俺の鬼狩りは間違ってない   作:大枝豆もやし

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流石に蜜理ちゃん程ではないのですが、八幡はめっちゃ食います。
神隠し当初は中学校時代より少し食う程度でしたが、段々食べる量が増えて今じゃ蜜理の半分程は食べます。


直感

 

「……知らない天井だ」

 

 目が醒めると、俺は病室にいた。

 ゆっくりと上体を起こして周囲を見る。

 何故ここに。そんな疑問が思い浮かぶ前にその答えを思い出した。

 確か、上弦の鬼を倒した後、宇随が現場から近い藤の家、この個人院まで運んでくれたんだった。

 一旦寝て、治療を受け、風呂に入り、着替えてから飯を食い、また寝る。で、今にあたる。

 

「(………ほぼ全快だな)」

 

 傷もダメージもほぼ回復している。

 怠さも既に抜けきっており、今から任務でも問題なさそうだ。

 むしろ、疲れ無くなって万全の状態に近い。もう一度上弦の伍と戦えば、今度はもっと上手くやれそうな程だ。

 

 ハッキリ言って気持ち悪い。

 

 いくらなんでも治りが早すぎる。

 入院するような事態はなかったが、何度か鬼殺隊専門の医療機関を利用するような怪我やダメージは負って来た。

 その経験から言えば、俺が今回食らったダメージは三日ぐらい残っているようなものだった。

 だというのに全回復しただけじゃなく、疲れまで吹き飛んで万全の状態? いくらなんでもこの回復力は異常だ。まるで鬼にでもなったかのような……。

 

「いや、考えすぎか」

 

 決して鬼に成ったわけじゃない。

 原因は分かっている。この痣……龍痣だ。

 邪王炎殺拳でも出せそうな感じの、中二デザインの痣。

 けど、俺の場合は本当に浮かび上がり、本当に効果があるから笑えない。

 龍痣の効果は身体能力の向上だけじゃない。回復力も底上げしているのだろう。

 根拠はない。直感でなんとなくわかる。

 

 そして、コイツは俺の命を蝕んでいる。

 

 似たような技、鬼身を使うからわかる、あの痣は鬼並みの身体を与える代わりに、寿命を削るものだと。

 鬼身の場合は反動だ。心拍を無理やり引き上げる事で肉体にダメージが蓄積される。けど龍痣に関しては分からない。心拍と体温の上昇はあくまで発動条件であり、ソレによる弊害とはまた別だ。けど、痣に目覚めた時点で俺が長生き出来ないことは分かる。

 

「(こりゃあ……死ぬ覚悟するべきか?)」

 

 普通は最初からするべきなんだろう。

 鬼殺隊になって死ぬような目には何度も遭って来た。

 死を実感した事もあった。もうダメだと、神に祈ったこともある。

 

 けど、心の何処かでは、俺は生き残ると確信していた。

 

 たぶん、この世界に神隠しにあって五感が鋭くなったと同様に、五感があまりに便利だったから気づかなかっただけで、直感もまた鋭くなっていたんだろう。

 思えばおかしかった。なんとなくで選んだら異様に当たってきた。まるで、お館サマのように。

 その直感が言っているんだ、お前はもう長生き出来ないと。

 

「(別に長生きするつもりはないんだけどな……)」

 

 正直、将来の設計なんて考えていなかったが、もう俺は二十なんだ。

 そろそろこの世界で骨を埋める覚悟もしておかないと……。

 

「……頭を少し冷やすか」

 

 病院をコッソリ外出する。

 脱走するのは簡単だった。

 宇随は俺をここに運んで直ぐ次の任務に向かい、その嫁さんも全員同行している。

 一応他の隊士だったり、見張りの隠だったり、病院の人とかもいるが、天柱である俺にとって彼らの目など無いも同然だ。

 気配を消し、音を殺し、死角へと潜り込む。そうやって俺は彼らを振り切り、病院の外に出た。

 

 町を抜けて山の中に入り、更に奥へと向かう。

 道中、猪が襲ってきたが、返り討ちにしてやった。

 首を絞めて殺し、日輪刀で捌き、木を切って杭を作り、串刺しにして丸焼きにする。

 丁度腹が減っていたから助かった。このまま一匹丸ごと……は、流石に無理だった。半分ほど残ってその場を去った。後は狐か狸とかが喰うだろう。

 さて、腹ごしらえもしたところだし、そろそろ運動しようか。

 なに、ここならいくら暴れても誰かに迷惑は掛からない……。

 

「……いるんだろ? 出て来いよ」

 

 俺が声をかけた途端、銀色の斬撃が襲ってきた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 突如、銀色の斬撃が降り注いだ。

 上方、左右、背後…。あらゆる角度から糸の斬撃が流れるように襲い掛かる。

 八幡はそれらをこれまた流れるかのように避けた。

 

「随分な挨拶じゃねえか。姿は見せず遠距離からか?」

 

 返事はない。

 代わりと言わんばかりに糸の斬撃は勢いを増した。

 

 

【天の呼吸 雲の型 流れ雲】

 

 

 抜刀。

 八幡は何処からか日輪刀を取り出し、一瞬で引き抜く。

 鞘と刀を二刀流のように振り回し、迫り来る糸の斬撃を受け流す。

 

『……武器、持ってないんじゃないの?』

 

 何処からか、八幡の知っている声が響く。

 かつて取り逃がした下弦の壱の鬼の声。

 八幡はソレに気付きながらも普通に返す。

 

「刀は肌身離さず持つ。剣士なら当然だ」

『まあ、普通はそうだよね。ソレが無かったら鬼と戦えないんだから』

 

 侮蔑からか、それとも本当に感心しているのか。声の主はそう返した。

 

『ハァ~。無防備なところを叩こうと思ってたけど、早速失敗か。まあ、この程度の不意打ちでお前を殺せるとは思っていなかったけど』

「不意打ち…か。しかも自分は隠れて分身にやらせるとか、随分嫌な手を使ってくるな」

 

 八幡は森中にいる蜘蛛たちに目を向けた。

 蜘蛛から漂う血鬼術の気配と匂い。

 どうやら鬼はこの蜘蛛を使って血鬼術を使い、会話を行っているようだ。

 

『じゃあ改めて自己紹介だ。僕の名は苦累。新しく上弦の伍に就任したんだ』

「……もう後任が出たのかよ」

 

 八幡は苦笑いする。

 

『ちょうど入れ替えの血戦を上弦の陸としてたら、お前が玉壺を殺したからね。空席が出来て一気に階級が二つも上がったんだ。礼を言うよ、ありがとう』

「一気に二階級特進か。出世したな」

 

 軽口を叩くも、決して油断出来る状況ではない。むしろその逆である。

 しかし八幡は焦ることなく、むしろ口角をクイッと釣り上げ、好戦的な笑みを見せた。

 

 上弦の伍と再び戦える機会が訪れた。

 無論、違う個体が相手だから全くの焼き増しとはいかないだろう。

 しかし、上弦との戦いを通して血良くなった自分が同じ階級の相手とどれだけやれるか知るいい機会であることには変わりない。

 

 前回のように鎹烏を飛ばすつもりはない。

 援軍が来ては意味がない。自分一人でやり遂げなくてはいけない。

 何故そう思うのかは分からない。そう思える根拠もない。

 ただ、八幡の勘が言っている。この試練を乗り越えれば、更なるステージへと至れると。

 

『軽口を叩けるのも今のうちだ!』 

 

 

【血鬼術 流水弦・鉄砲水】

 

【血鬼術 流水弦・血死吹き】

 

 

 苦累の蜘蛛たちが糸を吐き出す。

 森の木々、草むら、岩の影に隠れた蜘蛛が一斉に口から糸を八幡目掛けて発射した。

 

 

【天の呼吸 嵐の型 嵐影湖光】

 

 

 八幡はソレらを迎撃。

 一旦足を止め、その場で刀を振るって糸の弾幕を全て斬り落とした。

 

『まあそうなるよね。ならこういうのはどうだ!?』

 

 途端、森中から気配がした。

 十、二十だけではない。至るところから血鬼術の気配……いや、鬼の臭いがする。

 

「シャアッ!」

 

 気配の元が姿を現す。

 蜘蛛と鬼を無理やり掛け合わせたかのような姿。

 これらもまた苦累の作り出した眷属……いや、分身体である。

 

 

【血鬼術 刻死牢】

 

【血鬼術 殺目篭】

 

【血鬼術 刻死輪転】

 

 

 オリジナル同様に血鬼術を行使。

 複数の分身体の血鬼術が同時に迫り来る。

 

 

【天の呼吸 奥義・弐(セカンド) 魔感】

 

【天の呼吸 雷の型 千火万雷】

 

 

 急加速。

 八幡がその場を縦横無尽に駆け巡る。

 地面を、木の幹を、糸を足場にして。

 途端、雷光がその場一帯を照らした。

 雷が辺り一帯に鳴り響くかのように。

 豪快な踏み込み音と強烈な斬撃音が響き渡った。

 

「………面白いじゃん」

 

 パラパラと赤黒い糸くずが舞う中、八幡は獣のような笑みを浮かべた。

 

 





各隠し当初の八幡は全キャラのいいところ取りを劣化したような物をイメージしました。
炭治郎より少し劣化した嗅覚と水の呼吸の腕、善逸より少し劣化した聴覚と霹靂一閃の腕、伊之助より少し劣化した触覚と風の呼吸の腕。
無一郎を劣化した剣の腕前、実弥を劣化した稀血、蜜理を劣化した身体能力、天元を劣化した抗毒体質、お館様を劣化した先見の明。
神隠しでちょっとした出来事により、コレを与えられ、任務を通して磨いてきました。

じゃあ今の八幡の実力は彼らに劣っているのか。ソレは皆さんの判断に委ねます。
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