マギアレコードR マギウスルート完走RTA   作:すさ

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ブルンフェルシア・オーストラリス

 ワルプルギスの夜の使い魔、道化役者が飛来する

 通り抜け様に切り裂き魔法少女達を苦しめていた

 

「さやか……怪我は?」

 

「へーきへーき。これでも打たれ強いんだから!」

 

 さやかはぱっぱと土を払うようにしてひび割れた地面から立ち上がる

 こくり、と佐倉は頷き天を睨んだ

 

「二人は休んでて。何度でもティロフィナーレを食らわせてやるんだから!」

 

 マミは巨大な砲身を天に向けて射ぬくように見つめた

 

「まどか! ワルプルギスの夜の前にけしてでないで!」

 

「でも! マミさんにばかり頼ってられないよ!」

 

 注意をよそにまどかは弓を引き続ける

 ぎり、と歯軋りしつつもほむらは機関銃の引き金を引き続けた

 

ーーアハハハ

 

 ワルプルギスの夜。青と白のツートンカラーのドレスを身にまとった細身の女性のような姿をしている。スカートからはゆっくりと回転する巨大な歯車が顔を覗かせ、そちら側を上にして逆さまに宙に浮いていた

 

 それは攻撃をもろともせず神浜に近付いていく

 “絶望”は神浜のすぐそこまで来ていた

 

 

 

「くっ!」

 

「やちよさん! 大丈夫ですか!?」

 

 使い魔に脚を斬られやちよは躓く

 いろはは駆け寄り、片手の獲物を使い魔に向けて矢を放った

 

「大丈夫よ。かすり傷だわ」

 

 やちよは立ち上がると切り払いながら先を進む

 

「盾があると楽ちんでいいな!」

 

「なんだか申し訳ない気はするけど……」

 

 フェリシア、鶴乃はほぼさなにくっつくようにして移動していた

 

「いえ、そんなことは……」

 

 さなは大盾を器用に上下左右に振って使い魔からの攻撃をやり過ごす

 がん、という音が多くなっていく。いろはとやちよに目を向けながら、心配そうな顔を浮かべた

 

「うあっ!」

 

 あまりの衝撃に誰ともなく声を溢す

 

「やちよさんっ! くっ!」

 

 地震のようだった。揺れる視界をよそにいろはは懸命にやちよを身を呈して守った

 その間も使い魔の攻撃は止むことはなく。切り裂かれ続ける

 

「ふっ! いろは、いろは。大丈夫!?」

 

 やちよは衝撃が収まってすぐに立ち上がる。使い魔を適当に切り払ってから倒れるいろはに声をかけた

 

「やちよさん上!」

 

 さなが駆け出す。やちよが頭上を見ると巨大なビルが落っこって来ていた

 

「《ティロ・フィナーレ》!」

 

 砲撃によって僅かに逸れる。砕けたビルそのものはやちよやいろはの手の届く先に落ちて来た

 

「くっ!」

 

 再度衝撃が襲った。やちよはいろはを守るように抱える

 さなは大盾を構えながらこれに耐えていた

 

ーーアハハハ

 

 ワルプルギスの夜が上空に浮いている

 小さく紫と桃の光がワルプルギスの夜を回るように浮遊していた

 

「ごめんなさい、なんとかわたしたちの所で食い止めたかったのだけど」

 

 マミはリボンを片手にやちよといろはの元に降り立つ

 天を睨み、悔しそうに顔を歪ませていた

 

「マミ! あいつらに合わせてあまり前に出すぎるな!」

 

「杏子! 余所見しないで!」

 

 佐倉とさやかは降り立ってすぐに鶴乃とフェリシアを襲う使い魔を切り伏せる

 おー、と鶴乃とフェリシアは感嘆していた

 

「仕方が、ないです……こんな大変な魔女なんですから」

 

 いろははやちよの手を借りてゆっくりと立ち上がる

 その脚はどこか覚束ない

 

「いろは、大丈夫?」

 

「ええ。なんとか」

 

 こくり、と頷くいろはにふぅとやちよは息を着いた

 

 マミはさやかと杏子を見てから、いろはとやちよを見る

 リボンを銃に変えて、あるいはそのままリボンとして振り回して使い魔を次々に打ち落としていく

 

「これ以上進ませるわけには、いかないわよね……!」

 

 マミが言い終わるとほむらを抱えたまどかが後ろに降り立った

 

「降ろして。まどか」

 

 えっうん。とまどかはほむらを降ろす

 仏頂面ながらもほのかに頬は染まっていた

 

「暁美さん、無理しないで。あなたの気持ちはよくわかるけど油断しちゃダメよ」

 

「それ、あなたに言われたくないわ」

 

 心配そうなマミをよそにほむらは機関銃の引き金を引き続ける

 まどかは神妙な顔をしながら天に向けて弓を引いていた

 

「あっ」

 

 まどかの瞳に天を飛来する人物が映った

 

ーー《ハイドランジア・マクロフィラ》!

 

 紫の光弾は真っ直ぐにワルプルギスの夜に炸裂する

 ワルプルギスの夜は怯みもしなかったが、顔らしきものはそちらに向けていて

 

 

 

「……大変だ。僕たちは大変なものを呼び寄せてしまった」

 

 同刻。デパートの屋上でねむは灯花に悔やむように溢した

 

「で、でも、おかしい! ウワサだってエンブリオイブだって今は停止しているんだよっ! ワルプルギスの夜は何を狙ってここに来てるの!?」

 

「わかっているんだろう。灯花」

 

 くっ、と灯花は目を伏せた

 ワルプルギスの夜の目標は明らかだった

 

「痛恨の極みだ。みすみすアリナの好きにさせてしまったばかりに……にけ」

 

 ぎ、と掴んだフェンスが軋む

 うう、と灯花は唸る

 

「にけがにけが死んじゃうよぉ!」

 

「……灯花」

 

 ふ、とねむはワルプルギスの夜を見た

 巨大な図体が宙に浮き、七色に輝く輪後光を背負うその姿からは神々しささえ覚える

 

「灯花。見てごらん」

 

「……え?」

 

 ねむが指を指す先。そこには白く輝きを放つ魔法少女がいた

 

ーー《ハイドランジア・マクロフィラ》!

 

「あれ……に、にけ?」

 

 ああ、とねむは頷いた

 灯花は声を小さく震わせた

 

「どこへ行くんだ。灯花」

 

 ねむは灯花に待ったをかけた

 灯花は傘を片手に今にも宙に浮きそうであった

 

「だって! わたくしも行かないと!」

 

 ねむは真っ直ぐ灯花を見ると左右に首を振る

 どうして、と灯花は溢した

 

「わかっただろう。僕たちを庇いながらの戦闘になる」

 

 ぶん、と熊型のウワサがワルプルギスの夜の使い魔を爪で引き裂いた

 ねむはそれを横目で見ながら眉を下げる

 

「いつまで持つかはわからないが……」

 

 灯花はワルプルギスの夜と肩を落とすねむを見比べるように見た

 

「わたくし、諦めたくないよ」

 

「灯花ーー」

 

 灯花は傘を振るう。炎の熱で使い魔が焼かれていった

 ふ、とねむは微笑を浮かべた

 

「それは僕も同じだ」

 

 灯花はねむの隣に近寄る

 にけはワルプルギスの夜の攻撃すべてに対応しているように思えた

 

「……にけ」

 

 灯花は迷子のように溢す

 なにかあれば飛び出してしまうような危うさを感じられた

 

「せめて信じよう。灯花」

 

「奇跡を?」

 

 灯花が顔を向けると、ねむは目に焼き付けるようにワルプルギスの夜とにけの戦闘を見ていた

 

「にけを信じよう」

 

 うん、と灯花は小さく漏らしてフェンス越しにワルプルギスの夜とにけを見た

 

 

 

ーーアハハハ

 

 ワルプルギスの夜からの苛烈な攻撃はわたしをじわりじわりと追い詰めていた

 

「《ハイドランジア・マクロフィラ》!」

 

 宙に浮くビルを打ち落とし、飛来する使い魔を頁で切り裂く。それでも黒い血にまみれていた。勿論自分の血である。最悪な気分であった

 

「ーーはぁ。これは参った」

 

 はは、とわたしは微笑を浮かべて本を持った手を大きく振りかぶらせた

 人間極限まで追い詰められると笑えてくるらしい。わたしは一つ賢くなった

 

ーー《ティロフィナーレ》!

 

 タイミングを読んだように砲撃や桃色の矢が炸裂する

 目を剥いて振り返った

 

「一人でどうにかする気?」

 

「おまえは……巴マミか」

 

 巴マミは宙に浮くわたしの背後近くに存在していた

 リボンで使い魔を切り裂いている。どうなってるのそれ?

 

「あなた、洗脳されてたそうね? だからってどうにかなる訳じゃないけど」

 

「……余計なことを」

 

 頁を数枚飛ばし使い魔を切り裂いた。マミの動きは参考にならない。わたしはわたしのペースを守ろう

 たまに落ちてくるビルには紫の光弾で打ち落とす

 

「てやああぁっ!」

 

「はああぁっ!」

 

 蒼と紅に燃えるようなさやかと佐倉の二人がワルプルギスの夜に突っ込んだ

 使い魔により本体に届くことは難しいが確実に距離を縮めていく

 

「わたしたちも続くよ。ほむらちゃん」

 

「……ええ。まどかは下がって」

 

 まどかとほむらがわたしの頭上に飛来した

 まどかの矢が真っ直ぐワルプルギスの夜に向かう

 ほむらは無反動砲を担ぎこれを放っていた。えっ。なにそんなのあり? ……触りたい

 

「……にけ。正気に戻ったのね」

 

「どうだろうな」

 

 得物を階段のように足場を出して宙に立っていたのはやちよだ。正直、気まずい。謝るにしてもなんといっていいかわからない

 わたしは佐倉とさやかに邪魔にならないように細心の注意を払いつつ、紫の光弾を打ち続ける。弾幕でワルプルギスの夜の姿は殆ど見えない

 

「チャーっ!」

 

「うおおぉ! この魔女め! バキバキのどっかーん!」

 

 やちよが作った足場からフェリシアと鶴乃が飛び出す

 ワルプルギスの夜は飛ばした鉄骨により炎に包まれた巨大なハンマーを難なく相殺した

 

「あとは頼んだーっ!」

 

「くっ……チックショー!」

 

 ハンマーは取手の根元から折れていた

 落ちていく鶴乃、フェリシアに頁数枚を飛ばす。二人は安全に地面に着地させた

 フェリシアは悔しいだろうけど。多分その方が安全だから

 

ーーアハハハ

 

 ワルプルギスの夜は弾幕をはね除ける。蒼と紅く燃えるような光が落ちていくがこれはマミが逃さず、二人を捕まえてから引き寄せた。どうなってるのそれ?

 引き寄せる間も使い魔の攻撃は止まないが、頁で切り裂き殆ど二人には届かないようにしておく

 

「ごめんマミさん!」

 

「手応えが変だ。効いてるのかわからねぇ」

 

 引き寄せられたさやか、佐倉は空中ですぐさま体勢を整えた

 マミは無言でワルプルギスの夜を睨む。顔が険しくなっていた

 手応えが変……? わたしはワルプルギスの夜を注意深く観察した。なるほど、よくわからない

 

「当たって!」

 

 やちよの隣にいろはが降り立った

 片手から桃色の矢を打ち出している。ワルプルギスの夜にはやはり届いていない。煽ってるように感じられかねない。これではいろはに返って危険が及ぶだろう

 

「行け」

 

 わたしは徐に頁を開き続ける本をワルプルギスの夜に投げた。本は羽ばたくように自ら飛んで行く

 当然使い魔に道中を邪魔されるが黄色い銃弾がこれを撃ち抜いて道を開いた

 

ーーハハ

 

 頁の一枚一枚がワルプルギスの夜の顔を覆っていく。笑い声がくぐもる

 どこに目があるかわからないけど折角顔らしきものがあるんだし覆っておいて損はない。こいつ相手じゃ気休めかもしれないけど出し惜しみして死にましたでは目も当てられないから。やれることはする

 

「ーー何をする気?」

 

「取って置きさ」

 

 ぴし、と顔がひび割れたタイミングでわたしは顔をマミに向けてしまった

 マミはなにか言おうと口を開くが閉じた。わざとではない。許してほしい

 

「勝手な真似は許さないわよ、にけ」

 

「そうですよにけさん。これだけの魔法少女が集まったんです、みんなで頑張ればーー!」

 

 やちよやいろはが説得するように言葉をかける

 わたしはひび割れた片側の顔をなぞる。やはり、と残念に思った

 

「わたしはもう長くない」

 

 そんな、といろはが溢した。マミはその間もワルプルギスの夜全体をリボンでぐるぐる巻きにしている。強固に巻かれてそう簡単にはほどけそうもない

 もしかして、わたしいらなかったかもしれない。そんな懸念すら感じられる余裕があった

 

「……良いんだ。わたしは一人で死ぬつもりだった。最初からワルプルギスの夜と刺し違えてやるつもりでいた」

 

 徐に口の中に手をやった。白く輝くソウルジェムを握るとそれは白く鮮やかな長箒に変化する。わたしは素早く長箒に跨がった

 

「に、にけさんっ!」

 

 さなに呼び止められわたしは顔を向ける

 う、とさなは息を飲む。顔のひび割れが深くなってきているようだ。ごめん、わざとではないんだけど

 

「その……ありがとうございましたっ!」

 

 さなが一礼する。なるほど

 わたしは一度長箒から片手を離し手を差し出した

 

「感謝するのはわたしの方だ。あのアリナは傑作だったな」

 

「にけさん……」

 

 さなはおずおずと手を握る

 さなの手はとても温かい。それともこれはわたしが冷たいのか? 笑えない

 

「行ってくる。全身全霊をぶつけるが一応備えておいてくれ」

 

 格好つけて突っ込むだけなので念には念を押しておく

 最後に集まった少女達一人一人に目を合わせた。マミががんばってるので手早く済まさないといけない

 

 最初に両手を拳にしながら涙を堪えているいろはにやちよが映る。ありがとう。ごめんね

 まどかとほむらはわたしに神妙な顔を向けている。なんか恥ずかしい

 行ってこい、負けるなと激励してくれる佐倉とさやかからは勇気を貰った。がんばるね

 目が合うとマミは無言で頷く。あとは頼んだ

 

 最後にワルプルギスの夜に向いてからさなから手を離した

 ワルプルギスの夜。神浜から……いや。この星から出ていけ

 

「……もう、大丈夫なのね?」

 

 問題ない、とマミに答えてわたしは両手で強く長箒を握る

 ワルプルギスの夜へのリボンによる拘束は未だに解けていなかった。素晴らしい

 

(神浜かぁ。案外いい街だったな。みふゆさんとか黒羽根のみんなに挨拶できなかったなんて伝えたら矢賀に笑われそう)

 

 わたしは懐かしむように目を細める

 大きく息を吸い込んでから前傾姿勢になり“絶望”を睨んだ

 

「《ブルンフェルシア・オーストラリス》!」

 

 長箒に跨がったわたしは弾丸のように突っ込んだ。長箒の先端がワルプルギスの夜の腹部に深く突き刺さる

 ワルプルギスの夜は体をくの字に折れ曲がらせて耐えていた

 

「全国公演も飽きただろう。宇宙公演といこうか」

 

ーーハハ

 

 箒の穂先から白く鮮やかな炎が噴出する。風でローブが激しく揺れて頬が震えた

 崩れつつある身ではまるで罪人が処刑台に向けて一歩一歩進むようで。それは滑稽に見えることだろう

 

「わたしとおまえの二人旅だ」

 

 それでも後悔はなかった

 夕焼けに染まる空の気色のように心は暖かく澄んでいた

 

「いや、三人かーーなぁ。矢賀」

 

 雲を越えて空を越えワルプルギスの夜と天を目指す

 きっと長い旅路になる。わたしは静かに目を閉じた。繰り返し夢を見よう。幸せな夢を、共に

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