【カオス転生三次】女神転神録シフター&ウィッカ   作:一般縄印学園OB

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以前より読んでいた『カオス転生ごちゃまぜサマナー』の三次創作を自分もやってみたいと思い、一作書いてみました。
原作の魅力的な世界観の一端を少しでも表現できれば幸いです。


【カオス転生三次】女神転神録シフター&ウィッカ

 関東圏の某市、東京からも近くそれなりに栄えた街。

 中心部から少し離れた目立たない所にあるアンティークショップの中。

 様々な品物が並ぶ店の奥には、店番をしている少年がいた。

 

「んん……これで、いい感じかな?」

 

 年のころは中学生程だろうか。

 男としてはともすれば迫力不足、年上の女性からは可愛いと言われそうな顔立ちの少年。

 彼は若草色の髪を落ち着かな気に直し、傍らにある小さな鏡で確認する。

 やや落ち着かない様子の彼の名はソラ・ルウェリンと言う。

 

 

白い魔女(ウィッカ)(男)ソラ・ルウェリンLV11備考:ガイア連合一般職員

 

(未だにあの人が来ると緊張しちゃうんだもんなあ。

 ……悪魔相手には強気に出れるのになんでこんな度胸がないんだか)

 

 ソラはどうにもそわそわしてしまう。

 それもそのはず、今日来るのは彼の恩人である女性なのだから。

 

 ソラは欧州からこの日本へ流れてきた白魔女一族の末裔である。

 元は欧州で親から受け継いだ小さな異界を管理し、簡単な魔除け等を売って暮らしていた。

 男なのに魔女と言うのもなんだかなーと思いつつも、長閑な暮らしが嫌いではなかったが転機が強制的に訪れたのは1年前の事だ。

 

 いつの間にか勢力を伸ばしてやがった神の名を唱えてやりたい放題なカス共(ファッキンメシア教)の迫害。

 筆舌に尽くしがたい滅茶苦茶な攻撃を逃れ、這う這うの体で父の出生の地である日本に来た物の、其処は勝手を知らぬ異国の地。

 生活基盤を築くのに難儀し、現地の組織との折衝も進むことなく、彼は途方に暮れていた。

 それこそ食いつなぐためにダークサマナーにでもなるしかないというぐらいに。

 

 そんな彼を救ってくれたのが件の女性である。

 彼女は彼を遭遇した悪魔から、助けてくれただけではない。

 退魔組織【ガイア連合山梨支部*1】に紹介してくれた。

 その上に甲斐あって、今ではガイア連合と提携しているアイテム工房の一つであるこの店の職員として毎日幸福に過ごせている。

 

 紛れもなく自分の命の恩人であり、霊能者としても自分より遥か高みにいる女性。

 彼女の迷惑になってないだろうか、いやそもそも自分が話しかけてよいのかという思いもある。

 でもそれでも、ソラは彼女を────

 

 カラン、と音がして開いた店のドア、入ってくるのはソラより4・5歳は年上の女性。

 長い黒髪をポニーテールにした女性は、曰くあり気な赤い目が印象的。

 地味な装いをしているものの、美人と言える顔立ちの彼女を認めるや否やソラの顔がパッと輝く。

 

「お待たせソラ君」

「 お疲れ様ですキリカさん!」

 

 

\カカカッ/

顕現者*2御津峯(みつみね)キリカLV37備考:ガイア連合戦闘員

 

 

 ガイア連合の一員である女性、キリカは柔らかい表情を浮かべていた。

 

「そちらもお疲れ様。ごめんね10分も遅れちゃって」

「いえいえ大丈夫です! キリカさんの為なら1日だって待ちます!」

 

 まあ、と嬉しそうな顔をするキリカ。

 それを見るだけでソラも嬉しくなってくる。

 

「ソラ君学校の方はどう? こっちが忙しくて友達と遊ぶ時間が取れないとかはないかな?」

「いやそんな事ないですよ。

 シフトは余裕をもって入れてるし、学校通うの久しぶりですけど楽しくやってます。

 にしてもガイア連合って凄いですよね。アニメ制作や通販どころか学校経営までやるなんて」

「私も最初知った時は驚いたわ。本当に手が広いのよねガイア連合」

 

 ソラはキリカと他愛もない話を交わす。

 大学生で比較的時間が取れるキリカとはそれなりの頻度で会ってはいる。

 それでもこの人と話すだけで、気分が高揚してくるのをソラは感じる。

 

「この間ノッカーと契約が出来まして。

 力自体は弱いんですが、何かの役に立つかもしれません」

「確かイギリスだと鉱山に出るんだっけ。

 色々役に立ってくれそうね」

 

 特に、今日のようにうまい感じに話せているとなおさらに。

 

(よし、今日はうまく話せているな!)

 

 年上の女性相手に舞い上がる少年。

 それは実に微笑ましいものだ。

 同時にキリカも表情を見るにまんざらではないようだ。

 自分を慕う少年との会話を楽しんでいる。

 

 和気あいあいとした二人。

 殺伐とした悪魔関係の業界には珍しい、微笑ましい雰囲気だ。

 

「────すいません御津峯さん。

 緊急の要件が」

 

 とはいっても楽しい時間は長く続かない。

 事務員の女性が切り出した言葉に二人はさっと表情を変える。

 

「分かりました。ソラ君装備の準備は?」

「ばっちりです」

「よし、じゃあ行きましょうか。

 久しぶりに緊急の仕事だし、気を引き締めていきましょう」

 

 二人は急ピッチで自身の装備などを点検し表に止めてある車へと向かう。

 人に仇なす悪魔を倒す、それが彼らの仕事の一つなのだから。

 

 ガイア連合。それは異端の強者が集う組織。

 彼らはそれぞれ生まれ育ち、戦い方、思考も何もかも違えど皆一様に強く、神魔を恐れず戦う。

 

 悪魔業界の表舞台に登場してはや数年。

 彼等は帝都の結界を維持する【築地根願寺】と並ぶ、日本の霊的国防の要となっている。

 各地で悪魔を倒している彼等はまさに綺羅星の如き。

 

 キリカとソラもそんなガイア連合に連なる霊能者であるのだ。

 

 

 


 

 

 

 郊外にある古びた家屋。

 神社を潰して建てたという曰く付きの上に、案の定殺人事件が起き事故物件となった建物。

 その中には今、真新しい血がぶちまけられていた。

 

 負の歴史を上塗りするかのような凄惨な現場。

 錆びた匂いが充満する其処は、まともな人間なら回れ右して出ていきたくなるだろう。

 ましてや粘ついた音が響く中ではなおさらに。

 

 室内に響く音の発生源は、明白である。

 五体をとどめない遺骸の傍らにうずくまり、聞くに堪えない咀嚼音を響かせる悪鬼。

 濁った緑色の、細長い体をしたそれらは、気配をかぎつけると一斉に振り向く。

 

 

幽鬼グールLV17呪殺無効 火炎・破魔弱点

 

 

 があ、と濁った叫びを上げて殺到するグール達。

 幽鬼の強さは、ガイア連合の者でなくば瞬く間に犠牲者の仲間入りをすることは確実な程。

 それが何体もいるのだから実に恐ろしい。

 

 そんな悪魔に対してガイア連合が一人、御津峯キリカは真っ向から立ち向かう。

 

「セプター、GO!」

「了解。戦闘を開始します」

 

 

シキガミセプターLV35物理・銃撃・魔力耐性 核熱弱点

 

 

 彼女の前に立つのは黒い骨格を灰色の装甲で装った、メカニカルな印象の騎士。

 ガイア連合の者が使う【シキガミ】の一種であるセプターは見た目通りの前衛型のようだ。

 2m近い体を活かし、キリカと幽鬼を隔てる盾となる。

 

 セプターはプラズマソード*3を掲げ突貫。

 キリカはガイア連合製の銃器、ブラスターP*4を抜き放ちしっかりと構える。

 ほぼ同時に、二者の攻撃がグールめがけて放たれた。

 

回転切り物理スキル敵全体に物理属性での攻撃を1回行う。

 

火炎乱撃火炎属性銃スキル敵全体に火炎属性の小ダメージ。

 

 シキガミによる斬撃と火炎エネルギー弾頭による銃撃。

 ただそれだけで脅威であるはずの悪魔の殆どが四散する。

 

「グガァッ!」

 

 それでも他の個体を盾に生き残ったグールが跳躍、壁を蹴ってキリカを狙う。

 が、反撃は高い反応速度を持つセプターに阻まれ、其処へ投げつけられるのは【せがき米】。

 弱点を突かれたグールは一発で昇天した。

 

「よし、この階はクリア……

 データを考えると、呪殺もその内使ってくるかな?」

 

 自衛隊出身の知人に倣った通りの手順で、銃を小刻みに動かし、室内を確認し一息つく。

 ソラに調整してもらった腕輪────()()()()()()()()()()()()()G()-()()()()()*5と、同様の効果を持った装備を少し直す。

 

『こちらキリカ。室内にいた悪魔の排除完了。

 生存者は……駄目そうね』

 

 異界化により引き伸ばされた室内に転がる人体は、もう蘇生不可能な程に損壊している。

 何度も見てきたが、やっぱり見ていて気持ちいい物じゃない。

 

『こちらソラです。まあ時間がたちすぎましたから。

 まったく最初からガイア連合の人たちに任せておけば良かったのに……。

 本当にろくなことしないんだから』

 

 外で待機し、エストマによる結界を維持しているソラは半目になっているのだろう。

 彼が不快感を表すのも無理はない。

 此処で死んでいるのはダークサマナー、それにメシア教の人間だからだ。

 

 何でも此処には戦前に悪魔を封印していたそうだが、戦後のメシア教の弾圧により資料が紛失。

 ほったらかしになっていた所をかぎつけたダークサマナーが封印を解除しようとして……結果はお察しの通りである。

 その後悪魔の存在をかぎつけたメシア教の者達までもが聖戦じゃあ! と殴り込むも返り討ちにあい、このような事になったという訳だ。

 

 ただでさえこの極東に来てまで、自分やガイア連合の人達を煩わせるのかと憤慨するソラ。

 憤る彼をキリカはたしなめる。

 

「そう言わないの。まあ確かに何やってるのとは私も思うけど、この国では死ねば仏って言うから、ね?」

『……そうですねすいません。では、キリカさん探索の続行をお願いします。万が一の時は』

「迷わず逃げろ、でしょう? くらましの玉*6とかはちゃんと準備しているから」

 

 いつもの事ながら自分を心配する少年に、ふふと笑う。

 そうしてしばしリラックスするとキリカは探索を進める。

 

 道中いくらかの悪魔と遭遇するも難なく倒す。

 文字通り鎧袖一触。

 接敵してほぼ一撃で撃滅完了。

 

 ただどうも今回もそう楽な任務ではないようだ。

 遭遇する悪魔もさることながら、戦闘の痕跡からすると天使も何体か死んでいる。

 異界のボスとなる悪魔はかなり強いはずだ。

 

『……気を付けてくださいキリカさん。此処の悪魔はかなり』

「ん、これは本気でやらないといけないかな。セプター、"変わる"時はよろしくね」

「承知しました。我が主よ」

 

 探索及び戦闘に能力を極振りしたセプターは最低限の会話能力しかない。

 しかしその分主であるキリカの護衛という目的に忠実に動く。

 セプターが扉を開け、異界の中心である地下室に入る。

 

 

 

 本来の何倍にも拡張された地下室。

 怪しげな魔法陣の光が揺らめく中、キリカを迎え撃つのは偉丈夫。

 筋骨隆々の肉体を毛皮で覆い、血濡れた剣を構える悪魔。

 

「────よく来たな。異郷の戦士よ」

 

 重厚な声で語りかける、その悪魔の事をキリカはよく知っている。

 

(妖鬼ベルセルク……!)

 

 北欧神話に伝わる狂戦士。

()()()()()()()()()()()()()()()()()に対して、キリカは【アナライズ】を敢行する。

 

 

妖鬼ベルセルクLV34物理・氷結耐性 火炎弱点

 

 

(私よりもレベルが低いけど、こんな奴まで出ちゃうかぁ……!)

 

 まだヤタガラスが健在な戦前に封印されたのだろうが、予想以上の強さ。

 現地の霊能者なら束になっても蹴散らされる、それほどの悪魔だ。

 

 強敵である狂戦士に対して身構え、精神を集中させるキリカ。

 彼女を見据え不敵に口をゆがめたベルセルクは斬りかかる。

 

「言葉は不要。

 血肉を以て、俺を楽しませろ!」

 

 咆哮と共にベルセルクはデスバウンドを放つ。

 それは敵全体を切り裂く強烈な剣技。

 鋼鉄を容易く切り裂き、天使を盾ごと真っ二つにする凄絶な一撃である。

 

 ベルセルクの一撃はセプターのみならず、キリカの柔肌すら切り裂くかに思えたが。

 

「損傷率19%、充分に戦闘続行可能です」

 

 物理耐性を持つセプターが【カバー】へ入り、攻撃を遮る。

 元よりタンクとして設計されたこのシキガミは頑強極まりない。

 

 忠実なるシキガミが稼いだ時間。

 それは戦いの場においては刹那と言っていい時間ではあるが、キリカにはそれで十分だ。

 

──────女神転神

 

 大量のマグネタイトを纏い、キリカの姿が一瞬で変化する。

 それは人から女神への【転神】である。

 

 黒髪が神秘的な水色へと変わり、より長く伸びる。

 

 新たに生成された流れる夜の如き黒いドレスがふわり、と翻る。

 

 紅の瞳が輝き、同色の彼岸花が頭に飾られる。

 

 黒衣に身を包んだ慈悲深く、侵しがたい女神の御姿。

 それは女神スティクス、キリカに宿る神の力の顕現であった。

 

 

\カカカッ/

女神スティクス/御津峯キリカLV47水撃・破魔耐性 魔力無効 呪殺吸収 物理にやや弱い

 

 

【転神】と共に神威の波動が放射。

 その威力を間近に見たベルセルクは目を見開く。

 対するキリカはすっと手を掲げ、己の力を解き放つ。

 

 ドレスとは対照的な、白い腕から放たれるのは昏き死の暴威。

 

呪怨ブースタ自動効果スキル属性攻撃の攻撃力が上昇する。

闇の審判*7闇(呪殺)属性魔法敵全体に闇属性大威力攻撃を行う。瀕死の追加効果あり。

 

 威力を上乗せされて放たれた審判の一撃。

 闇の魔力はベルセルクの生命を削り取る。

 

「っごぉ、あァ……!」

 

 ギリシャ神話に謡われる女神スティクス。

 冥界に流れる大河を神格化したと言われる彼女は、ゼウスより【神々を罰する】という特別な権限を与えられている。

 故にかスティクスの力は呪殺属性に特化している。

 その力のほどはベルセルクという強力な悪魔が一撃で【瀕死】寸前に追い込まれた事からも分かるだろう。

 

「何という力だ……! だが、俺は負けんぞっ!」

 

 多量のマグネタイトを奪い取ったベルセルクはなおも剣を振りかぶり戦おうとする。

 それは古強者としての矜持か。

 

「反撃を確認、鎮圧を行う」

「残念だけどこれで終わりよ」

 

 されど、強者であるキリカはベルセルクを順当に叩きのめす。

 ガイア連合の強者らしい堂々とした、神魔を恐れぬ戦いぶり。

 瞬く間に、女神の呪力が狂戦士を打ち砕いた。

 

「……無念、ではあるが」

 

 水色の髪をなびかせたキリカを、悪魔は見上げる。

 狂戦士が最後に見た女神。

 それは確かに美しいと、滅びるベルセルクには思えた。

 

 

 


 

 

 

「ふー……やっぱり転神するとつかれるな~」

 

 戦いが終わり、異界化が解除された後の家屋。

 ガイア連合の下請けである地元組織が後処理に動き回る中、キリカは車内で一息ついていた。

 ソラが入れてくれたコーヒーを飲む穏やかな時間。

 それは悪くない、悪くはないが。

 

「聞いたか? 御津峯様が倒した悪魔はレベル30を超えていたらしいぞ」

「それ程の悪魔をこうもあっさりと……恐ろしい程の強さだ」

「まさに現人神の如き存在。我々とは隔絶した御方であるな」

 

 漏れ聞こえてくる言葉は、あまり気持ちの良い物ではない。

 

「はあ……そんな大層な人間じゃないんだけどね」

 

 キリカはそっとため息をつく。

 全く、【現地民】は誰も彼もガイア連合の人間をあがめている。

 自分達がどういう存在かも知らないで、表面的な強さだけで。

 その近視眼的な価値観は、時たま厭わしく思える。

 

 

 

 実を言うと、キリカを含むガイア連合に所属する者の多くは実質トップの【ショタオジ】を含め、別世界からの転生者である。

 それもこの世界とは、よく似た()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()からの、だ。

 

 メシア教の跳梁跋扈やGPの上昇の末に起こる【大破壊】の発生。

 ゲーム内の出来事であったはずの内容が現実になる事への危機感を覚えて、修行を受けて覚醒した彼らの多くは霊的才能が高く、瞬く間に非転生者では到底追いつけないほど強くなる。

 人によって才能には差があるが、ネット小説でよくある転生チートを得たキャラとそう変わらない境遇。

 それがキリカを含むガイア連合の転生者たちなのだ。

 

 まあ確かにキリカが持つ女神スティクスへ変身する【デビルシフター】の力はかなり特殊で、ガイア連合の中でも非常に希少。

 けれどその点を除けば、当たり前の喜怒哀楽がある平凡な人間だ。

 

(血筋か、それとも転生する時に魂に何か混じったか……この点については特別だけど、私なんて前世からして並以下の人間なのにな)

 

 前世の事を考える度にキリカの気分は暗くなる。

 思い出しても良いことなど何もない。

 

 キリカの前世、もう名前すら忘れかけた前世の人生はあまり幸せとは言えなかった。

 両親は金は持っていたがあまり評判の良い人間とは言えず、彼女自身暴力を受けたことは数多い。

 成人してからは縁を切れたが、本当に碌な思い出がない親だった。

 

 おまけに中身はともかく外見は似てしまった結果、きつい顔立ちに無駄に高い身長。

 人に好感を得られにくい容貌で友達が少なく、好きな人が出来て告白しても毎回必ずと言っていい程に断られた。

 孤立が常の、寂しい人生だった哀しい記憶がいまだに残っている。

 

(今の顔や体は前のよりもずっと好き。

 でも……結局避けられる、と言うより崇められる。

 周りに人がいないのには変わらないのよね……)

 

 今世の【御津峯キリカ】はずっと人から好まれやすい外見だ。

 けれど転生者故の霊能者としての隔絶した才能は、人を寄せ付けない。

 

 何せ彼女が生まれ育った家は小さいとはいえ霊能者の一族。

 強大な力を持つ彼女は、まさに現人神の様にあがめられた。

 ましてや彼女が掲示板をきっかけにガイア連合に所属し力をのばし、スティクスの力に覚醒してからはなおさらだ。

 今では両親すらも、会うたびに平伏し目を合わせる事すらしない。

 

 外部の人間も似たような感じで崇めるか恐れるかの大体二択。

 何せメシア教によって蹂躙された日本では才ある霊能者の存在は枯渇している。

 地方によってはレベル1の覚醒者がホープ扱いされている場合すらあったのだ。

 女神の力を使いこなす最大レベル50近くのキリカのような強者は、同じ生物とは思えないのも無理はない。

 

 無論ガイア連合に所属してからは同じ秘密を共有するからか、友達も増えてきた。

 だけどどうしても、むしろ前世という共通点があるからこそ踏み込めない。

 孤独が怖いのに、表面的な付き合いしかできなかった。

 

 そう、結局のところキリカは孤独のまま────とも、以前はともかく現在は言い切れない。

 

「────キリカさん!」

「は、はいな!?」

 

 物思いにふけっていたところで声を掛けられ、キリカはびくりと震える。

 気が付けばソラが心配そうな顔で立っていた。

 

「ご、ごめんねソラくん。

 ちょっとぼーっとしてた」

「ならいいんですが……その、大丈夫ですか? 

 もしかしてさっきの戦いで怪我をされたとか、それとも僕の造った腕輪に不具合が」

 

 心から、本当に心から気づかわしげな表情。

 ソラの心配そうな表情に対して、ふっとキリカは穏やかに笑う。

 

「大丈夫大丈夫。

 今日は転神したから、ちょっと疲れただけだよー」

「良かったぁ。キリカさんに何かあったら僕はどうしようかと」

「心配のし過ぎよ。

 私が強いのは知っているでしょう?」

 

 胸をなでおろすソラを見て、キリカは爽やかな気分で笑う。

 ああまったく、この子はいつも私の事を心から、慮っているんだから。

 

 最初はこうなると思わなかった。

 悪魔から助けるのも、仕事を紹介するのもごく自然にした事。

 どうせこの子もそれっきりで縁が切れると思ったが、思わぬ形で縁は続いた。

 

 キリカの力を知って、それでも慕いついてくるソラ。

 なにがあっても自分の役に立ちたいと、いつもがんばっている少年の笑顔がキリカには眩しくて仕方がない。

 

(我ながらちょろいと思うんだけど。

 でもソラ君といると楽しい。いや幸せだって感じられる。

 ちょっと年は離れているけどそれでも凄く、いいなって感じる)

 

 自分よりも背の低い、若草色の髪をした少年。

 文字通り生まれも育ちも違うけど、

 彼と共に居る時間は得難いものだと彼女には感じられる。

 

「そうだソラ君、今日は久しぶりに二人でご飯食べよっか?」

「いいん、ですか?」

「ええ、まだ時間も早いし美味しいもの食べましょう」

 

 やったあと目に見えて高揚する少年の前で、キリカは自然に笑う。

 

 この世界にはメシア教に、神や悪魔。

 禄でもない存在が履いて捨てるほど多くいる。

 酷い事になっている国や地域もあるし、あまり付き合いたいとは思えない人間も結構いる。

 

 けれど心から笑顔になれる少年、ソラ・ルウェリンとの出会いは、絶対に悪い事ではない。

 だから彼と結んだ縁があるこの世界を、共に過ごす時間をこれからも大切にしていきたいな、とキリカは思っている。

 

 その思いは間違いでないと、胸を張って言えるから。

 

*1
本部は魔界にあるとのもっぱらのウワサ。一体どんなところなんだろうね()

*2
転生者等神魔の力を使いこなす覚醒者の事を示す。

*3
シリーズでたびたび登場する装備。作品によってはヤクザがドロップする。

*4
ストレンジジャーニー登場のピストル。幽鬼モウリョウや妖魔カラステングの素材から作成。

*5
呪殺無効に加え力が低下する代わりに、魔力が高まる。

*6
真Ⅴ出展:戦闘から必ず離脱する消費アイテム。

*7
ペルソナ2罰出展




◎登場人物
【顕現者 御津峯キリカ LV37】
ガイア連合所属の女性転生者のデビルシフター。
普段の戦闘スタイルは物理耐性持ちのシキガミを盾にして銃撃やアイテムで攻撃を行う後衛型。マグネタイトを大量に使用する事で【女神 スティクス LV47】に【転神】し、強力な呪殺魔法を操る。
5歳年下のソラの事が好き。

【白い魔女 ソラ・ルウェリン LV11】
ガイア連合一般職員となった欧州出身の希少な男の魔女。
戦いよりも妖精とのコミュや装備及びアイテムの製作が得意。
5歳年上のキリカの事が好き。

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