【注意!】今回「初戦・決着」は熱血9割、愉悦1割の提供でお送りしています。
愉悦をお求めの方は次話をお待ちください!しゃあ王道系でも呼んでやるぜってお方は楽しんでいただけると幸いです!
それではどうぞ
3行でわかる前回のあらすじ!
バーテックス襲来。勇者初陣!
バーテックスの不意打ち!面殲滅攻撃!
勇者二手に分かれる!
以上。
数秒前。聖が私たちとは逆方向に走り去った瞬間だった。
「よし!今でも聖を狙ってる。」
「それってつまり〜」
私たちは眼中に無いって事だよね〜?
園子が残酷なまでの真実を軽く口にする。誰も彼もが分かってたその事実を園子は口にする。妖精の様に残酷に。
「……まあそれはそうだけどさ……」
「今はそれを僥倖と思うしか無いわ。」
でも時間はあまり無い。そう須美も考えている。
バーテックスの位置は動いていない。だけどそれ以上に攻撃が激しくなっていってる。微かに見える聖は四方八方に動き回って未だに弾幕に当たっては無いが、追尾弾、レーザー、破裂弾etc…今までに誰もが考えたことがある様な全ての遠距離攻撃が聖に降り注いでいる。バーテックスの狙いは分からないが、時間が経てば経つほど聖が追い込まれる。
それはつまり、聖が死ぬということ。その恐怖心が須美と園子に莫大な力を生み出した。
「目標確認!突っ込むぞ!!」
「ええ!!」「わかってるっ!!」
特に苦労することなく三人はバーテックスに近づく。
バーテックスは数m程度に近づいた勇者には片目も触れず、今も尚弾幕に勤しんでいる。勿論、これは好機である。完全に不意打ちの状態で近づき、そして今出せる全力でバーテックスを潰す。
「落ちろぉぉぉぉぉぉ!!!」
「潰れろぉぉぉぉぉぉ!!!」
「貫けぇぇぇぇぇぇぇ!!!」
園子が槍をバーテックスを刺し穿ち、高度を落とす。銀が二本の斧で両側の水袋を切り離す。そして須美が強襲で出来た怯んだその瞬間、矢で串刺しにしていく。
もし本来なら、聖が居ない正史ならばここで確実にバーテックスは倒されていた。
正史以上の連携、そして感情の暴走による底力。明らかに初陣とは言えないレベルの戦力でバーテックスを討伐できたはずだった。
だが忘れてはいけない。なぜバーテックスはバーテックスと言われるのか。
Vertexその意味は……“頂点”であるが故に
一筋縄では終わらない。
「…………っ?!逃げr………」
水袋を切り離し終えた銀が何かに気が付き、須美と園子に声を掛ける。
切羽詰まった様子に少しだけ、その場で防御する様に力を溜める。
それが悪手だとは知らずに。
「…………なっ………!」「…………うそっ!!」
ここで一つ思い出してみよう。バーテックスの攻撃は基本水袋の様な物から水弾を発射して攻撃していた。そしてその中では炸裂弾つまりは爆発する弾だって有った。ならば水袋自体を爆発させる…自爆混じりの攻撃だって出来ないという訳では無い。勿論、これはバーテックスが持つ戦闘能力を失うということ。だけどその爆発は、予想の付かない不意打ち気味だった。
切り落とされた水袋は地面へと着弾した瞬間、盛大な音を奏で爆発した。
周囲の樹々を地面をスプーンで救うかの様にゴッソリと削るその威力は勇者であっても無傷では済まないだろう。
それを示す様に銀の両腕には多くの傷が出来た。
そう。銀はその背で園子と須美を守ったのだ。
「…っ!三ノ輪さんっ!」「みのさん…………?」
二人にとって今湧き上がる感情は罪悪感や哀しみなんかではない。
憎悪憤怒。有り余るほどの怒りが自分への怒りが込み上げて、治らない。
聖くんに、ひーくんに、後は任されたというのに、この姿は何だ?銀一人だけが異常に気がついて、そしてその両斧で庇われた。鍛えていたはずなのに。お役目に向けて気を張っていたと言うのに。なんだこのザマは…っっっ!!
「鷲尾………いける?」「ええ。勿論よ。乃木さん。」
槍のパーツを展開して、傘の様に開き即席の盾にだって出来たはずだ。
弓を生かして、切り離された水袋を射抜く事だって出来たはずだ。
そう。これは徹頭徹尾“戦争”だ。一瞬の油断をしてはならない。
気の緩みを恥じ、この出来事を一生忘れない恥にする。その気概で、須美と園子は立ち上がる。“勇者”が、彼の隣に立つものがこんな調子で良いものか。
だが、そう簡単には行かない。
爆発の衝撃で、バーテックスは再び宙に浮かび始める。再生能力も桁外れなのか、槍で開けた穴も、矢で開けた穴もどちらも殆ど修復している。
ただ切り落とされ爆発した水袋だけは再生が遅いのか、堕とされる前にあった大きさとは比べ物にならないほど小さい。
それだと言うのに、未だバーテックスの照準は聖を追いかけているみたいで勇者には目向きもくれない様にひたすら水弾を射出し続けている。
「………………お前の!!」「…………相手はぁぁぁ!!」
「「私たちだぁぁぁぁぁぁぁぁぁ!!!!」」
豪雷一閃。勇者の渾身の一撃は確かに、浮かび始めたバーテックスを貫いた。
園子の投げた槍はバーテックスを貫き、須美の矢はバーテックスの白い下部を貫く。文字通り、バーテックスに大きな風穴を二つ開けた。
だが、バーテックスも何もせずに受けたわけでは無い。
二つの風穴が開いた瞬間バーテックスは痛い、痛いと捩れ回るかのように一回転し、両側の水袋とバーテックスの本体であろう青いボディの色が変化する。
『…………aaa………Aaaaaaaaaaaaaaaaaa‼︎‼︎』
まるでバーテックスは初声を上げる様に、歓喜の声を響かせる様に声を上げる。
何処にも口は無いはずなのに耳を、脳内まで響かせる魔声は正しく化け物が生まれた事を知らせるかの様だ。
そして、バーテックスは青色だった筈の水袋とボディを燃えるような赤色に変化して、嘲笑うかのように空中で回転を続ける。先程のダメージは見る形もなく、銀が落とした筈の水袋も元の大きさに戻っている。
さぁ。崇めよ。讃えよ。奴の名はバーテックス。アクエリアス・バーテックス。
示す星の座は『水瓶座』、示す処は『釜茹で』
人類を滅ぼす神の兵器の一角。無力な人間が滅することは敵わず
だが、忘れては居ないだろうか。ここにはかつて希望と呼ばれた者がいる事を。
そう。いつだって絶望の反転は希望なのだ。
「うっせぇなぁぁぁぁぁ!!!」
先程の、園子と須美の渾身の一撃を豪雷一閃と称すのならば彼の、聖の一撃は銀光一閃。膝を突きかけていた少女たちの絶望さえも切り裂く様な一撃は、見事バーテックスの下部のヒラヒラ舞っている部分を切り裂いた。
「遅くなった!!」
「「ひーくん!!(聖くん!!)」」
聖がやったことは簡単。バーテックスの水弾を避けながら攻撃が止んだと分かったその瞬間、樹々の中で一段高そうな所からジャンプ切りを行っただけ。
そうは言うがほんの隙間に身体をねじ込んで避け続ける極限の状態の中、孤軍奮闘で味方の勝利だけを信じ、ひたすらターゲットを取り続けることがどれほど難しいか。
「状況はっ!?」
「見ての通り〜…殆ど最悪だよ?」
聖は避けながらの最中、園子が投げた槍も回収していたみたいで状況を聞きながら槍を返す。正直にいうと戦況は最悪と言ってもいい。最高戦力である筈の聖にもやはり避け続けるのに無傷というのは難しいのか幾つか掠った様な跡が有る。銀だって、今まで握ったことのない斧で敵の攻撃の爆発を受けて、掌の皮はズル剥け。そして両腕の勇者服も爆風によって破れ、血の跡が滲む。
「っ!ヤバいな。時間もあまり無い。」
聖は周囲を見渡しながら苦言をこぼす。
バーテックスとの戦闘時、神樹が作り上げた結界は少しずつ時間経過とともに朽ちていく。それは現実世界に“穢れ”として不幸をばら撒く。勿論、その朽ちていく速さは今までなら無視できた速度だが今となっては大橋が少しだけ、されど少しだけ黒ずんでいた。
もはや、一刻の猶予も与えられない。勇者にも疲弊が見られる。
こんな時下す決断はただ一つだった。
「……速攻。いけるか?二人とも?」
苦虫を噛み潰したように奥歯を噛み締め、園子と須美に問う。
勿論、時間制限的な意味でも自分たちの疲れも溜まっている事を考えたらそれ以外に取る手段は無いとして首を縦に振る。
まだ、まだ少女たちの瞳から炎は消えていなかった。そう、それは彼女も。
「待って。置いていく気か?」
最後のピースがここで参戦した。銀が掌から血が出るのも無視して立ち上がる。
爆風を受けた時点で頭が揺らされて気絶してた銀だが、勿論勇者服の恩恵で園子と須美の二撃で微かに意識を取り戻していた。だがその直後のバーテックスの魔声に微かに浮かんだ意識がまた閉ざされた。そして今目を覚ましたのだ。
正直にいうと銀は園子と須美を少し侮っていた。園子は言うまでもなく聖にお熱だし、須美だって聖の言うことしか聞かない。バーテックスを正しく“殺し合い”と最初から分かっていたのは銀だけだった。筈だったのが園子と須美は銀に庇われた瞬間、その事を心から理解したのだ。だからこそ、銀も彼女たちを同じ勇者だと認めたのだ。だからこそ、私を置いていくなと声を上げる。掌がずる剥けがなんだ。動けないわけじゃない。
「銀………!」
「おう!三ノ輪家の銀さんだ。」
聖も何処かで火力が足りない事を分かっていたのか、喜ばしい様に顔を上げる。
さぁ。役者は揃った。邪魔なバーテックスには退場して貰う時間だ。
「私が先に突っ込むぞ!!」
「うん!援護するよ〜!!」
「射抜ける時に絶対射抜く……!!」
「速攻!火力で沈めるぞ!!!」
おうっ!全員の息の合う掛け声と共に、銀の斧が振り落とされる。はずだった。
「……なん……だと……」
誰かが漏らした驚愕の一言。
バーテックスが攻撃したわけではない。水弾が放たれたわけではない。
そう。バーテックスは赤色に変化した水袋から自分を覆う事にしたのだ。
完全防御形態。銀の斧はゴムボールが跳ねる様に弾かれ、バーテックスに到達しない。……完全にお手上げ。同じように大聖の武器も振り下ろす斬撃の攻撃だ。もうどうしようもない。…………筈だ。
「……………!!もしかしてっ!!」
誰よりも早く、驚愕の空白から抜け出したのは須美だった。
「……やっぱり!!!」
須美が矢を射る。するとバーテックスはその水の防壁が矢の当たる所だけ露骨に濃くなり、それ以外が微かに薄くなる。
「点攻撃よ!皆!一部分に防御を集中させれば防御に穴が開くわ!!」
つまりはそう言う事。バーテックスの防御と言えど完璧ではない。
防壁と言えど水だ。その防御能力には限りがある。銀の斧と大聖の片手剣に警戒するような対斬撃防御だが、須美や園子のような貫通攻撃に関しては不完全だった。
だからこそ、須美の矢が当たりそうになったその瞬間、防御を露骨に当たるところだけ上げた。そしてその代わりに他の部分の防御が疎かになる。
「ああ!お手柄だ!須美!」
「なるほどね〜」「そう言うことか……!」
全員、神樹館という有名ゆえに頭も居る小学校に通うだけある。
そう言うことに関しての理解速度も生半可ではない。そして今からしたいことの意図も掴んでない事ではない!!
「………三」
バーテックスは未だに何かするわけではなく空に浮かんだまま、水の防御を纏って浮かんでいるだけだ。
「二………!!」
園子が須美の隣に降り立ち、同じ場所を焦点に入れる。チャンスは一瞬、一回限り。でも外すとは不思議と思わなかった。
「………一………!!」
限界まで須美が矢を番える。弦が限界まで引かれている事を示す様に、ギチギチと音を立て、矢が引かれるその瞬間を待つ。
園子も自分の全開が出せるように、最も打ち上げやすいように身体を捻る。
「「「「ゼロ」」」」
全員のゼロのカウントと共に園子の槍と、同時に光を纏った矢が同時に同じ場所を狙って放たれる。そうこれこそ全力全開。最後の一撃。
バーテックスは須美の読み通りに矢と槍の飛来を予想するように防御を固める。
だが、それだけでは足りないと見たのか、水の防壁を重ねる。何重にも重ねる。
全体に貼られていた筈の水の防壁は今や槍と矢を受け止めるだけの分厚い一枚板に過ぎない。
そしてこの瞬間を待ち望んだ二人が飛び出す。
「………地に!!」「……落ちろ!!!」
バーテックスっ!!
炎を纏う気迫と共に銀と聖が飛び出す。
そして今気が付いたのだろうか。バーテックスは水の防壁を薄く纏おうとする。だがもしそんな事をしてしまうと先程の槍と矢が確実に貫く。
「間抜け」「させ…ない!!」
聖の呟くような一言と、銀の確信を込めたその一言と共にバーテックスに銀閃が3回一斉に走る。バーテックスの中心、そして中心に向かうように斜めに落とされた二閃がバーテックスを切り落とす!!
「終わりだ。」
地面に降りたつと聖は一言呟き、バーテックスの最期を見る。
バーテックスはもう再生することも出来ないのか、地面に分割され落ちる。
全てのバーテックスのカケラが落ちたその瞬間、花びらを纏って少しずつ消えていく。これこそバーテックスが討伐された証。神樹の力によってバーテックスは消される。
体感、数時間にも及ぶバーテックスの第一戦は勇者側の勝利で終わったのだった。
result
アクエリアス・バーテックスvs勇者
勝:勇者
上里 聖 水弾による擦り傷、切り傷
乃木園子 疲労による関節痛
鷲尾須美 疲労による関節痛
三ノ輪銀 自爆攻撃による擦り傷、切り傷、掌の皮のずる剥け
敗:アクエリアス・バーテックス
アクエリアス・バーテックス 討伐
「予想以上でしたね。やっぱり大聖様…記憶…」
「…プランの変更。仮称“満開”……急ぐ…」
ふぅ。疲れました。とりあえずアクエリアス・バーテックス討伐です。
愉悦部員の一人称視点や、その他諸々は次回に。(武器の紹介も次回に!ごめんなさい!)
ここまで書いてなんなんですが、バーテックスの強化調整ミスった気がするんですよね…ぶっちゃけ当初想像していたのは大聖がぶった切ったら終わったみたいな…絵面を想像していたのですが、いつのまにかこんな熱血友情バトル物になるとか誰が想像したんだ。これ初戦なんですけど…何故か勇者たちの意思疎通が出来ていたのかは、ぶっちゃけると極限状態だったからです。銀の聖と仲に嫉妬する以上にバーテックスに強化入れてしまったのでこうなりました。不思議。
まあこう言うのもアリなのかなと独断と偏見で書き殴りましたが、愉悦要素が無いわけではなかったり。特に最後のリザルト。気が付いてくれたら良いな…チラッ
それでは感想、評価お待ちしてます。
次回「初戦・決着(裏・愉悦)」