マギアレコードR マギウスルート完走RTA   作:すさ

16 / 24
みんなにはナイショにしておいてくれ

「ひゃっ」

 

 いろはを押し退けまどかに寄る影があった

 呼び掛けても頬を軽く叩いても、まどかは覚醒しない。眉間にシワを寄せていた

 

「その、ほむらさん?」

 

「あなた……いろは。環いろはね。よく無事だったわね」

 

 横顔を覗き見るようにしていろははほむらに訊ねる

 さも当然なようにまどかの側に座っていた

 

「その、わたしはまどかちゃんに庇われて……」

 

 そう、と簡潔に答える。ほむらはまどかの方しか見ていない

 雰囲気変わりましたね、といろはは笑顔を固まらせた 

 

「ーーまどかが魔法少女なのは気に入らないけど

 そうはいっていられない」

 

「どういうことですか?」

 

「独り言よ。忘れなさい」

 

 いろはにぴしゃり、と言い返すとほむらは髪止めを外して片手で髪を撫ぜた

 うっ、という声が場を響かせる

 

「ま、マミさん。無事だったんですね!」

 

「いろはちゃん。よかった……まぁ、なんとか」

 

 いろははマミに駆け寄る。マミはゆっくりと頷いた

 ほむらはまどかの胸に耳を当てて安心したように一息着く

 生きてる、と呟いた

 

「暁美さん答えて。あれはあなたの記憶なの?」

 

「あなたにも見えたの?」

 

 マミは少し悩んでから頷く

 いろはは二人を見比べるように見ていた

 

「……。それなら、わかるでしょう?」

 

「いろはちゃんをいじめないで貰える?」

 

 ほむらにマミはきっぱりと答えた

 わたしは大丈夫です、といろはが反応するも二人の間で微妙な空気が流れていた

 

「言い争ってる時間が惜しいわ。まどかをこんな危険なところで寝かせるわけにはいかないのよ。巴マミ?」

 

「……いいわ。勝手になさい」 

 

 マミがそう答えるとほむらはまどかと消えた

 ふぅ、とマミは大きく溜め息を吐いた

 

「……その、ごめんなさい。わたしのせいで」

 

「いいえ。いろはちゃんは関係ないわ。暁美さんには後でちゃんと叱っておくわね」

 

 マミが軽くウインクするといろははあはは、と愛想笑いを浮かべた

 

「あー。酷いものを見たな……」 

 

 片手で頭を掻くさやかに続いて佐倉は起き上がる

 マジかよ、と溢していた

 

「大丈夫?」

 

 心配するマミからさやかも佐倉も目線を外した

 二人とも誰かを探すようであった。まどか、とさやかは呟く

 

「ほむらは?」

 

「四の五の言わず鹿目さんをもっていっちゃったわ」

 

 そっか、と佐倉はマミに答える

 やがて三人の目がいろはに集中した

 

「そ、その! 協力してもらってありがとうございました!」

 

 環いろはは両手を広げて見せて笑顔を浮かべる

 三人は顔を見合わせた

 

「本当に誰もいないの?」

 

「少なくとも気配はねぇ。くそっ、逃げられたか」

 

 さやかは腕を組みながら佐倉に問う

 ううん、と唸るのは巴マミであった

 

「とりあえずこの場から離れましょう。いろはちゃんもそれでいいかしら?」

 

 周囲に目を配った後、はいといろはは答えた

 

 

 

「ありがとう、ありがとう……にけ。わたくしを助けてくれて」

 

「礼には及びません灯花様。それに不測の事態は続いているようです」

 

 にけは灯花に抱き締められるが、気にせず。マギウス本部で設けられているモニターを睨む

 

「一人、起き上がった……? そんな。ウワサが壊れ始めてーーどういうことだこれは」

 

 ねむの表情がみるみる恐怖に染まっていった

 目線は完全にモニターに釘付けになっている

 

「いくらなんでも早すぎない……?」

 

 灯花はにけからふとモニターに目を移す

 ねむは固唾をのんだ

 

「……記憶キュレーターのウワサの容量を軽く凌駕し破壊してしまったのだろう。にわかには信じがたい」

 

 黒髪の少女は真っ先に桃色のドレスを着た少女に駆け寄った

 まどか、と呼び掛け続けるその姿からは余裕は感じられない

 

「起こってしまったことを嘆いても仕方がない、か」

 

 ねむが静かに瞑目するとモニターでは倒れていた全員が起き上がる様子が確認できる

 

「……ねむ」

 

「脅威が増えてしまった。黒羽根にもこれを黙っておくのは得策ではない」

 

 灯花はねむに歩み寄る。ねむの顔は未だに晴れず、頭に片手を乗せて眉間にシワを寄せていた

 

「わたしが一人一人、いや。六人まとめて。この命に変えてでも……!」

 

「ダメだ。にけ」

「ダメだよ。にけ」

 

 二人にいわれくっ、とにけは唸る

 ねむと灯花は二人で大きく息を吐いた

 

「ねぇ、にけ。にけは一人でなんとかしなくちゃいけないと考えてるのかにゃ?」

 

「当然です。灯花様やねむ様の体になにかがあった時、黒羽根や白羽根になにが出来ましょうか?」

 

 灯花は眉を下げてにけを仰ぎ見た

 ねむの視線は考えを巡らせているのか、完全に地面にある

 

「それでもわたくしたちは組織なんだよ?

 マギウスという大きな組織。だから、皆で協力しあわないと」

 

 にけは叱られているのだ、とわかると頭を垂らした

 灯花はいよいよ困ったような顔を浮かべてしまう

 

「にけ。君の言い分はある面では的を射ている。僕たちの組織は弱小だ。神浜の魔法少女と比べて下から数えた方が早い娘たちが肩を寄せ合い生きている

 黒羽根の娘達はことにその傾向がある」

 

「灯花様やねむ様の理想の妨げになる……?」

 

「違うよにけ。黒羽根にだって役割がある。だから、わたくし自らがわざわざ出向いて希望を与えるんだよ?」

 

 にけは渋々と頷いている

 二人が言わんとすることがようやく見えてきていた

 

「敵もつよくなっている。激戦になることは火を見るより明らかだ。今この機会を逃せば経験を重ねる前にやり込められてしまう。事態は一刻を争う」

 

「にけがマギウスの一員であるということをアピールできて一石二鳥だよね」

 

 にけは瞑目し片手でこめかみの辺りを触った

 ねむ、灯花の言葉を噛み砕くように思考を巡らせる

 

「……黒羽根のケアは、みふゆの仕事だったのでは?」

 

「そうだよ。だから、みふゆにも話を通しておくからね」

 

 言葉を待って灯花は答える

 自信はない。しかし、にけはいよいよもって観念した

 

「……有り難うございます。形は変わりますが、期待に添えるよう全力を尽くします」

 

「うん。ありがとうね。にけ」

 

「期待している。頑張りたまえ」

 

 深く礼をするにけに二人は優しく微笑んだ

 

「……そうだ。危うく忘れるところだった」

 

 ねむははたと思い出したように車椅子を部屋の奥へと進ませる

 なんだろう、とにけが見つめていると一着の白い衣服が手元にあった

 

「にけ。君の今までの働きと今後の期待を込めて。これを贈ろう」

 

 これは、とにけは震える手で掴む

 

「君の白羽根衣装だ」

 

「そ、そんな。これをわたしが着る価値なんて……」

 

 目を輝かせているにけを見てくふ、と灯花は吹き出す

 にけは情けない顔を灯花に向けていた

 

「着てみてよ、にけ」

 

 にけは灯花に急かされていそいそと白いローブを着用した

 

「良いねにけ。似合ってる似合ってる」

 

「ああ。紫と白が生む対比が目を引く」

 

 にけは白いローブに身を包む自分を見てから、二人を見た

 

「遅くなったが、マギウスにようこそ。にけ」

 

「これからもよろしくね。にけ」

 

 ねむと灯花が一言添えるとにけは二人の前に蹲る

 

「必ずや成し遂げて見せましょう」

 

 

 

 とある黒羽根は大きく戦いた

 なんでも、戦闘狂で有名なにけというマギウス幹部がみふゆさんと共に訓練に参加するというのだ

 

「なんか張り切っちゃってるよね……」

 

「わたしたちどうなるんだろ……」

 

 黒羽根は魔女を狩りグリーフシードを集めることも仕事の内である

 みふゆさん一人であるなら魔女からも守って貰えるし、わたしたちには危険なんて一切なかったし、身の上の相談したら親身にもなってくれるし。なんというか、最高だったのに。そんな思いはわたしだけではなくみんな持っていたように思う

 

 そんなわたしたちの不安は良い意味で当たってそして外れた

 

「《ハイドランジア・マクロフィラ》!」

 

 ひえー、とみんなは身を護るように頭を抱えた

 白いローブに身を包んだ彼女は宙に浮き縦横無尽に飛び回る。この辺りの魔女は強いと聞く。しかし、彼女にかかれば一撃であった。最初はグリーフシードごと焼けていたほどだった

 

 魔法少女の真実とマギウスのドッペルがいかにすごいかということ、魔法少女による魔法少女狩りが増えてるとかいうある種ピンとこなかった講義よりも、これは圧倒的な分かりやすさがあった

 

「ーー君たちはすごいな。こんな魔女を複数人とはいえ相手にしていたのか」

 

 そして、彼女は以外にも謙虚だった

 魔女のグリーフシードごと焼いてしまった時、彼女は顔面蒼白になってみふゆさんに謝っていたことが印象深い。以外にもコミカルな人だった

 

「確かに。相手に悟らせないためにも魔法の底を知らせないためにも魔法を統一することは必要だろう

 やりにくい相手だと敵に思わせれば、君たちへの危険も少なくなるかもしれない」

 

 それは、わたしたちが固有魔法を封じてまで魔法の統一化しているという話題だった

 彼女は重そうな胸部を下で支えるように腕を組んだ

 

「見たところ君たちは魔女の攻撃を避け攻撃する一連の動作がとても早い

 ねむ様や灯花様にも話を通しておこう。君たちのような連携は他の娘達にも参考になるはずだ」

 

 本当ですか、とわたしではない娘から喜色が溢れる

 ああ、と答える彼女の笑顔には衝撃を覚えるものがあった。いつも不機嫌そうな顔をしているために余計なのかもしれない

 

「ーー魔女の弱点は露出していないこともある。気を付けるんだ」

 

「は、はい!」

 

 かといって彼女は危うい時以外は手を貸してくれない厳しい面も覗かせた

 わたしはここははっきりとみふゆさんとは違う部分だ、と感じる。しかし、それは本当に小さな差違であった。少なくとも、わたしには。そう感じられた

 

「ーー不意を打ったつもりでも、魔女の目は後ろにもついてることがある。連携を意識しろ」

 

「あ、ありがとうございます!」

 

 なんといっても彼女は必要とあればわたしたちの盾となる。その度にそれとなく助言をして。何度となく勇気を分けてくれた

 

「や、やったーーっ!」

 

「倒せました! わたしたち、神浜の魔女を倒せました!」

 

 興奮したようにわたしたちがはしゃぐと、見事だ、と彼女は大きく手を叩いて称えた

 みふゆさんもそっと胸を撫で下ろしたようで。体に所々傷が目立つのにも関わらずよくやった、よく頑張ったと褒める彼女を静かに見守っている

 

「最近ソウルジェムの濁りが早い気がするんです……でも、魔女を狩らなくていけなくて。ウワサを守らなくてはいけなくて。わたし、どうしたらーー」

 

 そんな彼女であるから深刻な悩みをぶつけられたりもしていた

 嫌な顔ひとつすることもなく、かといって真剣そうな眼差しをその娘に向けていた

 

「君たちには我々幹部よりもストレスを強いているところがあると今回思った

 だからこそ、なにかをするにしてもなにかをしなくてならない環境にしてしまうことには疑問を感じている」

 

「えっ。そ、そんな。わたしはただーー」

 

「君の勇気を称えてるんだ。辛いときや悲しいときは助けてと言っても良いんだ。君たちは生きている。魔法少女として生きている。それを救い、手助けすることもわたしの役目だ」

 

 そういって彼女はその娘に歩み寄り二つほどグリーフシードを握らせた

 ぱちくり、として震えていた。泣いているのだ、とわたしは感じた。彼女は誠実だった。どこまでも誠実だった

 

「ありがとうございました!」

 

 これは今に人気者になる、とみんなで彼女に礼をしながら思った

 圧倒的な力。その業火の如き力を持つ者とは思えぬ謙虚さ。みふゆさんが深く包み込むように癒す存在なら、彼女は正面きって抱き止める存在。どちらを、と言われると決めきれないけど

 確実に。そして完璧に。このたった一回の邂逅で。彼女はみんなに認められていた

 

「あ、あのっ!」

 

 次に会うのはもっと先かもしれない、と思って。みふゆさんの隣にたつ彼女を呼び止めた

 ん? と振り返る。話しかけられるのがわかったような振り返り方であった

 

「その、こんなこと聞くのは失礼かと思ったのですが……」

 

「失礼なことはない。熱心で感心していた」

 

 彼女は快くこれを受け、むしろ褒めてくれて。こそばゆい思いを感じる

 

「にけさんはその……こういった訓練には慣れていらっしゃるのでしょうか?」

 

 ほう、とにけさんは目を見開く

 すごい鋭い眼が丸くなった。わたしは小さく感動した

 

「そうだな……ないとは言えない。みんなにはナイショにしておいてくれ」

 

 微笑みを浮かべつつ、人差し指を口に持ってくる彼女にわたしはやはり不思議な魅力がある人だなと思い直した

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。