俺の鬼狩りは間違ってない   作:大枝豆もやし

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天鬼編
無惨


 

「最近、我々以外で鬼を狩っている者が居るらしい」

 

 とある屋敷内部にある座敷。

 主である産屋敷の言葉に、集められた柱の面々は内心驚いていた。

 

 彼らにも心当たりはあった。

 鬼の情報を聞き現地に向かえば、鬼は既におらず、その被害もぱったりとやんでいる事が何度もあったのだ。

 一度や二度ならガセ情報を掴んだだけかもしれないが、鬼の被害や形跡は存在していた。

 ならば近くにいた鬼殺隊が偶々鬼を狩ったのか。それもまた違う。

 もしそうなら鴉が討伐した鬼を報告している。それすらないということは別の誰かが鬼を狩ったということになる。

 

「しかしそんなことがあり得るのでしょうか……?」

「日輪刀もなしに鬼を狩るなど不可能のはず。やはり流言ではありませんか?」

「いや、何らかの方法で鬼を無力化させ、日光で焙ればいけるかもしれません」

 

 産屋敷は手をそっと上げて制す。すると先程まで騒いでいた柱達は静かになった。

 

「私はね、個人がやっているんじゃないかと思っているんだ」

「しかしお館様、その者の活動範囲はかなり広い。ここ関東だけでなく、全国のようです。ここまで活動圏が広いとなると、相応の集団でないと不可能でしょう」

「けどソレにしては目撃情報が少ない。そんなに大きな組織なら何かしらの跡を残すものだ。けど、ソレがない」

「だからといって個人であると? ソレはいくらなんでも突拍子すぎるのでは……」

 

 

 

「もしかしたら、あの夜に鬼化した八幡がやってるのかもな」

 

 宇随のその一言で、その場はシーンと静まり返った。

 

「……宇随、言っていい事といけない事があるだろ?」

 

 義勇が何を考えているか分からない目を向けながら、ため息をついた。

 

「そうだよ、天元。あまり滅多なことを言わないように」

「……すいません、お館様」

「(シュンとする宇随さん可愛い!)」

 

 

「もし、謎の鬼狩りに遭遇したら我々と協力できないかどうか交渉を試みてほしい。よっぽどのことがない限りは、敵対しないように」

 

 産屋敷としても、鬼狩りの正体こそ分からないものの、味方として取り込めるなら取り込みたいという思惑故の言葉だった。

 その正体が何であれ使えるものは使おうという腹積もりである。

 

「話は以上だ。では、解散」

 

 産屋敷の言葉に、面々は早々に解散をし、その場から立ち去って行くのだが……。

 

「「「(あの人なら本当にやりそうだな……)」」」

 

 八幡を知っている者は実弥以外、宇随の話を半分程信じていた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ほう、貴様がここ最近で鬼を食らっている鬼か」

 

 とある山奥、鬼の首魁である無惨は一人の男と対峙していた。

 白金色の髪に黄金の瞳。肌には龍のような痣が浮かび上がっている。

 元、天柱の比企谷八幡。あの夜、黒死牟の血肉を食らう事で上弦並の力を手にした鬼である。

 

「ここ最近、私が作った覚えのない鬼が暴れているので気になったのだが……お前がそうなのか?」

「そうだ。お前をおびき寄せる為にな。けど今は食事中なんだ。後にしてくれるか」

 

 八幡は振り返る事無く答える。

 食事中。

 彼の指に貫かれている鬼。

 これが八幡の食事である。

 

 今の八幡は鬼を主食としている。

 元々柱であった彼は鬼の居場所に関する情報を多数持っている。

 ソレを基にして全国を飛び回り、幾多の鬼を食らってきたのだ。

 鬼に成って得た飛行能力と血鬼術、柱として持っていた鬼の情報と戦闘技術。

 これらを駆使すれば、全国を飛び回り、鬼を倒して食らう事は容易であった。

 

「ぐ…が……!

 

 絞りカスとなった鬼の死体を放り投げる。

 黒い塵となった死体は崩れ去り、風に流されて消えた。

 

「……なるほど、私の血のみを搾り取るのか。コレなら確かに効率よく吸収出来るな」

「そういう事だ。今の俺はアンタの血が一番栄養効率がいい身体みたいだ。じゃあさ」

 

 

 

 

「その源であるアンタを食えば、どうなるんだろうな?」

「調子に乗るな……青二才!」

 

 瞬間、周辺の木々が木っ端微塵に砕け散る。

 無惨の背から放たれた六本の触手。ソレが文字通り亜音速で、外見の規定を超えた軌道を描き、物理法則を無視して振りまわれた。

 しかし、ソレが八幡に届くことはない。

 

 亜音速如きでは、今の八幡には遅すぎる。

 最強格の柱としての実力と上弦の壱に匹敵する力を併せ持つ彼にとっては。

 

 

【天の呼吸 雷の型 雷鳴轟轟】

 

 

 いつの間にか握られた虹色と黒の刀で迎撃。

 雷の如き速度と威力で全ての触手を斬り落とした。…だけではない。

 

「!?」

 

 八幡の振るった軌道から電撃が迸る。

 ソレは刀の延長線上の触手を焼き切り、無惨にダメージを与えた。

 黒死牟と同じ原理。剣士の御業により現れる(エフェクト)が形あるものとして顕現した血鬼術。

 八幡も黒死牟同様に元柱の剣士であり、上弦の力を手にしたのだ。使えない道理はない。

 が、しかし。鬼にとって首以外の攻撃は決して有効打に成り得ない。瞬く間に再生する。まして、その首魁である無惨ならば……。

 

「無駄なことを……!!?」

 

 再生しない。

 斬られた触手が、焼かれた肉が。再生を妨げられている。

 

 これぞ八幡が鬼として得た血鬼術。

 彼の剣技に斬られた鬼は、赫刀で斬られたかのように再生しなくなる。

 剣戟によって現れる(エフェクト)も同様。彼の技術によって再現される以上、その血鬼術もまた彼の剣技。同じ効果が付随されるのは道理である。

 

 だが、ソレが何だ?

 

 再生出来ないのなら自切し新しく生やせばいい。

 この程度は容易。お茶の子さいさいである。

 

「ならば、こういうのはどうだ?」

 

 鬼舞辻無惨は鬼の首魁である。

 その肉体は変幻自在。彼が望めば質量に関係なく変化する。故、触手から触手を生やし、より強力かつ巨大に変化させ、八幡を埋め尽くす事も容易い事である。

 

「(成程、これが無惨の力か)」

 

 鬼の王。

 悪鬼共を従え、夜を支配する上位者。

 人類を超越し、全ての生物の頂点に座する完全生物。

 太陽を除く全てを蹂躙するその力はまさしく生きた災厄である。

 

 

「なら、こういうのはどうだ?」

 

 だが、ソレを相手取るこの男もまた、災厄だった。

 

 

【天の術式 天候操作】

 

 

 途端、落雷が起きた。

 

 突如生み出された真っ黒の雨雲が空を覆い、雷に遅れて雨が降る。

 最初はポツポツといった程度だったが、徐々に勢いは加速。やがて、土砂降りの豪雨と化した。

 

「……貴様、天候を……雲を操れるのか」

 

 

 無惨の目が驚愕によって少し見開かれていた。

 天を操る。そんな神の奇跡のような血鬼術は、終ぞ存在しなかった。だが……。

 

「お前は、アレ程ではないな」

 

 鬼の王は呟く。

 そして、安堵の念を込めて、思い付いた最適解を実行した。

 

 彼の願いは太陽の克服。

 その手段は問わない。青い彼岸花だろうと、太陽を克服した鬼を取り込もうと。ただ目的を達成すればいい。方法なんてどうでもいい。

 故に彼は、八幡の血鬼術を目にして、その方法に辿り着く。

 

「だが、より好都合だ。貴様を取り込めば、空を操り日光を遮れるかもしれん」

「そう簡単に上手くいくか?」

 

 互いの欲しいものが決まった。

 八幡は無惨の血肉を、無惨は八幡の血鬼術を。

 

 ここから先は、災厄(バケモノ)同士の奪い合いである。

 

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