この末期の世界に曇らせ好きの愉悦部が乱入した話。   作:ネマ

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愉悦部員が鳴らす始まりの鐘

 

 

ここは神樹館小学校。

四国の守り神であり人類の守護をしていただいている神の名前を入れるその学校は小学校と言えど風格が高い。だがその中でも特に別格と呼べる存在が二人いた。

 

「………zzz」「………zzzzz」

 

クラスの一番後ろで勝手に席を繋げ、互いに寄り添いながら眠りこける二人。

授業中にも関わらず、その二人は後ろで睡眠を続けていた。だが、教師はその場に何か言うわけでもなく、ただ無視をして授業を続けていた。

それもその筈。彼らは触れてはならない。触れたその瞬間どうなるか想像が付かないとして敬遠されているのである。それもその筈理解できないからだ。

上里家と乃木家。ここ四国において絶対的な権力と財力を兼ね揃える天上人。

そしてその二家は跡取りが一人しかいない。つまりは今後ろで寝ている二人が後を継ぐということ。それはつまり簡単に触れて良い二人ではないと言うこと。

そして、彼らは寝ていると言うのに成績は上位に入り、宿題の提出を怠った事は一度もない。ただ授業中、休憩時間関係なく寝ていると言うことだけ。

寝ている事を注意すれば良いとは思うが、彼らは絶対に触ってはならない御令嬢達だ。触らぬ神に祟りなし。授業態度が悪いだけならば、手を出そうとする馬鹿はここ六年間誰も居なかった。

 

「………………」「………………」

 

勿論、そんな今日もいつものように時間が過ぎ去っていく筈だった。

 

「………………ああ。なるほど。」

 

一番後ろに座る片割れ。上里の御令息が呟く。

その言葉には妙な支配感あって、空気を凍りつかせるまでだった。

 

「…………………??」

 

首を傾げながら、どこか遠くを見る上里の御令息を園子は眺める。

先ほどまで、一緒に肩を寄せて寝ていたと言うのに一体何が始まると言うのか。

 

「今日か。まあ随分と……」

 

溢れる笑みが隠し切れないのか、上里の御令息はくっくっくっと笑う顔を隠しながらそれでもなお、非常に面白いものを見たと笑い続ける。

勿論、そんな感じではおかしな人を見るような視線でクラスメイトを見る筈だが、そのクラスメイトはうんともすんとも言わない。何故ならば、クラスメイトも教師も動かない。もっと言うならば、風で飛んだプリントも誰かが落とした鉛筆も空中で停止している。…そうそれはつまり、一部の人間を除いて時間が止まっているということ。

 

「………ひーくんこれって……!」

 

「始まったな…ああ。わかりやすい反応な………」

 

そしてごく一部の人間はこの現象に見覚えがあった。そう。それは“お役目”の合図。

そして今このタイミングで動いているのは“上里 聖”と“乃木 園子”、“鷲尾 須美”そして“三ノ輪”の令嬢だけだ。

何が始まると察した瞬間園子は聖に近付き、抱きつき少なくとも同じ場所に飛ばされる様に目を瞑る。

 

聖が外を見てみると、虹色の極彩と無数に飛び散る花びら。そして前世よく感じた神樹の力が干渉してくる感覚だ。

結界に飛ばされるまでまだ少し時間があると分かった瞬間、聖は須美にアイコンタクトを送る。それは“もう一人を連れて合流”と、それが通じたのか神妙な顔で須美は頷く。それを了承と見たのか、聖は目を瞑り結界に飛ばされるのを待つ。

目を瞑るのと、どこかに移動する様な感覚が襲ったのは同時だった。

 

 

 

「なんともまあ。便利な……」

 

そこはまるで御伽の国の様な、ファンタジー感溢れる色彩の森の中に二人は居た。

この現象に付けられた名前を聖は今思い出した“樹海化”正しく、樹の海の中に自分たちは飛ばされたのだと実感する。ただしまあ嘗て“大橋”と名付けられた海の方から白色の怪物が少しずつ少しずつ近づいているのを見ないのであるのならば。

 

「聖くーん!」「おいっ…そんなタメ口で大丈夫なのかよ……」

 

醜悪な姿の白色の化け物。バーテックスを睨み、聖は過去の記憶から応戦記録があるかないか探し出す。だが、あの様な珍妙な姿は見覚えはないと一旦探すのを取りやめ、その姿からどの様な行動を行うか記憶を参照して推理する。

まずは、両辺にくっついている大きな水滴の様な物。それがバーテックスの主武装なんだろう。よくよく目を凝らせば、中から泡の様な物が発生している。

水に近い物質と仮定して、その攻撃手段は………

 

「ねえ!聖くん!」「ちょい…大丈夫かよそんな口調で……」

 

後ろから体を揺らす様な感じとともに、耳元で声が掛けられる。

そこに居るのは、鷲尾須美と三ノ輪の令嬢の二人だった。まだ変身はしていない様で、制服のままだ。

 

「…ねえ?ひーくん始まったの?」「ああ。そしてまだ時間はある。」

 

変身する前に聞いて欲しい。三人に聖は声を掛ける。

一刻を争うがそれでも聖のいうことは聞いておいた方が良い。そう園子は判断して、いつでも変身できるようにしながらも変身せずに聴く体制だ。

勿論、須美も三ノ輪も聖のいうことは聞いておけと言われているので渋々ながらも従って聞いている。

 

「聞いていると思うがお役目が始まった。協力していくぞ。」

 

全員の目を見合わせて、声を掛ける。全員そのつもりか合わせる様に頷いた瞬間、スマホの中心の花のマークを叩く。勇者の変身が始まった。

制服姿に光が当たり、服装に変身が始まった。園子は濃い紫、須美は薄紫、銀は赤を基調とした服装そして聖には翠色の勇者服に変身した。

 

「……おー!」「これが勇者……」「勇者服って300年前から変化ないのか…?」「え?そうなのか?」

 

十人十色の反応をしながらも彼女達は跳ねたり、服のボディラインが出てくることに文句を言ったり、服装に関して300年前と変化なさげなんだがと言葉を交わす。

そして今から武器を取り出し、バーテックスに突撃するその瞬間だった。

 

「……………っっっ!!!!」「「ひーくん?(聖くん?)」」

 

「………見られたっ!」「見られた?」

 

格段に向上した身体能力で樹の上でショートカットしながらバーテックスに近づいていた瞬間だった。聖は突然足を止め、驚愕とも言える表情でバーテックスを見る。

勿論そんなことに気がつかない勇者達ではない。全員が全員、聖の行動に疑問を示しており聖に聞く。だがそんな隙はバーテックスにとって次の行動をするに等しい。

開幕、まだこちらに気が付いていなかったバーテックスは神樹に向けて動いていた方向を瞬時に変え、こちら側に向いた瞬間バーテックスの両側から多くの球を射出してきた。

弾丸の雨の様な、バーテックスの初見殺しじみた攻撃に誰も対応できない。

この二人を除いては。

 

「…………!!三ノ輪の!!」「ああ!!」

 

皮肉なことにも聖と三ノ輪 銀の戦闘時の相性は誰よりも最高だった。

一撃必殺そして高火力、広範囲その全てが面白いほど銀と聖は合っていた。

もし、西暦勇者の中に銀が居たのならば、背中を任せられると言えるほどに。

 

「……三ノ輪の……怪我は?」

 

「……上里のお陰で問題なし、というか銀で良いよ。」

 

「そうか。じゃあこっちも聖でいい。」

 

「うん、了解。」

 

強化された視覚で攻撃が見えようとも、避けるのは自身の回避能力に掛かっている。先程のバーテックスの水弾の雨は樹の影に隠れた後でも執念深くばら撒かれ続けている。

聖と銀がしたことは近くにいた園子と須美を抱えて、射線を切った事だ。

ショットガンよろしくばら撒かれ続ける水弾は予想以上に威力が弱いらしく、樹に隠れれば何の問題もなかった。

 

「大丈夫か。園子、須美。」

 

「ええなんとか…助かったわ。」

 

「大丈夫なんよ……でもどうするの〜?」

 

どうしようも明確な案は出てこない。物陰に隠れて数十秒が経過したというのに、未だバーテックスは水弾をばらまき続けている。

このままでは何もできないまま神樹に近づかれる。それだけは防がなくてはならない。だが、あの水弾の雨に飛び込むというのは自殺と同等だ。そんな無謀な作戦は取れない。

 

「………分断か。」

 

「やっぱりかぁ…」

 

聖は一つの案を呟く、そしてそれに同調する様に銀も声を上げる。

 

「……どういう事……?」

 

須美がその言葉の意味を聞く。その作戦を聖と銀は話す。

 

「僕がバーテックスの囮になる。」

 

「そして私と鷲尾と乃木であれを倒す。」

 

バーテックスの視線にいち早く気が付いたのは聖だ。それはつまり聖はバーテックスに捕捉されているという事。そして未だばら撒かれ続ける弾丸を見るに見失っただけでまだ聖を探し続けているという事。

ならば、それを逆手にとって聖が神樹と逆方向に逃げ続けている間に私たち勇者が近付いてバーテックスを討伐する。それはつまり聖の負担が大幅に増えるという事。

 

「そんなの……!」

 

「いや。これが最善だ。」

 

須美にとって大聖の末路は非常に心に残っている。自己犠牲の果てに死んでしまうなんてそんなの余りに幸せな結末じゃない。

そしてその生まれ変わりである聖くんがおんなじ様に自己犠牲をしようとしているなんて認めることは出来ない。

 

「ひーくん。」

 

「何?そーちゃん。」

 

「……信じて良いの?」

 

「…………ああ。」

 

ならいってらっしゃい。そう園子は自分の槍を構える。

園子はよく知っている。聖はああ見えて自分たちを一番信じてくれている事を。

勿論、戦闘の時だけ銀と相性が良さそうなのは不服だが、一番は私だ。

ならば信じて、送ろう。私が愛する人は強いんだから。

 

「………勝つぞ!!!」

 

「「「ああ!!(ええ!)(うん!)」」」

 

いま、“無謀”という二文字に光は宿った

 

 

 

 

 

 

 

 

 

⦅愉悦部員side⦆

 

えー…皆様大変長らくお待ちしました。バーテックス襲来のお時間です。

前世、つまりは300年ぶりの再会でございます。一体どんな姿してるんだろうか非常に興味がありますね!というかこんな時間が止まって、結界に移されるとか300年のうち何が有ったのか…あの時代は少なくとも娯楽にはなってなかったが、一種のエンターテイメント染みていたというのに……

もしかして、外でも問題なく使えたカメラが壊れたのだろうか。

それは仕方ない………

 

「始まったな…ああ。わかりやすい反応な………」

 

すごい神樹の力と、外からのバーテックスの気配がビンビンしてますねぇ…

その辺りの勘は鈍ってないことが分かっただけでも十分な収穫ですかね。

わぁ…ファンタスティック。外、しかも大橋辺りから段々と光に飲み込まれていくこの様はまさに爽快…というか花びらすごい飛んでるな…全部神樹の奴か…?

ふざけるのはここまでにして。これがいわゆる結界に飛ばされる“樹海化”という現象。バーテックスと300年ぶりの再会戦が始まるというわけだ。

………ああ。実に楽しみだ。こう縛りプレイの強要に気がついた時にはキレ散らかした覚えがあるが、これはこれで楽しみようがある。

レベル1から敵に挑む。掛けるチップは自分の命!!そして四国の未来。

死力を尽くして殺し合うなんて、前世でも出来なかったのだ。

今回はパーフェクトゲーム。こんな所でつまづいていられないだろう?

 

「なんともまあ。便利な……」

 

強制転移。というよりか世界の裏側に入れられた感じだな。

樹海化…神樹結界と称したのは間違いでないかもしれない。バトルフィールドよりも閉じ込めることに特化した檻のような…まあ本職じゃないから分からないんですけどね。でも何故わざわざこんなまどろっこしい結界なんて…外に出て討伐した方が圧倒的に効率的だ。だというのにこういう手段を取る……いや。取れない?こういう手段しか取れない?外については殺人ウイルス…本当にそれだけか?何処かで見落としが……

 

「ねえ!聖くん!」

 

というかそれよりもバーテックスだよ。あの白色…白色?

あんなクラゲみたいなバーテックス見覚えないぞ…教えはどうなってるんだ教えは。クラゲ自体には攻撃性能高くなさげだが、両側に付いている水袋的な何かが問題だな。中身を飛ばしてくるのか、あれを媒介に何かしてくるのか……

 

「聞いていると思うがお役目が始まった。協力していくぞ。」

 

前世と同じように声を掛け、変身する。

300年前にはなかったこの変身というものは正直気分が高揚する。めっちゃ楽しみ。

ワクワクと心なしか高揚感に身を包まれながら変身を終える。

変身した勇者服の色は緑…というよりかは翠だろうか。300年前によく似た勇者服(ちなみに若葉の服の形に似ているらしい)だが唯一違うのは、首に掛かるチョーカー擬き。戦闘には邪魔にならないから防具としてなんだろうか。と考える。

武器は、前世と同じような片手剣であることは明白だ。

 

あとはショートカットしてバーテックスに近づくだけだ。

強いていうならば、300年前よりも身体能力の強化性能が上がっていると言うことぐらいだろうか。大聖には及ばないが、今の状態でも初代勇者レベルの速度は出ている。まあそれ以外は全然ダメだが。

 

「……………っっっ!!!!」

 

………嘘でしょぉぉぉぉぉぉ!!

明らかにこっち視認したよねぇ!?バーテックスさんこの300年のうちに進化しすぎじゃない?すくなくとも1kmはあったはずだが??そしてあの時はこの距離だと視認は愚か認識も出来なかった筈だが!!

あ゛〜!!しかもなんか撃ってきてるし…弾幕の雨嵐とか洒落にならんのよ…

 

「…………!!三ノ輪の!!」

 

そしてこの中で確実に動けるのは、三ノ輪…ぐらいだろうか。

明らかに全員が認識できている最中に次に動こうとしているのは確かだ。

三ノ輪の令嬢に声をかけた瞬間、園子を背負って木陰に滑り込む。一コンマ遅れて三ノ輪の令嬢が滑り込んだその刹那。想像していたように弾幕の…水の弾幕の雨嵐。

あーもうめちゃくちゃだよ。木々が酷い速度で泣き倒されていく。

 

三ノ輪……銀は意外にも馬が合うみたいだ。

もし、300年前に会えたというならば背中を任せても良かったかもしれない。

愉悦抜きで考えても良い人材だ。成長度合いによっては“相棒”にもなっていたのかもしれない。まあ今たらればを考えても仕方ないが。

さて。バーテックスは今もなお水弾を撃ち続けている。適当ガトリングよろしく、当たっても当たらなくても良いのだろう。とりあえず逃げ道を潰して戦闘に持ち込もうとする。ありきたりな戦術だが、初陣の少年少女たちには十分効く技だろう。

だが今ここには腐っても大聖と呼ばれた愉悦部員が居る。

 

「………分断か。」

 

考えがに通っているからか、銀も同じように立ち上がる。

考え付いた作戦はお粗末極まりないもの。俺がひたすらにバーテックスを煽りカスし、その間に勇者達がバーテックスに近づいて討伐。

本当にどうしようもないのならば、最悪合流して消耗戦で削り切る。

 

「………勝つぞ!!!」

 

煽りカスムーブで勝つバーテックス討伐戦始まります!!(心のクソデカ声)

 

 






上里 聖

ついに勇者になった聖君。待ち受ける敵は、アクエリアス・バーテックス
尚、バーテックスは原作より強化されてる模様。
勇者服は、若葉似、翠色。そして謎のチョーカー。武器については次回。
愉悦すると言っておきながら戦闘も楽しめる愉悦部員。
謎に銀との相性がよく、もし西暦勇者に銀が居たならば後釜は銀になっていた可能性が高い。そしてこの神樹歴でもこのまま行くと、銀…貴方が聖の鞘(意味深)だったのですねルートにまっしぐら。尚、その間に数名脳破壊される。

次回「初戦・決着」

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