俺の鬼狩りは間違ってない   作:大枝豆もやし

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八幡にはよく緊急任務が入ります。
緊急任務では強敵や血鬼術を使う鬼、厄介な任務が多いからです。
よって、どんな任務でも少ない負傷で帰還し、手段は兎も角達成率が高く、鬼との戦闘経験も任務の経験も豊富な八幡が選ばれました。
無論、他の柱も強くて経験も豊富なのですが、大体コイツ選んでたら正解だろというノリで八幡が選ばれます。


緊急任務

 

 人里から遠く離れた山奥にソレはあった。

 周囲を木々に囲まれた廃屋。

 ソレ以外に建物は存在しない。

 そんな寂しい場所を一人の男が見下ろしていた。

 

「で、アレが鬼の隠れ家か」

 

 男―――八幡は木に登って姿を隠しながら、廃屋を観察していた

 彼の緊急追加任務の内容は一般人の救出。

 鬼によって連れ浚われた子供たちを前任の隊士と共に眼前の廃屋から脱出させ、複数の鬼を討伐することである。

 

「八雲、その浚われた子供ってのは……稀血だな?」

「その通り。おかげで何匹も鬼があの中にいるらしい」

 

 鬼は基本的に群れない。

 無惨によって協力禁止の呪いを掛けられているせいもあるが、ソレに加えて自己中心的な性格のせいである。

 そして、敵対もあまりしない。

 鬼同士の争いは不毛だ。ほぼ不死身の生命体であり、鬼自身も同族に有効なダメージを与える手段が乏しいせいである。よって、余程の事がない限り鬼は他の鬼に対して無干渉に徹する。

 そう、余程の事―――他所の鬼の獲物が稀血でもない限り。

 

 稀血。

 鬼にとって最高の獲物。

 たった一人の稀血だけで、十人分以上の栄養を摂取出来る極上の餌。

 これだけで他の鬼と敵対する価値は十分にある。

 

 稀血を巡る鬼の争いは度々存在しており、稀血を保護するために来た鬼殺隊が両方の鬼を相手にしなくてはいけないケースがある。

 だが、ソレだけでは柱を呼ぶような事態にはならない。

 では、今回は何故八幡が派遣されたのか。ソレは直ぐに明らかになる。

 

「どうやらこの廃屋の家主は十二鬼月らしい」

「……なるほど。じゃあ獲物を搔っ攫おうとしている奴らも下弦並みというわけか」

 

 そういう事である。

 獅子から獲物を奪おうとする豹がいないように、格上の相手から獲物を取ろうとするバカはいない。

 よって、十二鬼月とマトモにぶつかろうとしている鬼はソレに相当する実力とみるべきである。

 

「じゃあ行くか」

 

 八幡は気配を消して窓からこっそりと侵入した。

 

 

 

 

 

 

 

「誰か、入って来た……」

 

 八幡が廃屋に侵入して数分後、一体の鬼が玄関から出て来た。

 ゴキブリのような触角を生やした大柄な肥満体系の鬼。

 その鬼はウネウネと触手を動かしながら辺りを探る。

 

「………見つけた」

 

 ニヤリと鬼は笑いながら、血鬼術を発動した。

 

 

 

 

 

 

「……不気味なとこだな」

「おそらく、家主の鬼が血鬼術で空間に細工をしてるんだろうな。よくある事だ」

 

 肩に止まっている八雲の感想に答えながら、八幡は廊下の天井を見上げる。

 八雲の言う通りに不気味な空間。

 外見はただの廃屋だが、内部は全くの別物。

 どこまでも続く長い廊下に、幾多もある部屋。

 最早これは小屋ではない、屋敷………いや、異空間である。

 

「(しかも屋敷中が鬼臭い。こりゃ血鬼術のせいだな)」

 

 異空間中に漂う異臭。

 常人の嗅覚では捉えられないが、この世界に来てから鋭敏化した八幡の鼻はしっかりと感知していた。

 これは鬼の臭い。もっと言えば血鬼術の臭いである。

 つまりこの空間は鬼の支配下。腹の中のようなもの。

 一切気が抜けない状況。少しの油断が命取りになる。

 

「(!?)」

 

 突然、八幡が刀を構えた。

 鬼の気配―――血鬼術が発動した気配を察知したのだ。

 何が来ても対応出来るように周囲へ気を向けるが……。

 

「ッ!? クソが!!」

 

 既に遅かった。

 発動した血鬼術は回避不能の状態であり、赤い縄のようなものが八幡を引っ張る。

 無論、抵抗はしたが無意味。縄抜けや縄の切断を試みるも、縄は実体がない幽霊のように全てをすり抜けた。その癖縄は八幡をガッチリと縛り上げている。

 出来た事と言えば咄嗟に右腕は拘束から逃れた程度。理不尽な現象である。

 

「つ、捕まえた……!」

 

 鬼がその姿を現す。

 ゴキブリのような触角を生やした大柄な肥満体系の鬼。

 その手には八幡を引っ張る赤い半透明の縄があった。

 

「………これがお前の血鬼術か?」

「そ、そうだよ。僕の血鬼術で、お前の臭いを縄にしたんだ!」

「(臭い縄に変える血鬼術か。ソレで俺の残り香を使ったと。かなり厄介だな)」

 

 敵の言葉と状況から、八幡は冷静に敵の血鬼術を分析した。

 おそらく、敵は八幡の残り香を血鬼術に変えたのだろう。

 なるほど。それなら防ぎようがない。匂いなんて消せるものではないし、残り香なんてどうしても残ってしまう。 まして、消臭剤どころかシャワーすらないこの時代なら猶更だ。

 

 理不尽な血鬼術である。

 発動した時点で回避不能であり、対象に直接掛ける事無く残り香のみで効力を発揮する。

 追跡手段としては破格の血鬼術。しかも同時に相手の部分的な拘束まで行い、尚且つその拘束は解除不可。

 本当にふざけた性能。理不尽にも程がある。

 だが、その理不尽を超えるのが柱という存在である。

 

「へ、へへへ…。俺は、お前の匂いを掴めるけど、お前は俺の血鬼術に触れられない……嬲り殺しだ」

「ッハ、そっれはどうかな?」

 

 勝ち誇る鬼に対し、八幡は見下すように鼻で笑う。

 ソレが癪に障ったのか、鬼は怒りを露わにした。

 

「ば…バカにするな! お前なんて、すぐに殺してやる!」

 

 鬼は力いっぱいに縄を引っ張って手繰り寄せる。

 八幡は抵抗することなく身を任せ……。

 

 

【天の呼吸 雷の型 晴天霹靂】

 

 

 鎖付き小太刀によって鬼の首を刎ねた。

 なんてことはない、相手の力を利用して斬ったのだ。

 拘束されてない右手だけで鎖を引っ張って器用に抜刀。

 同時に引っ張る力に合わせて加速することでタイミングをずらし、尚且つその威力を攻撃力に繋げる。そうやって相手の首を斬ったのだ。

 一瞬の判断で咄嗟に最適解を導き出す。通常では考えられない。

 

「これぐらいなら中級隊士以上でも出来るぞ? 人間を舐めすぎだ」

 

 その考えられない結果を出すのが柱というものである。

 端的に言えば、相手が悪かった……。

 

「……って、アイツの血鬼術解けてないんですけど!?」

 

 相手が悪かったのは八幡も同じ様だった。

 





・天の呼吸 雷の型 晴天霹靂
霹靂一閃の予備動作が無いバージョン。
威力はモデルになった霹靂一閃と遜色ない上に、前方だけでなく全方向に対処可能だが、連続使用できない上に霹靂一閃より負担が掛かるという欠点がある。
八幡は一撃目を晴天霹靂、その次も使う必要がある場合は霹靂一閃に切り替えている。
無論、霹靂一閃だけでなく、他の技に繋げる事も可能。
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