俺の鬼狩りは間違ってない   作:大枝豆もやし

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累が一番欲しかったのは家族でしたが、友達も欲しかったのではないでしょうか。
アニメで雪遊びをする子供たちを眺めていたあのシーン、たぶんあの中に累も混じりたかったんじゃないでしょうか。


さよなら友だち

 

 

 いつの間にか、首を斬られた。

 

 僕は理解した。

 もうじき、僕は死ぬ。

 折角、家族以外の生き甲斐を見つけたのに。

 どうしても殺したくて、どうしても自分の手で倒したい相手。

 アイツを……八幡を殺すまでは死ぬわけにはいかない。だからアイツも道連れにしてでも……。

 

 

 アイツの腐った瞳に、優しげな光が灯っている気がした。

 その目を見て、苛立つ気持ちは不思議と消えて、代わりに別の感情が芽生える。

 

 

 

 

 

『累、本当にただ殺したいだけなの?』

 

 母さんがそっと尋ねてきた。

 

 答えられなかった。

 僕はもう人間じゃない。

 あれだけ欲しかった家族もいらなくなった。

 どうやっても手に入れられないなら、代わりに別のモノを手に入れようとした。

 アイツを殺して屈辱を晴らす。そのために僕は生きて来た。

 

 

『ソレは楽しい事かい?』

 

 

 今度は父さんが聞いてきた。

 

 ああ、楽しかった。

 アイツをどうやって倒すか、どうやって戦うか、そのために何が必要か。

 ソレ打ばかりを考えて、そのために強くなって、遂に上弦にまでなった。

 本当に楽しかった。こんな思いは鬼に成って初めてだった。だから僕は……・。

 

 

 ―――ああ、そうか。僕は……俺は―――

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 俺は、生まれつき体が弱かった。

 歩く事すら苦しいせいで、外で遊んだことなんてなかった。

 だから、家では寝たきりで、ずっと綾取りとかお人形遊びしか出来なかった。

 外で楽しく遊んでいる子供たちを見る度に、何度あの中に混じりたいと思ったか、何度俺もあんな風になりたいと思った事か。

 分かっている、そんなのは無理だって。俺は一生、この部屋から出られず、一人で生きていくことになるんだって、生まれた頃から決まっていた。

 あの方が現れるまでは

 

 

『可哀想に。私が救ってあげよう』

 

 

 僕は強い体を手に入れた。

 だけど両親は喜ばなかった。

 日の光に当たれず、人を喰わねばならないから。

 ある夜、誰かを殺して喰った。ソレを見た両親は凄い形相で俺を見ていた。

 

『なんてことをしたんだ、累…!!』

「何で……なんでこんなことに……』

 

 震える父さんと、泣き崩れる母さん。

 その時は、何で祝福してくれないのか疑問だった。

 

 

 昔、素晴らしい話を聞いた。

 川で溺れた我が子を助けるために死んだ親がいたそうだ。

 俺は感動した。

 なんという親の愛。そして絆。

 川で死んだその親は見事に家族の役目を果たしたのだ。

 

 なのに何故、俺の親は俺を殺そうとする。

 

 父は寝ている俺に跨り、包丁を振り下ろそうとしている。

 母は泣くばかりで、殺されそうな俺を庇ってもくれない。

 

 

 俺たちの絆は偽物だった。……だったら要らない。

 

 その晩、俺は両親を殺した。

 綺麗な満月を眺めながら、俺はこの先どうするか考えていたら……

 

『……さい』 

「(まだ生きているのか。何を言っている?)」

 

 

 

『丈夫な体に産んであげられなくて………ごめんね……』

 

 その言葉を最期に母は死んだ。

 

 

 

『大丈夫だ累。一緒に死んでやるから』

 

 

 

 殺されそうになった怒りで理解できなかったが、父は俺が人を殺した罪を共に背負って死のうとしてくれていたのだと、やっと気づいた。

 その瞬間唐突に理解した。

 

 

 本物の絆を、自分の手で切ったのだと。

 役目を果たさなかったのは、俺の方だったと。

 

 

『全ては、お前を受け入れなかった親が悪いのだ。己の強さを誇れ』

 

 無惨様は俺を慰めてくれた。

 そう思うより他、どうしようもなかった。

 自分のしてしまったことに耐えられなくて。

 たとえ、自分が悪いのだと分かっていても。

 

 毎日毎日。両親が恋しくて堪らなかった。

 偽りの家族を作っても虚しさは止まない。

 結局、俺が一番強いから誰も俺を守れない。

 強くなればなるほど人間の頃の記憶も消えていく。

 自分が何をしたいのか、何が欲しいのか分からなくなっていく。

 

 どうやっても手に入らない絆を求めて、必死で手を伸ばしてみようが、届きもしない。

 

 

 ああ、そうか。俺は……謝りたかったんだ。

 

 

 

 ごめんなさい。

 全部全部、俺が悪かったんだ。

 

 

「でも……山程人を殺した僕は、地獄に行くよね。父さんと母さんと……同じところへは、いけないよね……」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「一緒に行くよ。地獄でも」

「父さんと母さんは累と同じところへ行くよ」

 

 

 

―――嗚呼。

 

 

 

「…八、まん。……ありが…とう」

 

 ありがとう。

 お前との戦いは楽しかった。

 鬼に成って、初めて親以外と触れ合えた。

 

 決して友好な関係じゃなかった。

 むしろ、お互い嫌い合い、殺そうとしていた。

 だけど、こんなに誰かの事を考え、関わろうとしたのは初めてだった。

 

 世間で言う友人とは違うことは百も承知だ。

 これは、俺の一方的な独りよがりであることも知っている。

 だけど、それでも言わせてくれ……。

 

 

「あり…がと……。最、しょ……の、友達……」

 

 散る前に、俺は糸を固めた石を置いていった。

 何か残したかった。

 俺が生きた証を、誰かに受け取ってほしかった。

 

 

 

「……俺はお前を許す気はない。首を刎ねたのを詫びる気もない」

 

「お前を逃がして後悔したのは事実だし、俺の失敗だと今でも思っている」

 

「けど、楽しかったぜ。お前との戦いは、決して無駄じゃない。お前の命で俺は強くなった」

 

 

「お前との戦いは、次の戦いで絶対に活かす。だから累、お前は安心して逝け」

 

 

 

 

ーーー俺は、幸せだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

『行こうか、累』

『………うん』

 

 俺は父さんと母さんに抱きつく。

 

 

「全部僕が悪かったよう…!ごめんなさい!!」

 

「ごめんなさい、ごめんなさい…っ!!」

 

 

 俺たちは、黒い闇と赤い炎の中へと向かった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「かなり……キツかったぜ」

 

 俺はその場に横になる。

 

 疲れた。

 早く帰って風呂入りたい。

 ふかふかのベッドに横になって、ぐっすり休みたい。

 

「(まさか、三刀流を披露する羽目になるとは)」

 

 三刀流。

 全集中の呼吸を使えば漫画の技も使えるんじゃねというバカみたいな考えで開発したのだが、一度だけ鬼狩りで使う機会があった。

 本当に局部的な状況でしか役に立たないので普段は使わないのだが、まさか上弦との戦いでやるとは思いもしなかったぜ。

 

 アイツが何か大技をしてるのは気づいていた。

 俺を誘導する動きに、蜘蛛たちが何やら力を溜めており、俺を閉じ込めるリングにも何か動きを感じた。そこから俺はコイツが何か大掛かりな罠か技を使うと推測した。

 妨害はしてみようとしたのだが、生憎武器も手段も切らしてしまい、回収できたのも刀二本だけ。その回収手段も、脚で鎖を、口で紐を引っ張っるという曲芸染みたものだ。

 こんなやり方で投げた刀を拾い、両手と口に装備して三刀流だ。

 自分でやっておいて何だが、本当に現実離れしているな。俺って本当は漫画かラノベの主人公か何かなの?じゃなきゃこんな真似出来るわけないだろ。

 いや、心臓の鼓動を無理やり早めたり、脳のリミッターを外せる時点で今更か。

 

 今回やった無茶は三刀流だけじゃない。

 鬼身と魔感、そして龍痣の同時発動。

 本来なら鬼身と魔感を二つ一遍にやると凄まじい反動がするが、龍痣はどうやらその調整も兼ねているようだ。

 いや、この龍痣こそ二つの技本来の原型といったところか。

 ソレをより極端にしたのが鬼身と魔感に思えるのだが……。

 

「(う~ん、謎は増えるばかりだ。……ああ、謎と言えばこれもそうか)」

 

 俺は累の遺した白い石を眺める。

 綺麗な石だ。とても大量の人間を食い殺した鬼の作品とは思えない。

 少なくとも、昨日戦ったサイコ壺野郎のゲテモノよりも断然いいと俺は思う。

 

「……為にはなったな」

 

 別に、累が鬼であることを肯定する気はない。

 俺たち鬼殺隊から見れば十分悪鬼だし、ソレに足る悪事を奴は重ねて来た。

 アイツは決して世間一般で言う友達なんかじゃない。間違いなく敵だった。

 そもそも、俺は鬼殺隊、しかも柱と言う責任ある立場の人間だ。人食い鬼と友達だなんて言えるわけがない。

 けど、アイツと何度も戦う事で、何かを得たのは事実だ。感謝するつもりはないが、そのことを否定するつもりもない。

 

 累との戦いを通して上弦との戦いをより深く知った。

 龍痣の効力と使い方をより深く知り、使いこなした。

 上弦の伍より上の鬼との戦いに必ず役に立つだろう。

 それじゃあ、早く戻ってこのことを報告しなくては。

 

「じゃあ、かえるか」

 

 疲れたし怪我やダメージもあり、毒も抜けきってない。

 だが、何も動けない程じゃない。

 流石に連戦は出来ないが、そろそろ日の出の時間だし鬼の襲撃もないだろう。

 そもそも、俺は病院を抜けだしたんだ。さっさと帰らないと、胡蝶姉妹に滅茶苦茶怒られる。まあ、帰っても怒られるが。

 

「―――ッ!」

 

 声が聞こえた。

 たぶん、義勇と錆兎の声だ。

 おそらくこの山の騒ぎを聞きつけた隠が応援を要請したんだろう。

 

「ああ、こりゃ柱合会議で説教だな……」

 

 俺はこれから開かれる会議で何を言われるか想像しながら義勇たちの方に向かった。

 





累は最期まで友達と遊べませんでした。
救済モノは色々ありますが、累に友達が出来たのは見たことがありません。
なら、このssでやってみよう。
実際には友達と言えないが、ソレに近いことをやらせたい。
そう思って書いたのがこれです。
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