この末期の世界に曇らせ好きの愉悦部が乱入した話。   作:ネマ

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ちょっとハッスルしすぎて友奈ちゃんを曇らせすぎた気がする…
でも可愛いからヨシ!


桜の章

 

 

 

うーん?どうかした?

うん。確かに私は初代勇者の一人として数えられてるよ?

 

………見た目が変わってない?

そうだね。勇者としての力を使いすぎた弊害と言われてるよ。

………そんなに怯えないで大丈夫!

ここまで使いすぎる前にお役目は終わってしまうよ。

 

大聖……?懐かしい名前を言うね。

勇者だからかな。その名前は大赦の中でも本当に一部の人しか知らないはずなのに………ああ。若葉ちゃんか。納得。

馬鹿だよねぇ。若葉ちゃんも。

何をどう頑張ったとしても…大聖様には敵わないのに。

………うん?私から見た大聖様…?

良いよ。久々に気分も良いし、語ってあげるね。

 

そうだね。私が初めて大聖様という存在を知ったのは、大きな光の奔流だった。

その時私はまだ勇者として未熟で、とある私を勇者へと導いてくれた巫女と四国に向かっている最中だったね。

 

………巫女はもう大赦からは名前が消されてるよ。あの子は私が大聖様の元で戦うと決めたあの日から決別したし………まああの人はうん。……何でもないよ。

そうだね。光の奔流。私が勇者として未熟だった頃。バーテックスに囲まれて危うく、全滅の危機だったあの時。私は見たの。

無造作に振り落とされる暴虐。

その場にバーテックスという存在が居たからというだけで落とされた広範囲、そして連続してばら蒔かれれた光の一撃が。

 

凄いものだったよ。物凄い遠いところから雨のように降り注ぐその光は。昼間だったからあまり伝わらないけど、きっと夜見たら流星群が降ってきてる物だから。

そして巫女がねこういったの。

 

"これはたった一人の人間が行った大規模殲滅だ。"

 

なんて。初めて聞いたときは半信半疑だったけど、それがきっと嘘じゃないと分かったときなんて驚いた以上にとても頼もしいって感情と憧れを持ったのを覚えてるね。

 

その後も色々有ったけど、私の心には多くの憧れが有った。

度々見ていたっていうのも有るんだけどね。

光が降ってきてる時はバーテックスからの攻撃を気にせず進めたから有りがたかったし。

 

そして、四国に着いた。

 

………そうだね。勇者という存在は最初あまり良いように思われなかった。

……らしいけどね。

私は少なくともそうじゃなかった。

何故なら、すでに守っていた功績が有ったから。

少なからずとはいえ、そして大聖の砲撃が有ったとはいえ、数ヶ月。守っていたという功績は何よりも重要に取られた。

実は大聖様からも一本取ったこともあるんだよ?

本当に、最初の最初だけだけどね。

ステゴロ。素手なら大聖様あまり得意にしてなかったから。

……まあ次にはもう一本取られちゃったけどね。

 

きっと大聖様は世界にも神様にも愛されていた。

……でもね。その愛は時に酷い重圧になってしまう。

 

……例え話をしようか。

人はさ。蟻を"目を凝らせば"認識するし、きっと一般的な感性を持っていたら避けるでしょう。

でも。それがプランクトン。……もっと小さいのだったら気にも掛けないでしょう?見えないから。

それと一緒だったんだよ。大聖様は。

 

誰よりも平等で。慈愛に満ち溢れていて……

そして誰よりも"個"を認識しなかった。

酷いよね。誰よりも愛を振り撒きながら誰よりも無関心だった。

ああ。本当に酷い人。

わたしたちがどれ程羨望して恋い焦がれたさえも知らないまま。

なにも告げないまま、背負い込んで最後は"呪われた"終わりなんて………

 

…………え?…………あ。

まあここはオフレコでね。

可笑しいと思わなかった?

あり得ないと思わなかった?

何故ここまで身を砕いてまで救ってきた物を裏切り、全てを投げ捨てしまったのか。

その理由はね。

"天の神の呪い"が彼の体から検出された。

弱くとも、強くともそれは神の呪い。どれ程強化された肉体であろうとも激痛が走っていた。歩ける状態では更々無かった。もっと言うと息をするだけで想像を絶する痛みが発生していたはずだよ。

そうしてあの人は天の神と契約した。ことが後々分かった。

天の神からの要望は2つ。結界の破壊、そして神樹の破壊。

そして彼は一つ。要望を叶える代わりに、直接的な侵攻を止めるということ。

でもこれは完璧な形で無し得なかった。神樹を破壊する前に彼を討ち取ったから。

 

……………分かった?

彼は"自分の呪いを解けとは一言も言ってないの"。

最も強い。それこそ神ですら英雄と言えるほどの人間が、烏合の集でもある地の神にしたがう。

遥か昔から英雄という存在を好んできた神々は激怒した。

精神も高潔で、尚且つ武勇も優れる人間が愚かにも神の領域に触れようとせん咎人を庇うのはどういう事だと。

でも彼は、守った。守り続けた。

そして神の方が先に折れた。

ならばその身を我らに捧げるのであるのならば赦そう。と。

だから目障りな地の神の結界と大本である神樹の破壊を持ち掛けた。

 

 

…………どうしてそこまで分かるのか?

 

 

…………アハ………

 

アハハハハッハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハハ

 

 

簡単だよ。

 

 

魂亡き肉体を。残った残留思念も。そして犯してはならない魂に至るまで、私たち勇者が凌辱しつくしたからだよ。

 

肉片一切れになるまでぐちゃぐちゃに切り分け、彼の武器に残った残留思念を分解し、魂に至っては言葉では表しきれないほど凄まじい程に犯し尽くした。

最後にはもう。彼の魂は輪廻の輪にすら乗れないほど磨耗して、汚れきってしまった。

だからこそ。神の怒りを買って奉火祭なんてしなくちゃならなくなったんだけどね。

 

…………まあ良いや。

勇者が仲違いしたのもそこだよ。

私と若葉ちゃんが大聖様の肉体を裂き聖遺物にし、残留思念を勇者の強化のために使い、そして魂は彼の真実を知るために使い潰すことを決めた"賛成派"

千景ちゃんと球子ちゃん。そして杏ちゃんは、もうゆっくりと寝かせてあげたい。彼がどういった者であれ、お隠れになった今。ただその亡骸を静かに葬りさって静かにしてあげるべきだ。という"否定派"

………勇者が真の意味で崩壊するのを防ぐためにも上里ひなたは中立を保ったけど。

 

まあ。勇者の数が否定派が多いとはいえ大聖の信奉者の多くは既に亡くなっている現状、世論は簡単に"賛成派"に傾いた。

そして。わたしは大聖にとっての後釜だと思われていたのが大きかったんだろうね。

否定派の声も千景ちゃんたちの声も置き去りにして、すぐにでも大聖様の肉体は切り分けられてしまった。

 

言った通りに大聖様の全てを見通していたといわれた瞳は、四国を延いては攻めてくるバーテックスの監視の聖遺物に。

そして四肢は全て別けられ、四国を護る要石代わりとして、残った身体は神樹に捧げられて、また四国は延命を続ける。

大聖様が使っていた武具もまた新しい武器として加工され、勇者に受け継がれた。

残っていた残留思念の様な九十九神でさえ、私たちは勝手に隷属させ今でも要石を護る狛犬代わりとして利用させ続けている。

魂は大聖様の記憶から情報までその全てを搾り取り、勝手にコピーまでした。

 

私たちがやってることなんて墓を荒らして、その亡骸を笑いながら玩具にしているような物。

それは分かってた。知っていた。

この真実を知っている誰も彼もが吐いて、吐き戻して、吐き続けてそれでも行った。

 

"彼がその身を呈してまで守った今の人類を生き残らせるために"

 

そうだ。どれほどイカれていると狂っていると言われても。どうしてと唾を吐かれようと、もう止めてあげてと脚を掴んで許しを乞われようとも、残虐だと残酷だと大親友が二度と顔を見合わせないほど嫌悪したとしても。例え私が汚名を被って泥を石を投げられたとしても。

 

私は絶対に、私たちが護らなくてはならない。

 

だからこそ。何処までも残酷にも冷徹にもなろう。

百を生かすためだというならば一を何の惜しげもなく切り捨てよう。

だからこそ殺すのだ。

勇者という存在を煽て上げあたかも神聖なものだと魅せ付けて神樹のため、世界のためだといって殺すのだ。

巫女だってそうだ。最初に大聖の偉大さを教え込み、勇者の素晴らしさを教える。最後は喜んで死んでいくように教え込むのだ。

許しは願わない。救済なんてもっての他。

私は決めたのだ。妖精のように残酷に無邪気に命を使い潰したとしても、笑うのだ。赤子のように何の屈託のない笑みで微笑むのだ。

"また少し四国は貴方が守ったものは寿命が伸びました"と。

 

だからだろうね。私にもう勇者と呼べるほどの力は喪われた。

残ったのは罪の証と取れるような不老の身体と、異常なほどの再生能力だけ。

勇者としての天之逆手はとっくの前に朽ち果てた。

 

初代勇者は確かに強い。

それは傲りでも、虚勢でも無いよ。

心技体。何処でも必ず上げられる強さの根本。私たちにはそれが揃っていた。揃っていた筈だった。

だが、その真実を見てみればどうだ。絵に書いた虎の如く、脆く脆弱極まりない物だった。

屋台骨が腐っているのを見ない振りをしていたのがこの始末。

心は折れて、勇気の意味さえ失って……

 

そして私たちは致命的に間違えるのだ。

…………聞いているでしょ?

英霊事件。勇者が関わったなかでは最低最悪な事件。

嘗て初代勇者の巫女を行い、そしてその後巫女の統括役だった"上里ひなた"が起こしたクーデター。

"反神樹派"……まあただの自殺志願者共の集まり。それの全てを裏から手を引いていたのがあれだったってだけ。

それだけならまだここまでの大事にはならなかった。

"上里ひなた"が聖遺物を盗まなければ。

盗まれた聖遺物は、四肢の内の2つ。そして剣の柄。

そのどれもこれもがこれからの四国を護るための物だと言うのに。

………勿論。それほど重要なものであるならば守りも厳重で有った。

そう。上里ひなたが聖遺物の守護者である巫女達を皆殺したのだ。

強固に張られた結界も。その結界の維持の為の巫女も。そしてもしものための大赦の一員も。その全てを無慈悲に虐殺した。

それが上里ひなたの最初の大罪。

私たち勇者が見逃してしまった大罪。

 

…………そうだね。謝りたいと思うし、もし過去に戻れるなら全部やり直したい。

まだなにも知らない勇者で。

ただ無邪気に笑って………

……………雨が降ってきたね。

 

私が語ることは少ない。

全部。………英霊事件の全て。

そして大聖の栄光からその失墜。

すべては"郡千景"が知っているよ。

もし。知りたいのなら。

 

訪ねてみると良いよ。

でもね。忘れちゃダメだよ。

甘い秘密を探るものには恐ろしいほどの死が必要になる。

…………多くの屍が積み上がったこの謎こそ最も甘いんだから。

 

 






大聖(そう言えば肉体捨てて精神、もとい精霊として見守り続けられたよな……せや!)

曇らせの神(考えてた以上に曇らせてくれるやんけ……せや!もう少し援助したるで〜)

大赦「許されよ。許されよ。我らが罪を許されよ」

この温度差

高嶋友奈

曇らせコンセプトは「盲目」
もはや語ることなど無い。
勇気の意味も、正義の意味も見失い。
そして最後には呪われた勇者の成れの果て。

桜の勇者は、屍の正義を執行するのだ。

次章「彼岸花の章」

 
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