俺の鬼狩りは間違ってない   作:大枝豆もやし

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謹慎処分

 

 任務終了後、八幡は街中を歩いていた。

 人混みをスルスルとすり抜け、スムーズに歩いて行く。

 そんな彼の背後を、十人程の人影が後を付けていた。

 昨晩、八幡によって返り討ちに遭った鬼殺隊共である。

 前回の仕返しをしに来たのだ。

 気づかれないよう点々とバラけ、隊服ではなく普通の恰好をしており、見事に人混みの中に溶け込んでいる。

 彼らも鬼殺隊。八幡や天元程ではないが、尾行の仕方や気配の消し方は心得ている。

 普通なら同じ隊士でも気づかない。彼らは鬼を狩るために気配を消す事はあっても、狙われることはあまりないから。

 それに今は昼時。敵のいない時間であり、最も隊士が安心できる時。つまり気が緩む時間帯である。

 あと、万が一一人二人はバレることがあっても残った者がカバーできる態勢に入っている。これで万事問題は無い。

 

「おい、アイツ角の道に入ったぞ」

 

 見ると、八幡は人混みから抜けて路地裏に入って行った。

 ソレを追う形で鬼殺隊たちは後を付けていく。

 苦労して人混みを抜け路地裏へと入る。

 しかし、そこには八幡の姿はなかった。

 

「クソ、逃げられたか」

「早く行くぞ」

 

 駆け足になって路地裏を進む鬼殺隊。

 しかし、その先は行き止まりだった。

 

「お、おいどうなってやがる?」

「誰か探してるのか?」

「「「!!?」」」

 

 全員が驚いて振り返ると、そこには先程この路地裏に入って行った筈の八幡が壁を背にして佇んでいた。

 

「ったく、下手くそな尾行しがって。気配が駄々洩れじゃねえか」

「お前……気づいていやがったのか!?」

「当たり前だろ。町に溶け込んだつもりだが、歩き方がおかしい。もっと町の人間を観察して勉強しな」

「こ…この舐めやがって!」

 

 全員が一斉に向かってくる、という失態は犯さない。

 最初に向かってくる者は二人程。他は逃げ道や次の手を潰す形で迫ってくる。

 鬼殺隊として染みついた癖。私闘でも咄嗟に出来るあたり流石は鬼殺隊といったところか。

 

「なんだ、少しはちゃんと出来るじゃねえか」

 

 八幡はソレを嗤いながら、八極拳の構えを取った。

 

 

 

 

 

 

 

 

「八幡、お前また謹慎食らったみたいだな」

 

 藤の家で寝ていると、枕元で八雲が笑いながらそう報告した。

 

 謹慎処分。

 俺が未だに上級隊士に成れない理由の一つである。

 他の隊士と違って価値観の違う俺は意見が合わず、偶に喧嘩する事がある。

 互いに鬼という化物と刀一本で渡り合える剣士だ。当然激しい喧嘩になる。

 その結果、重傷を負うような喧嘩にまで発展して、謹慎を食らってしまう。

 

「うっせえ。先にケンカ売ってきたのは向こうだ」

「そうだ。だがお前はやり過ぎた。いわゆる過剰防衛という奴だな」

「アイツら刃物持ち出したんですけど!?」

「お前ならあの程度の奴ら、容易く対処出来たろ」

「………ッチ」

 

 クソ、反論できない。

 

「まあいいや。長期休暇だと思って楽しませてもらうわ」

「ほう?この機会に“例の呼吸”について考えるのか?」

「まあな」

 

 修行をする前から、俺は全集中の呼吸が使えた。

 しかし、その呼吸はどの呼吸にも当てはまらず、その癖してかなり強い。

 未収得でありながら鬼と戦える力を発揮したかと思いきや、型を一つ使った程度でダウンする程の反動が掛かった。

 あの時は俺がカスだったからああなったと思たのだが、常中を習得した今でも負担が大きく、連発は難しい。

 一体、この呼吸は何なんだ?

 

「ソレだけ、この呼吸が強いってことだよな?」

 

 何で全集中の呼吸を知らなかった頃の俺が、こんな強い呼吸を知ってるんだ?

 あと、俺は本当にこの呼吸を使いこなせるのか?

 

「……まあいい。まずはアイツらのとこに行くか」

「ん?どこ行く気だ?」

 

 

 

「見舞いだよ。義勇と錆兎の」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 謹慎を食らった昼頃、俺は錆兎と義勇の見舞いに向かった。

 診療所の待合室はそんなに混んでない。

 表向きは医療施設なので一般人もいるのだが、鬼から隠れるような立地にあるためあまりいない。

 要するにガラガラという事である。

 

「すいません、義勇と錆兎の面会をお願いしたいのですが」

「はい。お名前は?」

 

 俺の名前を尋ねてくるとは、どうやらこの受付嬢は始めて対応するようだ。

 

「比企谷八幡です」

 

 名乗ると受付嬢から『嫌悪の匂い』がした。

 

「あの問題児……」

 

 なんだ、俺の名を知ってるのか。

 小声で言っても俺の耳なら十分聞こえるぞ。

 

「……奥の突き当りの部屋です」

「ああ」

 

 仮面のように張り付けた笑顔を浮かべて廊下を指さす受付嬢。

 俺は一言言ってから受付嬢から視線を外し奥へ行こうとすると、彼女は他の者等と何やらひそひそ話をしている。

 聞かなくても分かる、俺の悪口だ。

 まあ、聞こうとしてなくても聞こえるけど。

 俺はソレを無視して部屋の中に入った。

 

「よぉ。またお前ら入院してるのか」

 

 病室を訪ねると、丁度起きた二人は微睡んだ目を俺に向けた。

 

「で、具合はどうだ?」

 

 俺は見舞い品の果物を机に置き、備え付けの椅子へと座る。

 

「………最悪だ」

「………気分が悪い」

 

 ソレは俺と会ったせいじゃなく、薬の副作用ということにしておこう。

 

「ったく、お前ら最近入院多いぞ」

「何でお前は……入院したこと、ないんだ……」

「入院、どころか……怪我すらないぞ……」

 

 目をこすりながら二人は言った。

 

 俺は入院するような怪我を負ったことがない。

 せいぜい軽い傷を負う程度。

 そのせいで俺は休む事を許されずに酷使されるのだ。

 

「というか、お前らは無茶し過ぎだ。無理だと思ったら逃げてもいいんだぞ」

「そんな真似できるか。何度も言うが、俺は男としての責務を果たす」

「お前の中の男はどんだけ責務を負ってるんだよ。なあ義勇」

 

 錆兎の「男なら…」が出たので話を打ち切って今度は義勇に振ってみる。

 

「……俺は、姉さんみたいな人を増やしたくない」

「……そうか」

 

 あ、これは無理だ。

 

「まあいい。元気そうで何よりだ。……ほら、さっさと食って怪我直せ」

 

 早速俺は見舞いに持ってきた籠から林檎を取り出し、ナイフで切る。

 スパスパスパン!と、いい音が聞こえるかのように手を動かす。

 うん、我ながらなかなかの早業だ。

 

「八幡、お前って本当に多芸だな」

「まあな。こういった大道芸も潜入するには必要だからな」

「……やってることが鬼殺じゃない。忍者みたいだ」

 

 まあな。

 

「そういや前は日輪刀でやってたな。……ん?お前刀はどうした?」

「没収された。謹慎中だからな」

 

 謹慎されている今、日輪刀を没収されている。だからこれはその代用だ。

 

「……お前、また謹慎処分くらったのか」

「まあな。ということで少し遅い夏休みだ」

 

 それから俺は二人と軽く雑談し、一時間程で俺は病室から出た。

 

 

 

 




八幡は既に五〇体以上の鬼を倒してますが、他の隊士と揉めたりしてちょくちょく謹慎を食らってます。
そのせいで未だに柱になれません。
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