この末期の世界に曇らせ好きの愉悦部が乱入した話。   作:ネマ

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初戦・決着(裏・愉悦)

 

 

話は遡り、分断による作戦が始まった瞬間。

 

(ぶっちゃけ煽るにもどう煽るよ…)

 

実はそこに行き渡ってしまったのだった。

正直に言おう。煽って、バーテックスのタゲを持っていくのは良いが、どうすればいいのか悩む。バーテックスを煽るにも煽りとバーテックスが認識しなくては意味がない。

 

そしてここで振り返ってみよう。

我らが愉悦部員は中々思うように愉悦が進まず、そして前世と同じようにバーテックスを軽々と討伐できない。勿論そんな調子ではフラストレーションが貯まりに貯まるだろう。だからこそ、ここで愉悦部員は馬鹿をやってしまった。

 

(煽るだけなら弱く斬撃飛ばせばいいか……)

 

水弾の嵐が降り注いていると言うのに、この余裕。

避けるぐらいならスレスレを狙って避けたら良いやろとこのアホはおちょくる様に避けまくる。そして、考えた行動は一つ。前世でよくやっていた飛ぶ斬撃ぐらいなら軽めでも出るだろうと、虚空に手を伸ばし前世から愛用の片手剣を引き出した。

 

(……………!?装飾??)

 

その片手剣は確かに前世お馴染みの片手剣に間違いはない。

ただ、前世は無骨な片手剣にすぎないと言うのに、今引き出した片手剣には色々な装飾が付けられ、さらには剣身には花っぽいレリーフが5個刻まれていた。

さらには鍔や柄には色が入れられ、陳腐なアニメに出てくる架空の武器とも言える形相だ。

 

(はぁぁぁぁぁぁあああ???)

 

勇者能力に向上が有るからか剣は問題なく前世の練度と同じように使えるが、それでもやっぱりレリーフが目に付く。

片手剣と言えど、300年も前の物だから研ぎ直しやその他諸々の処理はされていると思っていたがこれは酷い。考えても見なかった進化だ。

 

(くそっ!片手剣を弄られて変な風にされるとか考えてもいなかったんですけどぉぉ??)

 

自分の頭ではまあ勇者としてはまあこう言うのもあり得なくは無いと認めてるが、(横目で初代勇者と比べれば華やかになった勇者たちを片目に)やっぱり受け入れ難い進化で有る。どうしてこう言う方向に進化してしまったのか。小一時間ほど大赦に問い詰めなくてはならないと俺は激怒した。

誰がこんなファンタジー進化させろっつったんだよ。というか誰の趣味だよ。

考えられるのは…そういうことするやつはいないと考えたいが。いないよね?本当に??

 

そう何やかんや馬鹿な事を考えている愉悦部員だが、バーテックスからの攻撃は止むことない。むしろ先ほどから攻撃の手が激しくなってきている所だ。

 

(ウォーターカッターってか笑えない)

 

単調に落ちてくる弾幕が終わったと思えば、次は弾幕の間に刃型の弾幕が飛んでくる。通常の弾幕に隠れて落ちてくる辺り性格悪い。

と簡単に言えるが、威力は馬鹿にならない。神樹が作り上げた結界の樹の大きな幹を一回当たっただけで切り倒したとえば分かるだろうか。断面は誰が見ても綺麗で、今も元の位置に切り離された物を置けば繋がるんじゃ無いかと思えるほどの鋭さを持った弾幕だ。

 

まあ勿論愉悦部員は、これを剣先で軽く位置をズラし回避しながら撹乱を続ける。

 

(次は………レーザーってやばっ!)

 

バーテックスも刃型は意味がないと分かったのか、レーザーの様に細長い弾幕を打ち出す。その速さは正しくレーザーと言えるほど速く、勇者の目を持ってしても完全に捕捉できるほどではない。まだ単純に身体が育ちきっていない側面も無きにしも在らずとも言えるが。

 

内心こんな愉悦部員でも身体能力は勇者の力も相まって並大抵の物ではない。

簡単に攻撃は躱せるし、どうしようもなければ剣を使って弾道を逸らす。(前世のより片手剣は使いやすくなっていた。控えめに言って愉悦部員は心の中で泣いた)

だが、愉悦部員には悪い癖が有った。

 

(うーん。炸裂弾に、ミサイル型。誘導弾に誘導型破裂弾。)

 

これはさてはあれじゃな?回避ゲーって奴やな?

愉悦部員の心の声は着弾と同時の音と土煙にかき消されて消える。

だが、まあ愉悦部員のしぶとさはピカイチだ。古今東西の遠戦で使われた様な攻撃の雨霰もこの愉悦部員の前では無力に等しい。

というより未だにこの攻撃を受けてもどうこの戦いで愉悦するかを考えている時点で、バーテックスとの実力差は明確な物で有る。

本当に酷い。愉悦部員に痛い目を見ろと声援を送りたくなる。

 

 

 

 

(………うん?)

 

あれ。なんか攻撃やんだ。空見上げるとバーテックス落ちてるんだけど…えぇ…

相手のバーテックスの攻撃は珍しい完全遠距離型だ。その攻撃の要で有る水の袋らしい物を落として仕舞えば相手はただの空に浮かんでいるカカシだ。

ついでの追撃かどうか知らないが大量の矢が墜落しかけのバーテックスを突き刺し、バーテックスは更に地面に近づいていく。良く見れば風穴空いてるし園子の槍だろうか。

あんまりこう活躍にはならなかったのは残念だけど…

 

がはは。勝ったな。

 

……………………………は?

 

えっちょっとバーテックス=サン?なんでさっき爆発したんですか?もしかして300年の間にバーテックスの消え方が出来たんですね。あーなるほどバーテックスが討伐された証に爆発が起きるんですね。そう言うことはハッキリ言っといて欲しかったな〜…そのなんであんなに攻撃されたのに爆発した後浮かび始めてるんですかね。そのさっきの攻撃でご逝去なさられたと思うのですがその点どう思いますかね。あっ…やばっ。なんか水色の弾がこっちにとんd……

(この間わずか0.1秒)

 

「別の意味で酷い目にあった…」

 

飛来した水弾はちょうど立っていた自分の真下。つまり足場にしていた木の幹に直撃。そして木はボキリと嫌な音を絶てながら折れ、その上の俺は某ピタゴラよろしく地面にまで落ちたのだ。

 

「うわぁ…擦り傷出来てるし……」

 

お分かりいただけただろうか。前回、resultで上里 聖 水弾による擦り傷、切り傷があった。その詳細がこれである。水弾だとは言ったが、その二次被害による怪我だとかドジとも言えるだろう。

 

 

 

「おいおい…修復してるやんけ……」

 

300年前。こんな大きさのバーテックスの再生能力は微々たる物だった。

一部分を切り離しただけでは再生されてしまうが、ここまで穴だらけにされて未だに動けるバーテックスは存在しなかった。300年の間にバーテックスは持久力・耐久力に力を割いたと見ていいだろう。ただ、まだ確定は出来ないが。

 

「………おっ……へぇ………」

 

怒号と共に、バーテックスに風穴が空く。言うほどバーテックスにダメージにはならないが怯ませ後退させるには十分だ。

 

⦅あーもう!高嶋さん行くわよ!⦆

 

⦅ちょっ!?ぐんちゃん突っ込むの?!⦆

 

懐かしい事を思い出させてくれる。千景と友奈の連撃が一番合っていた。

もしあのまま成長したならばきっといいバディになっていたであろう。俺が死んでしまってきっと、仲良くやってくれているはずだ。

まあその結果に勇者は誰も欠けずに未来に道を残したのだから。

 

『…………aaa………Aaaaaaaaaaaaaaaaaa‼︎‼︎』

 

「………ほう?」

 

形態変化。差し詰め第二ラウンドと言ったところだろうか。

前世では全く見たことのない状態だ。とても楽しみ。(っ ॑꒳ ॑c)ワクワク

まあやってることはサボりだが、ここで乱入するのも考えものだ。だからこそ俺はここで一息ついて変身を待っている。大聖だから許されるのだ。(暴論)

再生…というより最早脱皮レベルだな。完全に治ってる。切り落とした筈の水袋も元の大きさに再生してると見ると、元の状態に戻る一種の回帰だろうか。

そして咆哮の後に、色の変化。ありきたり故に分かりやすい進化だ。だからこそ何をしてくるか想像のつかない所あるが。

 

………うん。。傍観でいようと思っていたけどこれ五月蝿いわ。

夏の蝉の鳴き声レベルで五月蝿い。それより音が大きいけど。

迷惑。判決。………潰す

 

「うっせぇなぁぁぁぁぁ!!!」

 

綺麗に不意打ちが決まった。(キラッ)

やっぱり卑怯戦術は綺麗に決まると気持ちがいいよね!ただ決まった後どう動くかが肝にはなるけど。

 

「状況はっ!?」

 

「見ての通り〜…殆ど最悪だよ?」

 

最悪…か。まあ言われれば最悪に近いし、遠い。

銀は先ほどの音で気絶…?していて他は満身創痍だ。

では。では。ではでは俺の出番という事ですね?

まああのバーテックス一体ぐらいなら無茶を通せば討伐できる。だけどそれをするということは俺が張った地雷を自分の手で解体することになる。それは惜しい。ならば。取る作戦は一つ。

 

「っ!ヤバいな。時間もあまり無い。」

 

最終奥義!どうにか味方を鼓舞して戦ってもらう!

まあ、まだまだ須美に園子はやる気に満ち溢れてるし、銀は……うん。

あ。でも起き上がってきた。すごい執念やな。ここまでとは。

 

じゃあ後は討伐するだけ。イクゾー

 

 

 

 

 

 

初戦で多くの被害を出しながら勇者である少年少女は勝利し、バーテックスと戦う結界から出されることになる。

 

「ふー…」

 

「ここは……何処?」「祠…ぽいな。」

 

「お〜ファンタジー…」

 

結界を出た直後。勇者たちは森の中の様な祠で目を覚ました。

聖は一つ終わったことへの安堵かため息をつき、須美と銀がここが何処か首を動かし目印になる様な物を探す。園子はまあ昔見たようなファンタジーな所に戻されて面白そうにしている。

 

「大橋が見える…結構学校から遠いな。」

 

「ほんとだ…どうすれば良いんだろう……」

 

「きっと大赦が向かえにきてくれるよ〜」

 

祠から少し離れてみると、そこはまさかの大橋が見える。

前世では戦いやすい場所では有ったんだがな〜と少し違う記憶を想起していた。

 

「それより…お疲れ様!全員での勝利だ!」

 

「うん!やったよ!」「お疲れ様。みんな」「勝ったな!」

 

三者三様に初戦を無事乗り越えた事を喜ぶ。

いつも通りに聖は園子に抱きつかれ、それを見て笑う。

今ここでは平穏が少なくとも象られていた。

 

その後お行儀が良いとは言えないが全員地面に座り込んで、大赦のお迎えを待つ。

そうしているとすぐに大赦の迎えが来て、次は先に病院に送られる事になった。

銀の手の傷と、聖の切り傷以外にも多くの打ち身が見つかり3人全員にこっ酷く泣かれる事になったのは余談だ。

さらに蛇足を突き刺すと、そう泣かれながら怒られている聖はどこか曖昧に笑みを浮かべていた。

 

(そりゃお前、自分の不注意で木から転落したのをバーテックスの攻撃受けたからと思われたらなんとも言えないだろう……)

 

銀の怪我が手ということもあり、そして本日は勇者の初陣という事もあって学校ではなくそのまま解放された。学校には公休にしてくれるらしい。

 

「………イネス?」

 

「そそ。イネス。今日の祝賀会しないか?」

 

事実上の休みになったと聞いた時、銀から思いもよらぬ提案を受けることとなる。

それはイネスという複合商業施設で祝賀会をしようと言うことだ。

 

「そういえば初めてだね〜ひーくん」

 

「たしかに行ったこと、ないな。」

 

だが忘れていないだろうか。ここには究極の箱入り息子と娘がいる事に。

そう。上里と乃木の御令嬢と御子息だ。実は彼らの箱入り具合は歴代でも相当な物だ。互いが互いに外に特に興味を持っていなかったせいかそういうイネスだとかそもそも遊びに出た回数は片手で数えられるほどだった。

 

「………嘘でしょう……?」

 

「いや。まあ……行ってみるか?」

 

養子として入ってきた須美はカルチャーショックを受けた様な顔をしているが、銀はそういう事もまあ耳には入る。大聖の生まれ変わりに俗世の穢れに触れてほしいとはあまり思わないし、そして乃木家の御令嬢は上里の御子息に夢中だ。事実双方が双方にとって楔になって外に興味を持たなくなってしまった。とはまあ適度に話を聞いていれば銀…つまりは三ノ輪家の御令嬢にとって聞く話で有る。

 

「「いいね。行こう。(いいね〜いこ〜?)」」

 

二人にとって初めてのことだ。事実、今までイネスどころか外に行く必要も意義も見出せなかった。欲しいものがあれば頼めば何でも有るし、話し相手どころか何もかも不足にはならなかった。二人だけの世界で完結した部屋は外に一切の関心を持たなかった。それは普段の様な態度でもあり、そして今回の勇者でもそのつもりだった。

…でも。今回幕を開けたらどうだ。銀に庇われ、そして最後の作戦。息を合わせる連撃。極限状態だったとはいえ、全員が…一人でも欠けていたらどうなっていたか分からない本当に全員で掴んだ勝利だ。

そしてその事実が、少しほんの少し彼らの部屋の扉を開けた。

 

その未来がどうなるか。それは未だに誰も知らない。

 

 

そう。神樹さえも。

 

 

 

 






上里 聖

心の声が大きいのに定評のある愉悦部員。
今回は本当に振り返りの愉悦部員目線が殆ど。
それ故に滑稽に見えるので笑ってやってください。
片手剣の解説は下に置いておいた。


大聖の片手剣

大聖時代から愛用の片手剣。対バーテックス戦闘時だと切れ味が倍増するとかなんとか。300年の月日を得て今大聖の転生体の元に渡った。
大聖の転生体…もとい愉悦部員は多少変わった姿に何だと騒いだが、300年の間大聖以外がまともにこの剣を扱えなかった(というか巫女、初代勇者以外が持ち上げることさえ不可能)。それはつまりこの剣の大聖以外に使われたくないという凄い忠義者。
剣身に刻まれた花のレリーフは五種類。桔梗、桜、彼岸花、姫百合、紫羅欄花の五種類。
それを束縛と見るか、愛と見るかそれは見る人によって違うだろう。
そして何故それを剣が受け入れたか。その全ては巫女だけが知っている。

次回は…イネスイベント、そして襲来バーテックス。

感想、評価お待ちしてます。



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