俺の鬼狩りは間違ってない   作:大枝豆もやし

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童磨再び

 

 天柱、八幡が鬼と成った。

 

 凶報は瞬く間に拡がった。

 現戦力では最強である岩柱と並ぶ強さであり、鬼としても上弦級の力を持つ八幡。

 人間の頃ですら上弦を二体も討ち取り、上弦トップ3と遭遇しても生きて情報を持ち帰った傑物である。

 そんな彼と相見え戦うという事は死を意味する。たとえ柱でも、今の彼には勝てないであろう。

 鬼殺隊の士気は失意のどん底に叩き落された。

 しかしそんなことは鬼には関係の無いことだ。

 

 八幡が復活した翌日から、上弦が活発化した。

 場所は遊郭。最近になって、行方不明者が多発しだしたのだ。

 よって、柱3人と炭治郎達を派遣。上弦の討伐に動き出した。

 

 上弦との戦いは苛烈を極めていた。

 当然である、陸とはいえ上弦、しかもどこかの誰かさんのせいで上弦たちは戦力増強の為にギリギリまで血を分け与えられたのだから。

 強化された上弦相手に文字通り命を削り、死力を尽くし、そして勝った。

 全員が重傷こそ受けたが、誰一人欠けることなく。

 だが、彼らは知らない。その裏でまた別の死闘があったことに。

 

 

 

「そこをどいてくれないかな、天柱。俺は行かなくちゃいけないんだ」

「そうはいかねえ、童磨。ここで通行止めだ」

 

 そのことに気づいたのは翌日。

 異常気象によりその場一帯が被害に遭ってから。

 その被害の内容が大寒波と暴風雨の両方と知ってからである。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 雷霆が鳴る。

 ゴロゴロと轟音を立て、夜空を眩い閃光で照らす。

 

 氷塊が降る。

 鋭い巨大な氷柱が音を立てながら、大地に降り注ぐ。

 

 暴風が吹く。

 ヒュオオと豪快な音を立て、地上の氷を薙ぎ払う。

 

 吹雪が飛ぶ。

 ヒュゥゥと寒々しい音を立て、地表を冷気で嘗め回す。

 

 氷が、雷が。

 吹雪が、暴風が。

 天災のごとき血鬼術がぶつかり合う。

 

 

 

【天の術式―――】

 

【血鬼術―――】

 

 

 術と術がぶつかり合う爆心地。

 そこでは童磨と八幡が空を飛び交いながら激戦を繰り広げていた。

 

 八幡は翼で、童磨は雲に乗って。

 各々の術を繰り出しながら相手をけん制している。

 

「アハハハハ! すごいね、本当に天候を操作出来るんだ! けど、その力もいつまで持つかな?」

 

 八幡の力は強い。強すぎる。

 新参者の鬼は勿論、上弦の鬼であってもこれ程の力は出ない。

 童磨でさえ天災クラスの術を使うために無惨から血を限界量まで分け与えられてやっと到達したのだ。鬼に成って数年も経ってない子の鬼がそんな力を無条件に使えるわけがない。

 だが、それ以上に警戒すべきものがある。

 

「(けど、彼には剣術がある。近づかれたらまずい)」

 

 八幡は剣士である。

 黒死牟同様、元柱の鬼。しかも人間時で黒死牟とマトモに打ち合えたのだ。

 上弦並をも超える鬼に成った今、決して近づかせて良い相手ではない。

 

「(しかも、お得意の剣術は未だに見せてない。……驚きで言葉が出ないよ)」

 

 そう、八幡は一切剣術を使用していない。

 猗窩座戦では格闘のみで圧倒し、刀を使ったのはたった一回。

 童磨との戦いでは血鬼術以外は一切使っておらず、飛行能力も最低限に留めている。一切避けることなく術ですべてをカバーしている。

 ソレでこの強さ。もし、黒死牟のように刀を使えばどうなるか。

 

 鬼としての才能は自身より圧倒的に上。

 剣の腕も五〇〇年以上最強の鬼として君臨した黒死牟に匹敵。

 観察眼、予測能力、戦況適応力、作戦立案能力などは柱や鬼を圧倒している。

 全てが規格外。本当に自分たちと同じ種族―――鬼とは思えない性能である。

 

「まさかお前、俺の体力切れを狙っているのか?」

「!?」

 

 バレた。

 自身の目論見が。

 しかし童磨は慌てない。

 そういった感情を持ち合わせないのは、彼の強みの一つである。

 しかし、今回ばかりはその強みも役に立たなかった。

 

「ッハ、俺も舐められたもんだな。俺も“飽きた”頃だし、速攻で終わらせてやるよ」

 

 

 

【天の呼吸 奥義・参 常世心地】

 

 

 瞬間、地獄が始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「(ああ、これは無理だ)」

 

 雷雨の中、童磨はこれには勝てないと悟った。

 

 八幡が奥義を使ってから、状況が大きく変わった。

 童磨の攻撃を先読みし、着実に手を潰しながら童磨を追い詰める。

 未来予知でもしているかのように、心でも読んでいるかのように。

 確実に敵を追い詰めるその様は、まるで詰将棋のようであった。

 

 粉凍―――無駄。風によって全て吹き飛ばされる。

 蓮葉氷―――無駄。雷によって全て迎撃される。

 冷凍光線―――無駄。熱光線によって全て溶かされる。

 

 通用しない。

 童磨の術がこの鬼には一切通じなかった。

 

「(そういや、あの晩もこんな感じだったね)」

 

 八幡と初めて戦った時のことを思い出す。

 人間だった頃の彼に首を切られかけたあの夜を。

 術を破られ、策を破られ、人である彼に敗れた。

 首こそ切られなかったがそんなものは結果論。あの時、上弦の壱が来なかったら自分の首は切られていた。

 そうだった、人間の頃の彼に童磨は負けていたのだ。ならば、鬼になった今では、余計に勝てるわけがない。

 

「(……素晴らしい)」

 

 その圧倒的な力に、童磨は見惚れる。

 さっきまで同格に感じられたのは、八幡のお遊びに過ぎなかった。

 術に慣れ、術の使い方を学び、今後の戦略に活かすための案山子(サンドバック)でしかなかったのだ。

 

「楽しかったぜ、童磨。術のお試し用には役立ったぞ」

「(お試し? ……ああ、そういうことだったのか)」

 

 童磨は笑う。

 上弦の弐である自分がいいようにやられた。

 この規格外の強さを持つ鬼にによって。

 

「……おめでとう。君が現時点で最強の鬼だ」

 

 素直に勝者を褒め称える童磨。

 これ以上やったところで意味はない。

 上弦の弐であることへの誇りも、ソレを汚された屈辱も、死んで食われることへの恐怖も。この鬼には存在しなかった。

 もしあるとすれば喜び。自分たち上弦の鬼よりも強く、あの方にも匹敵する鬼を発見したことへと知的好奇心といったところか。

 

「止めだ。楽にしてやる」

 

 八幡が手を掲げる。

 雲が晴れ、段々と白んで来る空が現れる。

 

 

【天の術式 闇穿つ閃光(ダークブレイクサンダー)

 

 

 夜明けを背景にしながら繰り出す電撃は、まさしく闇を穿つ一撃であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 とある異界。

 無限城とはまた別の、予備として用意された異空間に存在する小さな家屋。

 その一室。何もない六畳間で無惨は高らかに笑っていた。

 

 やっと見つけた。

 童磨の視界を通じて見たもの。

 八幡の戦闘能力を確認するために覗いていたのだが、予想外なものを見てしまった。

 無惨が千年近く求めていたものであり、作りたくもない同胞を作ってまで求めたものが今、現実と化した!

 

「奴を吸収すれば、太陽を克服出来る! いや、それどころか太陽の日すらも操れる!」

 

 忌々しい日光を克服するだけでなく、支配下にまで置ける絶好のチャンス。

 しかし、そのためには何としても乗り越えなければいけない障害があった。

 

「比企谷八幡……奴をどうするかだな」

 

 八幡の強さは異常だ。

 格闘能力は猗窩座を、血鬼術は童磨を凌駕している。

 剣術の腕前も黒死牟と同格であり、総合した戦闘力は鬼の頭領である無惨にも匹敵。とても一体の鬼がしていいスペックではない。

 

「(奴をどう攻略する? アレは元柱。一度私がやった技は通用しないとみていい。……クソ、本当に厄介な存在だよ君は)」

 

 無惨は戦士ではない。

 身体スペックは他の鬼と比べること自体がばからしくなるほど差があるが、戦闘のセンスや戦略性は皆無である。

 何かないのか、奴との戦闘能力差を埋めるための一手は……。

 

 

 

「……いや、一つだけあったな」

 




今の八幡はガッシュで表すならゼオン並みの術と体術、デュフォー並みの先読みと作戦立案能力がある状態です。
勝てるかこんなんwww
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