この末期の世界に曇らせ好きの愉悦部が乱入した話。   作:ネマ

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遅くなっちゃった…書きたいこと簡潔に纏めるのって難しいですね。


紫羅欄花の章

 

 

………はい。どういたしましたか?今代の勇者様?

お待ちしておりました。今までの長き旅路お疲れ様でした。

ここは四国の最果て。神樹が護る閉ざされたセカイ。

決して至れぬ現実の夢。罪なき者のみ通ることを許される。そう神樹はお決めになられました。

どれほど無垢であろうとももうこの四国に居る民は全てここに至ること知覚することは出来ません。ですが、あなたは違います。愛された子。運命に呪われた子。

………いえ。今言っても仕方のないことです。

奥へどうぞ。

 

驚きましたか?棺桶が空中に鎖で固定されているなんて。

ですがこうするのが最も正しいのです。開かれることもこれ以上凌辱されることもない。そもそもこの場自体が中の亡骸の安息の為に神樹が作った空間なのですが…たまには神樹も良いことをします。

ええ。そうです。中に収められている亡骸は”大聖“に違いありません。首から先と四肢も無い、存在証明が極めて難しい。そんな状態には違いありませんが。

たしかにその棺桶に入っているのは大聖の聖遺物に加工されなかった余りが封印されています。何故か懐かしい気がしませんか?……いえ。忘れてください。

ここでは向こうにあったタマっち先p…いえ。土居球子の守護する結界とは多少異なり、バーテックスが攻めてきた時の監視・隔離のための中継地点だと考えていてください。

 

あなたは全てを知った。大聖の裏切り、大社の失墜、初代勇者の絶望、上里ひなたの狂気。そして、生まれてしまった原罪。あなたたちが勇者であって勇者ではないという真実。その詳細私があなたに伝えるべき真実でしょう。覚悟はおありですか?

 

…………ならば最初から行きましょうか。

遡ること、上里ひなたの計画からでした。誰よりも大聖に心酔し、恋焦がれ狂気と言えるほどに夢中になっていたと証言があります。事実、彼女には勇者の幼馴染で巫女というだけのアドバンテージで大聖の右腕と呼ばれるまでその巫女としての実力を上げていました。大聖を崇めないというのは一つのポーズだったのでしょう。崇めないとして、大聖から“間違いが起きた時外部から止めてくれるストッパー”として重宝されるだろうと見込んだのでしょう。事実その考えは正しく、重要な際には上里ひなたに意見を求めたことが多々あったようです。

まあその実、たとえ大聖が人を殺めようがどうにか丸め込み、なかったことにするでしょうし、何かの間違いがあってお手付きになったとしても表面上はいい顔をしないでしょうが心の中では狂喜乱舞…いえ。もっと襲って欲しいと場を作っていくでしょう。勇者はもとより、他の巫女でさえきっと上里ひなたならそう言うように場を作ることぐらいするでしょう。“ブレーキに見せたアクセル”とか悪質極まりないことですが、それが大聖の右腕として大聖と同じように崇められた上里ひなたでした。

 

勿論そんな彼女なんですから大聖が裏切った時、そして大聖が討伐された時の荒れようは凄まじい程でした。仕事にはならず、大聖の右腕だけでなく勇者の巫女としての二重の責任に苛まれながらも、大聖に任された仕事だけを愚直にこなしていました。

上里ひなたには大聖は捕らえる気で居たのでしょう。

大聖といえど、殺してしまうのは惜しいと民衆も納得するでしょう。結界の破壊でバーテックスは侵入しましたがその時出た被害は直接バーテックスによる攻撃で亡くなった人は居らず、その多くがパニックになった民衆が原因で亡くなっているのもその考えの一つだったからです。………まあそれ以上に、快楽漬けにしてしまって、必要な思考以外を奪って仕舞えばいいと上里ひなたは考えていたからですね。上里としてのツテを使って、そういう薬も用意していた様ですし。……何故そこまで知っているかですか?ええ。まあ賛同していましたからこの計画に。

とりあえず、上里ひなたにとってこれは非常にチャンスだったんです。

上手いことやれば愛する人も、愛する人との子も手に入ります。どうにか上とも調整をし計画は後は捕らえる所まで進みました。

ですが、大聖はそこで死ぬことを選んでしまったのです。

大聖としての回復能力も素の力も全て失い(神樹由来のため。裏切りと同時に失われたと考えている)、呪いに犯されている中で彼はたった一人で勇者相手に戦った。

だというのに彼は勇者五人と互角、いえ圧倒するほどだった。もし、全力を出せていたのなら私たちに勝ち目どころか数秒でも耐えられるかを考える方がまだ希望を持てるほどでしょう。

そう考えると、上里ひなたも私たち勇者が勝てるとは考えていなかったのでしょうか?誰よりも大聖を勇者を見ていた彼女なのですから実力差というものを分かっていてもおかしくは無いはずですが…。

それを見越して、上里ひなたはすべての計画を立てていた筈です。ですが勇者が上里ひなたの想像している以上に強く、大聖が上里ひなたの想像以上に弱っていたのでしょう。死に目にも会えず、そして看取ることも出来なかった上里ひなたの絶望は想像に難しくなかった筈です。

 

ですが、上里ひなたはそこで終わるような存在ではなかった。

狂気と絶望に狂わされていたとしてもその思考は止まることを許さなかった。

……人間は誰しも大切な人、飼っていた犬・猫、寿命だけでなく不慮の事件で失った時こう考えてしまうでしょう。

 

もう一度だけ、会いたい

 

と。ですが喪ったものは二度と戻らない、命とはそう言うものなのです。

誰しもが抱ける”もう一度だけ、会いたい“という祈りは上里ひなたを狂気に走らせた。

蘇って欲しい。もう一度だけ話をしたい。そういう叶えられないはずの願いは神秘的なものに触れて“不可能な事象”から“限りなく不可能に近いが可能である”と知ってしまったのです。ですがそれはあまりに悍ましい代物だった。

 

「見立て」という行為をご存知でしょうか。

見立て遊びという物があるように、ある物からそこに今はない物を想像する簡単な遊び。でもそれは神秘の点から見ると多くの事象に関わってしまう。有名な物で太陽の代わりに金星は、太陽の代わりに見立てられる。

そういう様に〜であるから〜であると言うことはこじつけにしては強固な力を生み出す。…………なら「大聖の力に最も適応した人物」は「大聖である」というこじつけもまかり通るのでは無いか。そう上里ひなたは考え付いてしまった。

あとは賛同者が必要だった。これに関しては言うことはないでしょう。

大聖を崇める人々の中で勇者を憎悪する人員を味方につけ、反神樹派に大体的に情報・物資を横流した。反神樹派には“何か”を使って焚き付けたのでしょう。

その何かまでは分かりませんが、それは正しく多くの人間を狂気に走らせた。

後は知っての通りでしょう。大聖の四肢を奪いその四肢でとある粉末を作り上げた。一度摂取すれば大聖の威光に縋れるとして。

勿論、原材料はただ一つ。大聖の四肢の一部でしょう。

聖遺物として加工されるほど強い力が残っているのなら、それを何百何千と薄めた代物であっても一般人には猛毒に等しかった。依存性も有ったのではないだろうかとも言われています。

そして考えても居ないことが発生してしまった。

いえ。故意なのか偶然なのか分かりませんが、その粉末が四国全ての民に摂取されてしまったのです。明らかに原材料と粉末の量が釣り合いませんが…ただ神樹様のご意志が有ったこと。そう言われています。

 

その後、反神樹派は大きく発言権を得ることとなっていきます。

勇者に劣ると言えど適応したものには一般人を遥かに超える力を与えられ、人間は新しい可能性に飢えていた。大聖と言う光を失った人間は誰しもが新しい大聖に成るものをがむしゃらに探した。そこで少しずつ、反神樹派…いえ。反勇者・大赦派が出来てしまった原因です。勿論、この波に振り落とされないよう大赦も同じようなものを用意しました。

多くの倫理に反した行動の多くは、上里ひなたが手を引いていたというのは間違いありません。まだ大きく無かった反神樹派をまとめ上げ大聖に狂信させ、一つの大きな派閥となった。

勿論、上里ひなたにとって反神樹派は大聖を蘇らせるためだけに利用するのに適しただけに目をつけただけです。

多くの死者を出したその大聖復活の実験は一応成功したのです。

いえ。成功とは程遠い成功ですが確かに大聖の肉体に近い依代はできた。

千分の一にも満たないほどの依代ですが、後は魂を呼び出すだけとなった。

ですがここでも大きな問題が発生してしまった。魂の規格が全く合わなかったのです。

フラスコ一つを染める程度の色水が海を染め上げられないのと一緒です。

ただの人間の器が、大聖と呼ばれる現人神に近い存在の前ではなす術なく消しとばされてしまう。

ならば、新しい肉体の器を用意すれば良いのではないか。

そう上里ひなたは考え、適応者の肉体情報から赤子を作った。勿論真っ当な方法とは程遠く、人間というよりホムンクルスに近い存在でした。

無色の魂に大聖の情報を詰め込んだ肉体。その二つが揃えば理論上大聖は蘇る。

 

ですが見通しは甘かった。

 

失敗したのです。理由は分からない。

理論上失敗はあり得なかった。大聖は蘇るはずだった。

儀式形態を変えても、方陣を弄っても壊れた人形の山が出来上がるだけだった。

何千何万と残骸が積み上がった頃にようやく気が付いてしまった。

 

"生命に反した行動は許されない"と。

 

命とは終わるもの。終えた命は輪廻を回ります。一方通行に反するということは大聖を貶めるということ。それを神樹は認めない。そう言うことなのでしょう。

故に、私たちは計画を変えました。

今、この時甦らぬというならば数十年、数百年の未来に蘇ってもらうと。

人類の希望、人類の英雄。我らの愛しい愛しい大聖様。例えどれ程の時間がかかっても甦るように多くの策を尽くしてきた。その世界に私たちが居ないのは織り込み済みです。それでも大聖様は生きてほしかった。

その最中。上里ひなたは表にバレてしまった。只でさえ倫理に反した事しかしていないというのに、ここで全て無に還ってしまうのはあまりに惜しい。そうやって、上里ひなたが処刑された後も、密かに上里の願いと共感する多くの人々の手によって計画は進んでしまった。

上里に匿われた多くの母体、並びに大聖への適応率が高い人間は大赦としても見逃せるわけがなかった。あくまで被害者に近いのだから。

でもそのまま放置しておくわけにはいかなかった。どう狂信が植え付けられているか。知る人間はすでに死んでいるから。

産まれてきた新しい生命は、上里ひなたの目論見通り大聖の力を少量ばかり多く持って生まれた。その生命は巫女としても巫覡としても高い才能を示し、中には才能だけをみるならば初代勇者となんの遜色もないレベルの適応率を持った子まで現れた。

計画だけ見るならば、上里ひなたは成功したと言えるでしょう。

大聖の力を繋ぎ、四国の礎になる者も多く現れた。

大聖の力が繋がれるというならば、その力は継承されればされるほど強くなっていく。

強くなれば、強くなるほど、大聖の器として強固になっていく。

強固になった器はいずれ、大聖そのものを甦らせる。私たちの計画は完全な形で成功を告げるでしょう。

 

勇者は勇者ではない。当たり前です。

大聖の母胎に等しい力を秘めているものを斬定上"勇者"と読んでいるだけ。

緣が繋がるように、戦いに赴かせ更に母胎として強くさせる。

謂わば、"どれ程大聖に近しい存在"か。

だけを選んで、勇者に下手あげている。

男は勇者になれない。当たり前です。

大聖が男であり陽の存在だから。

大人は勇者になれない。当たり前です。

大聖は20を越えることは出来なかった

 

それだけです。それだけの真実。

これが大聖を失った我らの咎。

誰かが忠告した筈です。

多くの血で彩られているこの謎こそ何よりも甘いと。当たり前です。

勇者となった少女。生贄として捧げられた巫女。大赦のために命を尽くした者たち。生み出して、そして身勝手に殺した大聖の器。

流れた血の数は、考えても考えても尽きることは無い。

血に血に呪われ続けると。あたりまえです

この世界の人間はいずれ遠くない未来…10年も経たぬ間に大聖の眷属のような存在に成り果てる。人間と呼べる存在は無くなってしまう。

居るのは、罪を乞う人間となるはずだった者たち。

 

これが全てです。

 

これで全部なんです。

 

ああ。本当に………

 

どこもかしこも愚か者ばかり

 

 






伊予島杏

曇らせポイントは「狂気」
誰よりも聡明で、賢者だった彼女は正気で居られなかった。
親しかった者たちも優しかった大社も、狂っていく中で誰よりも賢かった勇者は正気で居られなかった。狂った中、彼女は確かに未来を紡ごうとしたのだ。例え、自分がどれほどの罰が待っていようとも。

大聖(あれ……?このまま静かに自分寝れるんですよね!?)


⦅今作解説Q&A⦆

Q:ひなたがやった悪いこととは?
A:大聖蘇らそうとして多くの人間を突き落としました。被害者は人間といえない物を合わせると余裕で十万ぐらい行くんじゃないですかね。

Q:その手段は?
A:大聖の肉体情報に近い肉体と、無色の魂作って召喚しようとしました。肉体の選別を誰かが「蠱毒」と呼んだかもしれませんが。

Q:結局のところ「罪」って?
A:大聖をバラバラにした罪。その大聖の亡骸を使って色々としてしまった罪。
悪いのは大赦だけだが、そんなのは神には通用しない。

Q:もし大聖が曇らせもっと見たいとヒヨって死ななかったら?
A:文中にあるように、監禁逆rルートです。薬を常時入れられ思考が纏まらないまま子供を作るだけの一生を終えます。勿論、愛されて()産まれてきた子なので勇者としては素晴らしい成績を残します。なのである世代では勇者全員が腹違いの姉妹なんてことも。

Q:大聖復活ある?
A:…………


次章:最終章「姫巫女の章」

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