俺の鬼狩りは間違ってない   作:大枝豆もやし

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毎回思うんですけど鬼殺隊って鬼の情報をちゃんと共有してるんでしょうか


柱狩り

 

「……まだいやがんのかよ」

 

 洞窟の中、俺は逃げた鬼を追っていた。

 

 あと四体。

 逃げた鬼が一体と、逃げた先にいる鬼が三体。

 おそらく、逃げた鬼はその三体を俺にぶつけたいのだろう。

 

 いいだろう、面倒だからまとめてやってやるよ。

 

 普通なら、敵の戦力が集中するのを許すなんて悪手中の悪手だが、今日は特別に許してやる。

 最近、マトモに戦ったのは下弦の壱ぐらい。後はひと月前に岩柱さんとやった柱稽古だ。おかげで腕が訛って仕方ない。

 これからは上弦との戦い、ひいてはそのボスである無惨との戦闘を視野に入れているというのに、この有り様は不味い。

 今回はいい経験だ、違う血鬼術を使う

 そうするべきだと、この戦いは俺にとって成長の糧になると俺の勘が言っている。

 

「(ッ!?)」

 

 突然、背後から気配がした。

 気配からしておそらく血鬼術。遅れて、鬼の気配もした。

 いつの間に。そんなありきたりな反応をするまでもなく、俺の身体はすぐさま最適解を出す。

 

 バンバンッ!

 ジグザグに後ろに移動しながら、左腰のホルスターから銃を引き抜き、牽制射撃を行う。

 敵の血鬼術が分からない以上、下手に近づくのは危険。よって遠距離からの牽制に徹した。

 まあ、どんな血鬼術を使うか大体の見当は射撃しながら思い付いたが。

 

 今度は横から気配がした。

 右にある壁。洞窟の石壁から突然手が現れた。

 

 捕まれる前に背後へ跳んで回避。同時に牽制射撃を行う。

 無論、利き手にある日輪刀は先程の鬼に向けて圧をかけて牽制する。

 

「効かない、か」

 

 壁から出てきた鬼は全ての銃弾をすり抜けた。

 まるで幽霊のように。

 コレでこの鬼が何の血鬼術を使うか大体理解出来た。

 

 次は死角から突如現れた光の円が現れた。

 嫌な予感がしたので咄嗟にその場から離れる。

 遅れて、円の中から血飛沫が飛び、俺のいた場所に掛かる。

 瞬間、血の掛かった箇所が抉れた。

 なるほど、そういう血鬼術か。

 

「(けっこう……いや、かなり強力な血鬼術だな)」

 

 三体とも強い鬼だ。

 圧力からして強さは大したことないが、使う血鬼術が凶悪極まりない。

 人間をもっと食って力を付けたら、まず間違いなく強い鬼になるであろう。

 まあ、今の段階ではそれなりだが。

 

「これならいい練習台になるな」

 

 俺は刀と銃を構え、鬼の攻撃に備えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とある洞窟の中。

 八幡は三体の鬼の猛攻に耐え忍んでいた。

 

 1体目の鬼の名は瞬移。血鬼術は瞬間移動である。

 文字通りのテレポート。一瞬で敵の死角に潜り込み、一瞬で敵の射程外への移動を可能にする。また、敵の視覚外で攻撃の体勢を予め整えた後に敵の懐へ瞬間移動することでノーモンシュン(ノーモーション)で攻撃を繰り出す事も出来る。

 この鬼の前では距離の概念は通用しない。日輪刀しか有効打が存在しない鬼殺隊にとっては天敵といってもいい鬼である。

 

 2体目の鬼の名は透鬼。血鬼術は透過である。

 どんな攻撃も幽霊のように透き通る事で無力化。また、地面や壁を透過する事で不意打ち等も行える。

 この鬼の前では物理攻撃など意味がない。日輪刀しか有効打が存在しない鬼殺隊にとっては天敵といってもいい鬼である。

 

 3体目の鬼の名は繋鬼。血鬼術はワームホールである。

 どんな攻撃もワームホールで無力化し、尚且つ敵に文字通り返す。逆に自身の攻撃はワームホールを通じてどの方角や角度からでも繰り出せる。

 この鬼の前では空間の概念は通用しない。日輪刀しか有効打が存在しない鬼殺隊にとっては天敵といってもいい鬼である。

 

 

 

 だというのに、八幡は三体同時で相手取っていた。

 

 

 一体一体が凶悪な血鬼術を行使する鬼。

 鬼殺隊の天敵といってもいいような血鬼術を、彼は悠々と対処している。

 これだけでも異様な光景。だというのに、まだ先があった。

 

「(もうそろそろいっか……)」

 

 

 

 

【天の呼吸 奥義・弐(セカンド) 魔感(まがん)

 

 

 

 

 

 瞬間、八幡の景色が変わった。

 

 色のある世界からモノクロへと。

 

 時の流れは緩慢なものへ、まるでスローモーションのように動く。

 

 これは彼だけが見れる光景。八幡は、悪魔のように黒い目と赤い瞳で、自分だけの世界を眺めた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 瞬間、2体の鬼が斬られた。

 

 先ずは2体の鬼の足止め。

 背後に瞬間移動しようとする瞬鬼の動きを先読みして、移動先にある上の岩に発砲。

 平行して自身の頭上に現れるワームホールの存在を予め察知し、形勢される前に銃弾を『置いた』。

 結果、瞬鬼は瞬間移動した瞬間に頭上から落ちた岩の下敷きに、繋鬼は攻撃しようと繋げたワームホールから飛び出した銃弾を食らう。

 これらの行動に掛かった時間は0.2秒。この一秒にすら満たない時間で八幡はこの二体の鬼の不意を、これまら予期せぬような手段で突いてみせた

 その間に八幡は次の行動へと移る。

 

 

【天の呼吸 雷の型 早鳴】

 

 

 先ず一体。

 二体の鬼の攻撃とタイミングをずらして攻撃してきた透鬼目掛けて抜刀。

 まるで最初から来るのが分かっていたかのように、斬撃を首の通る地点へと『置く』。

 結果、八幡は速度だけに集中し、力を一切入れる事無く鬼の首を取ることに成功した。

 

「な…なんだと!?」

 

 銃弾の傷から再生した繋鬼が目の前の光景に唖然とする。

 その隙が仇となった。

 

 

【天の呼吸 雷の型 晴天霹靂・変速】

 

 

 突然、雷の如き勢いと速度の斬撃が繋鬼……ではなく。

 

 

 

 

 

 

「―――は?」

 

 瞬鬼へと繰り出された。

 テレポートした先。

 まるで最初からそこへ移動するのが分かったかのように先回りした八幡。

 彼は首が移動する地点に斬撃を『置く』ことで、瞬鬼の首を斬り落とした。

 

 

 一瞬。

 ほんの瞬きしている間の出来事。

 あまりの急転回の死に、首を斬られた本人ですら認識出来なかった。

 

 

 

「クソ、これならどうだ!!」

 

 光の円を数個生み出し、その中へ自身の血を振りかける。

 瞬間、葉蔵の周囲に光の円が現れ、そこから血飛沫が葉蔵に襲い掛かった。

 

 一つ避けたらまた別の角度から血が襲い掛かる。

 ソレを避けたとしても、別の角度から。

 物理的にありえない方角から来る攻撃。

 この理不尽な血鬼術に八幡は追い込まれ……。

 

 バンバン!

 

 なかった。

 

 放たれた弾丸は複数ある円と円の間を抜けて繋鬼へと命中した。

 繋鬼が空間を繋げられるのは、あくまでも円の内部だけ。

 たとえ複数だしてもその隙間を狙えば無意味である。

 まして相手はあの八幡。

 彼なら複数の光の円を出しても、円と円の隙間目掛けて尚且つ繋鬼に当てられる。

 

「ぐぺッ……!」

 

 ヘッドショット。

 放たれた銃弾は頭を貫き、脳を破壊。

 結果、再生するまでとはいえ繋鬼の思考力を奪う。

 しかしソレで充分。意識を奪ったおかげで血鬼術は解けたのだから。 

 

「ここまで近づいたら、お前の血鬼術も意味ねえな?」

 

 血鬼術が解けた間に、八幡は繋鬼の懐に接近。

 ここまで来れば、殺すも生かすも彼の自由である。

 

「(そ、そんな……たった、たった少しの時間であっさりと……!?)」

 

 繋鬼は戦慄した。

 先程まで膠着状態……いや、こちらが有利だったはず。

 なのに、少しの隙を見つけてあっさりと形勢逆転させた。

 

 ありえない。

 少しも隙を晒していない。

 最後まで追いつめた筈。

 有利な状況だった筈だ

 なのに何故……何故たった一瞬でこうも覆せる!?

 

 おかしい、異常だ。

 少なくとも自分が同じ立場なら出来ない。出来るはずがない。

 

 

 一応言っておくが、この鬼達は鬼の中でも強い部類だ。

 三体とも使い勝手がよく、かなり強い血鬼術であり、鬼殺隊にとっては天敵のようなもの。

 何十人も食い殺し、位の高い鬼殺隊員を何人も殺してきた。

 実力は十二鬼月に匹敵し、協力すれば柱も狩れるかもしれない。

 しかし、それでも八幡には勝てない。

 

「……化け物め!!」

 

 忌々しそうに、顔を歪める繋鬼。

 そうだ、本物の化物は自分達鬼じゃない。

 人間でありながら本来なら天敵である鬼を狩れる怪物。

 本物の化け物とは、こういった異常者のことを指すのだと。

 

 悪魔。

 まるで未来を予知しているかのように、破滅へと誘導するかのように。

 こんな真似が出来るのは、鬼を超えた化物である悪魔にしか出来ない。

 

「まさか、鬼に悪魔呼ばわりされるなんてな」

 

 あっさりと、八幡は十二鬼月に匹敵する鬼の首を刎ねた。

 

「しかし、今回は大量だな……こりゃ今回書く報告書は大変そうだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「二番目の奥義もなかなかサマに成って来たな」

 

 俺は魔感を解除しながら洞窟の奥へと向かう。

 

 魔感。

 危機に瀕した際に風景がスローモーションに切り替わる現象、タキサイキア現象を人為的に引き起こす技。速い話が自分で走馬灯を見る技だ。

 速く動けるようになるわけではないが、世界がスローモーションに見えるほど思考が加速。更に感覚が通常時と比べて格段に引き上げられ、通常でも鋭い俺の感覚が更に鋭くなる。

 結果、敵の行動を的確に読み、相手が動く前に最適解を出すことが出来る。

 

 瞬間移動する鬼。テレポートする瞬間と移動先を増幅された感覚と直感で見極め、タイミングを合わせて移動先に予め刀を振る。すると勝手に刀は首を捉える。

 

 透き通る鬼。あの鬼は攻撃する瞬間だけは攻撃を当てる為にどうしても血鬼術を解かなくてはいけない。ソレを見極めてタイミングを合わせたら自ずと俺の斬撃は当たる。

 

 ワームホールを形成する鬼。ワームホールを形成する直前に銃弾を放つ事で、形成完了した後に銃弾がワームホールを逆走して鬼に当たる。

 

 どれも普通なら無理だが、魔感で増幅された感覚(スローモーション)の世界なら可能だ。

 相手の行動が完了する前に、行動の内容と位置を正確に把握してしまえば、たとえ瞬間移動だろうが透過だろうがワームホールだろうが簡単に対処できる。

 

 2つの奥義を獲得してからは鬼狩りが楽になった。

 十二鬼月並みに強い鬼でも奥義・壱(ファースト)を使えば楽々と倒せるし、厄介な血鬼術も奥義・弐(セカンド)を使えば簡単に対処出来る。

 

 奥義・壱(ファースト)奥義・弐(セカンド)。この二つがあれば、上弦も倒せる……。

 

「ッ! やっぱ少し痛むか」

 

 ズキッと、軽く頭痛がした。

 脳のリミッターを解除する以上、その弊害はデカい。乱用すれば脳に深刻なダメージを与え、最悪精神病になる可能性がある。

 最初の頃は酷かった。ほんの数秒発動しただけで頭痛がするし、その状態を維持して動こうとすれば、解除した後は激しい頭痛と眩暈で苦しめられた。

 今では慣れて数十分ぐらい維持できるが、ソレでもヤバい技であることに変わりない。あまり多用は出来そうにない。本当にヤバい時にだけ使おう。

 

「あとはお前の首を斬れば終わりだな」

「ひ、ヒィ……」

 

 俺は痩せた中年男の鬼に刀を向けた。

 

「お、俺を殺す気か!? 天柱、比企谷八幡!」

「なるほど、名前を呼んで答えた人間に洗脳系の血鬼術を掛けられるのか」

「!!?」

 

 勘に従って言ったのが、リアクションからして当たりのようだな。

 そして、コイツの狙いも、どこまで俺たちの事を知ってるか大体直感で分かる。

 

「お前の目的は柱狩り。俺たちについて知ってるのは柱の名前と特性ぐらい。なら用はないな」

「ま、待て……!」

 

 スパンッ。

 俺は鬼の首を刎ねた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「柱狩り、か。もうそんな時期なんだね」

 

 とある屋敷の縁側。日の光を浴びながら、産屋敷耀哉は娘からの報告を聞いていた。

 

「はい、今回被害に遭われた柱様は比企谷様だそうです」

「八幡か。それで、あの子は無事に帰って来たんだろうね?」

「はい。血鬼術によって連れ去られましたが、十体近くの鬼を返り討ちになされました」

「そうか、流石は最優の柱だ」

 

 耀哉は満足そうに頷く。

 

「本来なら上弦の鬼が柱狩りをやる筈だが、今回は十二鬼月ですらないか」

「おそらく、鬼側にも何かしらの事情があるかと」

 

 柱狩り。

 文字通り鬼が柱を狩る事であり、その大半は上弦の鬼が行う。

 柱が育つ頃になると上弦の鬼がソレを刈り取ってしまうのだ。

 柱クラスの剣士がなかなか生まれないのはコレが原因である。

 

「それは違うよ、くいな。おそらく本格的な柱狩りはこれから始まる」

「と、言いますと?」

 

 

「上弦の鬼が動く。そんな気がするんだ」

 

 

 

 




八幡は倒してきた鬼の情報をレポートとして提出してます。
今までの鬼のデータを集めることで、今後の鬼狩りをスムーズにするためです。
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