「ロム、ラム、私、女神やめてヒップホップで食べていくことにしたわ」 作:烊々
「ロム、ラム、私、女神やめてヒップホップで食べていくことにしたわ」
「え?」
「え……?」
「というわけで、あとは任せたわ。二人とも。立派な女神になるのよ」
「「お、お姉ちゃーん⁉︎」」
-数ヶ月後-
「お姉ちゃん大変だよ! 女神やめたブランさんがNステに出てる!」
「マジ? どれどれ……」
『最近メジャーデビューを果たし、今最も勢いがあるヒップホップグループと言われている「ホワイトハーツ」のボーカル、ブランさんです! よろしくお願いしまーす!』
『よろしく』
『ブランさんって、ルウィーの守護女神ですよね?』
『いいえ、無関係ということにしているわ』
『している、っていうのはどういうことですか?』
『私は、女神としての私ではなく、ミュージシャンとしての私を見てほしいの。だからこそ、今の私にとって女神という肩書きは必要ないわ』
『グループ名思いっきり女神っぽいですけどね……』
『……良い感じのグループ名が思いつかなかったのよ』
『それにしても、何故ヒップホップに目をつけたんですか?』
『そうね……元々ヒップホップとは、ストリートギャングの文化、今は亡きゲイムギョウ界のスラム街発端だと言われていて、暴力の代わりにラップバトルやダンスバトルが用いられるようになったことから始まったのよ。私はこれを知った時衝撃を受けたわ。それまでヒップホップには粗暴なイメージがあってあまり触れてこなかったけど、それこそがヒップホップの真価ね。つまり、私が粗暴だと思っていた所謂闘争心を音楽という芸術に投影し、争いを文化へと昇華させたってことになるわ。素晴らしいじゃない? だから私はヒップホップにハマったのよ』
『なるほど〜! では、インタビューはこれぐらいにして、一曲お願いします! 「ホワイトハーツ」で曲名は……』
「あっははははは! あはははは! ブラン面白ー! 何あの格好とサングラス! 黒い! 最早ブランじゃなくてノワールだよもう! あはははははっ!」
「でも、ブランさん……普通にすごいね」
「小説家としての才能はなかったけど、音楽家としての才能はあったっぽいね」
『〜♪』
「普通に良い感じの曲で草生えちゃうよ」
「普段のブランさんの繊細な歌声と、変身したブランさんの荒々しい歌い方のギャップが人気の秘訣らしいよ」
「てか後ろの演奏技術もエグいよ。よくこんなすごいメンバー集められたね」
「思ったより実力派のグループだよね……」
「複雑そうな表情じゃん、ネプギア」
「いやぁ……その……ブランさんがミュージシャンとして上手くいかなかったら、女神に戻ってくれたんじゃないかな……って」
「あー……」
-数ヶ月後-
「明日はライブよ。小規模のライブはちょくちょくやったけど、大規模な会場でのライブは初めてね。少し緊張してきた」
「それにしても、まさか私たちのチケットが転売ヤーの餌食になるなんて、結成当時は思いもしなかったわ。いえ、ヒップホップで食べていくと決めた以上、人気が出たら必然かしら、ね」
「まぁ、転売ヤーは一人残らず潰してやったけど」
pppppp
「あら、ドラムの子から電話だわ。もしもし……え?」
「……親御さんが倒れた……? 数十年後に継ぐはずだった家業を今から継ぐことになる? そう……早く行ってあげなさい。こっちはこっちでなんとかするから……」
「え? 戻らない? ライブがあるから? ……っ、何言ってんだバカ! 早く行け! ドラムができるやつなんてこの世にいくらでもいるけどな、お前の親御さんの子供はお前一人だろうが!」
「……ありがとう。あなたがいてくれたからここまでこれたわ。大丈夫。なんとかする。たとえあなたが脱退しても、私たちの心は一つよ。うん、じゃあ、今すぐ行ってあげるのよ? わかった? うん、じゃあね」
「……って言ったは良いものの、どうしましょうか」
「……」
「……しょうがないわ。あまり女神の頃の人間関係は頼りたくなかったけど……もしもしネプテューヌ?」
-翌日 ライブ後-
「ふぅ……なんとかなったわ」
「感謝してよね、ブラン」
「ええ、感謝してる。ありがとう」
「ふっふーん。ギャラはプリンでいいよ」
「そんなのでいいの?」
「ブランからの頼みだからね」
「そう……それにしても、ドラムはできるし、MCもできるし、歌えるし、ラップも私に合わせてくれるし、ダンスもできるし、オーディエンスも沸かせられるし……あなた女神としての仕事以外ならなんでもできるのね」
「最後ので台無しだよ……」
「あなたさえよければ、私と音楽やらない?」
「うーん。悪くないけど、音楽一本でいくのはいいかな」
「……残念ね。まぁ、あなたとは音楽性の違いもありそうだし、しょうがないか」
「そうだ、ねぇブラン?」
「なに?」
「ブランは、今の生活に満足してる? 楽しい?」
「勿論よ。私の、私たちの音楽が、多くの人に楽しんでもらえている、笑顔になってもらえている。ミュージシャンとして、これ以上の幸福はないわ」
「女神だった頃より……?」
「そういう話がしたいなら帰って」
「でも……」
「帰れ」
「わかった……今日は楽しかったよ。さよなら」
「ええ、さようなら。今日はありがとう」
-数ヶ月後-
「私が……クビ……? どういうこと? 仮に私がクビになったとして、ボーカルがいなくてこれからどうするつもりよ?」
「歌えるやつなんていくらでもいるけど……ルウィーの女神は私しかいない……? ロムとラムのお姉ちゃんは私しか……?」
「違うわ。あの子たちのことを嫌いになるわけない……! むしろ、愛しているわ」
「逆よ。私がいつまでも女神の座に居座ることが、あの子たちの成長を阻害してるんじゃないか、って。私がいないと、あの子たちちゃんとするから……」
「だからこそ、多少強引にでも私が女神の座を退いて、あの子たちにやらせるべきだと思ってたの。そして私はそれらしい理由のため、そしてヒップホップにハマったから音楽の道に進むことにしたの」
「流石にそうはならない? 思考が飛躍してる? しょうがないじゃない。一発ネタみたいなツイートを元に物語を書くことになったんだから……って、コレはメタすぎるから良くないわね。忘れて」
「……そうね。わかったわ。じゃあ、別のボーカルを見つけてちょうだい。今までありがとう。あなたたちと一緒に音楽できて、楽しかったわ」
「もし……あの子たちが私を超えて、私が本当に女神の座を退いたら……その時はもう一回音楽をやりましょう?」
*
「ロム、ラム、私ヒップホップやめて女神に戻ることにしたわ」
「お姉ちゃんおかえり!」
「おかえり……!」
「いえーい! 『ホワイトハーツ』改めて『パープルハーツ』の新ボーカルのネプテューヌだよー! よろしくねー! 今日はみんなで盛り上がって行こうねー‼︎」
すみませんでした。