この末期の世界に曇らせ好きの愉悦部が乱入した話。   作:ネマ

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遅れました


されど、地には人が満ちて

 

 

「ね、結婚しましょう?」

 

こいつはくせえッー!

ゲロ以下のにおいがプンプンするぜッーーッ!!

 

え、鏡の前で言ってるのかって?くくく…ひどい言われようだなまあ事実だからしょうがないけど

現状はまあ語る必要もないから省くが、愉悦したから大人しく三度目の舞台から身を引こうとしたらこの様だったよ。どうやらまだ自分は死んでいないらしい、この300年もの間に医療技術だけが進歩したというのか……まあ、それはそれとして

 

()()()()()()()

 

今の一言を分かりやすくまとめるならこれしかない

己の愉悦の果てに狂い死ぬのならそれは俺の責任だ。面白おかしく踊りに踊り狂ってその在り方が誰かに残っているのならそれは俺への最大限の賛辞と一緒だ。魂が枯れるほどの茶番を敷き、血を流すまで謳う……愉悦の中で誰かの笑みが曇る。それもまた愉悦だろう?

 

だから………今のこいつは0点だ。おまえ、愉悦おもしろくないよ

 

「神婚って、やつか?」

 

「そうだよ。あなたと私が結ばれる、それで全てがはじまるの!」

 

神婚。聞いたことはある、というか大聖やってた時に天の神から出された条件にこれがあった

文字通り神と婚姻を結ぶこと、それを神婚。だが人間がやるような紙と契約で行うような結婚ではない。神との結婚は己が神の眷属になるという人を神に迎える儀式…人が人であることを捨てる、儀式

 

「……本当に、俺が神婚を行えば、しーちゃんはこれからも人間を守ってくれるのか?」

 

「心配するのはそれなんだね。君らしいと言えば君らしいや…まあ、良いよ。守ってあげる」

 

300年の間にその言葉の意味が変わったとは到底思えない。それにあの曇らせの神様が言ったような300年前と同じ知り合いさえもまだ見つけていない。…まあ、大体予想はつくけどそれでもまだ回収し終わってない要素が結構残ったままエンドロール一歩手前まで来た感じだ

 

つまり、俺はまだこの世界の真実を知らない。茶番で踊るにはまだ生憎と役割が足りない

始まるショーの舞台に上がるにはまだ早い。舞台の裏に身を引くしかない

 

「そうだね、なら俺の答えは…………」

 

なら今やるべきことは、この局面をいなして凌ぐこと。

けど、それってとっても『愚か』な思考だと思わない?

 

「だが、断る」

 

「…………ぇ?」

 

あまりお行儀のいいことではないが、この大聖が好きなことのひとつ

自分が『賢い』と交渉で見せる奴にNOと断ることだっ!

 

…………なんで?

 

「おー怖い怖い。かわいい顔が台無しだぜ」

 

 

……断られるとは思っていなかったのだろう。

友奈の顔が、大聖も見たことがないほどくしゃくしゃに歪む。限界まで見開いたその赤い瞳にドロドロの情念を溶かしながら揺れて、笑みを浮かべていたはずの頬は歪に吊り上がって今の聖の言葉を受け入れられないと一瞬、思考に空白が生まれたのだろう

 

その直後、聖の吐いた神樹の求婚を拒絶する言葉。その現実に否定を叩きつけるように神樹の姿から莫大な神気と共に底冷えするような威圧感に襲われる。神の怒り、決して人間が耐えられないそれを聖は大聖の時で慣れたといなす

 

「どうして?なにが不満なの?」

 

一歩一歩緩やかにそれでも近づく姿に大聖は笑みを崩さない。今、神樹の中にあるのは深い怒りと濃い悲しみ、そして情愛だった。訳も分からぬまま振られたその怒り、通じ合っていたはずなのにという悲しみ、そして簡単に自分のモノにはならないという本来なら神樹には芽生えないはずだった女としてのプライドを込めた情愛

 

神の身でありながら人間の少女と同じように、あるいはそれ以上に恋に狂い情動を手に入れた少女は神としてさらに純化していく。神としての博愛が消え荒御霊としての側面が急速に成長していく…守る力が、奪う力へと。その腕が聖の頬を抱きしめる

 

「答えなさい。…………答えろ」

 

まだ幼い温もり、だがそれに反するかのような決して目をそらせないようにと掴む腕の強さと、目の前で光さえ宿さぬ真っ黒の瞳を見開く神樹の姿に聖の笑みが消える。これは危ない、まさかここで一発カットんで無敵の人ならぬ無敵の神になりかねないと必死に頭を動かす

 

嘘はつけない。神を前に嘘をつくことはそれだけで彼女に主導権を握らせることになる

とは言え真実を伝えることも出ない。面白くないから、で通用する神ならここまで執着されないだろうと聖は笑みを浮かべる

 

「結婚できる年齢じゃないから」

 

「……………………えー」

 

持ち出すは当たり前の話。そもそも聖はまだ11歳、結婚とは程遠い年齢であるのだ

幾ら人と神の婚姻といえど流石に精も出せぬ童を娶るのはちょっと…という聖の視線に神樹は戸惑う

 

「ま、あ…確かにそうかな……?そうかも」

 

言われてみれば…と困惑する聲に爆笑する聲まで聞こえ神樹は困惑ながらも納得しかける

神の尺度を人間の尺度に合わせるのなら神樹は聖よりも少し幼い年齢になるがそれは置いといて

 

これどうするんだよ、という空気が流れる

ぶっちゃけるのならそう返されることに想像もしていなかったと神樹は混乱した

其れなら、と先ほどのハイライトを消した目の中をぐるぐる回しながら神樹は次の案を提示する

 

「じゃ、じゃあ!……い、許婚ならどうかな?」

 

「あの…園子いること知ってるよね、しーちゃんさま」

 

婚姻の約束はすでに上里家は乃木家と結んでいる。というかおそらく向こうからしたら、お役目後の勇者か或いは巫女か…なら問題はないのだろう。何故なら前世はそんなことをしている暇もなかったから子孫はいない

 

「に、人間じゃなくて神だから、神だからセーフ!」

 

「せやろか…………?」

 

神話的にはセーフだとしても倫理的にはいろいろと問題がある気がする。

そう首をひねっていると、神樹は小さくつぶやいた

 

「…………まあ、今もしも縦にうなずかれたとしてもヒルコ伝説を真似るだけになるんだけどね」

 

「蛭子、ああ…………」

 

日本神話において。最初の国産みは失敗する

()()()()()()()()()()()()()()不完全に終わってしまう。だからこそ神樹は無理やりの手段をとることができないのだ、あくまで男側が…聖が明確な意思をもって神樹を娶らないことには不完全な神婚で終わってしまう。

 

天の神はそれでも構わないが、地の神や神樹にとっては致命的だ

この神婚が次の命となる国産みだからこそ許容したのに断絶の意になっては全てが無意味になる

 

「だから、俺の意思で首を縦に振らせたかったのか」

 

「バレちゃった……まあ、いいよ」

 

本当に隠すつもりがあったのだろうかと訝しむ聖に神樹がまたあの薄い笑みを浮かべてこうつぶやく

 

「だって、あなたは優しいから………きっと、自分から花を咲かせてしまう」

 

血と肉をもって許しを請うのは大赦の十八番だが、それをきっと大聖はいの一番に捧げてしまう

花が咲き誇りそして枯れ落ちるその一瞬の刹那の美しさ、その輝きがまた大聖を際立たせるのだろう

 

「花を、咲かせる…だと?」

 

「………どうやらもうここまでみたい」

 

次第に聖の意識が遠くなる感覚。これは目が覚める合図なのだと気が付いているが抗う手段はない

気になったのは花という言葉、そして咲かせてしまうという意味を聞き返す前に神樹は聖を送り返す

 

「また会いましょう。次は…良い返事を、聞かせてね?」

 

微かに手を振る少女の姿が聖の中から消えて、そして目を覚ます

花、その言葉だけが聖の中を何度も何度も頭に残って

 

 

 

 

 

 

正直に言うのなら、この戦いは既に勇者たちが勝っている

西暦勇者の切り札それも普段使いが禁じられた精霊の中の上位その三体を降ろし、そのうちの二体はバーテックスの攻撃の要であった触手を奪い、残りは爆弾を打ち出す木偶の坊と相対するのは

 

「銀!」「ミノさん!」

 

赤炎を背負った勇者がそこには立っていた。

太陽の如き炎を背負って、今空を爆炎へと還す。銀の一撃を受けて誘爆したバーテックスの爆弾が空で花火となって舞い上がる。そしてこれを避ける手も足も捥がれているバーテックスはただなされるがままにその爆発に飲まれていく

 

「待たせたな!須美、園子!」

 

銀の背後に浮かぶ半透明の巨大な手、しかも甲冑の様なモノを纏いその手には銀の斧を持っている

それだけではない。額についた二本の角。園子の様な陽炎の装束や一本の小さい尾しか出せぬ須美よりもより深く、色濃く精霊と同調して降ろし切っている今の銀は勇者よりもずっと恐ろしい

 

「……そ、の姿は?」

 

「多分、似た力かな~?」

 

これは勇者、もとい大赦も知らぬことだが精霊の降ろすには本人の素質以上に本人の精神面に左右される。

かつて玉藻の前を降ろした西暦勇者である郡千景はただ大聖の力となるために制御しきれない力を完全に制御したように、大聖亡き後失ったすべてに絶望しながらその反動を踏み消した高嶋友奈のように、大聖との決戦のためすべてを捧げる覚悟でその力を振るった乃木若葉のように

 

その力は何か大きな転機と共に、その者への大きな力となる

かつて大聖が抱いた絆の極致。人と人が繋がる結束こそが大きな力であり大聖を超えると信じていた力そのものであった。……そして今回もまた、三ノ輪銀による聖の隣を奪われるという恐怖心が絶望が、覚悟が力となった

 

「へへ、いいだろ。これなら……っ!!」

 

炎を纏った一閃。それが斬撃となり空をかけバーテックスを切り裂く

空を飛ぶ斬撃、しかもそれに炎が焼き付き相手を切りながら焼き尽くす

 

「へへっ!!どんな、もんだいっ!!」

 

斧の振り動作というワンテンポ必要とは言え切り札使用中かつ斬撃の届く範囲という条件があってなお、今の三ノ輪銀はおそらく勇者の中で唯一無二となる威力を誇る勇者となった。上から下に、まるでずれる様に真っ二つになっていくバーテックスを横目に銀は誇る

 

聖の隣に立つのは自分だと、アタシだけが聖の隣に立てるのだと

 

勝ち誇ったようにピースをする銀の後ろで白色の化け物は蠢く。確かに真っ二つに切られたが、そもそもこの姿自体幾千もの星屑が連なってできたもの。確かに大きく削がれたとしても生命体としての死はまだまだ程遠い。肉片と共に飛ばした爆弾が銀へと降り注ぐ

 

「あ゛?」

 

だがそんな苦し紛れの攻撃にもならない足掻きに低い声が漏れ出る

タダでさえ聖を傷つけたバーテックスという存在にキレているのだ。そんな塵芥にもならぬ足掻きに銀の瞳が見開かれる。瞳孔さえも開いているんじゃないかという銀の視線にあるのは滅殺

 

確実に息の根を止めてやる。地獄よりも地の底がお好みならさっさと先にそう言えと言わんばかりの憎悪の蒼炎が彼女の意思に呼応するように斧に付いた巴紋から絶えず吹き出し続ける。

 

 

「消し飛べよ。カスども」

 

 

────────凄惨な、戦場だった

鳴りやまぬ轟音に走る青い閃光。無数に空を覆うその閃光のひとつひとつが斬撃であり青い炎を内包したただバーテックスを塵殺するためのものだとはその場に立つ少女たちだけしか知らない

幼い体躯の赤い鬼がその両手に持つ斧を何度も何度も振り下ろせば、それに追撃するように背後に浮かぶ腕も同じように斧を振り下ろす。

 

無限にも続くかと思うような斬撃の嵐。既にバーテックスの姿はない…というよりバーテックスの核である御霊でさえも既に銀は切り刻み終わっている。ちょっと固いかなと思うぐらいで何度も振り下ろせば同じだと300年前の大聖のみが成し遂げたバーテックスの滅殺を銀は成したのだ

 

「…………ぎ、ん」

 

鬼が躍る、鬼が踊る。敵さえも居なくなったその場所で

そんなどこか恐ろし気な銀の姿に、見ていた少女の瞳は揺れていた

 

 

 





今の切り札降ろし状態の銀は某呪い合いの漫画に出てくる宿儺の解に竈の威力が常時デフォになった当たれば回復阻害の貫通斬撃攻撃が銀の腕が止まるまで無限に出てくるとかいうイカレ仕様です

ちなみにこれでも西暦勇者の全盛期切り札状態には劣るという








!!

まあ神樹さまもこれにはにっこり
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