八幡はあまり賭博に手を出しません。
彼にとってはヌルゲーになりますので。
俺は……何も出来ないのか。
実弥は自分の非力さに打ちのめされ、絶望しかけていた。
倒して見せる。
今度こそ、必ず。仲間と一緒に帰るんだ。
どれほどそれが不可避であったとしても。どんなに俺が傷ついたとしても。
だが、そんな些細な想いも許されないのか。
負ける時は負ける。
ソレも呆気なく、易々と。
そんなことはとっくに分かった。
何度も聞いたではないか、何度も見て来たではないか。
その度に、絶望する度に、現実を突きつけられる度に、神や仏に願ってきた。
なのに……何故こんなことに!?
悔しい。
また勝てないのか。
こんなところで終わってしまうのか。
俺が弱いせいか? 相手が強いからか? だからここで諦めろっていうのか?
仲間はどうなる?
まだ息がある……いや、生かされているだけだ。
奴がその気になればいつでも殺せる。
頼む。
お願いだ、今だけでいい。
この瞬間だけ、どうか勝たせてくれ。
何でもいい。
誰か、救ってくれ。
――――その願いが、『運命』を引き寄せた。
「よっしゃあ来た~! ストレートフラッシュだ!」
「悪いな、こっちはロイヤルストレートフラッシュだ」
八幡のスペードのロイヤルストレートフラッシュによって実弥のストレートフラッシュは打ち破られた。
「だあ~~~~!! クソ、また負けたぁ!」
晴天の下、実弥はフンドシ一丁で喚いていた。
「嘘だろ、ろ……ロイヤルストレートフラッシュ!?」
「信じられない……! 八幡、お前ズルしたろ!?」
同じく騒ぐのはこれまた同じくフンドシ一丁の義勇と錆兎。
やれやれ、ボロ負けだからってイカサマ疑うとか最低だな。
「お前ら何やってんだ?」
「あ、宇随か。見ての通り博打だ」
後ろから足音も気配も消して宇随が現れる。
いつもなら不気味だからソレやめろと言ってやるが、今の俺は機嫌がいい。ちゃんと答えてやることにした。
「博打って、お前らまだ比企谷に挑んでいるのか!? この間麻雀でボロ負けしたとこだろ!?」
「負けたまま引き下がって堪るか!」
叫ぶ錆兎だが、覇気が普段よりない。
まあ、フンドシ一丁になるまで毟り取られたんじゃ仕方ないか。
見ての通り分かるが、俺たちは
柱同士で遊ぶ機会はあまりない。
ただでさえお互い多忙で貴重な戦力だ。遊ばせるわけがない。
けど、年で何度かはこうして集まる機会が必ずある。
柱合会議の後だ。
今までは終わったらすぐ帰ったのだが、去年ぐらいからこうして誘われるようになった。
最初はただの遊びだった。
双六だったり花札だったりしていたのだが、あまりにも俺が勝ちすぎてしまった。
で、ムキになったコイツらの相手が面倒臭くて賭けをするようになったのだが、ソレでも諦めない。
何で脱衣ルールで素っ裸に何度もなっているというのに、こうして俺に挑んでくるんだコイツらは。
「クソが! 外国の花札だったらイケるんじゃねえのかよ!?」
「考えが甘いな。柱なら初見の
地べたに落ちたトランプを拾いながら俺は答える。
「……なんで前こんなに強いんだよ? 剣の腕とは関係ねえだろ?」
「血鬼術の中には
半分は本当だ。
鬼の中には某奇妙な冒険に登場するようなギャンブルによる血鬼術を使う鬼もいた。
ただ、そういった相手は大体不意打ちすれば血鬼術の効力が切れて被害者も食われてない限り助かる。
まあ、ワケあって勝負して、ソイツをボロカスに負かしてやったが。
「まったく、三人がかりでやっても勝てないとか、お前ら博打の才能ねえな。もう辞めたら?」
「「「諦められるか!!」」」
なんでこういうとこだけ息が合うんだ?
「三人がかり? もしかしてこいつ等、イカサマしてたのか?」
「ああ、三人で情報を共有とかしてな。けどこのザマだ」
「……まあ、お前相手だからな」
おい宇随、ソレはどういう意味だ?
「あ、そうだった比企谷。お前宛に手紙来てるぞ」
「え、手紙? 誰からだ?」
俺の知り合いなんて鬼殺隊関係しかいないぞ。けどソレなら鎹烏や隠の人を使うはず。なら誰だ?
まあいい、じっくり部屋で読むか。
「じゃあな、雑魚共。俺はお前らの服を換金してくるわ」
「そうやって地味に煽るから諦めねえんだよ」
俺は悔しそうに睨む雑魚共―――水、風、海と、三つの柱の恨みがましい視線を背にした。
「っと、そうだった。これやるよ」
俺は自分の席の隣に置いていた袋から一つの包みを取り出して机の上に置く。
「あ? 何だコレ?」
「残念賞だ」
「………」
どうせロクなものじゃないだろという目で俺をみる三人。
失礼な奴らだ。折角後輩のために作ってやったというのに、ソレを無碍にするのか。そうかそうかー。
「そうか残念だな。折角残念賞のプリンを用意してやったのに。そうか要らないのかー」
「「「プリン!?」」」
途端、甘い物好きな実弥だけでなく、普段しかめっ面してる錆兎やボーとしてる義勇も目を輝かせた。
「ちゃんと八幡が作った奴だな!?」
「茶茶碗蒸し擬きだと許さんからな!」
「皿とスプーンだ! 早く食べるぞ!」
いそいそと準備しだす三人。
本当に現金な奴らだ。
「(まあ、この時代じゃ洋菓子なんて食べる機会なかなかないから仕方ないか)」
前の世界の知識を元に作った出来損ないだが、食文化が平成より発展してないこの時代ではかなり喜ばれる。これが結構気持ちいのだ。
よくなろう系で現代知識チートをやっているが、その気持ちが分かった気がする。これは大変気分がいい。
「おい八幡、俺のは?」
「アレは残念賞兼参加賞だ。あとお前には今すぐやってもらうことがある」
「あん?やってもらうこと?なんだそりゃ?」
「今から仕事に付き合ってもらうぞ」
俺は血鬼術の匂いがする手紙を見せびらかした。
とある洞窟に、数体程の鬼が
本来、鬼は群れない筈。なのに何故こんなに集まっているのか……。
「!? 来るぞお前ら! 構えろ!」
初老の鬼が叫ぶ。
途端、他の鬼達が初老の鬼の眼前に目を向けて臨戦態勢に入った。
まるで、そこに誰かを待ち構えるかのように。
あまり接近しないよう、距離を取って。
「この感じ…たぶん音柱に届けた奴だ」
「確か音柱ってそんなに強くないんだったな」
「けど柱に変わりはない。気を引き締めるぞ」
鬼達が会話をしながらそれぞれの血鬼術を発動させようとした途端……。
ドォォォォン!
突然、鬼達の前に爆弾……いや、煙玉が現れた。
破裂したと同時、周囲に煙をまき散らし、鬼達の視界を遮る。
「な、なんだコレは!? 話が違うじゃねえか!」
「一体どうなってやがる!? 柱が来るんじゃねえのかよ!?」
騒ぐ鬼達。
当然であろう、いきなり出て来た物体から煙が吹き出したら誰だって慌てる。
そして、不幸なことは連続して続く……。
【雷の呼吸 壱の型 霹靂一閃】
突如、雷鳴が煙幕の中で鳴り響いた。
海柱は錆兎のことを指します。
水柱は義勇以外考えられなかったので、じゃあ錆兎は水の呼吸を元にしたオリ柱にしました。
名前の由来は天に対抗するための海という意味と、水より激しい一面のある錆兎の気性をモチーフしています。
海の呼吸の型は考えていません。ただ、水の呼吸の柔軟さに加えて荒れ狂う海のような激しさを持つ剣戟をイメージしてます。