デート・ア・ライブ 千璃ホロコースト   作:泰邦

33 / 46
第三十三話:〈ベルセルク〉

 

 刃の擦れ合う音が海岸に響く。

 一本のレイザーブレードを使って冷静に切り捨てようとしているのがエレンならば、二本のレイザーブレードを用いて激情のままに切り捨てようとしているのは千璃だった。

 

「三十年ぶりだ。恨みはまだ忘れてないぞ、エレン──ッ!」

「結構。私も貴女を生かしておくつもりなどない──ッ!」

 

 随意領域を絞り、脇腹の出血を抑えて出来る限り動かずに構えるエレン。

 対照的に千璃は広範囲に随意領域を展開し、それを足場にして縦横無尽に駆け巡る。三次元的な立体機動で、エレンの首を削ごうというのだ。

 高速で移動する千璃の刃を、その図抜けた力と卓越したセンス、そして余りある戦闘経験で受け止め、弾き続ける。

 これが真那なら追い込まれていくだけ。

 エレンだからこそ拮抗し、あまつさえカウンターを狙うような真似さえ出来る。

 

「『天使』を使わなくとも良いのですか?」

「なんだ、使ってほしいのか?」

 

 火花を散らしてぶつかり合う二人は、その状態でも喋る余裕があった。

 事前に指示しておいた通り、狂三は士道と十香を連れて耶倶矢と夕弦のことを解決しに行った。こちらは千璃一人でどうにかしなければならない状況だが、予想以上に千璃に優勢と言ってよかった。

 何故なら、エレンの脇腹には狂三のつけた銃弾の痕がある。出血が続くというのは馬鹿に出来るものではなく、エレンとしてもある程度自分の傷を考えて戦闘を行う必要がある。

 

「今の状況ならば、あるいは『天使』を使えば私を殺せるのでは?」

「かもしれないが、あんただってただでやられてくれるわけじゃないでしょうに」

 

 そもそも、千璃のそれは単純に物質を創造しているわけではない。

 Aという原因があってBという結果が起こる。マッチを擦れば火がつくように、一つの現象を起こすための引き金に過ぎないのだ。

 爆発を起こすには爆弾がいる。銃弾を放つには銃がいる。詳しく説明するならもっと複雑で煩雑なものだが、一つの結果を生み出すため、逆説的に生み出された霊力の塊こそが千璃の『創造』という力の根幹だ。

 そして、その力には当然のようにルールというものがある。使ったから寿命を減らすなどとは言わないが、乱造出来るような模造品を幾ら生み出しても決定打は与えられない。

 事実を知ってか知らずか、エレンは千璃の反応から自分の予想が正しいものであると判断した。

 

「──やはり、人の身に余る力だったようですね。貴女の守護天使の力は」

「…………」

「元より生命の樹(セフィラ)の外側に属する存在。『精霊』という枠によって人の身でも扱える域に落としたとはいえ、人間があれを理解出来るとは到底思えない」

 

 人よりも神に近い存在。

 人智を超えた異質な存在。

 それだけの言葉を並べたところで『理解できない』ということを漠然と感じただけに過ぎない。

 

「あなた、一体何を犠牲にしました?(・・・・・・・・・・)

 

 人の身から精霊に成る事例はいくつかある。琴里もその一例だが、千璃はそれに当てはまらない。

 根本的に『精霊』としての質が別格なのだ。

 琴里のそれが器に満たされるよう調整された水を入れられるとすれば。

 千璃のそれは器を破壊するほどに大量の水を送り込まれるようなもの。

 

「……く、ふふ……何を(・・)、だって? そんなもの、全部(・・)に決まっている」

 

 人としての存在全てを食わせて、千璃は『精霊』として存在している。

 三十年という時間を経て、作り変えられたのではない。

 三十年という時間を以て、新たに生み出されたに近い。

 『樋渡千璃』という個人の記憶と魂を持つ、肉体的には決して『樋渡千璃』ではない別の誰か。生物学的にDNAが一致しない同一人物にして赤の他人が出来上がる。

 

「『樋渡千璃』は一度死んだ。お前に殺されたんだ──だから、今ここでお前と戦っているのは厳密に言えば全くの別人(・・・・・)なのさ」

 

 『天使』の力に適応するためにはそうするしかなかった。それ相応の強度がなければ空気を入れられた風船が内側から弾けるように、千璃の肉体は注ぎ込まれた力に耐えうるだけの強度を必要としたのだ。

 同時に、それが千璃の肉体が若返っている理由でもあった。

 

「成程。器の強度の問題ですか……私が殺さずとも、貴女はいずれその域に手を伸ばしていたのでは?」

「必要ならそうしたさ。でも、やるからには確実性を持って挑む。お前に殺され、博打で挑むしかない状況は最悪に近かった」

 

 成功率は目測で三割弱といったところか。それでも死の淵に立たされた千璃に選択肢など他になく、試すほかに道など無かった。

 結果として成功し、千璃は今ここでエレン相手に刃を振るっている。

 千璃の人生最大の博打に打ち勝った以上はここからさきも失敗できない。そのために、今はエレンを足止めする。

 

「三十年で大分腕を磨いたみたいだけど、腹の傷がかなり効いてるみたいね」

「お陰様で。私としても今すぐその首を落として差し上げたいのですが、この状況では難しい」

 

 出来る限り最小の動きで対応しているものの、かなり激しい運動であることに変わりはなく、止血していた脇腹からは傷が開いて出血が続いていた。

 エレンを殺す最大のチャンスだ。これを逃せばあとはない。

 空中艦〈アルバテル〉を沈めた以上はエレンに脱出のすべなどなく、ここで千璃たちを殺すか自分が死ぬかのどちらかしか道は残されていない。

 

「決着つけようか、魔術師。科学者の力ってやつを見せてやるよ」

 

 形勢は既に逆転している。

 勝敗の行方はわからぬまま、二人は夜の闇の中で殺意を研ぐ。

 

 

        ●

 

 

 士道と十香は走っていた。

 エレンと千璃の戦闘に巻き込まれないためのものであり、追随する狂三に急かされているからでもあった。

 

「急いでくださいまし。あの二人の戦闘に巻き込まれるのもそうですが、あちらの二人も放ってはおけないのでしょう?」

 

 視線の先には暴風と衝撃波を辺りに撒き散らす二人の精霊の姿がある。

 八舞姉妹。二人に別たれた、元は一人の精霊。

 それが事実かどうかはともかくとして、士道としては彼女たちの殺し合い──否、生かし合いを止めたかった。

 互いが互いを生かすために、相手に自分を殺させる。どれほど相手を想っているか互いに知っていても、それしか残された道がないのなら従うしかない。二人はそういう関係性だ。

 だが、そもそも。

 

 二人が一人にならなければ(・・・・・・・・・・・・)、どんなペナルティがあるのか。

 そして、その刻限は何時までなのか。

 

 士道にはそこがずっと疑問だった。

 『天使』が使えないわけではない。記憶の欠落があるのかと思いきや二人とも一人だったころの記憶がない。精霊としての力も個々で十分すぎるほどにある。

 二人は本能的に刷り込まれているから戦っているだけだと言っていた。──それは勝敗云々ではなく、そもそも争う必要がない(・・・・・・・)のだとしたら。

 止められる。こんな無意味な争いに終止符を打つことが出来る。

 霊力を封印する以外にも、方法はあるのだ。もちろん最善は霊力を封印することだが、次善の策があるというのは安心感をもたらす。

 

「ああ……急ごう。あの二人を止めなきゃいけない」

 

 手の中にある〈鏖殺公〉は未だ消えない。士道の願いを果たすために顕現したその刃は、まだ役目を果たしていないとばかりに力を感じさせる。

 『天使』とは想いを力に変える武器だ。

 何か、あるいは誰かに対する自身の想いが強ければ強いほどに、その『天使』の力は際限なく上昇していく。それが『天使』の特性。

 暴風は爆発のように激しくうねり、その轟音は士道の声など容易くかき消す。

 声は届かない。

 なら、刃を届かせる。

 

「シドー、使い方はわかるのか?」

「ああ……誰に説明されたわけでもないけど、なんとなくわかる」

 

 わずかに感じる既知感。頭で考えるよりも先に体が構える。

 何をしたいのか、何をするために呼び出したのか。それらを明確に考え、思い描き、願い、祈る。純粋であればあるほどにその力は上昇していき、遂には本来の所有者さえも凌駕しうる。

 あくまでもそこまで純粋に何かを想えれば、という前提ではあるものの、そういう可能性は存在している。

 深呼吸して息を整える。

 まっすぐに二人のいる方向を睨み、剣を上段に構え、その想いと共に振り下ろす。

 

「ああああああああああぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁ────!!」

 

 何故二人のうちどちらかが死ななければならない。

 二兎を追う者一兎も得ずというが、そんなものはクソくらえだ。理想的な、絶対的なハッピーエンド以外は認めない。ほかの誰にもできないのなら自分がやる。

 士道の想いを反映するように強く輝く剣。それは士道の斬撃と共に光の尾を描いて空へと伸びていく。

 風を断つ。

 渦巻く雲を割断し、荒れ狂う暴風を切断し、二人の敵意を裁断した。

 

「な──」

「焦燥。これは一体……」

 

 今の一撃に反応し、耶倶矢と夕弦の二人が士道を見る。

 辺りに吹いていた風は嘘のように止み、狼狽した声が聞こえてきた。

 

「ぐ……」

 

 ぎちり、と体が軋む音がする。

 本来、『天使』とは生身の人間が振るえるように出来てはいない。千璃がそうであるように、肉体の強度の問題が前提として存在する。

 だが、それを歯を食いしばって耐え、いかにも「まだ余裕がある」ように見せかける。

 詐欺師の常套手段でもあるが、「一ミリも揺らがない絶対的な自信」は相手に信用させるための一つの手段だ。虚言だと思っていても「そこまで自信があるのなら」と感じて詐欺師の話を聞くケースは少なくない。そこから先は話術しだいになるが、この状況では士道に意識を持って行かせることこそ重要。

 知らぬまにそれを体現した士道は、剣を片手に喉が潰れても構わないというほどの大声を出す。

 

「頼む──戦いをやめてくれ、二人とも!!」

 

 気怠さと軋みで全身が痛む。先程まで活力にあふれていたというのに、剣を振るった直後からそれも感じなくなった。

 それでもなお立ち続け、声を張り上げる。

 それに対して耶倶矢と夕弦は不機嫌そうな顔になり、呆れたように言い返した。

 

「……あんた、聞いてなかったの? 私と夕弦は決着を付けてどちらかを取り込まないと存在できなくなっちゃうの」

「どうやって?」

「どうやって、って……そんなの、私たちにだってわからないわよ」

「だったら、なんで存在出来なくなるなんて確信できる?」

 

 実際にそうなったことがあるわけでもないのなら、本当かどうかなんて調べられるはずがない。

 例え本当に消滅するとしても、生き残った方は死ぬまで相手を殺したことを悔やみ続ける。──そんなことが、正しいはずがない。

 

「諦めてんじゃねぇよ! まだ取り返しはつくんだ。傷つけあっても、殺したわけじゃない。例えお前らのどっちかが死んでどっちかが生き残ることになっても、生き残った方は死ぬまで『自分が死ねばよかった』なんて後悔し続けることになる! 選択を狭めるな! お前らは精霊で、人よりもずっとすごい存在なんだろうが! だったら、諦めずに最後まで足掻いて見せろよ!」

 

 士道の言葉が、耶倶矢と夕弦を貫く。

 選択肢はどちらかが死ぬしかないなど認めない。どちらも生きて、皆が笑って迎えられるハッピーエンドを目指す。それこそ士道が望むことなのだから。

 その思いを真正面から叩きつけられ、耶倶矢と夕弦は目を見開いて驚く。

 手を伸ばせば届く場所に救いがある。それが、どうしようもなく二人の心を乱す。

 二人だって好きで殺し合っていた訳ではない。互いが互いを生かそうとするが故の自己犠牲が、どれだけ二人の心を苛んでいたかなど言葉にもできない。

 二人一緒に笑って迎えられるハッピーエンドなんて当の昔に諦めていた──いや、初めから考えすらしなかった。

 だって、自分の本能に刻まれた事実が絶対だと思っていたから。

 

 だが──二人一緒にいられる、そんな願いが叶うというのなら。

  

「手を伸ばせ! まだ可能性はあるんだ、本当に二人一緒に生きていたいならみっともなくても縋り付け! 体裁とかくだらねぇもんで相手を殺して、一生後悔し続けるつもりか!」

 

 伸ばされた士道の手を見て、耶倶矢と夕弦は目を見合わせる。

 彼は信用出来るのか。本当に、二人の願いを叶えてくれるのか。

 疑問と猜疑心が膨れ上がるが、士道はそれすら関係ないとばかりに言葉を投げかけた。

 

「一度だけだ。一度だけ、俺を信じてくれ──失敗したと判断したのなら、俺を殺してくれたってかまわない」

 

 士道の言葉に驚いたのはむしろ十香と狂三だった。二人にとって士道は大切な人物であり、殺されるなど到底許容できるものではない。

 たとえそれがほぼ確実に成功することだと思っていても、感情がそれを許さない。

 何か言おうとする二人を、士道は手で押さえる。

 必要なことだ。あの二人を説得するためには命だって賭けて見せる。他の精霊の時だって安全が保障されてきたわけじゃないのだから、今更命を賭けたって文句は言わない。

 

「……どうする?」

「逡巡。どうしましょうか」

 

 そんなこと、可能であるはずがない。士道はただの人間なのだから、耶倶矢や夕弦のことをどうにかできるとは思えない。

 だが──先程の風を割った一撃。あれは士道が放ったものだ。

 精霊ではない、人間が『天使』の力を使う。不可能を可能にするという意味なら、これ以上のものもない。

 

「……夕弦、私は……」

「呼応。私も耶倶矢と同意見です──一度だけなら、信じてみてもいいかもしれません」

「……そっか。うん、一度だけなら、いいかもね」

「肯定。本当に二人で居られるなら……とても、素敵なことだと思いますし」

「なんだ、夕弦ってばロマンチストじゃん」

「憮然。そういう耶倶矢こそどうなのですか?」

「私? ……うん。私も夕弦と同じかな」

 

 二人が共に居られるのなら、それに勝る幸福はない。他に方法が無いかなど、考えもしなかった。

 たった一度だけなら──士道を信用してもいいのではないかと、二人は結論に達したらしい。

 

「ああ……よかった」

 

 言葉は、思いは届いた。

 あとは、それを成すだけだ。

 だが、士道は既に体が動かない。右手にあった〈鏖殺公〉は既に消失しており、軋む体は後ろ向きに倒れ込む。仰向けになったまま説得が上手くいったことに笑みを浮かべ、意識を沈ませていく。

 ──その刹那に、巨大な爆音が島全体に響き渡った。

 

 

        ●

 

 

 千璃の『天使』の力は『創造』である。

 ひとえに創造と言っても、この力によって創り出せるのはあくまでも物理的に存在し得るものだけ。

 何故なら、千璃がそれを"想像できないから"だ。

 銃や大砲は構造や原理、作るための設計図まで完全に存在する。人が作り出した物体ならばほぼ確実に創造は出来るのだが、それが出来ないものも当然ある。

 例えば人体を創造しようとする場合、必要なのは構成材質だけに留まらない。肌の色、筋繊維、血液型、その他諸々の条件があって初めて創造できる。個々人の想像だけで補完出来る範囲を逸脱しているのだ。

 考えてみれば当然の話で、量産化さえ出来るようなものと未だ一から創り出すことが不可能に近いものならば、霊力によるものでも前者の方が圧倒的に簡単である。

 加えて、創造したとしてもそれそのものは"霊力によって"構成された物体だ。仮に原爆を創造しても放射能汚染は発生しないし、銃弾で撃ち抜かれても鉛中毒になることもない。

 

「──なるほど、これは凄まじい」

 

 樋渡千璃は科学者だ。

 どうしようもなく、どこまでも科学者然としているせいで"あり得ないこと"をはっきりと認識できてしまう。

 仮に『何でも切れるナイフ』が本当に存在していても、千璃がその原理と構造を認識・理解出来なければ創造はできない。

 だが逆に言えば、原理や構造が一本筋を通っていれば『理論上は可能』である兵器さえ容易に作り出すことが可能となる。

 

「使うのは初めての経験だけど……まぁ、それなりに悪くはないかな」

 

 虫のような八本足と、その上に存在する千璃が乗り込んだのは人間の形をした上半身の部分。腹部には多数の兵器が所狭しとくっつけられており、背面にはドラム缶のような──おそらくは銃弾を収納している──物体を背負っていた。

 悪路を走破するために必要なのはキャタピラではなくむしろ虫のような多脚。安定させるためには重心を低く、武器は遠中近すべてに対応できる兵器を。

 分厚い装甲はエレンの刃でさえ弾き、精霊相手でもなお一歩も引かぬ防御力を誇る。

 全体的に人間の上半身を乗せた蜘蛛を想起させるデザインの駆動鎧(パワードスーツ)

 それが、千璃の奥の手の一つだった。

 

 ──ま、あくまで『理論上可能』ってだけだから、細部を想像で補ってる分のフォローは必要だけど。

 

 千璃の乗り込んだそれは、起動すると同時に振動を開始する。

 

「じゃ、まずは小手調べと行こうか」

 

 機械の上半身が動き、その右手をエレンに向ける。内部に搭載されているのはマシンガンだ。

 不吉な機械音と共に銃弾がばらまかれ、エレンの肉体を粉微塵にしようとする。

 

「──ッ!!」

 

 咄嗟に動いたエレンは海岸を移動して岩礁を盾にするも、それすらガリガリと不快な音と共に削れていく。

 耳がいたくなるような爆音が響き、随意領域で知覚範囲を広げる。どうしたって相手を観測しなければ、次の攻撃を予測できない。千璃のそれは強烈なインパクトを与えるが、攻撃法に関しては全くの未知。

 そして、その中でマシンガン以外のものを知覚した。

 

「ぐっ──」

 

 考える間もなく海に飛び込む。その直後に岩礁が爆発を引き起こし、その熱と破片が辺りに撒き散らされる。やったのは簡易的なロケットランチャーだ。最早秘匿など頭の隅にも存在しない。

 海水が傷口にしみるが、気にする暇さえない。このままだと流石にやられてしまう。

 視界の暗さは随意領域でカバーできるが、傷口が開いて出血が続いているまま戦うわけにもいかない。特にあれは万全な状態であればまだしも、条件が悪いまま戦えばまず勝てない。

 実際のところは決死の覚悟で挑めば切り捨てられるだろうが、ほかにも精霊がいる以上は死ぬわけにもいかない。

 戦略的撤退をする。屈辱だが、追い込まれたのは事実だ。

 地上において覇権を握る兵器ではあるが、あれは海中で使うことはできない。火器銃器の類は海の中で使えないのだから当然であり、それ以外の兵器があっても随意領域でカバーすればなんとかなる。

 

 ──今死ぬわけにはいきませんし、それが最善ですかね。

 

 息を止めたまま、随意領域の応用で海中を魚のように移動するその最中。

 テトラポッドが海中へと落ちてくる。

 

 ──センリめ、こんなもので私をやれると……。

 

 広範囲に広がっている随意領域で知覚出来たのは、もう一つのテトラポッド。それは先程海中に沈んだものと衝突するコースであり──。

 エレンは目を見開いて随意領域を凝縮し、防御態勢に入る。

 直後、凄まじい轟音が海中に響き渡った。

 轟く爆音は海中の魚たちを軒並み気絶させ、海流の中に漂わせる。

 ガッチン漁、と呼ばれる手法だ。

 海中では地上──空気中よりも音がよく伝わるために行われる。硬質な岩どうしをぶつけ、その音で魚を気絶させるというものだ。日本ではダイナマイト漁などと呼ばれることもあるが、ともかく千璃はそれをやってエレンを捕捉しようとしたのだ。

 

 ──ぐ……なんてふざけた真似を……。

 

 しかし効果的であったのも事実。その後数度に渡る同様の衝撃をやり過ごし、エレンは昼間に士道たちが使っていたプライベートビーチまで逃走することに成功した。

 

 




上条さんのようになっていく士道君。フラグ建築士としてはまだ序の口にも及びませんけどね(え
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。