ある日、俺は転生した。
死んだ記憶は一切ないけど、ここが自分が元いた場所でないのは、何故か不思議と理解した。
この世界は魔法科高校の劣等生の世界である。
俺は──
いつも通りの日常を送って、一晩寝て起きたら、ここにいたのだ。
身体も小学生くらいにまで縮んでるのか、若返ったのかは不明だが前の自分の身体よりも視点が低くなっていることは分かった。
「これは!?」
俺が部屋を見渡すと、そこには仮面ライダーの変身ベルトやアイテムの全てがあった。
「平成と令和……どっちも揃ってるんだな。……これは転生特典とかに入ってる部類なのか?」
俺はそれらが本物であると理解しているが、念のため玩具か本物かを調べる為に触っていたら全て本物だと理解させられた。
そして、自分がいる場所が仮面ライダーセイバーにあったワンダーワールドであることも外を見たら分かった。
「そこら辺の知識も一緒に入ってたけど、本当にワンダーワールドなんだな」
何故、俺がこの世界に転生したのかは分からないけど、俺はここで生きていかなければいかない。
それと俺のいる家には電気と水道も設備されていた。何処から持ってきているのかが不明だが……。
それから時が過ぎ、俺は魔法科高校に入学することができた。
──────2095年、4月、国立第一魔法科高校
魔法が御伽話の物でなくなってから約一世紀が過ぎようとしていた。
2095年4月、魔法師を育成するのに各国が躍起になる情勢で、日本も例に漏れることはなく、育成機関である魔法科高校では入学式が行われようとしていた。
現在日本には第一から第九まで魔法科高校が存在しており、定員は200名になる。
第一高校では入学式前に二人の男女が言い争っているようであった。
女性の方には八枚花弁のエンブレムがあり、男性の方にはなかった。
全ての魔法科高校では入学の時点から優等生と劣等生が存在する。
八枚花弁のエンブレムがある女性は優等生の一科生であり、エンブレムがない男性が劣等生の二科生である。
「納得できません!!」
そう言う女性、司波深雪。人形のように左右対称の面持ちで、長い黒髪を携え、人々を自然と惹きつける雰囲気を持っていた。
「まだ言っているのか……」
ため息混じりに言う男性、司波達也。深雪程では無いが整った容姿をしており、彼女の苦言を困ったように聞いている。
「なぜお兄様が補欠なのですか!入試結果は1位ではないですか!」
「落ち着け深雪。どうやってペーパーテストの結果を知ったのかは聞かないが、此処ではペーパーテストより魔法実技が優先されるんだ。補欠とはいえよく一高に受かったものだと……」
「そんな覇気のないことでどうしますか!!」
だが深雪の一喝で黙らせられる。
「勉学も体術も!お兄様に勝てる者などいないというのに!!」
深雪の評価は強ち間違ってもいない。達也に勉学も体術も勝てる人間などそうそう居ない。
それでも勝てる者がいないと言うのは流石に言いすぎだが。
だが次に出てきた深雪の言葉は達也にとって看過出来るものでは無かった。
「魔法だって本当なら――」
「深雪!!」
「!?」
突如声を荒げた達也に、深雪はハッと息を飲む。
「それは口にしても……仕方の無い事なんだ。分かっているだろ?」
「も、申し訳ございません……」
そして兄に叱られ落ち込む深雪に、達也はソッと手を乗せ頭を撫でた。
「謝ることは無い。お前はいつも俺の代わりに怒ってくれる。その気持ちは嬉しいよ。俺はいつもそれに救われてるんだ」
「嘘です……」
すると途端に二人の醸し出す雰囲気が甘い空間へと変わっていく。
「お兄様は何時も私を叱ってばかり……」
「嘘じゃないって。お前が俺の事を考えてくれているように……俺もお前の事を思っているんだ」
「…………」
達也の言葉に深雪は固まる。深雪の様子に達也は首を傾げるが、特におかしなことを言ったつもりはない。
「お……お兄様……そ、そんな……」
すると深雪は頬をもの凄い勢いで赤くさせていく……そして達也に背中を向けクネクネ動きながら……身体全体で喜びを表していた。
「想っているなんて」
「?」
(あれ、絶対に別の意味として捉えてるよな)
そんな深雪の様子を見て達也はますます首を傾げて、アキラも深雪が何を考えているのかを察していた。
達也が言った言葉は文字通り『思っている』なのだが、深雪の中では『想っている』と伝わったらしい。
「お兄様………」
「さあ、深雪。こんなダメ兄貴にお前の晴れ姿を見せておくれ」
「そんな!お兄様はダメ兄貴などではございません!分かりました!お兄様、ちゃんと見ていて下さいね!」
「ああ」
どうにか納得した深雪に達也は安堵する。
それを見ていた俺は、この2人の関係が兄妹よりも夫婦のような会話にしか見えなかった。
「彼女が新入生総代の司波深雪、ね」
俺は司波兄妹の会話を木の枝に座りながら見ていた。この会話を間近で見たいから早い目に来たが、見たいものを見たら暇になってしまった。
「式まで2時間か……まぁ気長に待つか」
そう言い、俺は持ち込んでいた本を取り出して読み始める。情報端末のレベルが上がるにつれて紙媒体の物は減ったがそれでも需要は一定数存在している。
そこから時間が経ち、講堂が開かれて入場が可能となったのを確認して俺は木の上から降りた。
講堂に入り暁はため息を吐く。
そこには前に一科生、後ろに二科生がきっかり別れて座っていた。
「知ってはいたが、実際に見ると露骨だな」
そう言って前方の席に座り、リクは目を閉じて式が始まるまで眠る。
『続いて新入生答辞』
生徒会長の祝辞が終わり、次に新入生代表の挨拶にまで進んでいた。
『新入生総代、司波深雪』
「‥‥ん?」
リクはそこでようやく目を覚ました。リクが前を見れば、新入生総代の司波深雪が立っていた。