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・元ネタ「真・仮面ライダー 序章」は履修済み前提
・平成ライダー初期5作並、または旧1号編を作品全体でやった作劇
・鬱展開および陰惨極まりない描写
・稚拙極まりない文体および言い回し
・皆無に等しい主人公補正
・非常に分かりにくい平山ライダー、平成ライダー初期5作等の特撮・アニメ・ドラマのパロディ
・パワーインフレ皆無
・亀の移動速度以下のストーリー展開及び更新速度
1997年11月25日 午後11時 東京都 港区
街灯が1つも無く、季節外れな豪雨が降り注ぐ路地裏。1人の少女が黄色のレインコートを羽織って俯いて歩っていた。少女は長い黒髪と清楚な雰囲気を持っているのが特徴で、レインコートの内側に城南大学附属高校の制服を着ていた。
少女が歩っている最中、彼女の肩が複数人の若者とすれ違う。
「よう、姉ちゃん。俺と一緒にシャブ決めない?」
若者のうちの1人の少年が話しかける。
「…ごめんなさい。」
少女は一瞬少年の方に振り向いて呟き、すぐ振り返ってそのまま立ち去ろうとした。
「おい待ってよ。」
少年が、壁際を歩っている少女の行方を遮るように片手を壁にドンと突く。
「ガン付けたんだから、ちゃんと責任取れよ。」
少年が少女を無理矢理押し倒すと同時に、少女を取り囲んでいた。若者達はその少女と歳が離れておらず、制服を着ている者もいれば私服姿の者もいた。
「やめて下さい…やめて…!」
少女の嫌がる意志を無視するかのように少年は身包み全て剥がし、少女の歳以上の豊満な乳房が顕になる。さらに少年は嫌がる少女の陰部に自分の男性器を入れ、少女の喘ぎ声のリズムに合わせ何度もすり合わせる。
「___ッ‼︎?」
少女はそのあまりの快感で涙を流す。少年を引き離そうにも力が強く、助けを呼ぶにしても若者の口で塞がれていた。そして若者は少女の蜜壺に液を流し込み、少女は絶頂していた。
「どう、ヤった気分は?」
「…もう、やめて下さい…。」
朦朧とする意識の中、若者の問いを返した。
「あららら、下手くそだって〜。」
「うるせぇ、膜が破れてるからしょーがねーだろ。」
「やれやれ。おい、別の女を引っかけに行かね?」
「そだね、何か飽きちゃったし。」
「ちょっと待てよ。今からもうちっと、面白くしてやっから。」
少年がそう言うと、足元の近くにあった鉄パイプを拾う。少年は鉄パイプで、少女の脇腹を殴打する。
「ッ‼︎?」
少女は華奢な軀から、喘ぎ声のような呻き声を出す。それを見た他の若者達も一斉に殴る、蹴るなどの暴力を振るう。少女も頭蓋を守るように軀を丸めるが、その1つ1つ喰らう毎に声を上げる。
「コイツ、まだまだ行けるじゃん!」
「だろ?こういう奴に限って…ってあれ?」
突然、少年の鉄パイプが何かに掴まれた。少年は下を見ると、少女が鉄パイプの先端を掴み握りつぶす様子を目にした。
「な、何だよお前は!?」
若者達は恐怖に怯えていた。なんせ目の前で嬲って衰弱した少女が、突然自分達が持っていた金属の棒を掴んで握りつぶしたからだ。さらに少女は地の底から響くような低い声を上げながら立ち上がり、同時に軀のあらゆる筋肉を肥大化させる。鉄パイプは完全にひしゃげており、少女の姿も徐々に"何か"変貌していく。
若者達は一斉に逃げ始めるが、"何か"は跳躍して彼らを飛び越えて目の前に立ち塞がる。ポケットにしまった拳銃で応戦するが、"何か"に被弾しても軽傷を負うだけで特に決定打にはならなかった。若者達は恐怖と苦痛の断末魔を上げながら、その四肢や首がザクロのように捥がれ砕け散る。そして"何か"は、その場に残ったメンバーの1人に粘着質のものが粘り着いたような歩行音と共に迫る。
「来るな!…誰なんだよお前⁉︎来るな!」
若者の1人が、壁際まで後退りながら"何か"を目の前にして叫ぶ。しかし、"何か"は容赦なく彼をバラバラにする。
その後、"何か"は血溜まりから人差し指で血を掬い取り、そのまま舐めると同時に少女の裸体に戻る。少女は我に返り、周囲を見渡す。そこにはさっきまで命だったものが肉片と血溜まりとして辺り一面に転がっており、徐々に少女の表情も恐怖に包まれる。
「いやあああああああああああああああ!!」
少女の叫びは雷鳴と豪雨に遮られた。
1997年11月29日 午前7時 東京都 葛飾区 東四ツ木2丁目
『週末にかけて大気が不安定になり、雷雨が発生しやすくなるようです。外出の際は傘や雨具を用意して十分にご注意を。』
集合住宅『インスマス』のとある一室、ニュース番組を流しながら17歳くらいの少女と50代ほどの男性が面と向かって食事をしていた。
「お父さん。今日からまた、瑠里ちゃんや裕美ちゃんと一緒に学校で過ごせるの。」
長い黒髪と清楚な雰囲気を持っている少女は、目の前にいる父と共に笑顔でナイフとフォークを用いて朝食を口に運んでいた。
「生まれつき免疫が無いせいで、私は病気にかかりやすかったり、みんなと一緒に体育を受けることが難しかった。でも、お父さんは仕事の合間を縫って私を看病してくれたり、今まで稼いだお金を全部私の手術費に入れてくれた…。」
美代子の脳裏に、手術を受ける前の父親と執刀医のやり取りがよぎる。
『晴彦さん…。』
『お願いです、先生。金は後でいくらでも払いますので、娘を…娘の命を助けて下さい!』
『…分かりました。"何があっても"、お嬢さんの命や尊厳を繋ぎ止めて見せます。』
『ありがとうございます…ありがとうございます!』
「…私はこうして手術を受けた。そしてリハビリとして先生が勧めてくれたアルバイトをしてる。ものすごく大変だけど、『お父さんも私のために頑張っている』と思うと頑張れるの。後2、3回こなせば手術代を返せるからそれまでの我慢だね、お父さん。」
父親は笑顔で頷く。美代子は制服に着替え、黄色のレインコートを羽織る。
「じゃあお父さん、行ってきます。」
父親は、美代子が外出するのを笑顔で手を振りながら見送る。そして、レインコートが掛けられていた玄関の足元には赤黒い血溜まりができていた。
1997年11月29日 午前7時半 東京 中野区 中野三丁目 結城サイクルショップ
『昨夜、またも港区で連続殺人鬼による事件が起こりました。今回で被害者は5人。犯行は雷雨の日に行われ、目的証言から犯人は黄色のレインコートを着用していたとのことです_。』
「世の中、ますます物騒になってきたもんだなぁ。あ、そうそう。今日から美代子ちゃんがまた学校に来るんだっけ?」
「うん、そうだよ。」
「美代子ちゃん?」
真が結城に尋ねる。
「
「1ヶ月で退院?」
「うん。昨日、電話でそう言ったの。私も気になって聞いたけど、美代子が『医者がいいと言ってくれたから大丈夫』だって。ってか、なんでオジさんも知ってんのよ。」
「休憩しに自分の部屋に戻るときに聞こえちゃってさ。美代子ちゃんもよくここに来てくれる貴重な客だから、そりゃ俺も心配するよ。」
「うわ、オジさんマジさいてー。」
瑠里と結城のやり取りに真も思わず笑顔になる。
「じゃあ行ってくる!」
「行ってらっしゃい。」
真は、ドアを開けて出たと同時に傘をさした瑠里を見送る。
(それにしてもあれだけの手術をして1ヶ月で退院できるのは早すぎる…嫌なことが起きなければ良いが。でも、それは考え過ぎか。)
真は考えながら、食べ終わった全員の分も片付けた。
1997年11月29日 午前7時半 東京都 港区
とある高架下のトンネル。日が昇る時刻となり、照明器具が消されていた。しかし、分厚い鉛色の雲に雷雨が今も降り注いでいるのもあってかトンネル内は夕暮れのような暗い雰囲気に包まれていた。セーラは物陰に隠れ、携帯電話をかける。
「Hello,this is Sarah.I am currently monitoring the remaining drug groups.Though they're evil, they're still human.Requesting personnel immediately...What, I can't do that?Is there any reason...⁉︎」
セーラの通話が打ち切られ、彼女は思わず舌打ちする。
一方で、トンネルを歩く2人の若者の男女がいた。男の右手には麻薬が大量に入っているケースが握られていた。
「ったくアイツ何してんだよ、時間とっくに過ぎてんだろ…?」
「どうしたの?」
女性が男性に話しかける。
「いや、上から何か生暖かくてヌメヌメした感じが…」
女性は男性は話しかけるが、後ろから何かがグシャリと落ちる。女性は悲鳴を上げる。男性は恐る恐る見ると、それは断面から赤黒い血を流している仲間の首であった。さらに男女は、首が落ちた場所の真上を見る。そこには、トンネルの天井に四つん這いになって張り付いている黄色のレインコートの女がいた。
「出、出たな…死ね!」
2人は、懐にある拳銃を抜いて女に発砲する。だがレインコートの女は、人間の2〜4倍の運動能力で四つん這いのまま銃弾を回避しながら地面に飛び降りて男女に迫る。レインコートの女は男女のうち男の方に飛び乗り、返り血を浴びながら彼の喉笛を食いちぎる。
「い、嫌…助けて…!」
レインコートの女は、男女のうちの女にゆっくり歩いて迫る。そのとき、銃声が聞こえると同時に弾丸が間を割って入った。レインコートの女はその身を翻し、銃の方向を見ると、銃を向けたセーラが立っていた。レインコートの女は人間では追いつけないスピードで、セーラの追跡を振り切る。セーラはレインコートの女がその場から完全に立ち去ったことを確認すると、男女のうちの女の元に近づいた。
「た、助けて…!」
女がセーラに助けを乞う。
「なら答えなさい、なぜあの女が貴方達の命を狙うのか。貴方達との取引相手を含めて全てをね。」
1997年11月29日 午前8時半 東京 中央区 佃 城南大学附属学校 校門
季節外れの雨が降り注ぐ校舎前の校門、部活動の朝練習がない者も含めた多くの生徒や先生で混雑していた。ある者は生徒指導を行い、ある者は友達との待ち合わせのために校門で待っていた。
「会長ー!」
「あ、水樹さん。待って!」
瑠里は、右手に傘を持って走る美代子に呼びかける。
「会長、病み上がりだからって走っちゃダメっしょ。」
「ごめんなさい、心配をかけてしまって。それに、私はもう会長じゃないわ。」
「でもすごいねー、あんなに急いだ後でも全然苦しそうじゃないもん。去年の持久走でも1周するのがやっとだったのに。」
「お父さんが一生懸命病院を選んでくれたおかげよ。」
「そっかぁ。会ちょ…美代子の病気を治した
「うん。生活費すべてを手術代に当てたけど、病院の先生が紹介してくれた"アルバイト"で食事代と学費は何とかなってる。」
「へぇ。でもそれってさー、キツくなかったりする?」
「うん。体を動かす仕事だから大変だけど、お父さんも頑張っていると思うと私も頑張れるの。」
「やっぱ元会長は伊達じゃないわね。お金に困ってるなら、私のところで働いてみれば?」
「え、結城さんの喫茶店?」
「家庭科が得意でしょ?オジさんのコーヒーがいつまでも不味いからさー、バイクのメンテからメニュー作りまで真に頼りきりなの。」
瑠里が話している最中、美代子の表情が段々暗くなっていく。
「…水樹さん。信じられないと思うけど…もし、私が
「え?んー。本音言うとメッチャ怖いけど、人を襲ったり殺さなきゃおK。」
「…。」
美代子が完全に黙り込む。
「だって怖いじゃん、目の前で人が死んだり殺されたりするの。警察も歯が立たないし。"あんな奴等、さっさと死んでいなくなれよ。"」
「!⁉︎」
瑠里の言葉を聞いて、美代子は衝撃を受ける。
「ってえぇ⁉︎やっぱ走ったのマズかった⁉︎」
「…ううん、気にしないで水樹さん。ごめんなさい、私、先に教室に行ってる。」
「あの、え、ちょ…⁉︎」
美代子は瑠里から遠ざかるように昇降口で上履きに履き替え教室に向かい、バッグを教室内にある自分のロッカーにしまう。支度が終わった美代子は、人が少ない個室のトイレに入って込み上げる悲しみに耐えきれず啜り泣く。
「ごめんなさい…ごめんなさい、水樹さん、みんな…。私、もう人間じゃないの…みんなが怖がってる
1997年11月29日 午後3時 東京 中野区 中野三丁目 結城サイクルショップ
真は1階のガレージでバイクのパンク修理を行っていた。
「これ、そろそろタイヤを交換した方がいいかもしれませんね。」
「えぇ。次、パンクしたら変えますよ。」
真は修理を終えると客のライダーから現金を受け取る。
「ありがとうございました。」
ライダーは修理したてのバイクに跨り走り去り、真はそれを笑顔で見送る。その直後、真は驚く。真の目の前に、紫色の車・トヨタ チェイサー 2.5 ツアラーVから降車する野木がいたのだ。野木も真の視線に気付いたのか、乗車しろと合図を送る。真は一旦、2階のカウンターに戻る。
「結城、すまない。急用ができたから一旦その場から離れる。」
「あぁ、お前。最近、別の場所に行って修理することが多くなったみたいだしな。でも、その割には服が変わっている感じがしないでもないが…。」
「疲れてそう見えるだけだよ、行ってくる。」
真は急いで野木が待つガレージに向かう。真は激化する改造兵士との戦いで、バイク修理中に抜け出す手段として「現地でバイクを修理する」と理由をつけたのだった。だが場合によっては改造兵士と戦闘することにもなるため、変身する毎に服を破けてしまうことに関する理由付けが難しかった。
「そういえば自己紹介がまだだったね。」
野木は名刺入れをジャケットのポケットから取り出しながら返す。
「初めまして、俺は野木健一。名前は日本だけど、本籍はドイツの日系ゲルマン。就職の都合でアメリカのニューヨークに帰化して、今はここに滞在中。以後、お見知り置きを。」
「ニューヨーク?」
「おっと、詳しくは車内で。」
野木は話しながら運転席に乗り、シートベルトを着用してエンジンを点火する。真は恐る恐る助手席のドアノブを触る。
「そんなに心配しなくていいよ、ちゃんとここで下ろすからさ。」
真は助手席に座り、シートベルトを着用する。真が乗り込んだことを確認した野木は発進し、ギアをローからセカンド、サードと切り替え車を走らせた。
「…車を運転して大丈夫なのか?」
「大丈夫。俺、19歳だし。意外と若く見られるんだねぇ。」
野木は赤信号を確認し、停車する。
「あ、白髪。」
「⁉︎」
野木は真の毛髪を数本抜き取り、それをジャケットの内側のポケットに入れた。
「客商売やってる以上、見た目がカッコ悪いと印象悪くなるよ。じゃ、本題に移ろうか。」
野木は青信号になったのを確認し、車を走らせる。
「君は一体何者なんだ?」
真が野木の顔の方を振り向いて問い尋ねる。しかし、野木はフロントガラスから目線を動かさずに答える。
「え、さっきした筈だけど?」
「君は幹蔓さんの居場所を知っていた。君は、財団の関係者なのか?」
「あぁそういう意味?だとしたら半分違うね。」
「なんだって…⁉︎」
「俺、こう見えて企業スパイなんだよねー。だから
「…。」
「どうしたの、急に黙っちゃって。」
「君が財団の敵なのは分かった。けど、目的の為に関係無い人を利用するのは間違っている。それこそ、財団と同じやり方だ…!」
真がそう答えると、野木は思わず溜息をついた。
「分かってないなぁ。痛い所を突いたと思ってるようだけど、なんも説得力無いんだよねー。」
「何…⁉︎」
「まぁ言ってあげても良いけど、この場で敵に回られたら面倒だし。それに、周りを巻き込むのはアンタの信条に反するでしょ?」
真は席の窓を見渡したが、自分達が今いる場所は渋滞が起こりやすい大通りや交差点であった。もしここで戦闘することになったら、勝敗の有無に関わらず多くの無関係な人々を巻き込むのは確実だった。
「忠告しとくよ。俺達の戦いはその"関係ない人"すら巻き込み、最悪彼等と戦うことにもなる。だから、アンタもその覚悟を決めなければならない。」
「何を言ってるんだ…。」
真が漠然とする中、野木は車を停車する。そこは結城サイクルショップのガレージ前だった。
「着いたよ。久々に気軽に話せる相手に会えたし、お礼としてあげるよ。」
野木は、ジャケットのポケットから四つ折りにした紙切れ1枚を真の掌にポンと置く。
「さっき言ったことと丁度当てはまるし、どうするかは任せるよ、じゃねー。」
野木は、真が降車したのを確認し車を走らせた。
「そういえば"この姿では初対面"だったか。あの姿じゃトラウマ思い出しちゃうし、しょうがないか。」
真は車が視界から消えるのを確認した後、紙切れを広げて確認する。
「これは…⁉︎」
それには、連続殺人事件の犯人の名前と住所が記載されていた。
1997年11月29日 午後10時半 東京都 葛飾区 東四ツ木2丁目
美代子はいつも通り、父と食事を取っていた。
「食事が済んだら風呂に入るね…あれ、電話が。」
美代子は、固定電話の受話器を取る。
「もしもし…えぇ…はい…本当ですか⁉︎分かりました、すぐ行きます。」
美代子は、固定電話の受話器を置き直す。
「お父さん!後1回行けば、治療費を全部返せるよ!」
娘が喜ぶ姿を見て、父親は満身の笑みで頷く。
一方、美代子の自宅の門の前。
降り注ぐ雷雨の中、真のバイクが到達する。そこには既に傘をさしたコンバット姿のセーラと彼女の車があった。
「
セーラが皮肉混じりに真に話しかける。
「知り合いから受け取った。君こそ、今回に限って部下がいないじゃないか。」
「そう。無能な上司ほど厄介この上ないことはないわ。見なさい。」
セーラは視線を美代子の家屋の屋根に視線を移す。
「お父さん。私、すごく嬉しいの。今まで体が弱くて頼りきりだった私が、お父さんやお母さんの代わりに一生懸命に働けるの_!」
家屋から美代子の声が聞こえる。
「そんな…そんなことが…!」
真は動揺する。
「信じられないでしょ、"彼女しかいない"のに。」
真はセーラの方に振り向く。
「ここに来る前、被害者を助けて自白させたのよ。1週間前、麻薬グループの取引現場を目撃した彼女は性暴力を受けた。その後、世にも恐ろしいことが起きた。」
「
「そう、彼女は
「じゃあ、父親はまさか…!」
真がセーラに話しかけるが、その時ドアから黄色のレインコートを羽織った美代子が外から出てきた。美代子は、人間の2〜4倍の運動能力でベランダから跳び、次々と家屋の屋根を走り抜ける。
真とセーラは彼女を追う為、それぞれの車両に乗り込み追跡した。
1997年11月29日 午後11時 東京都 港区
真とセーラは美代子を追跡したら、いつの間にか廃工場に到着していた。建物の様相から、そこは元々コンクリートプラントとして運営されていたようであった。
真とセーラは車両から降りて、密売グループに見つからないよう物陰に隠れながら廃工場に潜入する。そこには美代子に暴力を振るった若者達が5人いて、その1人が美代子に性暴力を行った男がリーダーであった。
「テメェらなぁ、この間は言ったよな。『これ以上やられたら許さねぇ』って。」
「いや、でもさ…。奴は人間じゃなくて"バケモノ"…。」
部下の1人の女の足元を、リーダーの拳銃の弾丸が撃ち抜く。女はあまりの激痛で悲鳴を上げながらのたうち回り、それ以外の若者達も後退りする。
「貞衛さんに頼んだ"アレ"がねぇから、いつまでも財団に勝てねぇんだろうが!」
リーダーが周囲に怒鳴り散らす。
「貞衛⁉︎まさか…。」
「そう、彼が"委託品"と言ってたことがそれよ。それにしてもだいぶ焦ってるみたいね、可愛い。」
セーラが呟く。
「何が殺人鬼だ、必ず殺せ。」
リーダーは拳銃4人分納めたトランクケースを取り出し、拳銃を4人全員に渡す。
グチャ、グチョ。グチャ、グチョ。
粘着質のものが粘り着いたような歩行音が工場内に反響する。
「何者だテメェ⁉︎」
リーダーは歩行音が聞こえる方向にマシンガンを向ける。だが、リーダーの背後から骨ごと肉を引き裂く音と断末魔が聞こえた。リーダー達が振り向くと、そこには黄色のレインコートの女がいた。
「ブチ殺せ!」
リーダーの掛け声と共に銃器を一斉に放つ。だが、女は弾丸をすぐさま回避しながら次々とグループを血祭りに上げる。
「止めろ!」
真は女の方へ向かって走る。その背後からセーラが女を真ごとロケットランチャーで吹き飛ばそうとするが、気配を感じた真が避けると同時に女が飛び掛かって襲い掛かる。セーラはすかさず拳銃を抜くが撃鉄を引き抜く間もなく首を締め上げられ、拳銃を落とす。真は女の脇腹を拳銃で撃ち抜き、彼女からセーラを振り解く。真は気を失ったセーラを、借りた拳銃を返しながら建物内の遮蔽物に隠す。一方、女は猛スピードで四つん這いになって走り去る。真はセーラにグループが1人でも襲わないことを確認した後、女の血痕を辿ってバイクに跨り追跡した。
1997年11月29日 午後11時半 東京都 葛飾区 東四ツ木2丁目
美代子の自宅。美代子は必死に逃げるが、次第に撃たれた箇所から激痛が迸る。そして彼女は自宅に入り、食卓の椅子にもたれた。一方、真も彼女に追いつき、鍵が掛けられていないドアノブを捻って入る。
「どうして…どうして邪魔をするんですか…あと少しで手術代を払えるのに…!」
真はその場に立ち止まる。
「幸せでした…私を産んですぐ死んだお母さんの顔を知らないで生まれて、生まれつき心臓が弱かった私を、お父さんは優しく育ててくれたことが幸せでした。手術してから、お金に困ることが多くなりました。それでも、2人で一生懸命お仕事を頑張って、かけがえのない幸せな時間を過ごしてました…それを、それをどうして⁉︎」
美代子は言葉を続ける。
「…だいたい、あんな人達なんていなくてもいいんですよ。
「確かに、俺も君の立場ならそう考えるかもしれない…でも、それは言い訳に過ぎない。」
「…どういう意味ですか?」
「それは、君が一番分かっているはずだ。」
「私が?」
「仕事が終わっても、君は人殺しを止めない…。それは、君自身が殺戮衝動を制御できないからだ。」
「…制御できない…?私は、自分の意思で…!」
「それじゃ何故、"君の父さんを殺した"⁉︎」
「…私が、父さんを…⁉︎」
「1週間前の雷雨の夜。君は改造兵士になったことで一才の理性が無くなって、麻薬グループだけじゃなく、君を探しに来た父親も手に掛けた…。」
真は苦渋の表情で美代子に真実を伝える。
「…嘘よ…私が、私がお父さんを殺したなんて絶対嘘よ!」
「…認めるんだ。君の父さんは亡くなった…もうこの世にはいない。」
「いる…お父さんはそこに!」
美代子は父が座っている椅子を見るが、同時に衝撃を受け言葉を失い涙腺が緩む。
「あ、ああああああ…。」
そこに座っていたのは、全身が返り血を浴びて心臓まで深く切り裂かれて恐怖の表情を浮かべた父の遺体だった。同時に整理整頓がなされていた家内が、父の遺体を見たと同時に悍ましいほどに変容する。食器には腑が無造作に置かれ、キッチンのシンクも食器が乱雑し、木製のテーブルやフローリングの所々に血溜まりが染み込んでいた。照明は赤黒く部屋を照らし、部屋中に生臭い悪臭が漂っていた。
「いやあああああああああああああああ!!」
美代子は涙を流し絶叫し、頭を抱えながら何度も床に打ちつける。
「…君は本能に従って父親を殺した。でも、どうしてもその事実を認めたくなかった。だからその記憶を捻じ曲げた。君は父親の遺体を持ち帰って『父親が生きている』と信じ込んだ…。」
真実を伝える真の表情は、悲壮感に包まれていた。
「そして君は麻薬グループを殺したことで、君を改造した財団に君の復讐を利用され続けた…!」
同時に真も己の無力さに俯き、財団への怒りを噛み締める。
「…思い出した、あの時…。」
美代子は部屋の天井を見上げる。
1997年11月25日 午後11時 東京都 港区
街灯が1つも無く、季節外れな豪雨が降り注ぐ路地裏。美代子はその白い裸体に豊満な乳房を晒して仰向けに倒れ悶絶していた。一方リーダーは足元の近くにあった鉄パイプを拾い、美代子の脇腹を殴打する。
「ッ‼︎?」
美代子が喘ぎ声のような呻き声を出す。それ見た彼女を取り囲んでいるメンバーも一斉に殴る、蹴るなどの暴力を振るう。美代子も頭蓋を守るように軀を丸めるが、その1つ1つ喰らう毎に声を上げる。
「コイツ、まだまだ行けるじゃん!」
「だろ?こういう奴に限って…ってあれ?」
突然、リーダーの鉄パイプが何かに掴まれた。リーダーは下を見ると、美代子が鉄パイプの先端を掴み握りつぶす様子を目にした。
「な、何だよお前は!?」
メンバーは恐怖に怯えていた。美代子は地の底から響くような低い声を上げながら立ち上がり、同時に軀のあらゆる筋肉が肥大化して筋肉質のものへと変わる。皮膚の色が薄い灰色へと変わり、歯は全て犬歯になり、背中や上腕部に
メンバーは一斉に逃げ始めるが、美代子は空を泳ぐように跳躍し、彼らを飛び越えて目の前に立ち塞がる。メンバーは恐怖と苦痛の断末魔を上げながら、美代子の握撃や鰭の斬撃、噛みつきを喰らい砕け散る。
「美代子⁉︎」
声のする方に目を向けると、そこには美代子の父がいた。父は涙を流し、自らの決断で娘を怪物に変えてしまったことに対する後悔と自責の念に囚われた苦悶の表情を浮かべていた。
「ごめんな、美代子。」
美代子は雄叫びを上げ、父を手に掛けた。
その後、美代子は父の血溜まりから人差し指で血を掬い取り、そのまま舐めると同時に少女の裸体に戻る。少女は我に返り、周囲を見渡す。そこには父を含めた人の肉片と血溜まりが辺り一面に転がっており、徐々に少女の表情も恐怖に包まれる。
「いやあああああああああああああああ!!」
美代子の叫びは雷鳴と豪雨に遮られた。
1997年11月29日 午後11時半 東京都 葛飾区 東四ツ木2丁目
「ごめんなさい…ごめんなさい… 私は…どうしたら…。」
美代子は自らの過ちと後悔の念にに打ちひしがれた。真は一瞬考えこみ、答える。
「…人がいないところで暮らすんだ。俺も人間達が嫌になって、都市から離れた雪山や村に住んだことがある。食べ物も仕事場から持ってくる。」
真はそう言うと第3の眼を開き、それを美代子に見せて閉じる。
「あなたも、あの手術を…。」
「あぁ。それに俺も悪人を殺してる。」
美代子は、少し安堵した表情をみせる
「私と同じなのですね、あなたのお名前は…?」
「風祭真、真と呼んでくれ。」
「真さん…危ない!」
美代子は真を押しのける。その直後爆発し、美代子の身体を中心に部屋中が紅蓮の炎に包まれる。
「美代子ちゃん…美代子ちゃん!」
真は上着で炎を消そうとするが、彼女を焼く炎は全く消えなかった。前方を見ると、そこにはセーラが落としたロケットランチャーを構えたリーダーがいた。
「ヒャハハハハハ!コレさえあれば改造兵士なんて敵じゃねえぜ!ついでに死ね、『裏切り者』がぁ!」
「貴様のような奴や財団がいるから、この世から争いが無くならないんだ!殺す!」
真はリーダーに怒りを露わにする。第3の眼を開き、触覚が突き破り、眼が赤黒くなって身体から蒸気が吹き出そうになる。そのとき、美代子の手が真の手首を持つ。
「…待って。」
「美代子ちゃん…?」
蒸気が止まると同時に真の触覚と第3の眼が引っ込み、眼の色も戻る。
「私はお父さんに恩返しするために手術を受けました。でも、それも悪い人達に利用されただけで、結局その恩返しすることすらできませんでした。だから真さん、貴方は私の分まで戦って生きてください。世界中にいる、私のような人達を守るために。さようなら…!」
美代子は炎上する身体を動かし、"第3の眼を開きながら"怪物の姿になる。美代子はリーダーのマシンガンを喰らいながらも彼に跳び移り、キッチンに連れていく。美代子は上腕部の鰭でリーダーの頸動脈を心臓ごと切り裂き、給湯器に彼の顔面を叩きつける。
「美代子ちゃん!」
給湯器のガスとロケットランチャーの弾頭が美代子の身体を纏う炎と引火して爆発した。真は美代子に駆け寄ろうとしたが、爆発の衝撃で家屋から吹っ飛ばされ、路面のコンクリートに叩きつけられた。起き上がった真は燃え盛る美代子の家屋を見て、この世界の理不尽さに対する怒りを地面に叩きつけた。
1997年9月10日 午前0時半 東京都港区 バー・ビヤーキー
『先程、葛飾区の団地の一室で原因不明の爆発事故が起こりました。原因が不明で、遺体は白骨化したものしか分かっておりません。近隣住民でケガや死亡した人はいませんでした。なお遺体の所持品から、麻薬グループの1人が爆発で死亡したことが分かりました。警視庁によると、他のグループのメンバーは既に逮捕されているとのことです。』
真はバーのカウンターでニュース番組が流れているラジオ放送を聴きながら所在無げに座っており、出されてしばらく手を出す事をしなかった目の前のホットミルクに手を取ろうとする。
「どうしたの、浮かない顔しちゃって。」
いつの間にか座っていた野木はホットミルクを取り、そのままミルクのコップに口をつけていた。
「…俺は、何も出来なかった。」
「へぇ、そりゃ残念だったね。」
「美代子ちゃんは俺と同じだった。自分達の力だけじゃどうしようもなかったから財団に頼ってしまった。そして改造兵士になってから殺戮本能に支配され続けた。そして、俺を巻き込ませないかのように死んだ。でも、そんな彼女を俺は救えなかった…。」
「そうかね。アンタは救ったと思うよ、美代子って奴。」
「え?」
「彼女の話を親身になって聞いた。だから、火災からアンタを守ったんじゃないの。人事やったことがあるから分かるけど、こういう人って気に入って貰えたらずっと尽くすからね〜。そーゆー意味では似たもの同士か。」
「え?」
「だって、ずっと基本1人で財団を倒したいと思ってるんでしょ?凡人じゃ今頃、志半ばで諦めてるよ。そんな自分、もっと誇りに持てば?俺、案外アンタのこと気に入ってるんだよねー。」
野木はホットミルクを飲み切っていた。
「教えてくれ。君は一体何者なんだ?何のために_?」
「まあまあ、『今は語るべき時ではない』っていうでしょ?今後も顔を合わせる仲だし、その時になったら分かるよ。」
野木は、真の目の前に釣り銭を置く。
「一応、ホットミルク代。酒でも良いし、何を頼むかは任せるよ。じゃあねー。」
そう言って野木は歩き去った。野木の飄々とした姿に真も困惑を隠し切れなかった。
「ホットミルク、もう1杯。」
真は酒を飲まなかった。
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