俺の鬼狩りは間違ってない   作:大枝豆もやし

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激動

 

 燃え盛る街の中、二体の異形が対峙していた。

 六つ目の異形―――黒死牟は虹色に輝くエネルギー状の翼を持つ異形―――八幡に嬉しそうな視線を向ける。

 対する八幡は落胆と失望の念を込めた視線で黒死牟を見下ろしている。

 

「まさか、こんな手を使うなんてな」

 

 その声には苛立ち、怒り、そういった感情がありありと感じ取れる。

 

「貴様を殺し…無惨様に捧げる……。やっと……あの方の悲願が…叶うのだ……!」

 

 黒死牟はそう言うなり、更なる異形の姿へと変じた。

 骨のような質感の黒い装甲。

 典型的な日本の鬼をモチーフにしたデザインの鎧。

 全ての鬼の頂点に君臨する最強の称号。

 無惨の血を全て注がれた事により、文字通り頂点へと到達した姿。

 黒死牟・鬼王とでも名付けようか。

 

「……そうか。お前……いや、お前たちは本気を出したのか」

 

 

 

「なら、俺も出させてもらおう」

 

 

 対峙する八幡も姿を変えた。

 乱反射により虹色の光沢を生み出す白金色の装甲。

 東洋龍をモチーフにしたデザインの鎧。

 鬼の力に慣れ、やっと十全に使えるようになった完全体。

 八幡……いや、波旬・竜王とでも名付けようか。

 

「「・・・」」

 

 ゆっくりと、互いに手を翳す。

 あらゆる制限を取り払われた血鬼術が互いに繰り出した。

 八幡は黒い電撃を、黒死牟は赤い月刃を。

 互いの肉体を焼き、引き裂く。

 しかし、両者の肉体は瞬く暇もなく再生した。

 

「っフ、やっぱ俺の“鬼殺しの雷”は効かないか」

「いや、効いては…いる……。お互いに…な……」

 

 互いの技は文字通り鬼殺しの技。

 片や鬼の細胞を焼く黒い雷。片や再生を阻害する赤い刃。

 しかし、両者の鬼としての力が凄まじく、力技でソレを無視した。

 

「なら、力技で解決するしかないか」

「その通り…だ」

 

 

「微塵切りにしてやるよ、黒死牟!」

「その台詞…そのまま返す……八幡!」

 

 鬼の頭領と対するは、同じ怪物。

 柱でありながら、自ら望んで鬼となった異端である。

 本来鬼を討伐すべき真の英雄達は、この場には居ない。

 

「「行くぞ!!」」

 

 誰一人として観戦者の無い山中にて、異形同士の喰らい合いが始まった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 町々は混沌の坩堝と化していた。

 同時多発的に出現した無数の鬼達。

 成りたての鬼同様に理性はないが、血鬼術は下弦クラス。

 そんな鬼たちが図ったかのように一斉に人々を襲い始めたのだ。

 

 

【音の呼吸 伍ノ型 鳴弦奏々】

 

 

 大男が次々と鬼の首を刎ねる。

 進撃しながら鎖に繋がれた双刀を旋回させ、迅速に斬撃と爆発を浴びせる。

 無数に発生する爆発音と、鬼を切り裂く音をBGMにして。

 

 

【水の呼吸 肆ノ型 打ち潮】

 

 

 また別の男が鬼の首を刎ねる。

 波打つ潮の如く淀みない動き。

 ソレでいて読み辛い上に速い。

 

「ったく、どうなってんだ!?」

 

 大男―――宇随天元は焦っていた。

 

 彼の本来の任務は八幡との接触。

 鬼化していながら人間時と変わらない彼と合流し、共に無惨対策を考案するといったものだった。

 だが、いざ接触という段になって、この騒動である。

 

 八幡の方から協力を求めてくれた事には安堵もあった。

 鬼と共に戦う事への迷いはあったが、禰豆子や珠世という鬼がいる以上それも今更。言いたいことは山ほどあるが協力することに文句はない。

 だが、この状況で、彼のもとに駆けつけるのは不可能だ。

 

 

 燻る煙の向こうに、無数の肉塊が転がっていた。

 冷たい土の道を赤く染める、ほんの少し前まで命だったもの。

 バラバラにされたもの、ごく一部しか残ってないもの、人間だった残骸。

 こんな光景が今、あちこちで繰り広げられている。

 

 鬼殺隊も政府も大混乱である。

 情報が錯綜し、何処にどんな鬼が暴れているのか判然としない。

 しかし、向かうべき場所は直ぐに分かる。

 皮肉なことに、悲鳴と絶叫が教えてくれる。

 鬼に襲われ、食い殺される人々の断末魔が、鬼殺隊を走らせる。

 

 次なる現場に向かおうとする義勇の背に、また別の鬼が飛び掛る。

 巨大なサソリのような鬼。

 先端部が毒針の尾を蛇のようにしならせ、義勇に猛攻を仕掛ける。

 ソレを淀みない動作で刀を振るい、叩き落とす義勇。同時に少しずつ進撃していった。

 

 

【水の呼吸 捨弐ノ型―――】

 

【風の呼吸 壱ノ型 塵旋風・削ぎ】

 

 

 疾風の如き速度で突進し、一人の剣士―――不死川実弥が蠍鬼の首を刎ねた。

 

「ボサっとするな冨岡!」

「……いらん世話だ(だからここは俺に任せろ)」

「んだとゴラァ!?」

 

 言葉足らずな義勇に怒る不死川。いつもの光景である。

 しかし、今はそんなコントをしてる余裕はない。

 

 眼前には牛二頭分はあるイノシシに似た巨大な鬼。

 背後には小さな小屋ほどはある亀に似た巨大な鬼

 他にも様々な鬼が暴れ、人を襲い、血肉を食らう。

 

 しかし、ここには鬼を討つ剣士がいる。

 

「まずはここを切り抜けるぞ」

「……ああ!」

 

 互いの背を押し合うように、二人の剣士は構える。

 

 東京は混沌の最中にあった。

 だが、それも長くは続かないだろう。

 鬼狩りの剣士たちが懸命に戦っているのだから。

 現に、多くの被害を出し続ける鬼の群れは、徐々に減りつつある。

 夜が明ける頃には、全て片付いてるだろう。

 被害が多くとも、東京が滅ぶことはない。

 少なくとも、今夜の内は。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「「ゴアあああああああああああああああああああああ!!!」」

 

 怪物の咆哮が響き渡る。

 空は黒雲に覆われ、暴風雨が吹き荒れる。

 地は業火に包まれ、雨も風もモノとせず燃え上がる。

 その中心部で、二体の怪物が互いを滅さんと喰い合っていた。

 

「グオオおおおおおおおおおお!!!」

 

 龍が吠える。

 白金色の鱗に覆われた巨竜。

 鏡のようなソレは虹色の輝きを放ち、恐るべき業火を防いでいた。

 

「ガギャアあああああああああ!!!」

 

 鬼が叫ぶ。

 白骨色の鎧に覆われた巨鬼。

 躯のようなソレは不気味な雰囲気を放ち、龍の電撃を防いでいた。

 

 怪物同士の喰い合いは苛烈さを極めていた。

 鎧姿では埒が明かないと判断した二人は身体操作によりさらに巨大化。

 八幡は西洋龍へと、黒死牟は巨大な鬼に変じて戦闘を続行。

 

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