デート・ア・ライブ 千璃ホロコースト   作:泰邦

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AL作戦鬼畜すぎわろたwwwわろた……


第二十二話:道は違えた

 〈ラタトスク〉の保有する空中艦〈フラクシナス〉の艦橋。

 そこで、船員の一人である椎崎が〈フラクシナス〉宛ての通信が届いていることに気付いた。

 〈フラクシナス〉へ通信が来るとすれば、〈ラタトスク〉のトップたちである円卓会議(ラウンズ)くらいのものだ。多少緊張しつつ、椎崎は通信を開いて相手からの応答を待つ。

 応答が来た瞬間──椎崎は一気に顔色を変えた。

 

 

        ●

 

 

「──樋渡千璃からの通信ですって?」

 

 緊急事態につき、本来ならば隔離状態にあるはずの琴里が艦橋に戻って指揮を執っていた。神無月でさえ今回の件は手に余ると判断したらしい。

 考える限り最悪の状況だと聞かされ、令音と共に艦橋へ戻ってきた琴里は、軍服を肩掛けにしたまま艦長席に座る。

 映像はない。そもそもあちら側で映像を入力されていないらしく、音声だけで通信が行われていた。

 一体何があったというのか。

 誰もが口をつぐんで教えない。というよりも、言うのをためらっている印象だ。

 本来ならば組織としてこれは駄目なのだが、通信を聞けばすぐにわかると令音が言うので仕方なくここまで来ている。

 

「それで、相手は私を出せって言ってるわけ?」

「は、はい……交渉がしたいと言っています」

「ふん。交渉なんて、今更することあるのかしらね」

 

 そう言いつつ、通信をつなぐように指示する。椎崎がその通りにして、通信がつながった瞬間に声が聞こえてきた。

 

『──ん、繋がったみたいね。さて、琴里ちゃんはいるのかな?』

「ご要望の通り、私はいるけれど──今更何を交渉しようっていうのかしら?」

『交渉の前に一つだけ通達を。どうにも、琴里ちゃんの言葉を聞く限りじゃ伝えられてないみたいだしね』

「通達? もったいぶらないでさっさといいなさい」

『──五河士道と夜刀神十香をこちら側で保護した。以後〈ラタトスク〉の接触は認めない。接触があった場合、我々は武力を使ってでも〈ラタトスク〉を退ける』

 

 迂遠な言い方など一切ない。千璃の言葉には必要なことが必要なだけ込められていた。

 士道と十香を手中に収めたという事実。千璃が明確に〈ラタトスク〉に対する敵対宣言を行ったという事実。

 その中でも重要なのは士道と十香が無理矢理、あるいは自ら千璃と共にいるということである。その状況次第ではまた琴里が動くことになる。

 

「二人を誘拐したとでも? だったら──」

『勘違いをしないでほしいのは、二人は自らの意思で私たちと手を組むことを了承したということ。私たちがやったのはあくまで選択肢を増やすことであって、彼らの意思には介在していない』

「そんなこと、あり得るはずがないでしょう」

 

 琴里たち〈ラタトスク〉は士道を中心に動いている。彼がいなければ精霊の力を封印することも出来ず、普通の生活をさせることなど出来ないからだ。

 十香と四糸乃も〈ラタトスク〉のバックアップがあったからこそうまくいったし、今後も必要になってくる。士道が精霊を救いたいと思っている以上、〈ラタトスク〉を離反するメリットなど存在しない。

 それ故に琴里は強気に出る。

 士道は琴里を裏切らないと、信じているからこそのセリフでもあるのだろう。

 しかし、現実は非情だった。

 

『……琴里。俺は、〈ラタトスク〉とは手を切る』

 

 聞こえてきた声は紛れもなく士道のものであり、疑う余地はなかった。

 愕然とする琴里を尻目に、令音は士道と十香の居場所を探らせる。通信が行われている以上、場所を探知することも可能であると判断したからだ。

 それに、十香に持たせた携帯にはGPS機能もついている。居場所を特定することはたやすい。

 結果は少なくとも士道の家ではない、ということ。すぐに映像を入手すべく数名のメンバーと数台のカメラを動かし、令音は琴里の方を見る。

 どうにか会話を長引かせてくれれば、場所を特定したうえで状況を判断できる。神無月もそれを理解してか、令音を視線を交わして頷くと琴里の傍によって小さく何かささやいている。

 

「……本当に、士道なの……?」

『……ああ』

「どうして、私たちを裏切ったの……?」

『……〈ラタトスク〉が信用できなくなったからだ』

 

 琴里の問いに対し、つっかえつつもしっかりと発言する士道。口調も反応も違和感はない。

 だが、神無月にはどうしても懸念があった。

 随意領域(テリトリー)というのはかなり万能だ。それこそ、その力を使えば声を変える(・・・・・)ことすら容易い。

 千璃が士道と十香の身柄を確保し、そのふりをして〈ラタトスク〉と交渉を行っているという可能性もまた捨てきれないのだ。映像が無いということが、その可能性に拍車をかけている。

 

「〈ラタトスク〉が信用できない? あれだけ色々手伝って、精霊を保護する準備まで整えた私たちを、信用できないですって?」

『俺が〈ラタトスク〉に協力するって言ったのは、あくまで精霊を救うための組織だって聞いたからだ。精霊を殺すためじゃない』

「樋渡千璃のこと? 言ったはずよね、彼女は人を殺し過ぎてるって」

『人を殺し過ぎてるっていうなら、狂三は違うのか? それとも人だった時に殺し過ぎたから、その罪を清算するために殺すっていうのか?』

 

 道理が通っていない。

 人であった時の千璃は確かに悪人だっただろう。その罪を清算すべきだとは士道も思う。

 だが、それは〈ラタトスク〉側が一方的に言っているだけに過ぎない。仮にも"精霊を救う"ことを目標として掲げるのならば、あくまでも殺害ではなくやり直させることを念頭に置かねばならない。

 狂三に対してそうであったように。

 千璃に対して過剰な反応を示すから、〈ラタトスク〉の信用を落とすのだ。

 

『琴里に殺させようとするのも気に入らない。俺は、そんな〈ラタトスク〉を信用しない』

 

 どこまでも硬い意思。有り体に言えば選択を間違えたともいえる〈ラタトスク〉の司令官である琴里は、忌々しげに拳を握りながら音声が出力されているスピーカーを睨む。

 居場所の特定はできた。既にカメラを飛ばして建物を映し出しているし、数名のメンバーを待機させてもいる。

 私たち、と言った以上は千璃の他にも仲間がいるのだろう。先日のことも思えば狂三である可能性が高く、だからこそ厄介であると言えた。

 

「……司令。準備が整いました。士道君の姿も既に確認しています」

 

 神無月の言葉に頷き、琴里が映像を映すように指示する。

 同時に画面の一つに映像が出力され、簡素な住宅街の一角と共に赤と黒のドレスに身を包んだ少女が映し出された。見覚えのあるその姿に琴里が何か言葉を発しようとする、その直前。

 少女が動いた。黒曜のような黒髪がなびき、夕焼けの空に輝く。

 見惚れる暇もなく銃を抜き放ち、少女──狂三は口元を歪ませながら言い放った。

 

『──ダァメ、ですわよ』

 

 数度続く発砲音。古典的な単発式の銃でありながらも弾切れを起こさないのは狂三の『天使』の力ゆえか。

 次々と破壊されるカメラ。同時にあたりに潜ませていた工作員とも連絡がつかなくなる。

 相手が精霊ならばそれもまた当然。如何に訓練を積んだとはいえ、基礎的な部分から格が違う。出し抜けるはずもないのだ。

 琴里が思わず舌打ちしてしまうほどに、その手並みは鮮やかだった。

 

『まぁ、予想はできてたよ』

 

 通信相手が士道から千璃に変わった。多少のタイムラグがあったが、相手が相手である以上声を変えているかどうかなどでの尻尾は見せないはずだ。

 だが、問題はそれだけではなくなった。

 千璃の抱えている戦力が千璃一人ではないということ。それも、よりによって狂三という最悪に近い精霊だ。〈ラタトスク〉としても最大級の警戒をしなければならない。

 ただでさえ琴里の現状という面倒事を抱えているのに、どでかい爆弾を持ってきてくれたものだ。

 もっとも、士道の今後という〈ラタトスク〉の存在意義さえ問われるような厄介ごとならば、遅かれ早かれ直面する羽目になっていただろうが。

 

『言ったはずだよ。私たちは〈ラタトスク〉の行動次第では武力行動さえ辞さないってね。交渉をやる前に交渉決裂するとは思わなかったけど』

「だったらどうするつもり? 〈フラクシナス〉を叩き落とすとでもいうのかしら」

『流石にそこまでやるつもりもないよ。ウッドマンが乗ってるならともかく、君ら下っ端には興味もないし相手をしている時間もない』

 

 面倒だと言わんばかりに吐き捨て、千璃は嘆息する。暗に否定しないあたり、不可能ではないのだろう。

 士道がいない以上、〈ラタトスク〉そのものに用はない。琴里と四糸乃という二人の精霊だけがネックだが、それも士道がいればどうにかなるだろう。

 一番のキーマンを手に入れた以上、千璃の警戒は〈ラタトスク〉ではなくDEMへと向いていた。

 だからこそ、千璃の目的はただの交渉ではない。

 

『代わりに、君らの情報をDEMに流そう』

「な……ッ!?」

 

 ウッドマンとウェストコットの間に何らかの関係があったことは千璃がよく知っている。

 この二人が別の組織にいて別の思想を持っている以上、決して相容れることはない。元々同士であった二人も、おそらくは仲違いしているのだろう。現状を考えればそれくらいは予測できた。

 だからこそあえてこの二人をぶつける。

 相容れることのない二人だからこそぶつけることで千璃から目を逸らすことが目的だが、千璃としてもウェストコットの裏をかくのは厳しい。

 ある程度情報が漏れるのは仕方ないにしても、ウェストコットが何を狙っているのか千璃も知らないのだ。逆にウェストコットも千璃が何を狙っているのかを知らないため、動きは慎重になるだろう。

 もっとも、エレンがウッドマンのことをどう思っているかによっては、ある程度目を逸らすことも可能になるだろう。

 逆に千璃に対して固執しているのなら目は千璃側を向くことになるかもしれないが。

 このあたりは一種の博打だ。

 

『別に君たちが私たちの情報を流しても構わない。どのみちDEMとは敵対するつもりだ。それが早いか遅いかの違いでしかないからね』

「なんですって……?」

『しかし君たちが私たちの情報を流すというなら……残念ながら、士道君の身は今以上に危険に晒されることになる』

「…………ッ!」

 

 現在士道を保護している千璃たちは元より、士道ありきの計画を立てている〈ラタトスク〉もまたそれは望むところではない。士道のことを想っている琴里も同様。

 〈ラタトスク〉のアキレス腱ともいえる存在を確保した意味は大きい。

 士道の情報を流せば、興味を持ったウェストコットの目は確実に千璃たちの方を向く。ただしそれは危険に晒すと同義であり、琴里には選べるはずのない選択肢だ。

 ぎりっ! と奥歯を噛みしめ、音の出ているスピーカーをにらみつける琴里。

 

『ああ、士道君自身は君のことを案じている。家には数日中に戻るようにしておく。けれど、〈ラタトスク〉としての接触は無しだ。接触があった場合、狂三ちゃんが動くことになる』

 

 凄まじい数の分身体を持つ狂三は、二十四時間の監視も可能なのだ。科学に対しての天敵ともいえる千里もいる以上、〈ラタトスク〉に成す術はない。

 

『グッバイ、琴里ちゃん。今度は君と四糸乃がこちらに来てくれることを祈っているよ──私なら、君の抱えている問題も解決できるからね』

 

 最後にそう言い放って、千璃は通信を切った。

 〈フラクシナス〉内部は、シンと静まり返っていた。

 

 

        ●

 

 

「おつかれー」

「いや、軽いなアンタ」

「一人二役は中々につらくってね」

「声を変えられるってことにも驚きましたけど……俺が直接話さなくてもよかったんですか?」

「士道君がしゃべってもよかったけど、それだとボロが出ることもあるし。まぁ士道君しか知らないことでも本人に聞けばそれで済むからね」

 

 やや広い洋風のホテルの一室。そこで千璃は士道、十香と共に〈ラタトスク〉へと通信を行っていた。十香は途中で売店に菓子を買いに行ったが。

 辺りはアミューズメントパークもある都市部であり、簡素な住宅街などどこにもない。千璃はパソコンに映った画面を見て計画が成功したことを確信しつつ、狂三たちの帰りを待つ。

 程なくして千璃の影から二人の少女が現れ、千璃はソファに座ったままねぎらいの言葉をかける。

 

「お疲れ。狂三ちゃんに七罪ちゃん」

「大した仕事ではありませんわね。ただの人間相手ならすぐに済むことでしたもの」

「……」

 

 不均等なツインテールの少女、狂三。そして緑色の長髪をなびかせている魔女の服装をした美女、七罪。

 狂三はにこやかに告げるのに対し、七罪は納得いっていないようななんともいえない表情をしている。

 居場所を誤認させるために七罪の力を借りたのだが、〈贋造魔女〉で士道に化けた上に十香の携帯を持たせていた。十分役に立ってくれたから千璃としては嬉しい限りなのだが。

 

「何か不満でも?」

「何かっていうか……なんでこんなことを?」

 

 文句を言う割にはちゃんと役割をこなしてくれている。手伝ってと言ったら手伝ってくれたので特に気にしていなかったが、何か欲しいモノでもあったのだろうか。

 

「今度高級スイーツでも奢るよ」

「そういうことじゃなくて……なんで五河士道がここにいるの!?」

 

 ああ、と千璃は思い出す。

 そういえば七罪は自分の姿にコンプレックスを抱いていた。『天使』の力でそれを偽っている以上、精霊の力を封印できる士道はなるべくなら避けたい存在なのだろう。

 今もなるべく近寄らないように立ち位置を調整している。そこまで露骨だと士道が可哀想だと思うほどに。

 しかし。

 

「そういう割には、意外とすんなり手伝ってくれたじゃない」

「……大きな組織だますっていうから。つい悪戯心が……」

「〈ラタトスク〉って事前に言っておいたはずだけど」

「彼が離反したって思わせて、組織を揺さぶるものだと思ってた」

 

 七罪は士道の姿を見ているから、改めて見せる必要はないと思って千璃は狂三と共に七罪を偽の拠点に配置している。直接会うこと自体初めてのはずで、士道も口をはさめずにおろおろとしていた。

 というか、七罪の言い分だと千璃が士道を誘拐したようにしか思えないので、そこだけは丁寧に修正しておく。

 余計に駄目だと七罪は怒ったが。

 

「別にさ、七罪ちゃんの『天使』を今すぐ封印しようってわけじゃないんだって。それなら私とか狂三ちゃんもさっさと封印しろって話だし。第一、感情が揺れた時なんかは勝手に霊力も戻ってくるよ」

「……まぁ、それなら別にいいけど。でも、出来る限り近づかないでね!」

 

 士道との間に狂三を置いて威嚇している七罪。狂三も士道も苦笑して顔を見合わせているが、反感を抱いているわけではなさそうだ。

 触れただけで孕まされると言わんばかりの警戒っぷりだ。そこまで『天使』を封印されるのが嫌なのだろうか。

 まぁ、誰だって見せたくない姿というのはある。七罪の場合それが『天使』を使っていない時の姿であるというだけの話。士道も無理に霊力の封印をしようという訳ではないのだから、七罪もそれほど警戒しなくてもとは思っているのだが。

 

「フフーフ。まぁ、気長にやっていけばいいんじゃない? どうせ長い付き合いになるよ」

「まさかずっといる気なの?」

「七罪ちゃんも最近は大体ここで暇をつぶしてるでしょうに。私だっていつも暇ってわけじゃないんだよ?」

 

 初めのころは借りてきた猫のような状態だった七罪も、ここ最近は随分と打ち解けてきた。事情を知っていて、定期的に話せる相手がいるというのはやはり今までとは違うのだろう。

 若干顔を赤くしてそっぽを向く七罪。

 さて、じゃあ仕事が終わったから酒でも飲むかーなどと千璃が言い出したところでちょうどよく十香が戻ってくる。

 

「いろいろあって迷ったが、おいしそうなものを買ってきたぞ!」

 

 どやっ、と言わんばかりに胸を張って袋をテーブルに置く十香。

 十香は一応七罪と会ったことはあるが、自己紹介などしていないのでこの場で互いに自己紹介をしておく。ネガティブなことばかりを言っていた気がする七罪だが、十香は全く気にしていないようだ。

 根が純粋な十香と話している七罪はなぜかダメージを受けたように項垂れていくが、千璃はそれを無視しながら士道に話しかけた。

 

「彼女も精霊。だけど、救ってやるなんて思わないことよ。あくまでも彼女たちが力を無くしてでも普通に生きていきたい、って思ったら、君のその力を使うべきだからね」

「……そうですね」

 

 千璃が真面目なことを言うので士道もちょっと驚くが、当人は気にした素振りも見せずにテーブルに置かれたお菓子の入っている袋をあさくる。

 適当なお菓子を開けて食べ始めたので、士道もソファに座ったままお菓子に手を伸ばす。

 それを見た十香が声を上げた。

 

「ず、ずるいぞ! 私が買ってきたのだから、私が一番に選びたい!」

「あらあら。ではわたくしもお一ついただきましょう」

「せ、折角だから私も一つ……」

 

 備え付けの冷蔵庫に用意しておいたビールを開けながら、千璃はお菓子のチーズを咀嚼する。

 狂三が手に取ったお菓子を士道に「あーん」と食べさせているのを見てうらやましがる十香や、一人でちょっと離れて黙々とチョコを食べている七罪。

 ちょっと騒がしいが、なかなか良いものだ、と千璃は思う。

 ふと隣に気配を感じたが、そこには誰もいない。見た目には誰もいなくても千璃にはきちんと知覚できる。千璃の『天使』が、そこにいた。

 

『他愛のない日常というのも、君の欲したものだものな』

「……まぁ、否定はしないよ」

『愛はわかる。情もわかる。しかしそれらを理解しながら、君は君の望むまま、あるがままに外道であるだけ──そこに一切の後悔はない』

「……何が言いたいの?」

『人の性を理解しながらも読み切れない(・・・・・・)のは、まぁ仕方のないことだろう』

「まさか──」

『ウェストコットとエレンが動いた。既に日本へと向かっている』

 

 予想よりも早い。真那がいるのは狂三関連だろうが、あの二人を動かすほどの案件など何があるというのか。

 

『日本に来る用事はもともとあったようだが、それに加えて君の存在だな。殺し損ねた君をこの手できちんと殺したい──と、エレンは息巻いていたようだ』

「だろうね。アンタのおかげであの時は助かったけど、二度目はない。こっちも持てる戦力で迎撃するしかないけど……」

 

 目の前で騒いでいる彼女たちに、それを伝えるのは憚られる。最低限の警告はしておくが、一刻も早くあの二人の目を〈ラタトスク〉に向けねばならない。

 士道を狙わせてはならない。彼の存在はあらゆる意味でジョーカーになりうるのだ。どこまで秘匿できるかが鍵になる。

 空想を現実にする『魔術』の一端。人類が手に入れた奇跡の力。

 それらをもって精霊を狩るのが彼らの仕事だ。そこに情を紛れ込ませるような三流ではない。

 

『厄介なのは、DEMには二番目の精霊が囚われているということだ』

「……あの子が? なんだってそんなことに……」

 

『理由まではわからんがね。少なくとも、DEMとの対決は逃れられなくなったわけだ』

「それは元々よ。あの三人は私の手で殺す。出来る限り手を尽くしてね」

 

 だが──今は、今だけはこの穏やかな日常の中で過ごしても文句は言われないだろう。

 片手に持ったビールを傾けながら、千璃はそう思った。

 

 

 




なお原初の精霊と二番目の精霊、ファントムについてもオリジナルが入っておりますのでご注意ください。
……しかし中々カオスな状況になってきた気がします。

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