俺の鬼狩りは間違ってない   作:大枝豆もやし

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やっと八幡が柱になります。
長かった。ここまで来るのに八幡は五年以上経過してますからね。


天柱編
柱就任


 

「これより、柱就任の儀を執り行う」

 

 鬼殺隊本拠である産屋敷邸。

 当主である産屋敷輝哉の進行で、柱就任の式典が開かれた。

 

 式典と言っても実に質素なものである。

 参加者は輝哉とその家族である妻“あまね”とその子供二人。観覧者などは一人もいない。

 可能であるならばこれからの同僚である柱達が参加するのだが、彼らは誰もが多忙。まず無理である。

 

 柱。

 鬼殺隊の中で最も位の高い剣士であり、能力が飛び抜けている一騎当千の猛者。

 文字通り、鬼殺隊を支える柱である。

 

 本日は一人の男が新たな柱に任命される。 

 

「比企谷八幡様、前へ」

「はい」

 

 広い中庭に立っている青年──比企谷八幡は数歩前へと進み、縁側の手前で止まる。

 

 神隠しにあって五年以上経過。彼は大分変ってしまった。

 背丈は10㎝も伸び、鍛錬や鬼との戦闘によって逞しい肉体へと成長。

 任務で忙しいのか髪は伸ばしており、背中に付く程の長い髪を一つに束ねている。

 呼吸のおかげが猫背は直っているが、腐った目は相変わらず。しかしその奥には、剣士特有の闘志が輝いている。

 神隠し前の彼を知る者がいれば別人と見間違える程の変わりぶり。

 彼はもう、総務高校の生徒ではなく、鬼殺隊の柱として完成されてしまった。

 

「八幡、君は五大呼吸の複合技を使えるそうだね」

「いいえ。俺が使えるのは風と水と雷であり、その三つを組み合わせているに過ぎません」

「十分にすごいよ。複数の呼吸を使えるだけでもすごいのに、更に二つを掛け合わせるなんて、誰にも到達できなかった」

 

 

「誰よりも空高く飛び、誰よりも天高く進む。―――天柱(そらばしら)なんてどうかな?」

 

 

 

「雷、水、風。どれも天候の要素だ。しかも君の呼吸は天の呼吸って言うんだね。じゃあ、天の柱が相応しいと思うんだけど、どう思う?」

「ありがたく思います。天柱の称号、謹んでお受けします」

 

 輝哉から日輪刀を授かる八幡。

 こうして八幡は天柱となった。

 まあ、この態度からして、あまりやる気がないのは明白なのだが。

 

「柱になることで私たちは出来る限りの援助を行っている。その中には、独自の情報網を使う権限もある」

「……」

 

 八幡は黙って輝哉の話を聞く

 

「君の知りたいことを私たちの力で調べられるかもしれない。良ければ力に成りたいのだけど……どうかな?」

「ッハ、俺をその気にさせるために餌をちらつかせるか。いいぜ、乗ってやるよ」

 

 

 

「ただし、俺はアンタに忠誠を誓わない。俺は俺のために戦っている」

「いいんだよソレで。ソッチの方が私達にも都合がいい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「やっと柱になったかこの怠け者め」

 

 宇随の家―――音屋敷に向かうと、出会い頭に罵倒された。

 

「んだよ、ちゃんと働いてるだろ。俺、もう百体以上鬼を倒したんだぜ?」

「柱になるのに五年もかかる時点で地味に怠け者だ。お前なら三年で派手に成れた筈だろ」

「……音柱先輩にそこまで褒めてもらえるなんて光栄だね」

「半年しか違わねえだろ!」

 

 宇随はため息を付いた。

 

「で? お前はお館様に忠誠誓うのか?」

「は?んなわけねえだろ」

「だろうな……」

 

 再びため息をつく宇随。

 アレ、お館様信者のコイツなら食って掛かると思ったんだが。

 

「猫は首輪を付けない方がよく鼠を狩る。虎や獅子は鬼を狩るってか?」

「なんだそりゃ」

 

 言いたいことは分かる。

 俺みたいな人間は組織で規則に雁字搦めより単独で好き勝手に動いた方がいいという事。

 現に、俺ってけっこう命令無視したりしてるからな。ソレで柱に成れたんだから。

 

 そんな事を考えていると、部屋の外から気配がした。

 

「比企谷様、お召し物が到着しました」

「お、もう来たか」

 

 隠―――前田が襖を開けて荷物を差し出した。

 俺はソレを受け取って中を開ける。

 

「なんだそりゃ?」

「俺の羽織りだ」

 

 中に入っているのは羽織。

 鱗滝さんから貰ったものなんだがここ最近の任務でボロボロになってしまった。

 ソレで実家が仕立て屋の前田さんに頼んで修繕を頼んだ。

 

 相変わらず良い出来だ。

 勝手なカスタマイズをする時が多々あるが、ソレにさえ目を瞑れば問題ない。

 蒼い鱗模様の生地に、背中には翼が生えた龍が空を飛ぶ姿が……え? 龍!?

 

「ちょ、前田さん!? 背中の鯉が龍に成ってるんですけど!?」

「ええ。柱になった記念です。比企谷様ほどの剣士、いつまでも鯉のままでは勿体有りません」

 

 龍……か。俺、こういう派手なデザインあんまり過ぎじゃねえんだよな。

 中学の頃はドラゴンだの髑髏だのといったデザイン好きだったけど、今はそういうの卒業しているというかなんて言うか……。

 

「派手でいいじゃねえか! 鯉が滝を登り切って龍になったって事か! じゃあ次は派手に天を登らねえとな!」

「宇随、お前なあ。こんな格好目立つだろ、任務に支障をきたす」

「お前なら大丈夫だろ。俺並みに気配消すの上手いし」

「そういう問題じゃ……ん?」

 

 部屋の外から気配がしたので、俺は立ち上がって障子を開けに向かう。

 そこには、俺の専属刀鍛冶の甲さんがいた。

 

「比企谷様、柱就任おめでとうございます。柱の刀を打たせてもらうとは、刀鍛冶冥利に尽きます」

「そんな大層なモンじゃねえよ。で、俺の新しい日輪刀は出来たのか?」

「はい、ここに」

 

 俺は渡された荷物を受け取った。

 かなりデカい。中にはけっこういろんな日輪刀が入っており、全部が俺のらしい。

 普通の日輪刀に、俺の身長程はある大太刀に、長い鎖に繋がれた二本の小太刀。

 どれもこれも一度は使った事がある日輪刀だ。

 

「本当は槍や弓矢も持っていきたかったのですが、コレが限界でした。申し訳ございません」

「十分すぎる。というか多いわ」

 

 この人、色んな武器作るの好きだからな。

 刀だけでも色んな種類の刀を日輪刀にしていた。

 ロングソードに大太刀に半月刀に柳葉刀などの普通の刀は勿論、ファルシオンにショーテルにフランベルジュにウルミなんてゲテモノ日輪刀まで作っていたからな。

 刀だけならまだいい。弓矢だったり槍だったり鎌だったり、普通なら使わない武器も容易していたからな。中でも鉄扇出された時はびっくりしたぜ。

 そして、俺に実戦でテストさせてデータ収集。どういう奴に相応しいか、どういう風に戦うべきか、どんな相手に有効か。

 とまあ、そんな感じだ。

 

「比企谷様が試作品を使ってくださるおかげで情報が大分集まり、隊士の方々が使いやすい日論刀が作りやすくなりました。本当に、今までありがとうございます」

「あ、そういや俺の日輪刀もお前の試作通して改良されたって聞いたな」

 

 え、そうなの?

 

「ハイ。比企谷様は武器にあった戦い方をその都度開発してくださるので参考にしやすいのです。複数の呼吸から適切な呼吸を見つけてくださるので尚やりやすいのです」

「その話はもう何度も聞いたな」

「ええ。ですがもうこれで最後のようですね……」

「何だその言い方。ソレじゃあこれからはもう試作を作らねえって事か?」

 

 俺、甲さんの作るゲテモノ日輪刀使うの好きなんだけどな。

 普通の日輪刀にはない戦法取ったり、戦略を練ったりして。

 

「はい、しばらくは。比企谷様が柱になった以上、もう試作を試して頂く時間ないでしょう。それに、私もそのための時間を確保出来なさそうですし」

「………そうか」

 

 そうなると少し寂しいな。

 

「では、刀を」

「ああ」

 

 最初は大太刀に振れる。

 途端、日輪刀の色が染まっていった。

 峰は黒に、刃は虹色に輝く。

 

「あれ?色が変わってる?」

 

 前は三色だったのに何で虹色なんだ。

 雷の黄、風の緑、水の青、そして謎の黒だった筈。

 なのに何で増えてるんだ?

 

 他の型何も触れて見る。

 色の割合に若干差異はあるが、どれも虹色になった。

 

「おそらく新しい呼吸の影響でしょう。今までの剣士も派生の呼吸を開発する事で色が変わったと聞きますし」

「なるほどな」

 

 色が増えた理由。ソレは俺が強くなった証というワケか。そう思うと悪い気はしないな。

 

「いいじゃねえか。刀も服も派手になってよ」

「……まあ、強くなった証と考えたら気分がいいな」

 

 早速、俺は支給された物を受け取った。

 龍の羽織りを着て、黒と虹色の日輪刀を掲げ、長くなった髪を靡かせる。

 

「どうだ?似合うか?」

「お、派手派手になったな!」

「ええ。大変お似合いです」

 

 思った以上にいい反応だ。嘘でない事は匂いですぐにわかるし。

 

「じゃあ、次は鱗滝さん達や胡蝶姉妹にでも見せびらかしに……あん?」

 

 今度は窓の外から気配がした。

 おそらく八雲がまた任務を持ってきたのだろう。

 

「おい八幡、柱になって有頂天になるのはいいが仕事だ」

「天元、派手なお前にしか出来ない任務だ!」

 

 宇随の鎹烏の虹丸と、俺の鎹烏の八雲が同時に話す。

 俺と天元は聖徳太子出来るが、普通なら聞き取れないぞ。

 

「仕方ねえか。比企谷の新しい家を拝みたかったんだけどな」

「だな。マイホームの確認は後でするか」

 

 柱になったばかりの任務。

 どんな強敵が出て来るやら……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 柱としての初任務は呆気ない程簡単に終わった。

 鬼が俺に気づく前に奇襲を掛け、何かする前に首を刎ねる。

 どれだけ強い血鬼術を持っていようが、使う前に殺せたら勝ちだ。

 大体八割ぐらいはこうやって倒してきた。

 

 灰になって崩れる鬼を見送りながら刀を鞘に納める。

 その時、刀身が鏡のように俺の姿を反射した。

 

 この世界で成長した―――変わってしまった俺の姿。

 

 背も伸びて体つきも大分変わった。

 当初はひょろい猫背だった俺が、今では百九十近いムキムキの細マッチョだ。

 髪も大分伸びて背中まで届いている。自分で言うのも何だが、俺って長髪似合うな。元居た世界じゃ校則違反になるからやらなかったわ。

 

 

 こんなに変わった俺を、家族は俺だと分かるのか?

 

 価値観や性格も変わった。

 鬼なんて人外と切った張ったの最前線で戦っているのだ。そりゃ何時までもナヨナヨしてられない。

 最初は無理やりだった。無一文だから、稀血だから、仲成という鬼にそう仕向けられたから。戦う事でしか生きられなかった。

 けど今は違う。俺は進んで鬼狩りをしている。

 任務を通じて強くなることをたのしんでいる。

 

「大分、変わっちまったな」

 

 俺は俺じゃない。

 入学を密かに楽しみ、新しい生活を何処か心待ちにしていた新入生比企谷八幡じゃなくなった。

 鬼殺隊天柱、比企谷八幡だ。

 

 だが、ソレが何だという?

 

 年を経れば変わるのは当然の事。

 むしろ、年齢や環境の変化についていけない方が問題である。

 

 俺は明治時代の世界に適応出来た。

 鬼殺隊というアウトローではあるが世間には迷惑をかけない真っ当な職場に就き、ちゃんと働いた。

 コツコツと真面目に働き、今では柱と言う幹部階級だ。

 時代や文化の違いはあれど、ちゃんと真っ当に社会に適応してる。むしろ大出世までしている。

 

 大丈夫だ。俺は戻ってもやっていける。

 この世界に適応したのと同じように、元の世界に適応すればいいだけの話だ。

 そのためには相応のリハビリは必要だろうが、何時かは元の生活に戻れる。

 大丈夫、大丈夫だ。柱にまでいけた俺ならやれる……。

 

「八幡、考え事の際中に悪いが次の任務だ」

「ああ、直ぐに行く」

 

 また任務のお達しだ。

 柱は多忙だ。休む暇なんてない。

 

 そうだ、今は余計な心配する余裕はないのだ。

 任務に集中しろ、鬼との戦闘に集中しろ。

 目の前に没頭すれば、余計なものを見なくて済む。

 帰った後の事なんて、帰る手段が見つかった後に考えたらいいんだ。

 

「行くぞ八雲。案内を頼むぞ」

 

 今はただ、鬼を切る事だけを考えていればいい。

 





皆さん気づいてると思いますが、今の八幡は帰る気が弱まってます。
既に神隠しに遭って五年以上が経過し、鬼滅の刃の世界に適応し、仕事では幹部にまで昇格した。
そりゃ元の世界に帰る気も失せますわ。
小町はいませんが、この世界には仲間も出来ましたし。
こうやって異世界で色んなしがらみや縁が出来る事で異世界転移者は帰る気が無くなるんじゃないでしょうか。
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