俺の鬼狩りは間違ってない   作:大枝豆もやし

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このssでは累くん滅茶苦茶強いです。


突撃! 累のお家

 那田蜘蛛山の頂上付近にある小屋。

 ボロボロの廃屋同然のそこで、幼い姿をした鬼が壁にもたれて綾取りをしていた。

 彼こそ那田蜘蛛山の家族達の当主、累である。

 

「で、誰が僕の家族になるの?」

 

 累は自分を取り囲むかのように点在する鬼に目を向けた。

 彼らは累の家族候補である。

 

「お、俺だ!」

「いや私よ!」

「違う俺だ!」

 

 我先にと声を出す鬼達。

 彼らはまだ血鬼術も使えない鬼であり、そのせいで日々鬼狩りに怯える日々を過ごしている。故、累の家族(おもちゃ)になってでも力と安全が欲しいのだ。

 もっとも、その先は地獄のような日々であるだが。

 

「(へっ、家族ごっこで鬼狩りから守ってもらうなら安いモンだぜ)」

「(所詮はガキ。適当に父親面すれば誤魔化せるだろ)」

 

 このように、こいつらは累の家族になる事がどういう事か理解していない。

 

「(これはダメ……!!?)」

 

 全員不採用ということで切り刻もうと累が考えた瞬間、彼は咄嗟にその場でしゃがみ込む。

 その刹那、刃が壁から生え、累の首があった地点を通り過ぎた。

 累の首を壁越しに何者かが斬り落とそうとしたのだ。

 

 壁越しに対象を正確に捉え、壁ごと対象の首を斬る。

 普通なら到底不可能。人間技ではない。

 だが、この世界には、ソレを可能とする人間がいる。

 

「鬼狩り……!」

 

 天敵である鬼を狩る組織、鬼殺隊。

 中でも、柱と呼ばれる九人の精鋭は、下弦をも超える戦闘力を誇る。

 

「このッ!!」

 

 怒りを露わにして、累も壁越しに攻撃。

 先程まであやとりを行っていた糸を投げつけた。

 糸は壁を容易く切断。

 破壊音を立てて崩れ、破片が土埃となって舞う。

 文字通り粉々だ。もちろん、その向こうにいる鬼狩りも……。

 

 

【風の呼吸 壱ノ型 塵旋風・削ぎ】

 

 

 今度は、反対側の障子を突き破って鬼狩りが突入した。

 凄まじい勢いの突進。

 竜巻の如く螺旋状に回転しながら、軌道上の鬼を斬り刻む。

 

「な、なんだ!?」

「一体何が起こっている!?」

 

 突然の出来事の連続に鬼達は混乱した。

 視界は壁の破壊によって引き起こされた土埃に塞がれている。

 そんな中、いきなり鬼狩りが襲撃してきたのだ。混乱するに決まっている。

 

 

【風の呼吸 玖ノ型 韋駄天台風】

 

 

 しかし、鬼狩りは待ってくれない。

 天井ギリギリまで高く跳び上がり、空中から大小様々な斬撃を放つ。

 状況が分からず混乱している鬼達はその攻撃すら察知出来ず、次々と首を刎ねられた。

 

「く、首が切られた?!」

「まさか、鬼狩りが……!?」

 

 

【風の呼吸 伍ノ型 木枯らし颪】

 

 

 気づいたころにはもう遅い。

 空中から吹き抜ける風の様に、広範囲を回転しながら斬り付ける。

 この技によって、ほぼ全ての鬼が首を斬られた。後は……。

 

「(よし、これでほぼ全部。あと一体は……!!?)」

 

 着地すると同時、鬼狩りは壁を無理やり突破して外に出る。

 途端、廃屋が大きな音を立てて崩れた。

 もし一歩でも遅ければ、鬼狩りは生き埋めになっていたであろう。

 

 ほっと息を付いた鬼狩りは、すぐさま後ろへ振り返る。

 

「酷い事するな。もし中に生き残りがいたらどうする気だ?」

「いいよ別に。あいつらは最初から家族じゃない。死のうがどうなろうが知ったことじゃないよ」

 

 鬼狩りの視線の先。

 木の上で綾取りをしながら答える累。

 廃屋が壊れたのは、鬼狩りが暴れたのではなく、彼が倒壊させたせいである。

 鬼狩りが来たことを察知した彼は、鬼狩りが廃屋に入るのとほぼ同時に脱出し、支柱を糸で断絶。そのせいで崩れたのだ。

 もっとも、あれだけ暴れたのだから、そんなことをしなくても壊れる筈なのだが。

 

「で? お前は何者? ……もしかして、柱?」

 

 綾取りを一旦止め、鋭い目を鬼狩りに向ける。

 その目には一切の油断や見下しもない。

 宿敵に向けるような視線。

 累は鬼狩りを敵として認め、警戒していた。

 

 鮮やかな不意打ちの手口。

 瞬く間に十数体は鬼を殲滅させた腕前。

 間違いない。この鬼狩りは柱、或いは柱に相当する剣士である。

 

「俺は柱じゃねえよ。ただの平隊士だ」

「そう。僕にとってはどっちでもいいけどね」

 

 そう、どうでもいい。

 相手の階級なんて興味がない。

 重要なのは自分にとって脅威かどうかである。

 

 

「十二鬼月・下弦の伍・累。お前に僕の首が獲れるかな?」

「下弦の伍、か。この間倒したのが陸だから一つ上か」

 

 鬼狩りは刀を、鬼は糸を。

 それぞれの得物を構え、同時に動き出した。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 真夜中の那田蜘蛛山。

 白と黒の影が山中を駆け巡っていた。

 地表を、岩場を、木の上を。

 所構わず凄まじいスピードで二人は走り、激戦を繰り広げていた。

 

 黒の影―――黒い隊服を着ている八幡。

 白の影―――白い服と髪と肌をした累。

 この二人が今宵の主役である。

 

 彼らは現在、木の上で戦闘を行っている。

 

「さっさと落ちてよ」

 

 累が手を翳し、白い玉を発射させた。

 鋼のような糸を束ねた糸玉。

 着弾すると同時に拡がり、相手を切り刻む血鬼術である。

 

「………」

 

 八幡は難なく全て避けた。

 木の幹を、木の枝を、地表を。

 縦横無尽に跳び回り、森全てを足場にすることで。

 木の枝を鉄棒のように掴み、自由自在に方向転換することで。

 八幡は全ての糸玉を避けきった。

 

「(なんて動きしてるんだ!? あんなの、猿でもできやしない!)」

 

 八幡の常人離れした運動能力に戦慄しながらも、累は手を止めない。

 彼もまた人間を超えた身体能力で八幡を翻弄させようと、彼と同じように山を跳び回りながら、更に攻撃の手を強めた。

 糸玉を更に多く、集中的に浴びせる。これなら避けきれまい。

 瞬間、累の目論み通りに足を止めた。

 

「(今だ!)」

 

 

【血鬼術 殺目篭】

 

 

 累の手が赤く染まる。

 鬼の力の源である血が集中しているのだ。

 血を吸う事で糸は赤黒く染まり、更なる力を発揮。

 より堅く、より鋭く、より凶悪に……。

 

 

【螟ゥ縺ョ呼吸 鐚�ノ型】

 

 

 赤黒い糸が断ち切られた。

 髪のように細いながらも、鋼のように堅く、刀のように鋭い糸。

 八幡の斬撃はソレをものともしなかった。

 竜巻のように荒れ狂い、累の糸を食い荒らすかのように切り裂き、引き飛ばす。

 

「(やはりだめか!)」

 

 自身の技が打ち破られたというのに、累は冷静だった。

 彼は最初からこの技で仕留めるつもりなどない。

 相手が強いことは最初から分かっていた。

 故、これが防がれるのも想定内である。

 

 

【血鬼術 刻糸牢・双璧】

 

 

 八幡の前後から、蜘蛛の巣状に束ねられた糸の壁が立ちはだかった。

 血のように赤黒い不吉な壁は、ギロチンの如く八幡へ迫り来る……。

 

 

【螟ゥ縺ョ呼吸 髮イ縺ョ型 流れ雲】

 

 

 八幡はソレを乗り越えた。

 足場がない空中。

 なら、自分で作ればいい。

 

 刀を糸の壁に当て、迫り来る威力を下に流す。

 その勢いで身体が浮かび、糸の束から回避した。

 八幡は逆に、攻撃を足場へと変える事でこの危機を脱却したのだ。

 

 

【血鬼術 流水弦・血死吹き(ちしぶき)

 

 

 八幡が飛び越えた先で、赤黒い糸の束が血飛沫の如く迫り来る。

 回避行動を取ったばかりの彼に、避ける余地はない。

 よって、迎撃するしかない。

 

 

【■の呼吸 弐の型 ●●の天】

 

 

 垂直方向の強烈な斬撃。

 日輪を連想させるその剣劇は、累の集中された力の糸を見事に断ち切って見せた。

 

 八幡は累の攻撃を全て防いでみせた。

 一度ならず二度、二度ならず三度と。

 死に誘う恐るべき蜘蛛の糸の妖術を。

 今度は八幡が鬼に攻撃する番である。

 

 

【螟ゥ縺ョ呼吸 鐚�ノ型】

 

 

 荒れ狂う斬撃の嵐を、累は辛うじて避ける。

 

 鬼の肉体による身体能力だけでは不可能。

 よって血鬼術である糸と合わせる事でなんとか回避した。

 八幡のいた時代で言うワイヤーアクション。

 跳んで避けて空中にいる際中でも、糸を駆使すれば方向転換も可能。同時に八幡を翻弄させる事にも成功。

 初めてやる試みであったというのに、累はワイヤーアクションをものにしてみせた……。

 

「ッグ!」

 

 とは、いかなかった。

 斬撃の波が徐々に掠り、累の小さな体に傷を刻む。

 いくら十二鬼月とはいっても、初めて行う技を完璧に使いこなすのは不可能。

 まして、その相手が柱級の剣士となれば猶更である。

 むしろこの程度で済んでいる方が幸運と言ってもよいだろう。

 

「どうした?付いて来い鬼狩り!」

「ッハ、誰に言ってやがる?」

 

 勝負は振りだし。

 再び互いに森を駆け抜け、隙を狙う……。

 

 

 

【雷の呼吸 壱の型 霹靂一閃】

 

【血鬼術 流水弦・鉄砲水】

 

 

 ほぼ同時に動き出した。

 

 累がワイヤーアクションで真後ろに方向転換。

 勢いを殺すどころか、更に加速させながら、赤黒い血鬼術の糸を束ねて八幡に振り下ろす。

 ソレを待っていたかのように八幡が抜刀。

 最初から来るのが分かっていたかのように絶妙なタイミングで居合を繰り出した。

 刃と糸が交差し、鉄を引き裂くような音が鳴る。

 

 スパンッ!

 

 勝ったのは刃だった。

 累の糸を切り裂き、そのまま首を刎ねる……。

 

「ッグ!」

 

 とはいかなかった。

 累は咄嗟に腕を差し出して回避。

 腕を犠牲にすることで首を守った。

 

 

【水の呼吸 壱の型 水面斬り】

 

 

 追撃の刃を振るう。

 しかしソレも首を斬ることはなかった。

 累が糸によって回避したのだ。

 予め足に引っ掛けた糸を自動で巻く事で、自身の身体を動かすことなく避けたのだ。

 視覚外の装置による、肉体に寄らない予備動作無しの回避行動。

 こればかりは実力で勝る八幡でも見抜けなかった。

 

 しかしソレが何だと言うのだ。

 

 

【風の呼吸―――】

 

 

 一撃目がダメなら次に移ればいいのだ。

 八幡はすぐさま追撃を掛けようとした瞬間……。

 

「ッ!?」

 

 急きょ追撃を辞めて背後に下がった。

 途端に降り注ぐ鋼の糸。

 もし一瞬で遅ければ、八幡は細切れにされていたであろう。

 まあ、彼なら咄嗟に全てを斬り落とせそうだが。

 

「……成程、伏兵と罠を仕込んだか」

「ご名答。正解だよ鬼狩り」

 

 

「僕はただ逃げていたんじゃない! 巣を張っていたんだよ!」

 

 

 辺りを見渡す。

 糸、糸、糸。

 細く見えづらい糸が疎らに張られてある。

 

 そう、累は闇雲に糸玉を発射していたのではない。

 避けた者はこうして巣を張り、八幡を追い詰めるための牢として機能していたのだ。

 この糸がある以上、八幡は自由に動けでなく……。

 

 

【血鬼術 刻糸牢】

 

 

 糸を足場にして、累が跳びながら血鬼術を発動した。

 この糸は累の血鬼術によって作り出されたもの。

 主である累を傷つけることはない。

 

 この糸は累にとっての足場―――縄張りでもあるのだ。

 

「ここはもう僕の巣だ! 部外者は早く出て行け!」

「……やってくれるじゃねえか」

 

 ニヤッと、獰猛な笑みを浮かべながら、八幡は戦闘を続行した。

 






公式ファンブックでは、累の真の実力は下弦の壱や弐に匹敵するほどの強さとありました。
原作で炭治郎が戦えたのも、累が普段ではありえないようなミスを連発したからとあります。義勇に一瞬でやられたのもそのせいでしょう。
ですがこのssでは、最初から相手が強いと分かっている為、油断も隙もありません。その結果、累は原作以上の力を発揮する事になりました。
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