俺の鬼狩りは間違ってない   作:大枝豆もやし

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柱の実力

 

 無事、俺は救助対象とソレを守っていた隊士の煉獄と合流出来た。

 これで任務の第二段階は完了。後はここから脱出し、俺一人で鬼を狩れば終了だ。

 欲を言えば煉獄と一緒に鬼を狩りたいのだが、今の彼はボロボロだ。無理に戦わせるわけにはいかない。

 ということで、俺が先行して鬼の囮になり、救助者の護衛と運搬を煉獄にやらせている。

 どうせ今の俺は臭いで位置がバレバレだしな!

 

「キシャぁ!」

 

 1体目から5体目。

 風の呼吸参ノ型、晴嵐風樹で首を刎ねる。

 周囲を連続で斬りつける事で囲んでいた鬼を一掃した。

 

 5体目から8体目。

 すれ違いざま、霹靂一閃でその首を刎ねた。

 

 8体目か12体目。

 流流舞いによって敵を翻弄しながら首を狩る。

 

 13体目から20体目。

 天の呼吸を使って一気に一掃した。

 

 21体目と22体目。

 煉獄の背後から迫り来る。

 直ぐに煉獄は気付いたがタイミングが少し遅かった。

 愛銃で援護射撃を行って鬼の足を止め、その隙に煉獄が首を斬る。

 

 うん、やっぱ足を引っ張らないサポート役がいると任務は楽だな!

 さっきからちょくちょく鬼の分身らしきお化け毛虫共の襲撃を受けているが、煉獄がいるおかげで救護者をあまり気にせず戦える。

 勿論、俺がいる限りコイツらに手を出させるつもりはないが、生憎俺の身体は一つ。限界がある。だから煉獄との連携は必要不可避だ。

 そもそも、こういった救助任務には、人質を守る係と敵を倒す係の最低二つが必要なのだ。

 だというのに煉獄一人で行かせやがって。本当に管理大丈夫か最近の鬼殺隊は。

 

「すまない煉獄。俺がいながら奴らの接近を許してしまった」

「この程度問題ない! 本来なら俺の任務だ! だというのにここまでしてくれて俺が何もしないのは恥ずかしい事この上ない!」

 

 相変わらず真面目だなコイツ。

 杏寿朗(コイツ)とは槇寿郎(炎柱)との付き合いで知り合ったが、最初からこんな奴だ。

 責任感が強く、背負う必要のないものまで背負う生真面目な性格。

 その志は立派だとは思うが、俺がこんな性格なせいか、少し引いてしまう。

 いい奴過ぎるというのもソレはソレで嫌だ。

 

「さっきから毛虫のようなものばかりだが、他の鬼はいないようだな!」

「俺が全部切った」

「え?」

 

 ここに来る前に、2体程鬼と遭遇したが、すぐに切り伏せてやった。

 力量からしてギリギリ下弦に入れるといった具合の鬼ばかりだった。

 こりゃここの主の実力も高が知れているな。

 

「そういうことだからこのまま進むぞ」

 

 周囲の気配に注意しながら先導する。

 ここに来るまでの道のりはバッチリと覚えているし、方向感覚もこの世界に来て感覚が鋭くなったおかげでちゃんと機能している。

 だが、ここは鬼の血鬼術によって作られた空間だ。普通のやり方では脱出できない。

 そこで、俺の嗅覚が活きることになる。

 

「……ここだ」

 

 鬼の匂いが薄い壁を見つけた。

 コレこそこの空間の裏口。

 鬼の血鬼術による影響が薄く、外に脱出しやすい地点である。

 

 こういった空間系の血鬼術は完全に元の世界から空間を断絶しているわけではない。

 元の世界と隣接しており、何処かに侵入出来る穴のようなものが存在する。

 そこに無理やり衝撃を与えると………。

 

「!? なんだこれは!?」

「大声を出すな煉獄。これは“裏口”だ」

 

 まあ、煉獄が驚くのも無理ないか。

 いきなり空中に歪みのようなものが出来たら誰だってビックリする。

 

「よし、煉獄。ここを通って救護者をこの地点まで送り届けろ」

「なに!? では比企谷さんはどうするんだ!?」

「俺は追ってくる鬼の足止めをする。それまでお前はその子を守れ」

「比企谷さん……うむ、心得た!」

 

 煉獄は不安そうな表情から一変してすぐさま元の活発な顔に戻った。

 一瞬、自分も戦うと言いそうだったが、俺の言いたいことを理解したらしい。

 足手まといを早く戦場の外に送れ。お前も同様だ。言っちゃ悪いがそう言う事だ。

 

「では先に失礼するぞ比企谷さん!」

 

 煉獄は救護者を背負ってこの異空間から元の世界に帰った。

 よし、後は俺がこの異空間の主を倒したら終わりだな。

 

「……こりゃラッキーだ。向こうから来てくれるのか」

 

 鬼が近づいているのを感じる。

 気配からしてこの異空間の主。

 大方、獲物を逃がされてキレているといったところか。

 

「貴様がワシの獲物を横取りしたドグサレかぁぁぁ!?」

 

 鬼が俺目掛けて飛んできた。

 比喩表現じゃなく文字通りの意味だ。

 蛾と老婆が混ざったかのような姿。

 血走った目を俺に向け、羽を羽ばたかせている。

 

 

【天の呼吸 雷の型 晴天霹靂】

 

 

 先手必勝。何かされる前に、血鬼術を使う前に倒す。これが理想的だ。

 まあ、そう簡単にはいかないが。

 

「(ッチ、ダメか)」

 

 手応えがない。

 確かに首を捉えた筈だが、布でも切ったかのような薄い感触だった。

 

「いきなり家主の首を斬ろうとするなんて礼儀のなってない小僧だね」

「鬼に見せる礼儀なんざねえよ。で、次は何処を斬り落とされたい?」

 

 とりあえず挑発する。

 戦いで大事なのは自身のペースに乗せる事。

 その為なら多少らしくないことも演技でやってやる。

 

「ククク、儂には分かるぞ。お前、首を斬っても死なない事に焦っておるな?」

「いや別に」

 

 こういった事は一度経験しているからな。

 

「虚勢を張りおって。言っておくが儂の血鬼術はお前たち鬼狩りとは相性最悪じゃぞ? なにせ儂にはお前たちの攻撃謎一切効かない…」

 

 

【風の呼吸 参ノ型 晴嵐風樹】

 

 

 竜巻のような連続攻撃でバラバラにしてやる。

 しかしこれも手ごたえはなかった。

 だが、無駄ではなかった……。

 

「おやおや。無意味だと言っているというのに分からないのかい?」

「……なるほど、そういう仕組みね」

 

 この血鬼術のタネが分かった。

 

 斬った部位が赤い蛾の群れに変形し、周囲を飛び回っている。

 おそらく、この鬼の肉体はこの蛾の群れで構成されているのだろう。

 斬り刻んでもその部位を蛾の姿に変異分離させ、独立する事でダメージを無効化している。…と、いったところか。

 なら、この蛾を斬ればどうなる?

 

「……無駄か」

「その通り! 斬れば斬る程お前を襲う蝶は増えていく!! 行け! 儂の蝶達!」

 

 向かってくる蛾共。

 それらを斬るが分裂するだけで意味はなかった。

 むしろ敵を増やす事になるので逆効果といってもいい。

 あと、あの蛾婆、分裂体を蝶だと思ってるのか。どう見ても蛾だぞコレ。

 

「だがこの蛾からは圧が感じられない。多分攻撃力はないんじゃないのか?」

「ほう、そこに気づくのかい。確かに儂の蝶たちは非力じゃ。だが問題ない。儂の蝶達の攻撃は下品な暴力ではないんじゃよ!」

「何を言って…ああ、そういう事」

 

 蛾共から漂うツンとした臭い。

 コレ、毒の臭いだ。

 

「常に周囲へ毒の鱗粉を振りまいている! 段々体が痺れてきたじゃう? 儂の蝶達の毒は相手を徐々に麻痺させる! 身動きが取れなくなった時こそがお前の死に時じゃ!」

「そうか。なら少し換気するか」

 

 

【天の呼吸 嵐の型 青嵐・春疾風(はるはやて)】

 

 

 刀を連続で振るって風圧を発生させる。

 斬る事より扇ぐ事を重視した剣戟。

 生み出された極小規模の竜巻によって毒粉を吹き飛ばした。

 

 でもまあ、本当の目的は違うんだけどな。

 

「フンッ、風圧で鱗粉を吹き飛ばしたか。無駄に足掻くねぇ。苦しむ時間が長引くだけだというのに………う!?」

 

 お目当ての蛾を斬る。

 他の蛾より臭いも気配も濃い個体。

 途端、鬼が苦しみ出した。

 

「イッ…ギッ……!? バ…バカッ…な…!? おっお前どうやって儂の首の位置をぉぉ!!」

「探しものは得意なんだ」

 

 大体あの鬼の能力には想像がついていた。

 肉体を蛾に変えて分裂しても、肉体を統率する役目の部位だったり、或いは弱点となる首に相当する部位が存在する。

 分裂系の血鬼術を使う鬼にはよくある欠点だ。

 

 後は簡単。その弱点を嗅ぎ分ければいい。

 さっき吹き飛ばしたのは毒粉だけじゃない。鬼の臭いも換気する事で嗅ぎ分けられるようにした。

 

「お前の血鬼術は強力だが……相手が悪かったな。柱が来なけりゃお前が勝ってた」

「柱…だと!? そ、そんな……くそったれがぁ!!」

 

 柱に遭った自身の不運を呪ってか、それとも単に俺に対する恨みか。

 鬼は恨み事を叫びながら灰となって消えて逝った。

 

「さて、じゃあ次の仕事行くか」

 

 いきなり緊急任務が入って来たせいで大分予定が狂ってしまった。

 最後の仕事は結構段取りが厳しんだが、まだ間に合うか?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……凄まじい」

 

 空間の穴から煉獄は八幡の戦闘を眺めていた。

 救護者は既に避難済み。

 外で待機していた隠に預け、藤の花のお守りを渡してある。もう鬼に襲われるようなことはないだろう。

 よって、煉獄はこうして見学する余裕が出来た。

 

 煉獄から見ても八幡の実力は相当高いものであった。

 剣技や隠密の腕は勿論、戦いの流れを作るのが異様に上手い。

 血鬼術と戦法を見破る観察眼、ソレを元に敵の行動を予測し、的確に最善手を打つ作戦立案能力と実行力。

 どれもこれも最高点。常に最善手を見つけ出し、実行している。

 

「まるで詰将棋……いや、未来視でもしているかのようだ」

 

 煉獄は八幡の戦闘を何度か近場で見たことがある。

 彼から見た八幡の戦法は詰将棋。

 どの戦いも常に最善手を打っており、ジワジワと相手を追い詰める。

 勿論、摩訶不思議且つ理不尽な血鬼術によって盤をひっくり返される事はあるが、すぐさま修正して再び詰将棋盤へと引き戻す。

 煉獄にはそのやり方が未来を見ているかのように感じていた。

 無論、未来視なんかではなく、経験や情報に基づいていることは知っている。知ってはいるのだが、そう思ってしまう程に八幡の動きはスムーズかつスマートであった。

 

「あれが……柱……俺の目指す地点!」

 

 煉獄は目を輝かせながら、八幡の背中を見送った。

 




八幡は煉獄さんと槇寿郎関連で知り合いました。
この時期は未だ槇寿郎が炎柱をやってるので。
で、八幡は槇寿郎を煉獄さん、杏寿郎の方を煉獄と呼んでます。
一応、このssでは八幡が年上ですからね。何時に成ったら帰れるんでしょうか。
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