俺の鬼狩りは間違ってない   作:大枝豆もやし

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封印

 

 雨が降り、風が吹く。

 滝のような豪雨が大地を叩き、暴風が木々を薙ぎ払う。

 ソレは無惨が放つ毒の血を洗い流し、津波の如き触手の大群を斬り裂いた。

 

 

【天の術式 闇穿つ雷閃(ダークブレイクサンダー)

 

 

 ノーモーションで繰り出される雷撃。

 自然界ではまずありえない程の奔流。

 そこらの鬼なら一発で消し炭。上弦の鬼でさえ危うい。

 

 

【血鬼術 黒血枳棘】

 

 

 無惨は極太の有刺鉄線を形成。

 ソレを自身の身体に巻き付ける事で血の繭を形成し、防御を試みる。

 が、しかし。あまりに強大な雷はソレを焼き尽くし、中にいる無惨の全身を焼いた。

 

「!? このッ!」

 

 無惨は焼かれた部位を捨てると同時、内部から再生させた。

 外が全部ダメになったら、中から作ればいい。鬼の再生力を限界まで極めた無惨だからこそ出来る荒技である。

 

「そこか」

 

 全ての生物をぶっちぎりで超越した感覚器官が八幡を捉える。

 両腕を変化させた蛇の如き触手、背中から無数に伸びる海月のような触手。それらが一斉に八幡へと音速で向かった。

 

「遅ぇよ」

 

 ソレら全てを避ける八幡。

 急加速、急停止、急旋回。

 光翼を駆使して飛び回り、易々と回避してみせた。

 まるで、飛べるのが最初から当たり前かのように。

 

 無惨自身も動き出す。

 鬼の脚力は人間を越えている。その王たる無惨ならば、音速程度容易く超える。

 今の彼は、毒で弱っているわけでもない。万全の状態である。

 

「捕まえたぞ」

 

 追い付く。

 否、追い越す。

 触手を全て避けた八幡に無惨が回り込んだ。

 

「逃げてんじゃない」

 

 八幡は焦らない。

 むしろ、笑みすら浮かべている。

 

「誘ったんだよ」

 

 彼が握る刀には、龍が宿っていた。

 

 

【天の呼吸 雷の型 八雷神】

 

 

 繰り出された雷の龍が、無惨に牙を剥ける。

 

 歩法ではなく飛行による加速を乗せた剣技。

 八幡の御業と血鬼術を掛け合わせ、実体を得た雷の龍。

 剣士と鬼、柱と上弦。全集中の呼吸と血鬼術。

 本来相容れない存在を融合させ、尚且つ各々の分野の最強格。

 その一撃は……。

 

 

 

 触手の海を割り、洪水のように溢れる毒の血を蒸発させ、無惨の首へと到達。

 

 鬼王の上半身を完膚なきまでに消し飛ばした。

 

 

 

 が、しかし。

 この程度でくたばれば、鬼の王は名折れもいいところ。 

 

 雷龍の勢いによって吹っ飛ばされる無惨の下半身。

 何度も何度も地面に叩きつけられ、空に打ち上げられる。

 そんな状態でも無惨の暴力的なまでの生命が枯れることはなかった。

 

 残った小さな脳が、すぐさま再生を明利。

 焼かれてダメになった再生を自切し、瞬く間に肉体を形成。

 文字通り、瞬きの間で無惨は完治を完了させた。

 

 

「「………」」」

 

 にらみ合う両者。

 その距離の間、約3㎞。

 豪雨と強風が吹き荒れ、常人ならば目を開けられない。

 しかしそんな中でも二人は互いを正しく認識している。

 災厄同士の激突は、3kmという膨大な距離でも近すぎた。

 

 

「「………」」

 

 静寂。

 一瞬の隙が死に直結する場で、両者は完全に止まっていた。

 次の一手で勝敗が決まる。

 それはどちらも同じこと。

 

「(首だけじゃなく上半身全部消し飛ばしてもダメだった。コイツ、どうやったら死ぬんだ?)」

「(飛行能力に鬼殺しの力に天候操作。更に柱としての実力。この男、アレと違う方面の化物か)」

「(ここはアレするか? ……いや、普通の術でこの有様だ。アレまで使ったらここだけじゃなく人里にも被害が出る!)」

「(ここは撤退するか? ……いや、同じ鬼である以上寿命は存在しない。アレと同じ手段は無意味だ!)」

「(うまくいくかは分からない。けど、文字通り千載一遇のチャンスだ! 逃すわけにはいかねえ!)」

「(アレに及ばずとも別方面で近い領域にいる。これ以上成長させるわけにはいかない!)」

 

 

 

「仕留める」

 

「取り除く」

 

 

 

 

 

 まず動いたのは、八幡。

 翼を広げて一気に真上へと最高速度で飛翔。

 空気を貫き、ソニックブームを起こしながら飛び去った。

 

「逃がさん」

 

 そうは言うも無惨は追いかけない。

 今更追いかけても間に合わない。よって、予定通り撃ち落とす事を選んだ。

 

 無惨肉体が一気に膨れ上がる。

 爆発したかの如く巨大化した肉塊は自ら割れ、巨大な口を縦に開いた。

 内部には、生え揃った不揃いの歯。異臭を放つおぞましき地獄の穴が開かれる……。

 

 

 

【天の術式 雷霆(ケラウノス)

 

 

 瞬間、轟音が天から鳴り響いた。

 

 巨大な雷の刀。

 ソレは無惨を斬り裂き、焼き切り、細胞を全て滅さんとする。

 

 八幡は逃げたのではない。

 雨雲に飛び込む事で貯まった電気エネルギーを吸収し、血鬼術に変換。鬼殺しの刃に変える事で無惨を倒そうと試みたのだ。

 彼の企みは成功。このまま天の呼吸で……。

 

 

 べべんっ。

 

 

 琵琶の音が聞こえたと同時、無惨が消えた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「よ、よくやったぞ鳴女」

 

 無間城で、無惨は肉塊と化した自身の肉体を再生させながら琵琶を持つ鬼―――鳴女を褒めた。

 予め保険はかけておいた。鬼の居場所を特定する呪いを経由して鳴女と通信し、もし追い込まれるようなことがあれば血鬼術でこの城に戻れるように。

 今はあの時と違って異界と化した基地があるのだ。生き恥ポップコーンをする必要はない。

 

「だがあの鬼、どうするべきか……」

 

 しかし、逃げたとしてもあの鬼が生きていることに変わりない。

 鬼滅の力を持ち、天候を操り、あの男に及ばずともソレに近い領域の剣士だった鬼。奴を倒さない限り、無惨は再び脅かされる。

 

「だが、手段はある……!」

 

 しかし、所詮は人間であることを捨てられない青二才。

 いくら力では自身に届こうとしても、鬼としての年季が違う。

 やりようは幾らでもある。真正面からでは危険なら、相手の土俵に立たなければいい。

 人質を取る、街中で襲撃する。人間であることを捨てられない者はこの程度で躊躇する。そこを突けばいいのだ。

 これこそ無惨の強み。生きる為なら簡単にプライドを捨てられる。この男の辞書には、生き恥なんて言葉は存在しないのだ。

 

 

 ばぁあん!

 

 突然、何か硬いものを殴るような音が城に響いた。

 

 この場には無惨と鳴女以外誰も存在しない。だというのに何故音が響くのか。その答えを二人は直ぐ知ることになる。

 

 

 バリィィィン!

 

 空間に、穴が空いた。

 更に罅を入れて、隙間は拡大される。

 そこから見覚えのある腕が飛び出した。

 龍のタトゥーのような痣がある腕。ああ、間違いない、あの男の腕だ。

 

「(あの男……こんな事も出来るのか!?)」

 

 八幡が空間を殴って、こちらに続く道を切り拓こうとしている。

 

「……鳴女、お前に血を分け与える。だからこの侵入者を排除しろ」

「え? いやしかし私では………」

「いいからやれ!」

 

 無惨は触手を伸ばし、血を鳴女に注入。限界を無視して出来る限り流し込み続けた。

 そんなことをすれば何時か破裂する。そんなことは無惨自身分かっている。だが、それでもよかった……。

 

 

 

 

 

 

 

 

 この城を牢屋に変えてこの鬼を封印出来るなら。

 

 

【血鬼術 無限の牢獄】

 

 

 

 

「!?」

 

 次元の壁を越えて八幡が無限城に足を踏み入れる。

 それと入れ替わる形で無惨がその場から消えた瞬間、限城が大きく揺れた。

 ミシミシと音を立て、崩壊の兆しを見せる無限城。

 階段、天井、柱、床。崩れた物が次々と上から落下していく。

 

 

「あ~なるほど。そういうことね…・・・・」

 

 八幡は無惨の意図に気付いた。

 この城………空間ごと八幡を生き埋めにして封印するつもりだ。

 いくら八幡が強くとも、何も食わずにいれば何時か死ぬ。

 成程、なかなか惨い事をする。

 だが……。

 

「けど、ただで埋まるわけにいかねえな」

 

 瓦礫に埋まる中、八幡のシルエットが変わった。

 人間の形から龍―――八幡の時代で言う怪獣のソレへと。

 

「◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆◆!!!」

 

 大音量の咆哮。

 空気だけでなく城全体が揺れ、瓦礫が吹っ飛ぶ。

 

『……ああクソ。この状態になると…理、性が……』

 

 

『だが、テメエに……一矢…報え、る……!』

 

 

 

【天の術式 闇穿つ雷閃(ダークブレイクサンダー)

 

 

 再び、雷が放たれた。

 雷霆には及ばないものの、通常時のダークブレイクサンダーとは比べ物にならないほどの威力。膨大な電流を圧縮し、レーザー光線と化した雷。

 巨大な咆哮と共に繰り出されるその一撃は、神鳴(かみなり)に相応しい一撃であった。

 

「ぐああああああああああああああああああ!!??」

 

 完全に油断しきった無惨は、その一撃によって焼かれた。

 

 

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