べあもりの冒険譚   作:渡口七海

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第3話 忘却の……なんだっけ?

「おう、よくたどり着いたな!」

 

「えーっと……貴方がぼ、ぼるかにかさん?だっけ?」

 

「そうとも、俺が炎龍ボルカニカだ。気軽にボルさんとでも呼んでくれ」

 

ニカッと笑うボルカニカ。色々あったが、べあもりはエンドレスボルケーノへの攻略に踏み切って、ボルカニカの元へとたどり着いていた。

 

「あ、はい、えっと、ボルさん、それで、べあもりはここで何をすれば?」

 

「最後の試練に挑んでもらうっても、別に難しいこたぁねぇさ。てか、試練は多分だが、ドリウスのとこのが1番めんどくせぇぞ」

 

あのクソみたいなゴーレムを倒す試練のことである。

 

あの時のことを思い出してべあもりは顔をしかめる。

 

「お前にやってもらうのは錬金だ」

 

「れん、きん?」

 

「おう。エンドレスボルケーノの枯れない火、高性能な動力炉、溶けない氷の花。これだけあれば異世界の扉を開くための魔力炉を生成することができるって訳だ。まぁ、俺がやってもいいんだけどな、自分でやった方が感動もひとしおってやつだろ?」

 

「えっと……その、べあもり……錬金の適性……0を通り越してマイナスなんだけど」

 

「は?」

 

「必ず失敗する上に、素材を絶対にロストする才能の、持ち主なの」

 

「この世にそんな突き抜けた才能のやつがいる訳……」

 

引きつった笑みを浮かべるボルカニカにべあもりは自分のステータスプレートを見せる。

 

そこには「この者の錬金を禁ず」と記されており、 錬金の適性値が表示されていなかった。

 

「逆にすごい才能ってことで……まぁ、そうだな、人には得手不得手っつーもんもあるし、しゃーないな!」

 

「フォローすら諦められたけど、そういうこと」

 

肩をすくめるべあもりにしかしなぁとボルカニカは腕を組む。

 

「魔力炉自体は俺が作っても問題ないんだが、中に込める魔力はクマ公の魔力じゃねぇといけねぇ」

 

「あ、べあもりはクマ公なんだ…… えっと、魔力炉の火入れくらいなら何度もやってるから問題ないはず、だけど……何か問題でもあるの?」

 

「まぁ、ちょっとな。造り手と火入れ人が違うとたまーに反発しちまうことがあんのよ。そうそうないんだけどな。」

 

「普通の魔力炉だとほとんど起こりえない話だけど、確かにそういう事故もあるって聞いたことはある」

 

魔力炉は生活における様々なエネルギー源のひとつとして普及しているもので、一度、中に魔力の火を灯してやれば、それを半永久的に燃やし、動力を生み出し続けるかなりの便利アイテムである。

 

昔は火入れするには専用の業者もあったのだが、技術の進歩で特に制限なく火入れが可能になった。

 

しかしながら、劣悪品はたまに反発を起こすらしく、魔力炉は安物は買うな、と言うのが世間一般の共通認識であった。

 

「別に今から作るもんが劣悪品って話じゃあねぇのよ。大きな動力を生み出す魔力炉はその分、こまけぇ調整が効かねぇから、その辺の微調整は自分でやった方が反発もほとんどねぇって話だ」

 

「ふぅん…… あ、でも、大丈夫。べあもり、魔力操作かなり得意だから」

 

「ほう? かなりの自信だな」

 

「うん、まぁ、普段からソロで冒険者やってるからね」

 

「それで身につくもんでもないと思うが……まぁ、いいか。じゃあ、魔力炉はとりあえず俺が作ってやる。その間に……どうすっかな……」

 

「ちょっとこの辺の素材とか集めに行ってもいい?」

 

「ん? まぁ、構わねぇが、何に使うんだ?」

 

「あー、うん、まぁ、一応、備え……的な? ベアクラッカーの弾の素材とかね」

 

「ベアクラッカー……ってーと、あれか、お前の使ってる銃だったよな」

 

「そそ。弾自体は業者に加工任せてるけど、素材買ってたら高いしね、自分で集めれる分は集めてるよ」

 

べあもりはこう見えても倹約家なので、無駄遣いなどは極力抑えている……というか、1人で暮らしているのでやり繰りはしっかりしないと今いる場所を追い出されかねない。

 

そして、メインウェポンとして使う武器が弾一発にかなりの金額を注ぎ込まないといけないわけで、使うだけで赤字になることもしばしば……

 

そんなことを繰り返していたらお金なんていくらあっても足りないのだから、しっかり採取できるものは採取しておき、少しでも節約をする、それがべあもりの信条であった。

 

「まぁ、そういうことならいいぜ。じゃあ、待ってな、すぐに仕上げてやるぜ」

 

「あい、じゃあ、これを」

 

素材の二つをボルカニカに渡し、しっかりと装備を整えてべあもりは鉱石等の採集へと出かけるのだった。

 

 

 

数時間後……

 

「おう、おかえり。素材は集まったか?」

 

「まぁ、ぼちぼちかな……ボルさんはどう?」

 

「もちろん完成してらァ! ボルカニカさんにかかればこんなもん余裕よ」

 

「……まぁ、古龍だもんね」

 

人の姿をしているし、かなり馴れ馴れしいがボルカニカは紛うことなき古龍なのである。

 

身体の中に蓄えてある魔力も人とは比べ物にならないし、知識も、技術も普通の人の何倍もある。

 

別にそれをべあもりは羨ましいとは思わなかった。

 

産まれ持った身体のスペックなんて人それぞれだし、それを活かして生きていくしかない生活をずっと続けてきた。

 

だから、これからも、自分の出来ることをやっていこうとしか思ってなかったし、それが生きることへと繋がると信じていた。

 

「じゃあ、火入れすんぞ」

 

「はーい」

 

「クマ公、やり方はわかるか?」

 

「大丈夫、何度もやってきたから」

 

魔力炉の前に立ち、両手を構えて魔力を集中させる。

 

周りの空気がザワザワと振動する。

 

目を瞑ったまま、べあもりはじっと、手をかざしたまま動かない。

 

どのくらい時間が経っただろうか…………べあもりはゆっくりと目を開き、自分の目の前にある魔力を確認する。

 

「うん、問題なさそう。じゃあ、入れるよ」

 

煌々と薄桃色に燃える炎。べあもりの魔力が火の形を取って、顕現したものだった。

 

言ってしまえば魔力の塊、しかしながら燃えるその姿は大火を成す為の種火とも取れた。

 

ゆっくりと、炉の扉を開き、その中へ火種を入れた。

 

ゴウっと音を立てて、炉の中で魔力火が明滅する。

 

その間隔が少しづつ短くなり……やがて安定した。

 

「ほう、さっき豪語しただけはあるな、一発で成功させるとは思わなかったぜ」

 

「まぁ、ね。 魔法剣士やってるから、魔力の扱いはやれなきゃ死ぬだけだし……」

 

べあもりは額に伝う汗を拭い、ふぅ……と一息ついた。

 

こうして、エンドレスボルケーノの試練は終わりを告げた。

 

 

そして……

 

「ここにもどってくるわけだね」

 

べあもりはあの扉の前にいた。

 

「はい、おめでとう、三つの試練を全部クリアしたんですね」

 

「あ、貴方がどりうす?さん、だっけ」

 

扉の裏から眼鏡をかけた青年が拍手をしながら出てくる。

 

地の古龍ドリウス。世界樹の森を住処としている面倒くさがりの古龍である。

 

「そうそう、ドリウス。最初の試練の時は特に顔は出さなかったけど、まぁ……三つしっかりクリアしたみたいだし、顔くらいは出しとくかって思いまして」

 

「本当に面倒臭がりなんだ……」

 

「ほんっと、試練の時くらいはちゃんと出くれない?」

 

「別にいいでしょう、エルフィン」

 

「お陰で僕と出会ったべあもりさんが驚いて、僕がびっくりだ」

 

「あれ、エルフィンさん?」

 

「ふふ、お久しぶり。三つの試練を突破して異世界へと旅立つべあもりさんを見送りに来たんだ」

 

優しく微笑むエルフィン。 彼が来たことで扉の前の温度が体感3℃くらい下がった

 

「おーう、クマ公、元気にしてっか?」

 

「あ、ボルさん」

 

今度は炎の古龍、ボルカニカが現れて扉の前の温度がいいぐらいの温度になる。

 

「……3人が揃うのは久々ですね、そういえば」

 

「あー、確かにそうかも」

 

「たしかになぁ、この扉作って以来、ざっと500年くらいか?」

 

「500年!?」

 

目の前の扉の思いもよらない歴史に少し驚くべあもり。

 

でも、よく考えると、古代文字が失伝するくらいの年月が経っているということを踏まえると、それもおかしくはないのか、と思い直した。

 

「てか、逆に考えると、500年もこの扉、開けたやつ居ないんだよな」

 

「あー、そうですね、一応、開ける前に調整しときますか」

 

ドリウスがパソコンを取り出して扉へと接続する。

 

べあもりはパソコンももちろん見た事がなかったので遠目に、なんだろあの箱……と思いつつボーッと見ていた。

 

「はい、OKです。じゃあ、いつでも行けますよ、どうぞ?」

 

「え? あ、はい、分かりました」

 

ドリウスにそう言われ、亜空間からボルカニカの作った魔力炉を取り出すべあもり。

 

三古龍が横並びになってべあもりのその偉業を見届ける。

 

がちゃりと、扉の横の窪みにぴったりと魔力炉がハマる。

 

キュイーンという甲高い音と共に扉が薄桃色に輝き始めた。

 

「起動成功です、さあ、扉を開ければそこは異世界ですよ」

 

「べあもりくん、よく頑張ったね、さあ、あとはその扉を開けるだけだ」

 

「クマ公、あっちに行っても頑張れよ! 応援してっからさ!」

 

「……なんていうか、興味本位で始めた旅だったけど、すっごく楽しかった! べあもり、すごく冒険してるなって、そう思えたから」

 

べあもりはそう言って三古龍に向き合う。

 

「だから、ありがとうございました!!!」

 

「はい」「ええ」「おう」

 

と三古龍から口々に返事。 べあもりは満足したように頷く。

 

かつて、おばあちゃんの家で読んだ本。

 

遠い、遠い異世界のお話。

 

御伽噺だと思ってた、現実にあるわけないと思ってた。

 

それでも、憧れは止められなかった、心のどこかではあると信じて疑ってなかった。

 

ずっと、ずっと……ずっと憧れ続けた異世界。

 

この扉を開ければ、その先には見たこともない景色が拡がっているのだろう。

 

大変な冒険をした……それでも、扉の先に拡がる新たな世界に心躍らないわけがない。

 

「じゃあ、いってきます」

 

強く扉を押す。 ごごご…と音をたてて扉がゆっくりと開く。

 

扉を開けたその先に見えた……それは……

 

 

 

「はいっ 異世界からこんゆるも~! べあもりゆるもでっす!」

 

あれからどれくらいの時が流れただろうか。

 

べあもりはこちらの世界へ渡り、様々な経験の後、現在ではVTuberをやっている。

 

週一回の定期配信と不定期なゲリラ配信、動画投稿をメインとしてまったりと生活していた。

 

最初は個人勢として活動を始めたべあもりだったが、とある企業にお誘いをかけられて、現在では企業VTuberである。

 

一部の熱狂的ファン達から支えられ、今日も元気に活動を続けるべあもりは冒険者時代のような死と隣り合わせの焦燥感みたいなものは無いが、充実した毎日を過ごしている。

 

「むむ。画面の向こうのきみぃー! べあもりから目を離したらダメ! でないと……お前の母ちゃん、へそに埋め込んじゃうぞ」

 

べあもりゆるも、異世界出身の異世界人。彼女の過去は未だに謎が多い。

 

実は冒険者かもーとか、別に普通の人だったーとか、そんなものはべあもりすなーの想像の範疇でしかないのだ。

 

この物語もまた、一人のべあもりすなーの妄想。この物語で、べあもりゆるもというVTuberに興味を持ってくれる人が一人でも増えることを期待している。

 

色々とあったけど……おしまい!

 




以上でおしまいです! わたしの推し、べあもりゆるもをよろしくお願いします!!!
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