俺の鬼狩りは間違ってない   作:大枝豆もやし

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龍の目覚め

 

 深い深い湖の中、一匹の龍がとぐろを巻いていた。

 

 龍の目が開く。

 意識はまだ微睡みの中にいるのか、眠たげな様子。

 しかし、その脈動は、鼓動音は今にも動き出しそうであった。

 

 覚醒の時が来た。

 今こそ飛び立つときである。

 この狭い水の中を飛び出し、天へと昇る時。

 

 雷、風、水を会得した

 

 ソレらを合わせて天の力の一端を得た。

 

 鬼人の肉体と悪魔の感覚を身に着けた。

 

 次は、この龍の力を手にする番である。

 

 

『グオオオオオオオオオオオオオおおオオオオオオオオオオオオオ!!!!』

 

 龍は、湖の中から、天へと昇って行った。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……ッ私は、真の芸術家だァァアアアアアアアア!!!!!!!」

 

 慟哭と同時、玉壺に変化が生じた。

 死を目の前にしたせいか、それとも自称最高の芸術家としての意地によるものか。

 無惨から分けられし鬼の血が玉壺の何かに対して急速に感応し、鬼としての力が強化されていく。

 

「!?」

 

 突然の出来事に嫌な予感がした八幡は、咄嗟にその場から下がる。

 その判断は正解である。もし仮に攻撃を続けていれば、八幡の命はそこで途絶えていた。

 もっとも、このことを八幡が知る術はないのだが。

 ただ、八幡の勘だけはそのことに気づいていた。

 

「私の究極の芸術を見せてやる!」

 

 

【血鬼術 波乱万滑空粘魚】

 

 

 玉壺の持つ壺の中から幾多の毒魚がそれぞれ放出させる。

 一万滑空粘魚とはまた違う、更に強化された毒魚。

 しかもそれらは毒水の波に乗っている。

 

 

【天の呼吸 嵐の型 嵐影湖光】

 

 

 万の魚群を迎え撃つべく、速度を重視した剣戟が振るわれる。

 あまりの速度に振るわれた事にとって、空気摩擦で熱せられる日輪刀。

 パチッと火花が飛び散り、一瞬だけ辺りを照らす。

 

「ヒョッヒョッッヒョ!これで倒せぬのか! ソレもまた良し!ならこれでどうだ!?」

 

 鬼の力が増した事で、玉壺は気分が高揚していた。

 言い様の無い万能感に溺れながら、あらん限りの力を血鬼術に込める。

 

 

【血鬼術 津波海遊壺】

 

 

 八幡の周囲にに壺がズラリと出現。

 今度はその壺の中から、大量の水が八幡を襲う。

 圧倒的な質量の毒水。

 ソレが波となって八幡を飲み込まんとする。

 

 

【天の呼吸―――】

 

 

 荒れ狂う津波から逃れようとその場から跳び立つが、津波はあまりにも巨大過ぎた。

 空中で迎撃に切り替える八幡。全ての一撃が水の壁を確実に押し戻すが、しかし水量は上澄みしかない筈なのに、八幡の攻撃の数を遥かに上回る。

 彼の努力を嘲笑うように、激流は着実に飲み込もうとしている。

 よって、迎撃も諦めて耐える方を選んだ。

 その準備として、常人離れした肺活量で空気を一気に吸う。

 

「……ガボッ!?」

 

 荒れ狂う洪水に飲み込まれる八幡。

 毒水が体外と体内から蝕み、着実にダメージを与える。

 早く何か手を打たねば、八幡の敗北は色濃いものへと……。

 

「ヒョッヒョッヒョ!壺をふんだんに使った特大の水獄鉢だ!流石にこれだけ大量の水の中では自由に動けまい!」

 

 玉壺は再び完全体となり、怪魚の群れを率いて水中に入る。

 対する八幡は呼吸が出来ず、予め溜めた空気を使って毒の循環を遅らせる程度。

 救いがあるとすれば、八幡は鯨や鯱並みの潜水時間を保てる事と、鳥が持つ気嚢のうように息を止めても呼吸と同じ活動が出来る程度であろうか。

 

 狩る立場から狩られる立場へ。完全に逆転していた。

 

「空気を溜めこみ呼吸を続け、毒の巡りを遅くしているのか! やはり貴様は私自らの手で落とし前をつけねばならぬようだな!」

 

 毒水の中、自在に泳ぎ回る玉壺。

 玉壺の完全体は水中でこそ十全に力が発揮される。

 今まで水中戦の機会がなかったせいで、彼自身気づいてない特性。

 しかし考えてみれば当たり前の事。

 魚の姿をしているのだから、そりゃ水中が一番強いに決まっている。

 

 今までは水獄鉢に入れてしまえばたとえ柱だろうが勝てたせいで知る機会がなかったが格上である八幡との戦いで玉壺は新たな境地へ至ろうとしていた。

 

 

「ヒョ、遊びは終わりだ。この神の手で直々に貴様を倒す!」

 

 どんな物体も鮮魚に変える神の手。

 コレならこの柱とて無事では済まされない。

 そう確信した玉壺は真正面から最高スピードで突撃した。

 

「ヒョッヒョッヒョッヒョッヒョ! これが私の力! あの方によって与えられた血の力! あの方に認められた芸術の美しさだ!」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「へえ、奇遇だな。俺も一段階成長したんだ」

 

 

 

 

 

 

 

 

【天の呼吸 嵐の型 荒神嵐】

 

 

 途端、竜巻が水獄鉢から飛び出した。

 

 

 

 

 

「………ヒョ?」

 

 

 毒水の牢獄を突き破り、天へと昇る嵐龍。

 

 玉壺は飛び散る水飛沫を浴びながら、ソレを呆然と眺めていた。

 

 

 

 

 

「俺も、一段階成長したんだ」

 

 嵐の龍の幻が消え、その中から八幡が現れる。

 その風貌は先程とは大きく違っていた。

 

 

 龍。

 

 八幡の全身に、龍のような痣が浮かび上がっていた。

 

 





ぶっちゃけ、八幡が鬼身を習得してから、彼は痣者になれるチャンスを手に入れていました。
ただ、痣を発現させるに足るような鬼が今まで出てこなかったんですよね……。
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