続きません。
これは様々なウマ娘に出会い影響を受け精神的に成長していく物語である物語である。
ここはトレセン学園、トゥウィンクルシリーズに憧れレースの中に夢を抱き散っていく場所である。そんな美しく愛らしいウマ娘が通う学園に似つかわしくない男が今、春うららかと評していい日の早朝に入ろうとしていた。男はトレーナーバッチを付けたスーツを着ていたが、体格からして武人を思わせるものがあり、所作や挨拶からもそうであることが一目でわかり、髪に関しては黒色で顔は美という及ばず上の下もしくは中の情といったところだ。そして、なんといってもこの男からは荒々しく何かが周囲の者には感じられた。それゆえに、警備員に止められることは自明の理であった。
「申し訳ありませんが、身分証等を見せていただいてもよろしいでしょうか。」
警備員はいつも通りに身分証の提示を求めた。
「採用通知書でよろしいでしょうか。何分今日からの新卒でして、社員証を持っていいないので」
男は丁寧に落ち着いた面持ちで返した。この荒々しい何かを感じさせる男が返す言葉や態度だと思えずに少々警備員は面食らった。そして、新卒であることに驚いた。
「……はい、大丈夫ですよ。いや~申し訳ありません。新卒の方でしたか。雰囲気や所作からそうとも思えなくて、てっきり学園に用のある方だと思いましたが。話を聞かなくてはいけない人だと思いまして声をかけさせていただきました。最近ここらには不良ウマ娘やらただの不良なども見かけることがありますので余計に声をかけてしまいます。」
先ほどまでの少し張り詰めた感じから軟化し謝ってきた。男は自らが纏うものが何か理解し、自身の友からも指摘されたことあるために納得して先ほど同様に落ち着いて返した。
「気にしないでください、自分の雰囲気が他人から見てよくないのはわかってますから。あなたはよく職業に全うしておられる証拠ですよ。」
警備員はそんな言葉に好感を持ち少し忠告することにした。
「理事長は見かけで理解することができないと思いますが、失礼のないようにしてください。
それと今週はできるだけ早く行動したほうがいいですよ。この学園は広いうえに慢性的な人出不足です。来週に控える入学式やお披露目レースあります。自分の進退を含めて、急かすわけではないですが、やっておいて損はないと思います。」
男は頷いて聞き、丁寧にあいさつをして新人の集まる大会議室に向けて足を進めた。
大会議室では新人トレーナーたちが二十人ほどが談笑しながら座っていた。男は揖をし、おはようございますと挨拶をした。それに部屋にいるほかのモナは快活に返してくれた。しっかりと挨拶を返してくれるあたり、人としての最低限の礼を欠くような人たちではないのだらうと男は安堵した。
「お前が最後だな。今、軽い自己紹介してんだ。お前も混ざれよ、ちなみに俺の名前は木山レオ、名前と見た目からわかる通りハーフだ。よろしくな」
集まっている者たち一人のレオが話しかけてくれた。彼は鼻が高く体格も一般的に日本で高身長と言われている百八十センチを超え百九十センチをも超えていそうなくらい高い。髪は茶髪で彼の発言からも地毛なのだろう。そして、とてもフランクな性格ですぐに距離を詰められるのが好ましく思わないものには敬遠されるだろうが、男にとってそうでもなかった。男の身長は百八十センチ近く、前述したとおりのため避けられることが多かった男にとってはありがたかった。
体格や男性といった言葉つながりで話すと世間の常識として男性は力持ちという風に思われていない。なぜなら、ウマ娘が存在するからである。古来モンゴル帝国より国の情報伝達にはウマ娘がかかわってきた。戦争における遠征の際も同様である。ウマ娘は身体機能上男性より圧倒的に上であり仕方のないものであった。よって男女の区別は生物学における構造や機能によって別の生物として分けられているだけである。昔からウマ娘は本能に忠実で三女神に対する信仰を除いて文化的要素が育つことがなく、臆病な面があるために基本的によっぽどのことがなければ、戦うことはなかった。ゆえに昔から狩りなどに行くことが多かった男性は男気などの概念は存在する。しかし、ウマ娘も人間と交わることによって不良といった攻撃的な性格の持ち主もいないわけではない。ウマ娘のレースにおいて彼女たちの体は資本であり、それを物理的に守るのはトレーナーである。そんなトレーナーも女性も確かにいるが、出産等の理由で産休するものも確かにいる。しかし、トレーナーには知識が必要とされる。それは運動や生理学の最先端に精通するだけでなく、戦術などの勉強も入れなければならない。科学技術は戦争と同じく日進月歩である。つまり、職を復帰したころには環境はがらりと変わって付いて行けなくなり、女性はそういうこともあり少なくなるの当然であった。前述したようにウマ娘相手ならいざ知らず比較的に男性が守る側に立つケースが存在することになるのは道理であった。男性の繁殖本能的気質から見ても自らの一定の優位性の確保といった点からも存在する要因というものは確認できる。
「俺の名前は荒川潤、ただの日本人だ。よろしく」
相手が自らの血統を述べたのでそう返すと少し周りの人が困惑している様子だった。我ながら第一印象は失敗したなと潤は一人心の中で思った。
「いやそこは趣味とかいう場面でしょ。何血統の話になってんのよ。見た目だけでも日本人ってわかるから、言わなくてもいいから。」
レオではなく、短髪で活発さのある女性で今のでツッコまずにはいられないとは遠慮なく言うタイプに見えるがこの女性は案外親しみやすいのではないかと考察した。まさに的確のツッコミであった。それだけでなく重ねてしかも一息で言い切るとはこの人は関西人ではないかと思った。しかし、重ねるとはいえ少し長いことに少々の不満を感じた。この漢字はウィットのきいた軽いジョークを言ってもいいのではないかという考えが頭をよぎった。
「すまない、俺には常時場を凍らせる能力があるらしい。喧嘩があるならその場を冷やすことはできるかもしれない。」
潤はそこで何か言い知れぬ達成感を感じた。しかし、そんなつかの間の達成感を感じている潤に別種の氷属性つまり精神攻撃型の能力である軽蔑的な口撃が飛んできた。
「単に自らのコミュニケーション能力がないことをさも旨く言おうとしたでしょ。あなた、面白くないわ。」
ひどく冷たい表情と表現でぐっさりと潤の心を突き刺した。それは心を突き刺すだけでなく、範囲攻撃であった。着弾地点である潤だけでなく、周りの行動でさえ凍り付かせた。そして、その場の全員がその口撃を放った存在のほうを向いた。そこにいたの明らかに貴族を思わせる雰囲気のある長髪の黒髪の女性であった。
「雪ちゃん、さすがに初対面の人にそれは駄目だよ。謝ったほうがいいよ。」
彼女の友人であろう黒髪のボブカットで愛嬌のありそうな女性が彼女を注意している。しかし、本人は聞く気がないようだ。
「面白くないものを面白くないと事実を述べただけよ。言われたくなければ、もっとましなことを言いなさい。」とこともなげに言い切った。
これにはさすがに友人も説得は不可能と踏んだのか分からないが、溜息を吐きこちらを向いても仕訳けなさそうに自己紹介をし始めた。
「私は桐生院葵と申します。名前からわかる通りトレーナーの名門である桐生院の者です。彼女は私の友人の桐野雪です。本当は悪い子じゃないので、もっと優しいですよ。共々よろしくお願いします。」
こんな状態になった一因は自分にもあるのではないかと思ったので、潤から切り出した。
「こちらこそよろしくお願いします。つかぬことを伺いますが、なぜトレーナーに?」
この場にいるのならば、絶対に答えることができなければならないことを質問した。
彼女は少し自分の中を探りながら
「名門の私がウマ娘が好きだからという理由ではいけませんか。私は確かにトレーナーであった先代のトレーナーに私は英才教育というものを仕込まれましたが、家族のためとも思ったことありません。トゥウィンクルシリーズで走るウマ娘に会ってテレビで見て輝く彼女たちに惹かれ、夢を応援したいと思いました。彼女たちとほかの方より向き合っているのにこんな
月並みな理由でごめんなさい。」
彼女の表情や言動から察するに彼女の言っていることは本当であり、少し質の悪い質問をしてしまったと己を恥じた。
「申し訳ない、先の質問は名門の君にするべきではなかった。桐生院さんがウマ娘のことがとても好きであることはわかりました。それにここにいる人でそうでない人はいないでしょう。さっきの回答で十分だと思います。だから、これ以上は聞くつもりはありません。ここからは再び自己紹介を再開しましょう。」
「そうだな、ちなみに俺は体を動かすことが好きだ。」
木山が話に乗ってくれたので話を戻すことができた。潤はフランクな彼の話し方に乗ってみることにした。
「俺も体を動かすことは好きだ。木山は今まで何やってたんだ。俺は武道と陸上だな。」
旨い話の切り返しだこれなら話が続くだろう。それに木山の反応もそんなに悪くないようだ。
「俺はワンダーフォーゲルと陸上だな。陸上は技術的な分野に触れるときにやってた経験は無駄じゃないだろうしな。競技は1500を主にやってたな。」
木山は話題を振られたら答えるだけでなく、話を膨らませるから、話を続けやすい。彼とは良好な関係を築けそうだ。
「私は安藤京香〈あんどう きょうか)、400を主にやっていたわ。ちなみにもう少しポジティヴなジョークを言いなさいよ。どちらにしてもあの場で返せる人いなかったからね。」
重ねツッコミの名手が割り込んで自己紹介をしてきた。やはり先ほどのは完全にダメな奴だったようだ。氷属性でもどんな人でも滑るであろう摩擦係数ゼロといったところか。少し悲しくなった。
「これ以上の勘弁してくれ俺のライフはもうゼロだ。さすがに俺も悪かったな。俺は800をやっていた。桐生院さんはどうですか。」
いったん場が切り替わったことを確認した潤は桐生院さんに振ってみることにした。まさかこちらに振られるとは思いもしなかったようで慌てて返してきた。
「あの……私は200です。ほかの方みたいにレース展開なんて関係ありませんけど、コーナリングや加速体制には通ずるものがあると思って選択しました。」
何もそこまで聞いていないのにそんなことまで言ってしまうということは、意思疎通が案外苦手てなのだろう。
「800や1500はどちらかというと格闘技だから、スパートは別として一定のペース配分さえ守れれば、ペースに付いて行けずに落ちていく人のほうが多いからそこの違い。それにウマ娘みたいにバ群を形成できるのは最初だけなので、短距離だからと言って気にしなくてもいいと思いますよ。」
努めて励ますように返した。桐生院は安堵したのか、表情が柔らかくなった。そして、木山と安藤も同じく彼女を励ました。桐野は終始会話に参加する気がないようだ。こいつはこいつで後々苦労するだろうなと潤は思った。 そうして、全員と自己紹介を終えると衣服がほぼすべ緑色という常識的でない女性が入ってきた。
「こんにちは、トレセン学園の理事長秘書、駿川たづなです。みなさんが、より良い学園生活を送れるよう、支えてまいります♪本日は皆さんを案内し、その後理事長と生徒会長の面談を受けていただいてに荷解きをしていただくと本日の業務は終了です。では行きましょう。」
たづなさんに続いて歩き施設の説明を受けている間に木山や安藤と話しお互いに下の名前を呼び捨てで呼び合うような仲になった。連絡先も交換し、とうとう順に面談の順番が回ってきた。
理事長室の重厚なつくりのドアを前に立ち止まった。その様子に呼びに来てくれたたづなさんが声をかけてくれた。
「理事長はウマ娘がとても好きな方です。その思いが伝われば、理事長はその気持ちを分かってくれますよ。 私たちはウマ娘の夢を支える同志なのですから。」
たづなさんに励まされて、どんな質問が来てもそれを表現すればいいんだと思い気を引き締めて三回ノックした。
「はい!」と元気な声が返ってきたので、ドアを開けて左足を出すと同時に「入ります。」と言い、ドアを開けた手でドアを閉め、一礼し椅子の隣まで移動して自分の名前を言う。
「どうぞ!」と言われたので「失礼します」と言い着席した。目の前を見ると入ってきたときも思ったが、目の前の少女が声を掛けて来ているということは理事長なのだろうと自らを無理やり納得させ向こうからのアクションを待った。
「歓迎!わたしはこの学園の理事長、秋川だ!よろしく頼むぞ新人トレーナー君!まずは君のことを教えてほしいっ!そのオーラも含めてな!」
最後の言葉に潤は驚愕していた。レースにおいて天才と言われるものには念能力の覚醒は無自覚ながらある一定の条件下で見られる現象として捉えているが、それはその場限りのものであって決して念能力を習得しているわけではないのだ。それをこのトレセン学園の理事長とはいえ一教育機関の長程度が認識できていいものではないのだ。
とっさにすぐに脱出できるように窓際へ移動した。もちろん念能力を使ってだ。しかし、後ろにはたづなさんがいた。逃がさないつもりなのだろう。この空間に念能力で何か仕掛けられていないか確認したが、何もなかった。たづなさんは最初見たとき纏を使っていなかった。それは間違いなかった。
しかし、今自分がとらえている駿川たづなは恐ろしく練られたオーラを纏って後ろに立っていた。これは勝てないと踏んだ潤は素直に手を挙げ降参した。
「十分!君のオーラからは悪意は感じない!状況判断も含めて十分だ!もう座ってもよいぞ。たづなも下がってよいぞ。」
先ほど緊迫した状況をあっさり説いた理事長は着席を促した。
「確定!君は今私たちがなぜ念能力を持っているのか考えているだろう!」
完全な図星であった。こうなっては仕方がないと頷いた。
「回答!私たちはウマ娘たちを教え導く立場である。それは念能力に目覚めたウマ娘も例外ではない!そして、念能力者のトレーナーを統括するのもまた我々の仕事だ。ゆえに、我々には念能力はなくてはならない。例えとして、ドリームトロフィーに出場しているウマ娘は自らを極めた末に念能力に至った。彼女達はトゥウィンクルシリーズで走るには速すぎる。ゆえにそれを見極めるのも我々の仕事ということだ!」
納得した。彼女らは本能に忠実なだけでなく、走ることにおいて心技体のすべてがそろっていなければ、結果は出ない。図らずとも至ってしまうのは道理であろうと
しかし、説明した理事長の顔は少し回顧し自らを戒めるようであった。
「わかりました。ありがとうございます。」
ご教授いただいたことにお礼を述べた。その後いくつか質問に答えて最後にウマ娘には目覚めるまで念能力を秘匿することやトレーナーの中に少なからずいることを伝えられた。ほかにも至難の指導も受けていない子がいたら導てやってくれと頼まれた。そして、退出した。
今だけでも理事長室だと思うと深いため息が出た。そんな潤に
「ハァイ、新人トレーナー君♪そんなにズーンとしてどうしたの。」
陽気な声で今はドリームトロフィーで活躍しているマルゼンスキーが声を掛けてきた。
目を向けた瞬間驚愕した。確かにウマ娘と人間は生命力に差はあれど、纏だけでこれほどまでにオーラ量の差が如実に表れるものだと
「なるほど、あなたが疲れるのも納得ね♪申し訳ないけど、もう一度試されてくれると嬉しな。
私じゃないんだけど、あの子言ってもそれを曲げるつもりがないから。でも、ウマ娘のことを思っているからこそだから、許ししてあげて」
まだあるのかと辟易した。攻撃的なことはしないだろうと予測を立てできることは間違いなく練による威圧であろうとあくまで面談という括りの中に当てはめて予測した。今も目の前を先導しているマルゼンスキーと比べると練度では大きく劣るだろうが、無敗の三冠をなした存在だ。まず間違いなく潜在的なオーラ量間違いなく上だ。ここで時間をかけてオーラ練ることで練の押し合いで勝てばいいと考えた。その前に引退してからの年数は知っているが、それよりも確認したいことがあった。
「マルゼンスキーさん、聞きたいことがあります。」
「別にそんなに硬くなくていいし、マルゼンスキーでいいよ。年上だから。いいのいいの!わたしが答えるわ。」
あまり形式ばった口調より崩したほうがいいらしい、ならば言葉に甘えて
「これはあくまで答えなくていい質問なんだが、シンボリルドルフは本当に怪我で引退したのか。先ほどの発言から念能力が使えるのは間違いないことだろう。だが、そうなると一年前の引退はどういうことだ。」
やはりこの発言に失敗したという表情にマルゼンスキーの表情が変わり立ち止まった。そして、少しの沈黙の後に口を開いた。
「そうね………両方といったところかしら。…………私が答えられるのはここまでよ。」
これ以上は当人でなければ、言えないことなのだろう。これ以上の深追いはよすべきだと潤は思った。そして、目の前にある扉の前で目を瞑ってオーラを練り始めた。
「もういいでしょ、これ以上はさすがにお姉さんも容認できないわ。」
流石にこれ以上時間的な問題で不可能なので、マルゼンスキーに止められた。元々、ぎりぎりまでするつもりだったので問題なく入室し、着席する。そして、顔を上げた瞬間、オーラの奔流が体に迫っていた。纏があれば、オーラを打ち消すことは難しいことではなく体の負荷は小さいものであるだろう。しかし、無礼を働いているのはあちらである。よって、返す刀を持たれる覚悟は持っていると思い、十分に練ったオーラを精孔を広げることで纏うオーラを爆発的に増加させた。その大きさは生徒会室を丸々覆うほどでシンボリルドルフといえども、一年程度の修練を積んできたものとそれ以上のものには大きな差が存在し、前者であるために面食らい余りの圧に意識が飛びそうになるほどであった。
「先に礼を失したのはこちらだけど、もう止めてあげてこれ以上は本当に危ないわ。」
1分ほどたった頃マルゼンスキーが扉を生きよい良く開けて入ってきて静止の言葉をかけた。
お互いに矛を収めるとシンボリルドルフは机の上にぐったりと倒れ掛かった。
「すまない、理事長が認めたのであれば、問題はないと思ったのだが、どうしてもこの身で確かめたかった。許してもらえないと思うが私の菓子一つで水に流してくれないか。」
立って謝罪しようと椅子から立ち上がろうとしても膝が笑い立ち上がることすら困難なシンボリルドルフはマルゼンスキーに支えてもらいながら謝罪した。
「こちらこそ少し大人げなかったな。しかし、謝罪するつもりはない。以下に支えたいと思うウマ娘でも敵意を向けてくるものには相応の対処をしなければならない、念能力者であればなおさらだ。謝罪と貸一つに関しては受けとっておくよ。」
できるだけ練ろうとしたのがよくなかったようだ。やり過ぎてしまったことに少々後悔した。
見るからに衰弱しているシンボリルドルフを見て答えた。
「ありがとう、先ほどの行動は正しい判断だと私も思うよ。危機一髪の状態で私でも取りうる選択だろう。君のような危機に対して適切な判断ができるものがこの学園のトレーナになることに好ましいことだ。歓迎しよう。」
あの判断に対し評価してくれて助かった。そのまま、歓迎しないなんて言われたらどうしようなんて思ったくらいである。その後いくつかの質問に答えついに最後の質問になった。
「君はウマ娘に何を見る。」
とても抽象的で正解が存在しない質問であった。しかし、彼の中では答えは決まっていた。
「彼女たちに夢を見ます。」
何時だってそうであった。レースや練習で彼女たちの瞳の奥底に映るものはかのじぃたちが描いた夢であった。ゆえに迷いなく即答した。
まさか即答されると思わんなかったのか、驚嘆し動きを止め一拍おいて口を開いた。
「まさか即答するとは驚いたよ。君は私たちウマ娘が見ている先をとらえているのだろうな。改めて歓迎しよう。君は彼女たちの夢が見えているのだろう。だからこそ、その夢を少しでも実現できるように背中を押してあげてくれ。」
彼女が話をしている間、彼女の表情や声音から慈愛のような感情が読み取れた。ああ彼女はウマ娘全体を慈しんでいるんだと潤は思った。そして、すぐに解放された潤はさっそく職員室に赴き荷解きを始めた。いまだ専属化サブトレーナー化さえ決まっていなので、トレーナー室が与えられないとは仕方がないことだろう。荷解き終えトレーナー寮に帰ろうとすると同期での親睦会が開かれるので参加しないかといった内容の連絡が届いた。参加する意思を伝えて身支度のためにも一時帰宅した。開始は17時に商店街の居酒屋でということで今は15時で余裕もあるのでトレセン学園の周辺を見て回ろうと思いさっそく用意を済ませ、家を出た。
当てもなく河川敷を歩く、時折トレセン学園のウマ娘が横を通り過ぎていく特に何も考えず街並み眺める。そうしていると一際鋭い掛け声が聞こえてきた。掛け声の聞こえるほうを見るとウマ娘が演武を踊っているのが見えた。形としての演武は申し分ないだろう。実際に彼女の研鑽を洗練された動きが示していた。しかし、彼女の動きやオーラは心が乱れていることを如実に示していた。どう伝えたものかと思案していると
「失礼、そこな御仁」
彼女から話しかけてくれた。随分と古風な話し方で実家が武道場なのかと考えた。
「はい」と詰めて落ち着いて返す。
「その襟のバッヂ、学園のトレーナーとお見受けいたします。私に、何か御用でしょうか。」
どう言ったものかと思案する。出会ってすぐの人間に指摘されるのは嫌だろうと思い。
「武道を元々していたもので、形の洗練された動きに感心していた。」
噓はついていないが、肝心なことを言わずに思っていたことを言った。
「それは………いえ、未熟な私には身に余る光栄です。いまだ未熟な私では心を抑えることもできずに猛気持ちに振り回されるばかりです。未熟なこの身ですが、本番では実力のすべてを発揮する所存です。選抜レースの際は足をお運びいただけるだけでもこれ幸いです。」
そんな話し方をされると こっちも背筋が伸びてしまうもので
「承知致しました。」とこんな風に返してしまった。
そんなやり取りをしているところに不良ウマ娘の乱入があったが。彼女が掛け声一つで退散していった。
彼女には雑念を払うというが、形を舞えない時はどうするのだろうと気になった。
「まず、確認したいのだが、君の言う雑念とは猛心のことで君はそれを取り払いたいということかな。」
「はい、その通りです。」
「君は猛気持ちを取り払うことに目を向けているようだけど、それでは心のバランスが悪くて反ってよくないと思うよ。これが悪いって決めつけるのは簡単だけど向き合ってみることも大切だと思うよ。っ!、すまないが」
言い切ると同時にレオから電話がかかってきた。どうやら十七時は過ぎているらしく来ないので電話がかかってきたようだ。
「これから親睦会に急いでいかないといけないから、もう行くよ。」
「承知しました。」
走ろうとしてそういえば名前を聞いていなかったことに気付いた。
「君の名前は」
「私の名はヤエノムテキです。」
名前を聞いた瞬間に走り出した。
この出会いがのちの自分の考え方に大きな影響を与えるとは夢にも思わなかった。
ヤエノの古風な口調がいまいちつかめないどころか何も進んでないことに脱帽してます。
続きません