力染みた嗅覚と聴覚があるのだから。
第一、鬼という超越生物がいる時点で元の世界とは違うものがあると考えるのが普通だ。
話を戻す。今大事なことはお館様の特殊能力の真偽ではなく、鬼がいるかどうかだ。今は関係ない。
「それじゃあ行くとするか」