この末期の世界に曇らせ好きの愉悦部が乱入した話。   作:ネマ

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前回からおよそ一月経ってるってマジ?
球子の口調が難しかったので許して……


ちなみに今回結構物語の核心に入ります。



姫百合の章

 

 

………どちら様?

ここは一般の方が入って良い場所ではありませんよ。

大聖……?勇者。そうですか。どうぞ。こちらへ。

 

待っていたぞ。

そうか千景からタマに、もしかしたらと聞いていたが……そうか勇者か。じゃあタマの子供みたいな物だな。

 

…………ゴホン。

ようこそ。"霊廟"へ。

ここは過去の英雄を祀る最果ての墓場。

勿論勇者や、多くの功績を立てた巫女が眠る場所です。

今代の勇者様に置かれましては、何用で霊廟にお越しになられましたか?

"大聖"、"聖遺物"そして"奉火祭"なるほど一通り聞いてきたのですね。

………ならば

こっちの口調でいかせてもらうぞ。

タマだって一応は祀る巫女としての立場があるからな。

……だが全てを知っているなら話は別だ。これは、受け継がれてはならない話だからな。"公式"って体は不味いんだ。

混ざるかも知れないがそれはご愛敬。という奴だ。

 

まずはここがどういうところか一つ一つ説明していくな。

ここの"霊廟"はそのままの意味以外にも幾つか意味がある。

ある程度察していると思うけど、結界の維持にも一役噛んでいるぞ…まあ大本が神樹が担っていて、それの補助ぐらい。

更にはバーテックスの侵入についても防いでいて、尚且つ四国の食料事情からライフラインまで支えているらしいからな。よく知らないが。

……え?知らなくて良いのかって?

別に問題はないぞ。タマ達に任された仕事はこの場所の守護。そもそも神樹に認められた者しか来れない、入れないこの場所だから基本暇しているだけだしな。……まあその例外が一度起きてしまったから何だが………

 

そうだ!聞きたいことはこれだけじゃないんだろう?………ああ。成る程。私から見た大聖か………。

そうだな。取り繕うことなく言うんだったら"大人になりすぎた子供"だったな。同年代。それも似たような力で多くの人を救っていると聞いた。………どれ程の人間なんだろうか。そう考えていたのに。

 

蓋を開けたら、どうだ。

心を落としたかのような無機質な人形じみた"何か"に成り果てた"ただの人間"だった。タマからすると大聖が人類を裏切ったことについては"ああ。やっぱり"だったからな。何処にでも要るような人間に見えて、その姿は聖者…色眼鏡を外して見れば究極の自己破滅愛者。

 

…………大聖の日々の生活を見ていたら簡単に分かった。

勇者の服には多くの機能が付いていることは学んだな?戦闘に邪魔にならないように、断熱・断寒……多くの機能が付けられている。その中でもたった一つだけ、機能が弱められた物がある。

それが"疲労軽減"。文字通り体と頭が疲労を感じにくくする効果。………なんだが幾つかこれには大きすぎる問題があった。

疲労というのは一種の身体の異常のサインだと分かってるだろ?眠ければ、それ以上無理しないように意識が切れる様に倒れる。お腹が空けば、エネルギーを取るために腹に命令を下す。

そういうサインが全く身体に届かないんだ。その悪影響は色々と発生してしまった。

眠くても、お腹が空いても分からないんだ。これがどれほど危険かは分かってくれると思う。そうだ次第に可笑しくなっていくんだ。

そしてあろうことかその機能を大聖は最大まで上げて使っていた。多くの外敵、バーテックスは時間を考えない。言ったら四六時中気を張っておかなくてはならない。

そういう要因も彼が次第に後ろを振り向かなくなって、最後はそういう終わりをさせてしまった。

 

 

 

…………そうだな。

愚痴とそうであってほしい理想が大きいことは分かっている。

何の理屈にも成っていないことは分かってる。事実タマは大聖が切り分けられた時も、大聖の魂を呼び出す儀式の時も居なかったからな。

 

大聖の魂を呼び出してどうする。

大聖の肉体を分けてどうする。

 

どれほど泣き叫んだとしても、居なくなった人が戻ってくるなんて皆無に等しい。それがどれほどの英雄だとしても帰ってこれないのだ。

 

確かに荒れ具合は凄かった。

特に、友奈と千景は狂乱怒濤も欠くやと言わんばかりに暴れまわった。

騙されていたんだよ。

千景も友奈も。上手いこと口車に乗せられて仲違いで分断化。若葉も、色々と"英雄殺しの英雄"としての職務に従事させ仕事に忙殺した。タマも杏も心が折れて勇者で居られなかったからな。

 

そうだな~……ああ。実はな大聖が亡くなった後聖遺物に分けられた際、一部の人間を除いて"勇者"の力は剥奪させられて居たはずなんだ。暴走して四国が傷つけられないためにな。

だというのに千景は、友奈は精霊の力を引き出した。あれは"勇者の力が無ければ制御できる代物ではないのに"。

 

精霊の力で強化された狂気と狂乱は凄まじい有様だった。一度暴れだしたら止まらず血の池が出来るのは日常茶飯事。同時に違うところから爆音が聞こえれば次にはぶつかり合って全身血塗れどろで骨まで見えかけていても知らぬと言わんばかりに大暴れ。

なまじ精霊の力で再生能力も桁外れだから、気がついたときにはもう治って暴れ続ける……。

部屋だって荒れまくり。酷ければ部屋のありとあらゆる所に陥没穴と斬撃痕だけが残ってて、備え付けのベットやら棚は木材になってるし布はまるで綿のようにボロボロだ……まあそんなんが続いたさ。

けどそれで終わりじゃなかった。

………"英霊事件"の主犯者である"上里ひなた"については何処まで聞いているんだ…?

"クーデター"と"盗んだ聖遺物"。そして"反神樹派"か。

じゃあタマはここから補足説明していけばいいんだな。

 

まずは"反神樹派"からだな。

これは読んでわかる通り神樹に反対する奴ら。……まあ言うと世界滅んでるんだから、皆で死んだら怖くないよねっ!っていうイカれた思想が上里ひなたの手によって活発化させられ、次第に洗脳され、"英雄が死んだこの世界を認めない"という過激派カルトになった物だな。……事実人間には誰しも心のなかで破滅願望一つや二つ持っていていもおかしくはない生き物だからな。

そこら辺の塩梅は奴は実に上手かった。

勇者の巫女として、そして大赦の事実上のリーダーとして、そして神樹の巫女として。上手く奴らを操り自分に、ひいては大聖に信仰を向けるようにするのはあの上里ひなたなら不可能ではない。

そうして多くの大義名分を用意したカルトは、多くの人間と情報を動かし大社を貶めた。

 

貶められる要因なんていくらでも用意できたからな。昔から秘密主義・大聖主義だった大社の後を継いだ大赦なんて、少し探れば疵の一つや二つは埃を払うかのように出てくる。

糾弾点の一つになったのが大聖の死後の扱いだった。何処からか情報が漏れていた様でな。酷く、そして凄まじく糾弾されることになった。今となっては大赦という組織に理解を持っている民衆が殆どだが、当時はまだ"大赦"というのはあまり受け入れられなかったからな。そういうのを抜きにしても人の死体をバラバラに切り刻むなんて正気の沙汰じゃないが。

 

そうして彼らは味方を作り、大赦を攪乱した。民衆を使い不安を煽りその間に奴らは、聞いている通りに巫女達を虐殺し四肢の二つと剣の柄を盗み出した。

当初はクーデターの裏を引いている"反神樹派"の仕業かと大赦の誰もが思い、それ以外の存在を考えていなかった。

ここまで緻密な計画は、人智を越えた存在の協力が無ければ成功しない。ならば神の声を聞く巫女が"反神樹派"にいてもおかしくないはずだ。そう考えた。

まあ結論から述べると確かに巫女は居たが、早い頃から既に死んでいる。上里ひなたに殺されている。つまり反神樹派は、ほぼ上里ひなたの独裁になっていたんだ。

 

かといってその栄華は続かない。次第に、大赦は奇妙な事に気がついていくのだ。

誰かが言い出した。「誰が」最初に大聖様を聖遺物にする計画を立てたのだ?勇者か?いや違う。可能性のある高嶋友奈も乃木若葉も大聖を敬い、良い顔をしなかった筈だ。「何故」高嶋友奈は大聖の遺体を強奪しようとしたのか。それも大赦には巧妙に隠された上で人員が動かされていた。そんな技能、高嶋友奈には無い筈なのに。そうして高嶋友奈は同じことをただ言い続ける。そうするのか最も大聖様にとっても私たちにとっても最善だから。とそれはまるで狂信者の様な。

その時大赦は、巫女は、勇者は気がつく。

知らないうちに張り巡らされて絡め取られた蜘蛛の糸に。気がついた時には遅かった。全ては遅過ぎたんだ。

ありとあらゆる大赦への行動。その全てが上里家ひいては上里ひなたに繋がるのがそう遅くはなかった。そしてとても悍ましい計画“英霊事件”の全貌が明かされる様になった。

 

ここまで聞いて、少し疑問に思うことはあるだろうか。

上里ひなたは何故そこまで忌み嫌われているのか。とかな。

今まで聴いた中でやったことは大きく二つ。

“大聖の聖遺物を盗んだこと”そして“聖遺物を守る者たちを虐殺”したこと。

ここまではいいか?……ならここからだ。本当の悪行とは上里ひなたがおこした大赦が知る中で最も口に出すのも憚れる行動。それはな…………

 

 

 

 

人間で蠱毒をしたんだ。

 

 

 

 

蠱毒。一度は聞いたことのあるだろう?呪術の一つ。虫でもなんでも集めて、壺か何か密封出来るものを使って共食いさせ、残った一匹を呪術の核にする悪名高い呪術の一つ。この呪術の怖いところは人間でも出来るというのが一つ。集められた呪詛は他の呪いさえも圧倒しかねない程だ。ちりも積もればなんとやら。というやつだろうな。

そしてこの呪術を上里ひなたは行ったが、恐ろしい事に全て善意で行ったのだ。

いや。違うな。善意でもあるが穢れなき無垢でもあるまい。上里ひなたの目的は徹底追尾“大聖が蘇る事だけ“だったからな

大聖の聖遺物をさらに細かく反神樹派に与え、(勿論、一般人にとっては猛毒に等しいが)奪い合い、殺し合いにするために思考を誘導し残った数名を交わらし大聖の力を馴染ませた子を作らせ、更にそこから大聖の力を与え将来的に大聖とほぼ同等の存在を作らせ「一般的な英雄の像の大聖」を憑依させ大聖を呼び覚まし、蘇らせる。

ここでなんで蠱毒なのか?と思うだろう?

その通りだ。だが後天的に「猛毒」に等しい大聖の力を与え、四国という「壺の中」で「殺し合わせる」。正に蠱毒だ。これを当時14・15の少女が考え付いて行ったと言うのだから当時全貌を知りうる者からすれば恐ろしい事この上ない。

その後は、皆知る話だ。乃木若葉が大赦を連れて上里家に殴り込みに入り、計画の全てがバレた。分が悪いと知ったのか上里ひなたは逃走し、最後は若葉の手によって直々に処刑された。悪にしては呆気のないラスト。もうこの時には友奈も千景も廃人の様に諦めた眼差しで日々を無為に過ごした。………ここだけの話だ。きっと何か上里ひなたと友奈、そして千景の間にあったんだと思う。そうじゃないとあれは直ぐに壊されてもおかしくない筈だからな。

 

でもな。タマはきっと憧れたんだ。上里……ひなたがやったことは到底許される話じゃ無い。それでもそれでも愛に殉して死んでいった。きっとそれってとっても理想的な最後じゃ無いか。なんて柄にも無く思っていたりするんだ。

タマだって女だ。このどうしようもない感情が何かってことぐらい分かってる。

昔の自分に戻れるなら、もっと話したかった。もっと触れたかった。もっと頼って欲しかった。………今更になって後悔だけが身に染みる。これが大人になってしまった。そういう事なんだろうな。

 

なーんてしみったれた話はおしまいだ。

良いか?深く考えるな。愛に狂った人間が碌でもないことした。そういう認識で居ないとこの先が辛いぞ。

きっと千景だって言った筈だ。“勇者であって勇者じゃない”と。

それを忘れるな。その警句を忘れるな。

赤子の赤子、ずっと先の赤子まで我らと四国の全ての民は永遠に血に呪われ続ける

そういう運命なのだから。

 

 

 







大聖(みんな曇って♡⦅あの世から旗を振って応援中⦆)

土井球子

曇らせポイントは「大人」
正しく大人になってしまった勇者。
勇者という全能感の牙はへし折られ、何も救えない無力だけを背負った。
人を過度に信じれなくなり、愛せなくなり、全てに期待できなくなったかつての少女。
全ての業をその目で正気で見続けた彼女は果たして正気なのだろうか。
真実に一番近く、そして遠かった少女でもある。
在りし日の夢だけを夢想しながら姫百合の勇者は墓標にて眠りにつく。


感想よろしくお願いします!


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