俺の鬼狩りは間違ってない   作:大枝豆もやし

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鬼狩りの中にはこういった人もいるんじゃないのかな?


中成

 

 勝った。俺は勝ったんだ。

 

 恐怖、緊張、不安。

 色んな感情が渦巻いて頭がおかしくなりそうなのを、呼吸で無理矢理封じ込んで戦った。

 

 勝った、勝ったんだ。あの努力と苦労は、無駄じゃなかったんだ……。

 

「ふ、ふひひ…」

 

 自然と笑いがこみ上げる。

 あれだけ辛い思いをして、あれだけ怖い思いをしたんだ、少しぐらい美味しい思いをしなければやってられない。

 

 あれだけ俺は速く動けたのか。

 あれだけ俺は剣を振れるのか。

 あれだけ俺は強くなれたのか。

 

 今まで意識する暇がなかったので忘れたが、今の俺は呼吸によって普通の高校生では得られないような力を手にしているんだ。

 おそらく、今の俺がオリンピックに出れば全種目で金を獲れるだろう。

 それだけ凄まじい力を発揮できるんだ。

 

 首を斬ったあの感触。

 これは俺があの鬼にかった証だ。

 ほら、ちゃんとその感覚がここに……。

 

「あ、あの…!」

「……あ? ああ、な…なんだ?」

 

 自分の世界に入り込んでいると、後ろから声をかけられた。

 さっき助けた女の子だ。

 一瞬焦ったが、なんとかキョドることなく返事する。

 それは呼吸のおかげか、それとも相手がまだ子供だからか。

 

「鬼狩り様、先ほどは助けていただきありがとうございました!」

「お、おう…」

 

 頭を下げる子供に対して何かムズゆくなりながらとりあえず返事する。

 というか何だ鬼狩り様って。確かに鬼殺隊の訓練生みたいなものだけど、様付けされるほどではないぞ?

 

 そんなことを思ってると、山から人が戻ってくるのが見えた。

 

「ありがとうございます鬼狩り様!このご恩、どう返したらよいか……」

「いいよ別に。日ごろから世話になってるし」

 

 あ、思い出した。

 この子、俺の風呂の用意してくれてる子だ。

 あ~、助けられて良かった。この子の湯加減、現代の風呂と似てるから一番入りやすいんだよな。

 

「それじゃあ俺は帰る。村の人たちにもう安全だって伝えに行って……!!?」

 

 帰ろうと足を翻した瞬間、俺はとんでもないことに気づいてしまった。

 血の匂いがする。

 この子のじゃない。もっと嗅ぎ慣れたもの…。

 

 俺の血の匂いだ。

 

 さっきまで恐怖だの緊張だのに頭がいっぱいで気が付かなかったが、結構濃厚だ。

 おかしい、俺は一切負傷してないぞ。なのになんでこんな臭いがするんだ?

 いや待て。そういや俺は朝練でジジイに斬られたな。まさか……。

 

「なあ、もしかして俺の包帯を持ってんのか?」

「…え、あの…その……!」

 

 途端に慌てる少女。

 俺はそれに構うことなく、臭いの元を探るべく少女の裾を無理やり引っ張る。

 

「お、鬼狩り様!? そういうことはお京がもっと大きくなってから…」

 

 何か言ってるが今は聞く耳を持つ余裕はない。

 早く確認しねえと。そしてもし俺の予想が正しければ……。

 

「あんのジジイ……!!」

 

 少女の服の下には、俺が今朝付けていた血濡れの包帯が巻かれていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ジジイーーーーーーーーーーーーーーーー!!!」

 

 全速力で山の頂上まで駆け抜け、家の戸を突進でぶち破る。

 雷閃の加速による突進だ。戸を破るだけじゃなくて最奥にあるジジイの部屋にまで突進の威力は続き、障子をぶち破って中に入った。

 

 ジジイは寝ている。

 いくら年寄りでもこんなに早く寝る事は無い筈だが、そんなことをいちいち気にしている余裕は今の俺にはない。

 速度を緩めることなく接近し、ジジイの胸倉を掴んで無理やり上体を起こさせた。

 

 我ながら、とても年寄りにする行為ではない。

 けど、今回ばかりは許さねえ。

 このジジイはそこまでのことをしでかしたんだから。

 

「テメエ…鬼を敢えてあの村に……あの子を餌におびき寄せたな!!?」

 

 稀血である俺の血を吸った包帯は、放っておくだけで鬼を呼び寄せる臭いを放つ。だから俺の血を拭いた包帯や布はすぐに処分している。

 そのことを俺に教え、処分しているのもこのジジイだ。他の奴が持っているなんて、この用心深いジジイが許す筈がない。

 じゃあ、なんであの子が持っていたのか。このジジイがそうするよう指示した以外に考えられない。

 

「どういうことだ答えろ! 場合によちゃあぶっ殺ずぞ!!」

 

 唾が飛ぶ距離で怒鳴る。

 たぶん、今の俺は鬼みたいな顔で怒ってるんだろうな。

 けど、ソレをやめるつもりはない。

 このジジイはそこまでのことをしでかしたんだから。

 

「……お前の剣を完成させるには必要な事じゃ」

「はあ?テメエ何言ってやがる?」

「お前には、鬼を殺す才能がある」

 

 何言ってる?さっきからこのジジイは?

 

「儂はもう、長くない。じゃから…お前を一刻も早く鬼殺の剣にする!」

「~~~! まだお前はそんなことをほざくのか!?」

 

 胸元を掴んだまま、殴ろうと拳を振り上げると、ジジイは口から何かを噴出した。

 いきなり過ぎて驚いたが、俺の身体は訓練の結果がしっかりと刻まれているらしい。

 俺の身体はソレが何か認識する前に、咄嗟に後ろへ飛んで避けた。

 

「ゲホッ!ゴホッ!…ゴホオッ!」

 

 ジジイは咳をしながら口から血を吐いている

 じゃあ、さっきのは血…だったのか……?

 

「じ、ジジイ…お前……」

「儂に構うな!」

 

 血痰を吐き出しながら、ジジイは鬼気迫る勢いで言葉を吐く。

 

「この身体は、鬼に肺をやられ、病にも侵されている。……じゃが、儂は一匹でも多くの鬼を殺さなくてはならん!」

「だから俺を育てて一匹も多く鬼を殺すってか? 後継者育てるのはいいがやり方を考えろよ!だから人が集まらねえんじゃねえのか!?」

 

 ジジイの内弟子は俺しかいない。

 こんなに後継者作りに熱心なんだ。一人だけじゃなくてもっと同時に面倒見れるはずだ。なのに俺しかいない。

 最初は修業が厳しくて逃げたとか、俺しか才能がある奴が見つからなかったとか、根拠が特にない理由を探してたが、今日ここでハッキリと分かった。

 

 

「甘い! 所詮鬼殺隊は鬼を殺す隊! 全てを捨て鬼を殺す存在にならなくてはならん!その為にはたかが小娘の命一つなど安いモンじゃ!」

「……テメエ!!」

 

 爺に近づこうとするが、血咳を吐くのを見てその気が失せてしまった。

 アンナに憎かったのに、少し弱っている姿を見ただけでこれだ。

 本当に卑怯だ。最後まで憎いジジイのままでいろよ……!

 

「……ッフ、俺の弱った姿を見て同情したか? 甘いぞ八幡!!」

 

 ジジイはヨロヨロと、まるで幽鬼のように立ち上がった。

 

「甘い、甘いぞ!! お前も、鬼殺隊も、産屋敷の小僧も! どいつもこいつも甘すぎる!! 鬼殺隊とは鬼を殺す部隊! 人を救う組織ではない!!」

 

「鬼を殺すのに小さな事を気にするな!鬼を殺すためには、隊士を切り捨てることも、一般人を見捨て利用する事も必要なのだ! お前たちはソレを分かってない!!」

 

 血を吐きながらジジイは怒鳴る。

 怒り、憎悪、嘆き、焦燥。様々な感情を入り混ぜながら。

 その様はまるで……。

 

「死ぬまで、一匹でも多くの鬼を殺せ。そのためにお前を鍛えたんだからなぁ」

 

 鬼そのものだった。

 





・天満仲成(てんまなかなり)
元上級隊士の育手。野垂れ死にしかけた八幡を拾い、剣士に育てた。
鬼への憎しみが強く、八幡を自身の代わりに鬼を狩る駒としか見てない。
嫌がる八幡を無理やり訓練させ、肩にして借金を脅し、虐待同然の鍛錬を行った。
訓練の一環として八幡を鬼と戦わせるなど、かなり無茶苦茶。病で八幡の前で死ぬ。

鬼狩りの中にはこういった復讐に走り、人間でありながら鬼以上に鬼らしい人間がいるのではないか。そう考えて出来たのがこのキャラです。
まあ、八幡が戦う理由付けをするためでもありますが。
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