俺の鬼狩りは間違ってない   作:大枝豆もやし

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共同任務

 

 とある夜の町。

 静寂に包まれた一本の道を一人の女らしき人物が歩いていた。

 顔は見えない。

 頭巾を深くかぶり、腰を少し曲げて杖を突いて歩いている。

 そんな彼女(?)の背後に、一人の男……いや、鬼がいた。

 

 息を殺し、気配を消して忍び寄る。

 狙いはもちろん彼女(?)の血肉。

 普段はこんな時間に女は出歩かないのだが、今日は運のいいことにご馳走に巡り合えた。

 

 早速頂こう。

 鬼が鋭い牙と爪を立てて襲い掛かろうとした瞬間……。

 

「………え?」

 

 ゴロゴロと転がる鬼の首。

 一体何が。そう思う前に黒い灰となって消えた。

 

 

 

 

 

「相変わらず鮮やかな手腕だな、八幡」

「まあな」

 

 仕込み刀を鞘に納めながら、八雲の言葉を軽く流す。

 

「鬼の居場所の特定、おびき寄せ方、そして不意の突き方。全て完璧だ。……なんでコレで中堅止まりなんだ」

 

 大げさに溜威を突く八雲。

 コイツいちいちうるさいな。声はダンディなのに何で無駄におしゃべりなんだよ。

 

「うっせえよ。十分いい給料もらってるから文句はねえよ」

「だが帰るための情報収集には心許ないんじゃないのか?」

「………」

 

 ッチ、いつも余計なことを言うなこの烏。

 

「そんなことはどうでもいい。で、次の任務は?」

「もうない、次の任務は明日だ。今日はもう休め」

「珍しいな。いつもはアホみたいに忙しいのに」

「まあな。そんな日もあるさ」

 

 いや、本当に珍しい。

 いつもなら無傷だからといってすぐに仕事を寄越すのに。

 

「明日の共同任務の相手は宇随天元という男だ。かなり破天荒な性格だから覚悟した方がいい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 夕暮れの町の中、一人の大男が町を歩いていた。

 男は奇異な恰好の、2mを超える大柄な男。

 宝石を使った装飾品を身につけ、背に大刀を二本背負っている。

 有り体に言えば男は派手だった。まごうことなくこの場にいる誰よりも派手だった。

 しかし、町の人々は誰一人彼に奇異な目を向けるどころか、意識すらしていなかった。

 

 男はこのような恰好をしていながら、とても存在感が薄かった。

 認知の範囲外へと潜り込み、違和感を覚えさせることなく町の空気に溶け込んでいる。

 目立たず、また認識されず。

 気配を薄めて、死角から死角へ移動して、流れるかのように意識の外へと潜り込んでいた。

 

 耳を澄まし、音を拾い集め、雑多する様々な情報を選別。

 通り過ぎ様に町の音を聞き、有用無用を判断する。

 

 男の名は宇随天元。

 そう遠くない未来に音柱へと至る鬼殺の剣士である。

 

『あのヤクザ者の事務所には鬼がいるらしいぜ』

 

 

「(……ほう)」

 

 一件だけヒットした。

 もっと詳しく情報を得るためにその話をする男たちの死角に接近する。

 

 男達のうわさ話によると、最近この町のヤクザ者が力を付けだしたらしく、その組と敵対する者がどんどん消えていっているらしい。

 警察も色々と調べているらしいが、死体も凶器も存在せず、容疑者すら分からない。よって全て証拠不十分で不起訴になったそうだ。

 

「(なるほどな、確かにただのヤクザじゃねえ可能性がある)」

 

 確証はないが何やら確信めいたものが宇随にはあった。

 鬼なら殺して直ぐ食う事で死体を隠せるし、凶器も必要ない。

 そして何よりも、血鬼術で超常現象を引き起こしてしまえば、人間の常識なんて通じる事無く殺人を行える。

 これらはあくまで推論。しかし筋は通っているし、何よりも背後に鬼がいると確信している。

 調べる価値は十分。それでは早速そのヤクザたちの居場所に…・・。

 

「おい、あんた」

「!?」

 

 身体に染みついた反射行動。

 完全に虚を突かれた。しかしそうとは感じさせない速さで迎撃に移行する。

 振り向きざまに抜刀。遠心力と体重を掛けて斬りかかる。

 しかし、背後から声をかけた男は軽々とソレを防御した。

 

「(しくじった!背後を取られるなんざ元忍の名が泣くぜ!)」

 

 無意識の内に動いた天元の視界に入ったのは、一人の男だった。

 恰好は普通。少なくとも隊服は着ていない。

 しかし、その手に持つ一本の仕込み刀。

 天元の日輪刀を迎撃した杖の感触から、ソレが仕込み刀だと認識出来た。

 

 隊服を着ず、仕込み刀を愛用している剣士。

 天元には心当たりがあった。 

 

「………物騒な挨拶だな」

 

 男―――比企谷八幡は微動だにせず天元をその腐った目で見つめる。

 

「あんたが比企谷か? ったく遅いぜ地味に登場しやがって!」

 

 どすどすと音を上げながら天元は八幡に近づく。

 

「悪い、寝過ごした」

「脳みそ爆発してんのか!? そんな下らねえ理由で遅刻しやがって! あやうく味方殺しになるところだったぜ!」 

 

 こいつが、問題児、比企谷八幡か。

 

 

 天元は一見腹を立てて怒鳴っている風に装っているが、その思考はきわめて冷静であった。

 

 八幡は鬼殺隊でも噂になっている。

 どんな任務でもこなすが、問題点が多い剣士。

 鬼を炙り出すために潜伏している屋敷に火を付ける、街中で堂々と鬼と戦い騒ぎになる、鬼を探すためなら相手がカタギでも拷問にかける。

 噂を全て鵜呑みにするつもりはないが、これだけマイナスイメージな噂が蔓延るということは何かしらあるのだろう。

 そんな相手と合同任務をするのかと、鎹烏から指示を聞いた際はため息を付いたのだが……。

 

「(なかなか骨がありそうじゃねえか)」

 

 元とはいえ忍である自身に気づかれる事無く近づき、咄嗟の反射行動にも対応してみせた。

 性格に難はありそうだが、少なくとも足を引っ張ることはないだろう。

 天元は八幡に対する評価をほんの少し上げた。

 

「それじゃあ、噂のヤクザ事務所にカチコミしに行くぞ」

「お、おい待て! なんでいきなりそんな話になるんだ!?」

 

 背を向けて向かおうとする八幡を天元は止めた。

 

「お前も話はさっき聞いていたろ。鬼が潜伏しているヤクザ事務所にカチコミかけて騒ぎを起こすんだよ。そのどさくさに紛れて鬼を狩る」

「!? お前も聞いていたのか!?」

 

 まさかコイツも自分と同じように情報を集めていたのか。

 しかも、天元に気づいていた。天元は八幡の存在すら気づいていなかったというのに。

 ソレは、八幡の方が情報集と隠密に長けていたという事になる。

 

「(こりゃあ派手に面白そうな奴だな!)」

 

 天元は八幡の評価をもう二段階ほど上げた。

 

「相手はヤクザだ。派手に暴れても別組織からのカチコミだと思って誰も鬼殺隊を疑わないだろう」

「お! そりゃいいぜ! じゃあ今夜は派手に暴れるとするか!」

 

 

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