俺の鬼狩りは間違ってない   作:大枝豆もやし

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猗窩座って搦め手に弱そうですね


猗窩座

 

 

【天の呼吸 雷の型 晴天霹靂】

 

 

 晴天の空に突如降る雷の如き奇襲を仕掛ける八幡。

 が、しかし。猗窩座は咄嗟に両手で受け止めることで防御した。

 雷の刃は猗窩座の両腕を切り落とすに留まり、その勢いで八幡は宙に放り投げられることになる。

 更に、切り落とした猗窩座の両腕はすぐさま再生。同時に反撃の体勢に入る。

 

「ッチ」

 

 反撃を食らう前に撤退する八幡。

 着地したと同時、落下の衝撃を殺すこと無く下がる勢いに乗せ、ジグザグ移動して距離を取った。

 

「(俺に刀を止められた途端、反撃を警戒して下がったか。しかも、斬撃の衝撃を利用して俺の上を飛び越え、着地しても勢いを殺さず後退に利用した。………素晴らしい!)」

 

「(どれも並みの剣士では到底出来ない至難の技!だというのにその全てを一瞬にも満たない時間で判断し、実行している!こんな真似は柱でも見たことがない!) ……八幡、お前は本物だ!やはり鬼になるべきだ!」

「………」

 

 無反応。

 感激にうち震える猗窩座に対し、八幡は冷静に構えて無視する。

 

「向かって来ないか。……八幡、お前の考えていることは分かってるぞ。俺の血鬼術が知りたいんだな」

 

「いいだろう、なら見せてやる!」

 

 

【破壊殺・羅針】

 

 

 猗窩座は巨岩の如くどっしりと構え、雪の結晶のような紋章を地面に浮かび上がらせる。

 何だアレは。八幡の脳裏に疑問が過るが、猗窩座が動いた瞬間、考えるのを中断。

 高く飛び上がったと同時、八幡もまた動き出す。

 

 

【天の呼吸 雷の型 雷速】

 

【破壊殺 砕式 万葉閃柳】

 

 

 衝突音が響いた。

 一瞬で迫った猗窩座が拳を振り下ろした。

 しかし八幡は雷の如き速度でソレを回避。

 目標を失った拳は空を切り、八幡の代わりに地面を砕く。

 大きなヒビが刻み込まれ、陥没し、衝撃波が走った。

 

 

【天の呼吸 雷の型 轟雷】

 

 

 背後に回った八幡が猗窩座の首めがけて斬撃を繰り出す。

 絶好の位置。相手は地面に拳を掘り降ろし、地面に付いているおかげで切りやすい角度に首がある。このまま振り落とせば……。

 

 

【破壊殺 脚式 冠先―――】

 

 

 後ろから飛んできた蹴りによって、八幡の攻撃は相殺された。……いや、敢えて相殺した。

 

 猗窩座は八幡を蹴り飛ばすつもりだった。

 カウンターとして繰り出した蹴りは、八幡の技の威力も相まって更に増大する……筈だった。

 ソレを咄嗟に見抜いた八幡は、攻撃ではなく迎撃に変更。首から足に目標を変える事で、猗窩座の蹴りを加速がつく前に止め、その足を切り落とす事に成功した。

 

「ック!」

 

 片足で跳んで距離を稼ぐが、そんなものは八幡にとって取ったウチに入らない。

 瞬く間に再び詰められ、追撃を仕掛けられる。

 しかしソレで充分。上弦なら、ほんの瞬きの間で体の欠損など回復出来る。

 ボコンッと、足が斬られた事実などなかったかのように元通りとなり、迫る八幡を迎撃せんとする。

 

 

【破壊殺 乱式】

 

【天の呼吸 嵐の型 嵐影湖光】

 

 

 拳による乱打。

 単純な技だが、繰り出される一つ一つが一撃必殺に等しい。

 しかしソレが八幡に当たることは無い。

 全て嵐の如く激しい剣戟によって撃ち落とされている。

 

「(この動きは風柱と同じ? この男、雷の呼吸の使い手ではないのか?)」

 

 連撃を繰り出しながら、猗窩座は八幡の技に少しばかり驚く。

 最初に繰り出した技。アレは数年前に倒した鳴柱に近かった。そのせいで猗窩座は八幡が雷の呼吸、或いはその派生を使うと予測していた。

 しかしこの技はどうだ。動きが雷の呼吸と違う。どちらかといえば風柱のソレに近い。

 そういえば、天の呼吸というのも訊いた事が無かった。

 数百年、数多の柱や呼吸使いを屠ってきたが、天は柱どころか呼吸すら初耳だ。

 八幡だけの独自の……。ソコまで考えて猗窩座は一旦思考を切り替える。

 今は目の前の闘争を楽しもう。このような上玉は数十年ぶりだ。

 

 

【天の呼吸 雨の型 春霖雨・花腐し】

 

 

「!? (また動きが変わった)」

 

 連撃の途中、再び八幡の動きが分かった。

 今度は水の呼吸に近い動作。

 流れるかのように無数の斬撃を織り成す御業は、水柱のソレを連想させた。

 

「う!?」

 

 猗窩座の左足と右腕が斬られた。

 フェイント技。

 虚実を織り混ぜた神業によって猗窩座を欺き、その手足を半分ほど斬ってみせた。

 足が斬られてバランスを崩す猗窩座。

 瞬時に再生したが、一度大きく崩れた体勢を直すのは上弦でも至難。

 その隙を狙って刀を振るう………。

 

 次の瞬間、八幡は仰天した。

 普通、体勢が崩れたら、転ぶまいとする。

 日輪刀から逃れよとするなら、猶更転べない。

 だが、猗窩座は……。

 

「フンッ!!」

 

 逆に、思いっきり仰け反った!

 

 

 驚きながらも、飛び掛かる猗窩座の脚撃を刀の中腹で受け止める八幡。

 その勢いを受け流し、致命的ダメージこそ防いだが、蹴りの勢いによる脱出を許してしまった。

 八幡が最初に繰り出した技。ソレを見様見真似で再現したものである。

 

「ッチ!」

 

 猗窩座を追って接近する八幡。

 そんなことは猗窩座も予想済み。

 いや、むしろ待っていた。

 

 

【破壊殺 脚式 流閃群光】

 

【天の呼吸 雲の型 入道雲】

 

 

 猗窩座の蹴りをすり抜けた。

 錯覚。

 八幡が殺気を飛ばす事で、猗窩座の羅針を誤認させたのだ。

 本人は既に猗窩座の背後に回り、攻撃体勢に入っている!

 

 

【破壊殺 飛遊星千輪】

 

【天の呼吸 雪の型 雪解けの氷水】

 

 

 咄嗟に気付き、蹴り上げて反撃する猗窩座。

 しかし、ソレすらも八幡は読んでいた。

 刀で受け流し、返しの刀で猗窩座の蹴り脚を切り落とす。

 春の雪解け水が巨大な氷塊を砕くかのように、剛を制する繊細かつ流麗な柔の技。

 その前に猗窩座の怪力は逆に利用され、自身の力で自身の肉体を削る事になった。

 今度こそチャンス。八幡は内心勝ったと思いながら、日輪刀を猗窩座の首に振る。

 

 

【天の呼吸 晴の型 炎天の日照り】

 

【破壊殺 滅式】

 

 それに対し、猗窩座の奥義が八幡を迎え撃つ。

 タイミングはほぼ同時。

 炎天下を照らす太陽の如き一撃と、全てを滅殺する破壊の拳が激突。

 激しい衝突により、花火のように辺りを眩い火花と金属音が飛び散り、弾かれるように吹き飛んだ。

 

「ッチ!」

「まだまだァ!」

 

 すぐに起き上がり、同時に互いへ向かって駆ける両者。

 そこから再び剣戟と拳撃の乱舞が始まった。

 

「素晴らしい…素晴らしいぞ八幡! 天の呼吸とは雷、風、水、炎の呼吸を組み合わせ、統合したお前専用の呼吸か! なるほど、確かに他の呼吸と同じ特徴はあるがお前のは更に昇華されている! そして型は 同じ呼吸でありながら全く違う動き! まるで別々の何人もの剣士と戦っているようだ!」

「まあ、ソレが天の呼吸の売りだからな」

「確かにそうだ! これならどんな状況でも、どんな相手とも戦えそうだ! 万能の呼吸といったところか!」

「随分と喋るな」

「ああ、俺が人と話すのが好きだからな!」

「ふ~ん、珍しいな」

 

 猗窩座の攻撃を利用して下がりながら、八幡は何かを投げた。

 手榴弾。

 複数同時に取り出しながら、導火線に火を付けて爆発。

 爆炎と爆風によって両者は吹っ飛ばされ、視界が遮られる。

 八幡はソレに紛れながら、猗窩座の懐に飛び込もうとした途端……。

 

 

【破壊殺 砕式 青銀乱残光】

 

 

 全方向に、今までのとは比べものにならない程の速度と威力の破壊殺が繰り出された。

 青く光る拳の乱れ打ちにより、爆発による炎と煙は暴風に扇がれるが如く一瞬で霧散。ソレだけに留まらず拳を薙ぎ払う。

 パワースピードだけでなく、その範囲も規格外。流石に八幡も全てを避けることは出来ず、何発か食らって空中を舞った。

 無論、流れ雲によって衝撃は逸らしたが。

 そのことを知らない猗窩座は内心ほくそ笑みながら拳を握る。

 空中で踏ん張りが効ない以上、受け流しも防御も格段に難しい。避けるなんて以ての外。

 このまま叩き潰す。先程汚い真似をした礼だ。その後でゆっくりと勧誘を……。

 

 

【破壊殺 空式―――】

 

 猗窩座が技を繰り出そうとした途端、八幡が刀を投げた。

 

「―――な!?」

 

 鬼殺隊にとって命と同等の日輪刀。

 唯一の対抗手段である日輪刀を投げるという暴挙に猗窩座は目を取られ、隙が生じる。

 とはいってもほんの僅かな隙。すぐさま猗窩座は余計な考えを捨て、投擲された刀を弾く……。

 

 スパンッ!

 突如、進路を変更した日輪刀によって腕を切断された。

 再び驚きながらも猗窩座は腕を再生させながら刀に目をやる。

 紐付き日輪刀。

 柄の部分に紐を付けた日輪刀を投擲する事で、猗窩座の技を妨害。接近しながら紐を手繰って刀を回収し、再び構える。

 

「不意打ちとは舐めた真似を……!」

 

 今度は苦無を投げた。

 一瞬で取り出し猗窩座へ投擲。

 その瞬間が目に移った猗窩座は最小限の動きかつ最短時間で対処。指で器用に弾き飛ばす。

 八幡はその隙に接近し、猗窩座の懐に潜り込んだ。

 だが、そんなことは猗窩座も予測済みである。

 

 

【天の呼吸―――】

 

【破壊殺 鈴割り】

 

 

 刀が弾かれてしまった。

 咄嗟に刀を手放しつつ勢いを流す事で破壊は免れたが、唯一の武器を失ってしまった。

 先程のように自身の意志で手放したのではなく、戻す手段もない形で。

 結果、八幡は自分の武器を失ってしまった。

 しかし、この程度で八幡は止まらない。

 

「鬼に成れ八幡!」

 

 八幡目掛け振るわれた拳は、迷いなく顔面を狙う。

 ソレを半歩右に移動するだけで避ける八幡。

 同時、前進しながら、腕を掴み、グルンと捻ることで殴る衝撃をそのまま返した。

 

「ッグッ!」

 

 途端に短い悲鳴が猗窩座の口から洩れる。

 八幡は一切力を入れてない。

 関節構造を無視するような動きに加え、猗窩座自身の攻撃力が集中。間接と靭帯を破壊されたのである。

 

 更に八幡は腕を掴んだままそっと持ち上げ、そのまま投げ飛ばす。

 掴んだ右腕を身体に抱え、背負って持ち上げ、猗窩座の身体が宙を舞う。

 

 背負い投げ。

 地面に叩きつける勢いは常人であれば背や後頭部を打って致命傷になるが、鬼の生命力の前ではそれほど問題にはならない。

 その筈なのだが……。

 

「がッ………」

 

 地面に背中から倒れ込んだ猗窩座は一瞬だけ放心した。

 痛みからではない。

 既に破壊された関節と靭帯は再生している。

 投げられたダメージも受けたが既に回復済み。

 上弦である彼にとって、柱とはいえ人間の柔術ごときなんてことはない。

 だが、心は大きなダメージを負った。

 

 投げられた。

 剣術が専門である鬼狩りによって。

 柱とはいえ格闘戦を殆どしない鬼狩りに。

 拳と蹴りのみで戦い、鬼の中でも肉弾戦に最も長けた己が。

 格闘戦で鬼狩りに一本取られた。

 その事実が猗窩座のプライドを大いに傷付けた。

 更にこれだけでは終わらない。猗窩座の屈辱はまだ続く!

 

 

【天の呼吸 奥義・壱 鬼身】

 

 

「うぐッ……!」

 

 腕を捻られて拘束された。

 しかも、腕を紐のようなものに括られた上に。

 何時の間に。そんな当たり前の事を考える暇すら猗窩座にはない。

 

 無論振り払おうと力を入れるがビクともしない。

 いくら不利な状況でいようとも所詮は人間の力。

 関節を固められ、上に乗っ掛かれ、紐で括られ、手首の経穴を抑えられても。

 鬼の力、まして上弦ならば、怪力だけでひっくり返す事は可能の筈。

 だというのに、猗窩座は八幡を振り払う事が出来なかった。

 そう、まるで師範に初めて抑え込まれたかのように……。

 

 

 

『お前筋がいいなぁ、大人相手に武器も取らず勝つなんてよ、気持ちのいい奴だなぁ』

 

 

「!!?」

 

 突如、猗窩座の脳裏に過る人間だった頃の記憶。

 ソレを振り払うように猗窩座は更に力を込める。

 

「っグゥ!!」

 

 気が付けば、首に刃が振り下ろされていた。

 隠し持っていた懐刀。

 普通ならとても上弦の首を斬り落とせないが、今の八幡なら可能。

 抑え込んだ猗窩座の頸椎にゾブッと突き刺す。

 ソレを首の筋肉だけで止め、逆に押し返さんと渾身の力を込める。

 

「ぐ…おおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!!!」

 

 

【破壊殺 爆式】

 

 

 己の肉体全てを拳と化し、一気に爆発させた。

 文字通りの意味。

 その一撃によって八幡だけでなく、その周囲や猗窩座自身も吹っ飛ばされた。

 

「ッはぁ!はぁ!……っさっきのは、一体……っ」

 

 先程の幻影のせいか、精神が落ち着かない猗窩座は、頭を片手で抑えて朦朧としていた。

 鬼には無縁である筈の不調。

 その背後に、ユラリと八幡が現れた。

 

「は…ハハハ! やはり生きていたか!」

「テメエ、俺を勧誘するんじゃなかったのかよ!」

 

 破壊殺が放たれる寸前、嫌な予感がした八幡は反射的に猗窩座から距離を取った。

 爆式の威力が強すぎ、下がってても多少食らったが、戦闘は続行可能。大きなダメージになってない。

 

 

「もっと戦おう八幡!」

「戦う?……ッハ」

 

 

「もうすぐ決着はつく」

 

 

【天の呼吸 奥義・壱 鬼身】

 

【天の呼吸 奥義・弐 魔感】

 

 

 八幡は奥義を同時発動。

 更に、痣を浮かび上がらせ、全力を解放した。

 





途中、八幡が猗窩座を圧倒していたように見えますが、実際はそこまで八幡は血良くありません。
八幡が搦め手を使ったせいで猗窩座が動揺してしまい、その隙を突かれただけです。
けど、ソレも失敗に終わってしまいました。
流石に痣無しで猗窩座は倒せません。
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