ようこそ。曇らせ小説に。
この曇らせはサービスだからまず落ち着いて、麻婆でも食べていてほしい。
うん。「続き」だ。済まない。
ここから先、少女達の絶望と憤怒と諦めの嘆きが"独白"の様に続くだけだ。
でもこういうの好きだろう?
私だって大好物だ。
君だって胸が踊るような興奮を今持ってると思う。
さぁ。愉悦の始まりだ。
残されたもの達の嘆きの声でワインを飲み交わそうじゃないか。
世界は二回滅んだ。
少なくとも私、乃木若葉はそう思うのだ。
一度目の滅びはとても呆気なかった。
空の彼方。宇宙からかどこからともなく現れた白色の怪物のせいで人々は見る影もなく消えていった。
その日もそうだった。
あの時幼馴染のひなたに連れられなければ、きっと私は勇者としても……いや。生きてすら居ないだろう。
乃木若葉という人間はあの日、あの時に死んでいてもおかしくはなかった。
幼馴染のひなたには、不思議な才能があった。
その才能のお陰で、私はあの白色の化物であるバーテックスを打倒できる武器を手に入れることが出来たのだから。
その武器を手にしてからは速かった。
ひなたの神託を頼りに、四国に逃げて。もうそこには勇者である私たちの先輩である"大聖"様が四国を守っていた。
………あの日々は地獄だったと思う。
倒壊した建物。むき出しのままの仏様。
まだ、バーテックスとか言う化物が現れて久しい時だった。
勿論、今のような大社という組織は無かったさ。
そこに有ったのは、大聖様が率いていたボランティア団体。
大聖様に助けられ、その戦う姿を見て。
彼の助けになりたい。
彼を支援したい。
そんな人間が多く集まった。
末法だというのにそこに居た全ての人は笑って、そして大聖様をリーダーに据えることを疑問にすら思っていなかった。
大聖様が一人、人を助ければそこには十人の人が大聖様の代わりにと協力した。
少ない物資、何もかもが足りていない時でも彼らは大聖様を信じていた。
そんな事を続けていると、瞬く間に大きな組織が出来上がってしまった。
機能しない役所の、国の代わりにと彼らは子供や老人。何もかも失ってしまった人にもと支援を尽くした。
誰も彼もが、大聖様に助けられたのだから。大聖様を裏切ることなんて出来ないと。
……それが大社の始まりだった。
大聖様はすべてを守った。
その背に居るものは誰も死なせなかったのだ。
だからこそ人は大聖様を信じ、そして敬愛した。
そして何時の日か、そのボランティア団体は"大社"と呼ばれるようになった。
今となっては誰が言い出したのか。
永遠の謎になってしまったが。
"大社"となったボランティア団体は速かった。
大聖様を支援するために生き残りの巫女をかき集め、情報面や守りの部分を補強した。
そんな事をしていると、私たちは合流したのだ。
………全員が揃ったのは以外にも2日もかからなかったかな。
勿論、その時は勇者という存在は半信半疑だったさ。
大聖様は誰よりも前に立ち、誰よりも復興を行い、そして見知らぬ人のために泣いて、バーテックスに憤怒した。
大聖様はずっと人と寄り添っていた。
暇が出来れば、心病まれた人々に寄り添い、笑顔を失った子供達と一緒に遊んだ。
………まぁ。少なくともだ。
神とやらに選ばれ、訳もわからない内にあの大聖様と同じ力を持ったよく分からない小娘と、何時如何なる時でも人々に寄り添っていた大聖様。
どちらを民衆は信じるのだろうか。
それはすぐにでも現れた。
そもそも、大社は勇者という存在を最初は見なかったことにすると決定していた様だ。
問題を起こせば敵として大聖様は許さないだろうし、獅子身中の虫を嫌ったのだろうな。
大聖様と同じ力を持ち、そして大聖様の様に民衆に認められるほどの実績を積んでこなかった。それはつまり見殺しした可能性が高いのだ。……それはあのバーテックス側の存在では無いだろうか。
その意見の方が強かった。圧倒的にな。
事実、一部の過激派は私たちを火に炙ることさえ考えたのだから。
余程、勇者という存在が受け入れられなかったのか。よく分かるだろう?
その意見が変わったのは、大聖様の鶴の一声だった。
………うん?大聖様より大社のお偉いさんの方が上だったんじゃないのか?って。
元々が、大聖様を支援するための大社だった。
文面上は、大社の上層部が偉くても大聖様が一つ言えばその言葉の方が偉くなるのはもはや当たり前だったしな。
………そもそも。大社の上層部も元は、大聖様に最初から付いていった人々がほとんどだ。
そんな人々が大聖様以上にえらい存在が居ると思うか?
神さえ見放したとも思えるあの世界で。
………ああ。うん。大聖様はこう言ったんだ。
『戦力を私一人に任せるのは愚の骨頂。戦える人間が居るならばいずれ増えてくるだろう敵の数にも消耗が少なくなる』
間違いじゃないだろうさ。
事実、皆思ってたことだったらしいし。
まあだけど心はどうしても認められなかったんだろうね。
………少なくとも、私たちが民衆に受け入れられたのはそう早くはなかった。
………受け入れられたとしても、私たちはそう良い目を向けられなかった。
誰よりも先陣を切り、そしてその背にすべてを抱えていた大聖様比べ、同じ力を持つはずであるお前たちは一体何だと。
その時はまだ。私たちも勇者として強化された自分を制御するのに精一杯だった。
勇者として純粋に後釜として信じてくれた大聖様は、私たちに結界の要である丸亀城を任された。
それは私たちの大きな転機だった。
ここまで大聖は私たち勇者を下に見ているのだろうと思っていた大社はここで見方を変えたのだ。
勇者は大聖の後釜足り得る存在だと。
そこからは早かったな。
私たちに必要な制御技術が教えられ、バーテックスと戦うために大聖様と大社が溜めてきた情報の閲覧を全面的に許され…………
そしてあの日がやって来たんだ。
『聞け。大社よ。』
『聞け。勇者よ。』
ある晴れた日だった。
何時ものように自分の出来ることをやって、大聖様に有難うございます。と感謝して何気なく過ぎ去っていく日々だった。
空気中に広まっていく大聖様声を聞くまでは。
いや。その時もまだ皆信じてなかったのだろう。
子供の遊びに大聖様混じっているのかなと。
まだその時。勇者も、大社も思っていた。
次の言葉が聞こえてくるまでは。
『この星は、この人類史は間違えていた。』
『大いなる神の怒りをかい、だがしぶとく生き残る人間についぞ決定を施した。』
何かがおかしい。
間違えていた。大いなる神の怒りを買い。
絶対に大聖の言わないような、今までのすべてを否定するような言葉の紡ぎ。
四月一日には速いぞ。や。大聖様もふざけたくなるときも有るよね。とまだ楽観している人も多かったのは事実だ。
『これは。慈悲である。』
『滅びよ。一切の欠片も無く』
その瞬間。四国を守っていたはずの結界が崩壊した。
飴細工の様に光の壁は砕け落ち、多くの人間が忘れていたはずの恐怖が空から、地面からやって来た。
その時気がついたのだ。
大聖が私たちを見捨てた。と。
『天の神の使いに代わり。』
『全てを無に。』
悲鳴が上がる。
今まで復興していた全てが砂の城の様に崩れ去っていく。
怒号が。悲鳴が。泣き声が。
どこからともなく上がっていく。
火の手が上がり、そうだ。
これが今の世界。私たちの世界なのだと。
『告げてやろう。今の貴様等に相応しい言葉を。』
『滅べ。脆きもの。汝等の名は』
大聖と呼ばれた。この世界の希望は。
『弱者なり』
この瞬間。絶望に変わったのだ。
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そこから先は、血を血で洗うような争いだった。
まず、巻き込まれた民衆をどうにか前張っていた結界より弱く、範囲も狭い結界で安全を作り隔離することができた。
後はただひたすらに堕ちた大聖とバーテックスとの戦いだ。
もう、口に出すことさえ憚れる惨状だった。
………今の私が居るように、確かにあの戦いでは私たちが勝った。
本当に、一瞬でも気を抜いてしまえばこちらの首が切られるかのような瀬戸際でなんとか。なんとか勝った、勝ってしまった勝利だった。
あの日ほど虚しい勝利は無かったさ。本当に。
だが。それ以上の地獄が待ち受けていたのはその時、誰も知らなかった。
地獄はそこからだった。
純粋に私たちの勝利を喜んでくれる人も少なくはなかったさ。
希望を失って、その希望が残したのが"勇者"だから。
今度こそ希望に失望されないように、勇者という存在に……悪い言い方すれば媚始めたんだろう。
だが。問題はここからだった。
いつも以上に大社が騒がしかったんだ。
どういうことかと聞くとな。
服毒が起きたのだと。
それも即効性で強い物が。
それを集団で呷ったのだと。
…………そしてそれを呷ったのは、"ひなたを除く多くの大社の上層部と巫女達"だったのだ。
そう。大聖の信奉者達だ。
いや。信奉者より狂信者とも言えるだろう。自身達の指導者がお隠れになったのだから、自分達も後を追わなければならない。そう本気で信じていたのだ。
…………漫画とかであるだろう?
死んだように見せかけ、逃げる生臭坊主やら神父を。
それとは違う。皆同じ時間に、同じ毒を呷って亡くなっているのだ。
私は初めて知ったのだろう。
大聖という存在の強さを。
裏切った後も、亡くなったあともだ。
そこからは激動の日々だった。
繰り上がりの様に上層部は変えられ、今回の一件は秘匿される筈だった。でも人の口伝は止まらなかった。
信奉者が大聖の後を追った。
それだけだ。それだけが民衆に伝わる………そうだな。把握している限りでは三桁は出たんじゃないだろうか。同じように後を追ったのは。
そもそも。裏切られているのに、人類の裏切り者だと言うのに未だに"大いな聖なる者"の大聖が使われているのだからどうしようもないな。
そこからも問題だった。
大聖が居なくなったのだ。そして大聖をいっそう敬愛している人々も同じように後を追ったのだ。
秩序を失い、そして絶対な指導者を失った集団の後なんてたかが知れている。
簡単に暴徒と化した。
正義を失い、そして悪に堕ちた。
私はせめて。せめて今残った物を守るために、全力を尽くした。
………そうだな。研究家の"郡千景"と、武術の先生の"高嶋友奈"って居るだろう?
昔、実はあの二人親友以上とも呼べるほどベッタリでな。
だけどある日二人の道は別れてしまった。
互いは互いを憎み合い、酷いときには顔を見合わせただけで殺し合いが始まるほどだった。
毎日毎日ぶつかり合って仲裁に入った頃には修復不可能にまでなって、今がある。
………事実私もたった一人の幼馴染を自分の手で切り裂いた。
君も知っているだろう?
上里ひなたの名前を。
………そうだ。勇者に纏わる不祥事が一つ。"英霊事件"の主犯者。
そうして。一人。二人。三人と失い、勇者というのは継がれた。
未だに、勇者というのはあまり良い目で見られない。年寄りになればなるほど。
それは………未だに私たちが大聖を騙したからじゃないかなんて言われている。
勇者として先輩の大聖だけが称えられる現状に耐えきれなくなって、裏切りと言う形で操り諜殺したのじゃないか………
今となってはブラックジョークで済むが、当時まだマトモだった民衆の中からそういう話も少なからずあったさ。いや。どうだろうかもしかしたら私たち勇者もどこか心の何処かでそう言う考えが湧かないと言えば嘘になるだろうか。
"こんなろくでなしの酒に溺れたジジイでも大聖様は誇らかに笑って大丈夫かと聞いてきた。もう足腰悪くなって痴呆の進んだ婆さんの手を握って大丈夫です。私が守ります。安心してください。って声を一人一人掛けてくれたのも大聖様だ!それに比べて勇者とやらはどうだ?!前に立つのでもなく大社に籠っている奴等が本当に信用できるのか?!"
それを聞いたときは心が折れるかと思ったな。
今までの功績は全て大聖にも及ばないと民衆が言っているようで。
そしてそれに賛同するものも少なくなかったのも結構当時は堪えた。
赤嶺…だったか。
「はっ!はい!」
すまないな。もう分かっているんじゃないか。
「…………はい。"友奈"これは単純な名前や因習だけじゃない事は。」
そうだ。もはや真実を知るのは私だけ。……そして貴女だけなるだろうな。
「………つまり。」
錨。……まだそれだけしか言えないだろうな。
深い、深い愛憎が有っただけだ。
そして……それを解くことが出来なかった初代の私たちの罪科だ。
「………………………それは。」
きっとこれから勇者は神聖化されていくだろう。
きっと誰も彼もが私たちを称える。
そんな世界がもうすぐに始まっている。
「はい。初代様。」
友奈という因果を継いでしまった者である君に託そう。
勇者は……勇者は最後の最後まで届かなかったのだと。
勇者は……勇者は大聖になることは許されなかったのだと。
そして、大赦は許されてはならない、どうしようも無い咎人なのだと。
だからこそ、自らの贖罪であるために私達は「赦し」を乞うのだと。
でも。夢に見るのだ。
本当は……声を交わせば分かち合えたんじゃないかって。
ただ後悔をするならば。
ただ懺悔をするならば。
一度だけでも大聖様に謝らせて欲しい。それだけだ。
大聖(こんな感じで裏切った感出せばみんな曇るやろ…)
乃木若葉
曇らせコンセプトは「無力」。
結局今作では、大聖という圧倒的なカリスマの前では歯が立たなかったということ。
そして。大聖亡き後も、大赦を導けたとは口が裂けても言えない無力感と共に最後の時を待つ老婦。
勇者としての力は早々に手放しており年相応の風格と美貌を兼ね揃える大赦のVIPだが、大社としては彼女は。彼女達は許されないだろう。
桔梗の勇者は何かを致命的に間違えたままその役割を終えた。
感想おなしゃす。
次回「桜の章」
一二を争うレベルで桜の勇者曇ってんねんな…どうするべ。