俺の鬼狩りは間違ってない   作:大枝豆もやし

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やっと原作キャラが出ました。


鱗滝一門編
鱗滝さん家の八幡


 

 狭霧山。

 俺は鱗滝さんという育手に水の呼吸を習い。そして今日、旅立ちの許可を貰った。

 経過した時間は大体半年月。最初から土台の出来た俺は、比較的早く習得出来た。

 え?試験に行く前の岩? 雷の呼吸で切って新しい岩を一人で持ってきましたが何か?

 

「うむ、よくやった八幡。これでお前も明日から試験に挑める」

「はい、ありがとうございます」

「……本当にやるのだな?」

 

 声のトーンを下げた様子で鱗滝さんは言う。

 

「八幡よ、天満の事は気にするな。奴は鬼殺隊を解雇され、育手の資格もない男だ。無理に鬼殺隊に入ることはないのだ」

「……ありがとうございます」

 

 あの後、ジジイは死んだ。

 

 遺体は村人たちが弔った。

 どうやらあの村は昔ジジイに助けてもらったらしく、丁重に扱っていた。

 そして話してくれた。ジジイは俺を拾った時から長くなかったと。ソレを分かっていながら、医者の治療を拒み、俺を鍛えたと。

 そういえば、ジジイから何か嫌な臭いがしていた。嫌いな奴の臭いだと思っていたんだが、病気の臭いだったんだな。

 もっと早く気づいていれば……。

 

「何か吹き込まれてもお前がやる必要はない。お前の人生だ。決してお前は奴の代わりではないぞ」

「……分かっていますよ。別に、ジジイの為に戦うわけじゃありません。ただ、今の俺には金がいるんです」

 

 ジジイが死んで俺は自由になった。

 借金もないし、何ならジジイを相続したまである。

 家と金が手に入ったが、コレだけでは足りない。

 帰るための情報を集めるには、何もかもが足りない。

 

「……そうだったな。お前は神隠しに遭っているのだな」

 

 鱗滝さんには粗方話した。

 ジジイは俺の鍛錬以外興味なかったので何も話さなかったが、オフの鱗滝さんは雰囲気が柔らかい。だから雑談として零してしまった。

 この人はやはり優しい。ホラみたいな話を信じ、帰る方法を一緒に考えてくれた。……この人が最初に拾ってくれたら、こうはならなかったんだろうな。

 

「金と情報が要るんですよ、俺の目的を達するためには。そのためにも鬼殺隊に入るのは必須なんです」

「………ハァ~。そうか、ならばもう止めまい」

 

 鱗滝さんはため息を付いた後、声をいつものトーンに戻した。

 厳しくも優しい、修行の時に出す声だ。

 

「合格だ。では最終選別に行ってくるがよい」

「ハイ。今までご指導ありがとうございました」

 

 礼を言って頭を下げる。

 マトモな師匠は貴方だけですよ。

 雷の師匠はアレだったし、風の師匠は事務的である程度教えてすぐに出て行った。

 願掛けの為にわざわざ手作りの面や高価そうな羽織をくれたり、師匠直々に飯を作ってくれるのは貴方が初めてです。

 ああ、こりゃなんとしてでも帰ってこないとな。

 

 左頬に雷雨を降らす雲が、右頬に風雨を降らす雲が描かれている狐の面。

 背中に鯉が描かれた、立涌文の羽織。

 まさしく俺を表わしている。

 

「……気を付けて向かうのだぞ、八幡」

「ハイ」

 

 近年、鱗滝さんの弟子は最終選別に帰ってこなくなったらしい。

 そのことを気に病んだ鱗滝さんは修行内容を見直し、年々厳しく成ってきたそうだが……。

 

「大丈夫です。俺は帰ってきますよ」

 

 俺なら行ける筈だ。

 3つの呼吸を使える俺ならば。 

 

「ああ、それと最後に錆兎と義勇に会ってやってくれ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「どうした?もう終わりか?」

 

 俺は今、目の前で転がっている義勇と錆兎を叱咤していた。

 この二人は鱗滝さんの弟子で、俺の兄弟子に当たるのだが、俺が年上で剣の修行歴も俺の方が長く、俺の方が強い。

 よってこうして鱗滝さんから修行の一環として彼らの相手をするように言われている。

 

 いや~、ホントになんでこんなことになったんっだろうね。

 この二人、よく俺にこうして模擬戦を挑んでくるのだ。

 

 錆兎はまだ良い。

 正面から挑んでくるし、口上述べるし。

 気配も自己主張が激しいから分かる。何なら臭いも分かりやすい。

 ヤバいのは義勇だ。

 いきなり死角から不意打ちしてくるんだよ。

 気配消すのも異様に上手くなってるし、何なら最近は臭いも薄く出来るようになっている。

 おかげで気配察知や感覚が大分鍛えられた。

 

「まだだ!」

 

 錆兎が立ち上がりざまに跳び上がり、切り掛かった。

 

 

【水の呼吸 捌ノ型 滝壷】

 

【水の呼吸 肆ノ型・崩し 潮騒】

 

 

 俺目掛けて滝から流れ落ちる水流の如く、真上から刀が振り下ろされる。

 ソレを一刀目を斜めに構え受け流し、二刀目で相手の刀の峰を叩いて弾き、三刀目で相手の首筋に寸止めする。

 その隙を突いて、後ろから義勇が接近してきた。

 

 

【水の呼吸 漆ノ型 雫波紋突き】

 

【水の呼吸 陸ノ型 ねじれ渦・急潮】

 

 上半身を回して突きを流す。

 不意打ちを回避されることを予想していなかったのか、義勇は目を見開いて驚く。

 その隙に俺は受け流しながら義勇の後ろに回り、彼の首筋に刀の峰を当てた。

 

「それじゃあ反省会だ。…まず錆兎、お前は力を入れ過ぎだ。水の呼吸の真髄は変幻自在。状況に適した技を選べ。そのためには状況を見極める目を意識しろ」

 

 自分で言っておいて神髄って何だよ。初めてまだ半年ぐらいだろうが。

 

「義勇、敵の死角の取り方は巧くなったが、その先がまだまだだ。奇襲が失敗しても繋げて動け。攻防一体、連撃を可能とするのが水の呼吸の特長だ」

 

 いやだから特長って何? 確かに三つ知ってるから違いは分かるけど、全然極めてないよね?

 

「「はい!」」

 

 君たちも何で素直に返事するの?

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 錆兎にとって兄弟子、比企谷八幡は大きな壁であった

 

 彼には才能があった。

 成長速度は凄まじく、鱗滝の手解きをメキメキ吸収していった。

 錆兎もその自覚は有り、かつての弟子の中でも劣らないと確信していた。

 そんな時だった、比企谷八幡と出会ったのは。

 

 

『お願いします。俺に呼吸を教えてください』

 

 

 錆兎から見た彼は、覇気のない男だった。

 だらんとした様子で、顔もやつれ、目には剣士を目指す特有の強い光が無かった。

 

『力がいるんです。あと金も。俺の目的を達するために』  

 

 錆兎は八幡の言動が気に食わなかった。

 なんて軟弱な男なんだ。鬼殺隊を一体何だと思っている。

 こんな腑抜け、修行の厳しさについて来れずに直ぐに家へ帰るだろう。

 錆兎はそう思って修行中も無視し、一切口を聞かなかった。視界に入れる事すらも嫌だった。

 そんな時だった、アレを見てしまったのは。

 

 それを見たのは、八幡が来てから半年後。

 鱗滝の指示の下、型の練習に励んでいた時である。 

 

 八幡は既に呼吸を二つ会得している。

 基礎と土台は既に出来ていたおかげか、三か月で技を使えるようになった。

 認めたくは無いが、異例の速度である。呼吸を習得済みにしても早すぎる。

 

『では……始め!』

 

 パンッと、鱗滝が手を叩くと同時に八幡は刀を引き抜き、呼吸を整える。

 シィィと、空気を吸う音が聞こえる。

 水の呼吸ではない。別流派だ。

 

 

【雷の呼吸 壱の型 霹靂一閃】

 

 

 瞬間、雷が見えた。

 遅れて轟く雷鳴。

 勿論、本物ではない。

 八幡の繰り出した霹靂一閃による幻視である。

 

 

【風の呼吸 壱ノ型 塵旋風・削ぎ】

 

 

 また呼吸が変わった。

 シイアアアアと荒々しい呼吸音。

 ソレが終わったと同時に、つむじ風が舞い起こった。

 

 

【水の呼吸 壱ノ型 水面切り】

 

 

 またまた呼吸か変わった。

 ヒュゥゥゥゥと、先程とは対照的に落ち着いた呼吸音。

 そして繰り出された剣筋は、ブレる事無く凛としていた。

 

 圧巻。

 参つの全く違う分野の呼吸を使いこなしている。

 天才とはこのこと、彼の剣は本当に素晴らしかった。

 

 

 

「錆兎、分かったか。お前に足りないものが」

 

 いつの間にか横にいた鱗滝に視線を合わせる。

 

「八幡は最初から別流派の呼吸を習得している。最早選別に行ってもいい程の完成度だ。しかし他の型が使えず、他の呼吸を習得する事でその問題点を解決しようとしたのだ」

「………」

「才に溺れず、足りないものを吸収する……並大抵ではない」

 

 錆兎は自覚した。そして恥じた。

 鱗滝の言わんとしていることを察し、行動に移した。

 目の前に大きな壁が在る。それを越えずして何が男か。

 

 錆兎は木刀を握った。

 

「比企谷八幡!俺はお前を越える!」

 

 こうして、義勇もソレに釣られて八幡に挑むようになった。 

 

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