一方、財団内部で社長の座が揺らぎ始めていた。
※注意(読む前に必ず見て下さい)
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・元ネタ「真・仮面ライダー 序章」は履修済み前提
・平成ライダー初期5作並、または旧1号編を作品全体でやった作劇
・鬱展開および陰惨極まりない描写
・稚拙極まりない文体および言い回し
・皆無に等しい主人公補正
・非常に分かりにくい平山ライダー、平成ライダー初期5作等の特撮・アニメ・ドラマのパロディ
・パワーインフレ皆無
・亀の移動速度以下のストーリー展開及び更新速度
2005年3月31日 午前6時 シベリア
雪雲に覆われた黒々とした群青の空、吹き荒れる暴風雪の中を疾り抜ける1台のカスタムバイクがあった。夜空の闇に包まれながらも純白さを保つ車体とは対照的に、それに跨っている人物は漆黒の影のようだった。
その影は漆黒のアーマーに鮮緑のボディスーツを全身に纏い、真っ赤なスカーフを首に巻きつけていた。頭部のヘルメットは悪魔のような1対の触覚がある頭蓋骨のようであり、腰にはベルトを巻きつけていた。
ここに、ヒトを
かつて"風祭真"と呼ばれたそれは、
神に背きし
激動・混迷する世紀末の中、
様々な人の闇や過去の亡霊と闘い続け、
今もなお、誰にも知られず
孤独な旅路を走り続け、
その機械仕掛けの
そしてその瞳は、
時代のすべての罪を一身に背負ったように
紅く黒い。
『……"ダニエル"……私の、もう1人の子……!』
人の
そしてその幾つかは、時代の波に流されることを頑なに拒み、
癒えることのない傷口を開かせ、新世紀という輝ける光を得ようとしていた。
だが、時代という闇はそれを許さなかった。
その傷から、腐敗した最後の遺物を出し切ろうとする。
ネルトリンゲン。
全ての始まりであるこの地は、この物語の
光を求め
1997年12月26日 午後1時 ドイツ ネルトリンゲン 聖ゲオルク教会
雲に覆われ今も雪が降り注ぐ空の下、この地に数多くの観光客が訪れていた。彼等は屋内外のゴシック様式やステンドグラスに惹かれ、礼拝を行う者もいれば観光に楽しんでいる者もいた。その彼等を、1人の初老の眼鏡を掛けた男性の神父が穏和な笑顔で見守っていた。
「Entschuldigen Sie die Wartezeit,Pater Heinrich.」
ハインリヒと呼ばれる神父が声の方がする後ろを振り向くと、スーツケースを転がしている綾小路が立っていた。
「Oh meine Güte,Ayanokoji.Bitte kommen Sie hierher.」
「Na dann, entschuldigen Sie.」
ハインリヒは、綾小路を教会内の裏側に案内した。裏側に辿り着くと、背の高い人間の身長より二回り大きな門があった。
それは叙事詩『神曲』にある"地獄の門"のような様相であり、碑文も掘られてあった。だが、ロダン作や美術館で展示されているものと比べ装飾が控えていた。
神父は懐にあった鍵を取り出して開錠し、綾小路と共に金属を軋ませながら開く扉の中に入る。扉が閉じる前にハインリヒは、右手の2枚の
「Bitte.」
その1枚を綾小路に手渡し、彼と共にそのまま前方の通路へ進んでいく。通路は約3〜4mの高さの洞穴となっており、光が一切無い通路を歩く毎にその音が反響している。
「Was Hayami betrifft,bete ich, dass Gott ihn segnen wird.Er war ein paar Mal hier bei uns,um am Gottesdienst teilzunehmen.Sind Sie übrigens hier, um seinen Job zu übernehmen?」
「Ja.Wir sind kurzfristig hierher gekommen,weil dies der einzige Ort ist, an dem wir Muster haben und das Produkt in Massenproduktion herstellen müssen.」
「Ich verstehe.Wenn Sie von hier aus direkt weitermachen,sollten Sie finden, wonach Sie suchen.」
「Ich verstehe,danke, dass Sie mich begleiten.」
ハインリヒはその場から戻るように立ち去る。同時に綾小路は蝋燭の皿を地面に置き、スーツケースから防塵服を取り出して着用する。防塵服を着用した彼は、スーツケースからガラス製の採取瓶と金属製のスコップを取り出す。
それらと蝋燭の皿を手にした彼は、通路の更に奥へと進む。進むにつれ湿度が高くなり始める。
それもその筈であった。彼の足元には、腐敗し蛆虫や得体の知れない生物に喰われている人間や他の動物の死骸や老廃物、廃棄物などがあった。人間の衣類を見ると、私服があれば白衣のものもあった。彼はそれを踏み抜くごとに悪臭が漂っていた。その赤黒い光景は正に"地獄"であった。
綾小路はそのまま進み、目的の場所に辿り着く。
「_全く。人間というものは、いつまでも罪を重ね続ける生物ですよ。"新社長"。」
そこは高さと奥行きが20mほどあり、天蓋を支える数十本の柱があった。さらに、その周辺には道中の比じゃないほどに腐敗した死骸や老廃物が山のように積み重ねられ、壁全体がバイオフィルムのような粘膜に覆われていた。そしてその向こう側の突き当たりの岩盤には、腑を突き破られ腐敗し朽ち果てた女性の死骸があった。
1997年12月26日 午前8時 アメリカ ニューヨーク・マンハッタン 高層ビル群
鉛色の雲に覆われた曇天の下に並び立つ、巨大な摩天楼の一室にあるラボルーム。そこを含め、数百人以上の引越業者と社員が荷物を段ボールで包装しては屋外に撤去していた。
「なぁ、その新しい社長が就任するとは聞いていたけどさ。なぜ日本まで移動までしなければならないんだ?」
「それなんだけど、昨日社長が会社の存続に関わることをやらかしたって噂が立っているらしいんだよ。」
「マジ?俺、何とか修士卒でここに入れて将来安泰だと思ってだんだけど_。」
日本人の男性社員2人が段ボールに荷物を入れながら会話するのを、野木は彼らの近くを通り過ぎながら聞きほくそ笑んだ。
段ボールに入れる荷物には、かつて速水が育てていた花・シドンもあった。
最上階の社長室
カーテンで遮光され闇夜に近い暗さでガラス張りの窓を背に、財団の社長が肘を机に立てて両手を組んで椅子に座っていた。社長は机にある目の前のPCのデスクトップに向かっていた。
『Adelbert,I'm really disappointed in you.』
「I understand how you feel.」
「In return for providing us with your family's research materials,you encouraged us to rebuild and grow Germany,and at the same time established the "Foundation".All you had to do was make and sell weapons to us.But you set yourself the impossible goal of "bringing the entire world's economic activity under your influence".As a result,you made many customers, including our enemies,and caused many failures that continued to repeat.』
「I'm very sorry about that.So, what is the reason for this request?」
「You still don't understand,so I'm asking you to leave this company.You're no longer needed.」
アーデルベルトは愕然とする感情を抑え込むように沈黙した。
『Let me introduce you to the new president who will replace you.Come in.』
「Excuse me.」
ドアを軽く叩いて入った人物を見て、アーデルベルトは言葉を失った。
「Nice to meet you again,former president.I am the new president of this company,Kenichi Nogi.」
野木はサングラスを掛けた黒スーツの男性を連れながら入室し、彼の手には1枚の誓約書が握られていた。野木の顔を見た途端、アーデルベルトはPCのデスクトップを鷲掴みして顔を近づけた。
「Mr. President,why did you recommend him for the position of president⁉︎」
『Nogi,get him to sign the pledge.』
「Yes.」
野木はアーデルベルトの訴えを無視し、彼の机に誓約書を置く。
「Dad,sign here.The president is in trouble.」
野木は、苦悶の表情を浮かべるアーデルベルトを嘲笑っていた。
「Don't mess with me!」
アーデルベルトは両手を机を音を立てながら叩きつけ、野木に体当たりする。野木の懐からワルサーp38が落ち、アーデルベルトはこれを拾い構える。だが、野木の姿はそこに無かった。アーデルベルトは気配を感じ後ろを振り返る。眼前に野木がいたが時はすでに遅く、気づいた頃には左脇腹から右肩まで切り裂かれていた。アーデルベルトは傷口から大量の血を流し、崩れるように倒れ込んだ。彼の眼前には、ナイフのような鳥の羽根を根本で持っている野木がいた。
『Hey,Even if it was self-defense,I didn't say you had to kill him on the spot.』
「I missed the vital spot.Besides,if I don't let them know like this,there's no way to prove anything.」
野木はアーデルベルトの右手首に向けて右手をかざし、アーデルベルトの右手首が紫色のオーラに包まれる。その後、アーデルベルトの右手首に黒ペンと誓約書が引き寄せられ、彼に誓約書をサインさせた。書き終えたと同時に野木は誓約書と黒ペン、ワルサーp38を手元に引き寄せ、左手の羽根をアーデルベルトの右手首に目掛けて
「Take him.」
社長の椅子に座った野木は黒服の男に指示を出し、アーデルベルトは叫びながら黒服の男に社長室から手荒く連れ出された。
『Congratulations on your new position as president.As soon as the move to the Wakkanai factory is complete,we ask for your continued support in paying off Adelbert's debts.』
「I got it」
大統領は通信を切り、野木もPCをシャットダウンした。同時に野木は机の引き出しを容易く解錠し、USBメモリを取り出した。そのメモリは、かつて綾小路が那須北丘牧場の倉庫内のPCでバックアップを取るのに用いたものと同じであった。
野木は固定電話の受話器を取り、通話を始めた。
「もしもし?こっちは終わったよ。そっちは?…そう、それだけあれば大丈夫だよ。まぁ空港でゆっくりしてよ、俺も社長になって挨拶したい奴がいるからさ。じゃねー。」
野木は受話器を置き、座椅子に寄りかかって足を組みながら呟いた。
「さて、社長としての仕事を始めますか。」
1997年12月27日 午後3時 東京 中野区 中野三丁目 結城サイクルショップ
あの惨劇から僅か数日。雪の降る季節にもかかわらず降り注ぐ雨の下、瑠里と結城はそれぞれ2階のウェイトレスと1階のバイク修理を行なっていた。だが、食事を運んでいた瑠里の表情は暗かった。
『瑠里ちゃん、今まで騙してごめん。俺は、君が嫌ってる"人殺しのバケモノ"なんだ…。』
『…え?ごめん、まるで意味が分からないんだけど…。』
『裕美ちゃんを助けるにはこれしか無いんだ。変身ッ…!』
『え…嘘でしょ…なんで…⁉︎』
ガチャン!
瑠里は気づいた。自分が真のことに気を取られすぎて食事を落とし、皿を割ってしまったことを。
「何やってるんだバーロー!」
「す、すみません!今から作り直します!」
中年男性が声を荒げ、瑠里を威圧する。
「どうしたの瑠里ちゃん⁉︎ケガはない⁉︎」
「…うん、大丈夫。」
結城が急いで2階へと駆け上がる。
「すみません、少々お待ちください。すぐ用意致しますから。」
結城は客の機嫌を取り直させ、瑠里をカウンター前へと連れて行く。
「…瑠里ちゃん。イブの時、俺は
「…。」
結城は男性の方を振り向こうとして、時計の時刻を見た。
「ところで瑠里ちゃん。そろそろ裕美ちゃんのお見舞いに行く時間じゃなかったっけ?」
「あ、そうだった…。」
瑠璃は憂鬱な表情で立ち上がる。
「こっちは俺がやっとくよ。裕美ちゃんのところに行っておいで。」
「ありがとう、オジさん。」
「あと、今日は冷え込んでいる上に雨が激しい。バスかタクシーを使った方がいいよ。」
結城は財布から1万円札を取り出し、それを瑠里に渡した。
「分かった、行ってくる。」
瑠里は、急いで防寒対策をした後に見舞い用の花束を用意する。だが、真が作った耳当てと手袋は棚の引き出しに仕舞われていた。
結城は外に出かける瑠里の姿を見送り、備蓄してある食材をキッチンから持ってくる。
テーブルカウンターに腰掛けてテレビをつける。
『1997年。我々の生活も大きく変わろうとしています。社会に異変が起きているのでしょうか?5年前から続出する、人と獣の区別がつかない怪生物の出現。平和に慣れすぎた、人類への
それは『悪魔の使いか?怪物達の謎に迫る』とテロップが示された、後楽園で異形の姿となった真と速水が戦闘したときの中継映像であった。だが、今の結城はそのことを今だに知る由もなかった。
『一昨日、遂に後楽園に姿を見せた怪物達。人か獣か。5年前から出没し続ける彼等は果たして、我々人類を脅かす脅威なのでしょうか?これらについて、城南大学医学部の岸森教授はどう思われているのでしょうか。』
司会の席にいるアナウンサーが、専門家の1人である岸森教授に説明を求める。
『えー。あの怪物たちは反政府組織が開発したサリンに次ぐ新たな兵器が暴走したからではと考えています。ドリーがいるよう、今世紀にかけて生命科学は大きく発展しております。なので、裏社会で戦闘に特化したミュータントとも言うべき存在が生み出されてもおかしくありません。』
『岸森教授。ドリーとは、最近話題になっているあの羊のクローンでしょうか?』
『ええ。もしそうだと仮定すると、5年前にはまだ実験段階だったと思います_。」
結城はテレビを消す。
「放送局全部がこの話題で持ちきりだな…非常事態宣言といい、大分きな臭くなっている。俺達は一体、どうすりゃいいんだよ…。」
「それでも、俺たちは生きていくしかないと思いますよ、多分…。」
結城は客に答えた後、食事を届け心の中で呟いた。
(真、お前は一体どこにいるんだ…?)
結城サイクルショップ最寄りのバス停留所
瑠里は停留所の椅子に腰掛けていた。非常事態宣言が敷かれているのもあってかバスの本数も少なく、低気圧に加え気温の低さが瑠里の体力を奪っていく。吐く息は白く、足先と指先は完全に冷え切っていた。
瑠里はバスを諦め、指先を呼気で温めた後、タクシーを呼ぼうと携帯電話を取る。
「こんなところで雨宿りしてると風邪引くよ?」
「あなた誰…⁉︎」
瑠里の目の前には、紺色の傘をさした野木が立っていた。
「俺?俺は野木健一。"兄さん"に頼まれて君の様子を見にきたんだ。病院まで連れて行ってあげるよ。」
1997年12月27日 午後3時 東京 文京区 幹線道路
野木の車は、瑠璃を乗せて裕美が入院している関東医大病院へと向かって行った。
「…あなた、さっき"兄さんに頼まれてきた"って言ってたよね。あなたの兄さんってどんな人?」
「いきなり攻めるねぇ。一言で言うなら、人見知り?」
瑠里の質問を野木が返す。
「それってつまり…⁉︎」
「そう、風祭真が俺の兄貴。君の様子を見る限り、兄さんと
「…別に。真が、私の家族を殺した人の1人かもしれないと思ってる。」
野木は一瞬何か分かった顔をした。
(水樹姓、家族が兄さんに殺された…なるほど。)
「私、見たの。真が5年前、父さんを殺した"人殺しの
「あー、嫌なことを聞いてしまったね。ごめんよ。あと、目的地に着いたよ。」
瑠里は車窓を見ると、関東医大病院に着いていた。2人は病院の受付に行き、順番待ちをしたあと受付の看護婦に話しかけた。
「本日午後4時に302号室の見舞いの予約を入れた水樹瑠里です。」
「水樹さんですね…申し訳ございません。実は今朝、301号室の患者が病棟から抜け出したので…。」
「え…⁉︎」
「あ、あのすみません!まだ受付が…!」
瑠里は思わず301号室へと駆け上がり、野木もついていく。
301号室
瑠里はドアをノックし、扉を開ける。
「裕美、いる?開けるよ。」
「お邪魔します。」
野木も瑠里の後から入室する。
そこは窓が開いたままであり、使い切った輸血パックがスタンドに引っ掛けられたままであった。さらに窓から地面まで約20mほどであり、重傷の患者が飛び降りるにはあまりにも高すぎた。
「裕美…。」
瑠璃はベッドの側の机に花束を起き、窓から地面を見下ろしていた、その最中、野木は輸血パックの成分表示や製造メーカーを見ていた。
看護婦が後から入室し、瑠里に話しかける。
「申し訳ございません、水樹さん。私達のほうで裕美さんの行方を探しますので、お見舞いはまた今度に…。」
「あのーすみません。裕美ちゃんがここ抜け出す前に、彼女の身の回りに起きたことってあります?」
野木は、瑠里と看護婦の会話に割って入る。
「えぇ。手術を受けてから裕美さんは、このメーカーのパックで輸血していました。命に関わる施術したにも関わらず回復が早かったので気になってはいましたが、院長からはそのことをあまり口外していないので。」
「あぁ、そうでしたか。ありがとうございます。」
(なるほど。成功したとは言え、我ながら先生の娘さんに罪なことをしたものだ。)
野木は心の中で呟き、全てを理解した。
そのとき、看護婦にナースコールが届く。
「はい!…え、今度は404号室の患者が⁉︎」
看護婦が急いで向かうと同時に、野木達も彼女に付いていく。
404号室。そこには発狂して暴れ狂う中年男性の姿があった。男性は首や頭蓋を抱え悶え苦しみ、押さえつけようとする医者達を振り解いた。無理やり外された血液パックを見ると、裕美のものと同じ成分表示や製造メーカーが印字されていた。
「まさか…裕美も…⁉︎」
瑠里はあまりの衝撃で膝から崩れた。男性は瑠里を見て、興奮すると共に皮膚が白く溶けるように崩れ、赤黒い血管が体表を覆い、徐々に血褐色になる。白眼を剥き、筋肉も盛り上がり、体の各部に吸盤が露わとなり、男は醜い怪物となって雄叫びを上げた。
「え…真だけじゃなかったの…⁉︎」
野木は衝撃を受ける瑠里の背後から彼女を気絶させ、肩に担ぎ上げて駐車場までテレポートした。
患者が怪物へと変容する様子を見た看護婦達は悲鳴を上げ、ナースコールが複数鳴っていることにも気づかなかった。
野木は後部座席に瑠里をシートベルトを付けて乗せて車に乗り込み、シートベルトを付けて携帯電話を掛けた。
「もしもし、そっちは成功したから片付けといて。何なら"アレ"を使っても良いよ。場所は関東医大病院、よろしく。」
野木は通話を切り、車を走らせその場から去った。その様子を、セーラは車内から見ていた。
1997年12月27日 午後6時15分 日本 港区
とある河原、真は焚き火でネズミやトカゲを焼いて食べていた。トカゲは焼きたてなのもあってか非常に熱く、普通の人間では間違いなく火傷をするところであった。さらに炭水化物やミネラル、ビタミンを補うためか真は雑草やゴミ捨て場から拾った生ゴミを焚き火に焚べるだけでなく、無害で消化できるものがあったら肉と一緒に口に入れていた。
(ここ2、3日は財団に動きはない…。一体、奴等に何があったんだ…?)
食べ終えた真の傍には、ゴミと一緒に持ってきた古新聞があった。ゴミ捨て場から拾ったのもあってか、記事の内容は早くて1日遅れであった。
そのときヘリの飛行音が聞こえ、真は様子を見に顔を覗かせた。
「あれは…⁉︎」
真が見たヘリは5年前、父・大門を拉致しようとしたものと同型であった。真はすぐその身を隠し、ヘリが過ぎ去るまでその場をやり過ごす。
(間違いない、どこかで奴等がまた何かを…!)
そのとき、真のポケットからポケベルが鳴りだした。真はポケベルを取り出し、メッセージを確認する。
『ルリノ ミガラハ アズカッタ』
「瑠里ちゃん…⁉︎」
真は衝撃を受けた。
(野宿している余裕があるとは、だいぶ呑気だね。)
(この声は…野木⁉︎)
(あったりー。文字数に制限があったから伝えきれなかったけど、待ち合わせ場所と時間を補足しとくよ。場所は中央区明石町10-1、聖ルカ礼拝堂。日時は今日午後6時30分0秒。1秒でも遅れたら瑠里ちゃんの命はないかもね、来るかどうか任せるけど。それじゃ。)
(待て!)
野木は一方的に真のテレパシーを打ち切った。真は急いで焚き火を消し、バイクに跨り礼拝堂へ向かった。真はバイクを走らせる最中、人がいないタイミングを見計らって"怒りの蟲"へと変貌した。
1997年12月27日 午後6時25分 東京 文京区 関東医大病院
院内。病室全てが怪物へと変貌した人々が、悲鳴や絶叫を上げる看護婦や医師を切り刻み砕いていた。
一方、高さ200m上空。真が目撃したヘリが病棟の真上で停止し、何かを投下する準備ができていた。
「目標地点に着弾してから10秒後、自動解錠が作動するよう設定した。」
「よし、投下開始。」
「OK。」
ヘリのパイロット2人が掛け合い、人間大サイズより一回り大きい砲弾を投下した。投下された砲弾は病棟の天井を次々と打ち破り、1階部に不時着した。
砲弾に設けられた扉が自動的に開くと、砲弾を破壊しながら出てくるものがいた。両手足首と首に特殊合金でできた首輪をつけられた全裸のアーデルベルトであった。
虚な目で周囲を見渡すアーデルベルトは、偶然乳房を晒して倒れた若い看護婦を見て興奮する。アーデルベルトは人と獣のつかない雄叫びを上げると共に皮膚が白く溶けるように崩れ、赤黒い血管と粘液が体表を覆い、ダークブラウンになる。筋肉も盛り上がり、長い尻尾が生え、異形の怪物となってアーデルベルトは雄叫びを上げ、怪物になった患者の前に立ち塞がる。患者は口から黒い墨を吐き、それを受けたアーデルベルトの左胸は爆破し抉れる。患者は力を使ったためかその場で片膝をつくが、アーデルベルトは左胸を瞬時に復元させダッシュで肉薄する。患者は手足の吸盤でアーデルベルトに飛びつき、鋭い口の牙でアーデルベルトの頸動脈に噛み付く。だがアーデルベルトは雄叫びと共に手足を伸ばし、その衝撃で患者の四肢はもぎ取られ院内の廊下や床に叩き付けられる。患者は呻き声を上げ、断面から大量出血しながらのたうち回る。アーデルベルトは患者の喉笛を噛み切り、ありとあらゆる肉や腑を貪り喰らう。その光景を目撃し怯え、逃げ惑う医師や患者の区別を問わず切り裂いては握りつぶしす。その様相は、まるでサバトのようであった。
アーデルベルトは雄叫びを上げ、怪物になった患者も、逃げ惑う医師や患者の区別を問わず切り裂いては握りつぶし、貪り喰らう。その様相は、まるでサバトのようであった。
東京都 中央区 明石町10-1 聖路加国際大学 聖ルカ礼拝堂
「…ん、うぅ…どこ、ここ…?」
礼拝堂の椅子で寝ていた瑠里が目を覚ました。
「こんばんは、瑠里ちゃん。」
「⁉︎」
瑠里は、自分が横たわっていた方向とは反対方向の隣りに野木が座っていたことに気づいた。
「…ここに連れてきたのもアンタなの…⁉︎」
「そ。君の目の前で俺が敵討ちするのを見てもらいたくて、ここに連れて来た。憎いんでしょ、"人殺しの
「…。」
野木の回答に、瑠里は自分の感情と葛藤する。
「瑠里ちゃんが思い悩む必要なんてないよ。兄さんは君に嫌われたくないから、人を殺し続けたことをずっと隠し続けていたんだ。どんな理由だろうと、人を殺したヤツは相応の裁きが下るべきなんだよ。ほら来たよ。」
野木がそう言うと、バイクで門を突き破りながら真は礼拝堂に入った。
「へぇ、"人殺しの
(待っていた、俺を…?)
「アンタを倒せって釘を刺されてね。ところで、アンタはいつまで人類に
(俺が固執している…⁉︎)
「そうだよ。アンタだって腹の底で感じている筈だ。人間が掲げる"正義の味方"や"自由"なんてたかが知れてる。結局、自分達と違った姿や力、考えに塗りつぶされるのが怖いだけなんだよ。」
(違う!君の言うように、人間は誰もが汚いところがあれば、それと同じくらい良いところだってある…だから多くの人を傷つける訳にはいかないんだ!)
「アハハハハハッ!やっぱそう言うか、
アンタのように
(何…⁉︎)
「まぁいい、そういうとき奴は少し痛めつけないと分からないからね。」
目を閉じた野木は両腕の拳を合わせるように胸の前で組み、腕を大きく回して左手を真の前に出す。
「_"変身"。」
野木は両眼を開けると同時に指を鳴らす。彼の眉間に真より一回り大きな"第3の眼"が開き、両眼が肥大化し虹彩が黄緑色になる。その後、彼の周囲に光の
光と稲妻が収まり、真と瑠里は煙の中に
この姿を見た真はとある出来事が脳裏によぎり、いつも以上に恐怖を感じて全身から脂汗を流していた。
一方、礼拝堂の物陰からコンバット姿のセーラとは別方向に何者かがその様子を見ていた。
(まずい、今の風祭さんじゃ戦神には勝てない…瑠里だけでも助けなきゃ…!)
野木は手からワルサーp38を作り出し、真に向けて銃弾を放つ。真は回避するが、着弾した場所は爆発を起こした。真はその場所を振り返ると、人間の足首くらいの直径のクレーターが生じ炎が燃え上がっていた。
真は気を取り直し立ち上がるが、目の前にいた野木の姿は無かった。その後、真の背後を取った野木は銃弾を放つ。真は野木の気配を感じて回避し、同時に両腕の毛爪で切り裂こうと飛びかかる。だが野木は全身を紫色のオーラで包み、真は毛爪を跡形もなく粉砕され吹き飛ばされる。
起き上がった真と、ワルサーp38を空気中に分解した野木は睨み合う。真は先に飛びかかり、フライングパンチを決めようとする。だが、野木に躱わされ、鳩尾に鋭いフック、膝蹴り、水平チョップを連続で喰らう。真は吐血しながら弾き飛ばされ、肋骨3、4本はへし折られ内臓も抉られていた。
悶絶し声にならない呻き声を上げてる真は野木に押し倒され、彼の左手で口と鼻を塞がれ、彼の右手に首根っこを締められ今にも首の骨が折られそうになった。真は野木を振り解こうとするが、徐々に意識が朦朧としていく。
そのとき、恐れながらも自分を見ている瑠里が視界に入り、真は雄叫びと共に野木を巴投げして振り解いた。さらに真は最後の力を振り絞って、礼拝堂内の遮蔽物を駆け巡り、完全に気配を消す。
『へぇ。最後の悪あがきか、面白い。』
野木は左手で巨大な紫色の太陽のような形をした"超衝撃波"を作り出し、ボウリングボール程の大きさに圧縮して地面に置く。右足でそれを押さえた野木は、ノーガードの姿勢で真を待ち受ける。
周囲が静寂に包まれたそのとき、瓦礫の砂埃が崩れる音を野木は耳にする。
『そこか。』
野木は後ろを振り返り、超衝撃波を蹴り上げる。超衝撃波は肉を焦がしながら突き破る音と共に貫通し、人影の背後にあった礼拝堂の壁を爆破した。そこには、豪島との戦いと同じく遮蔽物から奇襲しようとしたが腹部を貫通された真があった。真は激しく吐血すると共に徐々に姿勢を崩し、瓦礫と共に床に叩きつけられた。
「真⁉︎」
瑠里は思わず叫んだ。
『なんだ、前より戦えると思ったらこのザマか。残念だよ、兄さん。』
野木は右手をかざし、真の身体を紫色のオーラで捉え近くまで引き寄せる。同時に野木は左手で胸部の鳥の羽根を数枚むしり取り、ナイフ状にする。野木は真をオーラで礼拝堂の天井付近の高さの壁に叩きつける。さらに野木はオーラを解くと同時に羽根を投擲し、真の身体に突き立てる。両掌に両足など、壁まで深々と突き立てられ、血を流し呻き声を上げる真の姿は、十字架にかけられた罪人のようであった。野木は指を鳴らすと同時に、破壊され吹き抜けになった天井から稲妻を落とす。稲妻を受けた真は、断末魔のような叫びを上げる。
「やめて…もうやめて!」
瑠里が野木に呼びかける。同時に稲妻が止み、壁が崩れ落ちると共に真が床に叩きつけられる。
『何だよ急に。"人間のフリをして騙し続けたコイツが許せない"んじゃなかったの?』
「違う、私はただ責任を取って欲しかっただけ…だから『死んで欲しい』って全く思ってない!」
『ハァ、これだから人間って困るんだよねー。特に自分の言ったことをコロコロ変える奴は。そう思うでしょ、友達の君も?』
野木は物陰にいる人影の方を向いて話しかけ、人影も思わず姿を潜ませた。
「友達…⁉︎」
『じゃ、そういうことであの世で兄さんと仲良くやってくれよ。』
野木は再度ワルサーp38を作り出し、銃口を瑠里に向けた。そのとき、破壊された扉からスタングレネードが放り込まれ、周囲が煙幕に包まれる。直後にロケットランチャーの弾頭が野木に襲いかかった。
『⁉︎』
野木は紫色のオーラを纏い、ロケットランチャーを防いだ。同時にロケットランチャーの爆煙とスタングレネードの閃光と爆音が相まって、周囲が完全に煙幕に包まれた。瑠里も思わず咳き込み、意識が朦朧し始めていた。
(今の隙に…!)
人影はセーラより早く瑠里や真を片手ずつ抱え、その場から姿を消した。遅れてセーラが駆けつけたものの、礼拝堂内には彼女以外姿を消した。
「見失ったか…。」
セーラは呟いた後、思わず舌打ちした。
1997年12月27日 午後7時 東京 文京区 地下下水道
「…ん、うぅ…。」
瑠里は朧げな意識の中、重たい
だが、瑠里は体力を消耗しきっていたか再び眠りについた。
偶然にも、2人の手は繋がれていた。
Cell Ⅶ telophase