世界一『かわいい』ウマ娘によるトレセン学園侵略計画☆   作:それおすとろ

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かわいい私とプールトレーニング:後編

「一体どーいうことですか! 急に現れたと思ったら友達だのなんだの言って無理やり連れてきて! ちゃんと説明してください、カレンチャン!」

 

 ケベックタンゴの困惑を余すことなく載せた叫びが辺りに響き渡る。その叫びを向けられた相手……カレンチャンは、困ったように曖昧な笑みを浮かべた。

 

「あはは……やっぱ気づいてなかったんだ。ああいうのはナンパだよ。何されるかわかんないから絶対についていっちゃダメ」

 

「ナンパ……?」

 

 数秒間フリーズしながら、次第にその言葉の意味を理解する。

 

「ええっ!? あれナンパだったんですか!?」

 

「なんで気づかないんだろ……」

 

「てことはあの人たち、ヤバいロリコンだったんです……!?」

 

 確かトレーナーをプールに誘う口実にも「ナンパにあったときの対策として」みたいなことを言ったはずだ。にもかかわらず、いざ遭遇してみるとそれがナンパとわからないまま引っかかりかけた。その事実にケベックタンゴは赤面した。

 

「そうそう、だから今度からは気をつけてね? 今回はたまたまカレンが来たからよかったけど、本当に運が良かっただけなんだから」

 

「え、ええ、そうします。どうもありがとうござ……ありが……あ、り……」

 

「ん? どうかしたの?」

 

「……やっぱりナシ! 誰があなたに感謝などするものですか! ここであったが百年目! カレンチャンよ、私と勝負しろーっ!」

 

 ずびし、とカレンチャンに指を向ける。いまケベックタンゴの体を突き動かしているのは思いつきと勢いだけだ。ケベックタンゴにとって、宿敵に助けられるという経験はかなりの屈辱であった。故に、ケベックタンゴは勝負を挑む。懲りずに自分の方がかわいいことを証明するため。また、前回の分も併せて屈辱をお返ししてやるため。助けられたくせに礼も言わずに逆上する様子は恥の上塗りに他ならないのだが、そのようなことケベックタンゴには考えもつかない。

 

「あー……こうなるんだ……。えっと、話したいこともあるし……とりあえず、移動しよっか?」

 

 そう言われて初めて、ケベックタンゴは周りの目がこちらに向いているのを知覚した。ただでさえ目立つ美少女ウマ娘が2人。その上片方は超有名ウマスタグラマー。ついでに片方が何やらぎゃあぎゃあと騒いでるとくれば、その様子が注目を集めないはずがなかった。

 

 2人は足を止めていた野次馬たちに程よく愛想を振り撒きながら、その場をそそくさと退散したのだった。

 

 

────────

 

 

「ただいま戻りましたよ、トレーナーさん! 私がいなくて寂しかったですか? 寂しかったですよね!」

 

「おいやめろ濡れたままこっちくんな。ほら、タオルやるから」

 

 あのあとケベックタンゴはカレンチャンに連れられ、昼食を食べていた休憩スペースに戻ってきていた。

 

「聞いてくださいよトレーナーさん! さっきそこで……」

 

「カレンチャンと会った、か? 知ってる知ってる」

 

「ええ!? なんで!?」

 

「だって、ケベックちゃんと会う前に一回お話ししたから」

 

 質問の答えを返したのはカレンチャン。どうやら場所を変えわざわざこちらに戻ってきたのも、トレーナーがこちらにいることを知っていた上での行動らしかった。

 

「トレーナーさんとカレンチャンが? というか、なんでここにいるかまだ聞いてないんですけど」

 

「それはここにカレンもよく来るから。逆にケベックちゃんの方がカレンのことを追いかけてくれたんだと思ってたんだけどな」

 

「誰があなたのことなんて! 私はただウマスタで見てですね……あれ? もしかして私が見たのってカレンチャンの投稿?」

 

「お前、完全にステマに嵌ってるな……」

 

 トレーナーが呟く。するとケベックタンゴに睨まれた。どうやらウマ娘の耳の良さを侮っていたようだ。聞こえても別にいいか、という気持ちがあったこともあるが。

 

「むむ……そうだ、そんなことより! 忘れたわけではないでしょうねカレンチャン、私はもう一度、あなたに勝負を挑みます!」

 

「あー……うん、それはいいんだけど。何やるの?」

 

「それは……まだ決めてないです!」

 

「お前本当にいい加減にしとけよ……? カレンチャン、うちのケベックタンゴがいつもすまないな」

 

 トレーナーとカレンチャンは数秒間、目を合わせる。まるで「お互い大変だな」と言わんばかりに。ケベックタンゴに振り回される2人の心が通じ合った瞬間だった。

 

「……じゃあさ、勝負の内容、カレンが決めていい?」

 

「へ? ……ふふ、いいでしょう! どんな勝負だって負ける気ありませんからね!」

 

「でもこの前負けただろお前」

 

「そこ! うるさいです! トレーナーさんは黙っててくださいよ、そもそもアレはちょっと運が悪かっただけですから! ノーカンですノーカン!」

 

 疑わしげなトレーナーの目線から逃げるように、ケベックタンゴはカレンチャンに向き直る。その口を出るのは根拠のない自信と煽りだけだ。

 

「いいですよ、あなたの一番得意なもので勝負してあげます! そこで勝ってこそ、私があなたよりも上であると証明できるというものですからね! それともどうします、じゃんけんにでもして運に一縷の望みをかけたりしますか?」

 

「おい、あまり煽るもんじゃない。……後で惨めさが増すぞ」

 

「なんで私が負ける前提なんですかー!? 勝ちますよ、それはもう完膚なきまでボッコボコですよ! さぁさぁカレンチャン、何で勝負するんです? それとも怖気付きましたか!?」

 

「……うん、じゃあせっかくプールに来たんだし、泳ごっか」

 

「いいでしょう! 午前中いろんなウマ娘に勝負を挑まれては沈めてきた私に勝てるとでも!?」

 

 そう言いながら、2人はプールの方へと歩みを進める。その途中、カレンチャンがトレーナーの方へ目配せし……

 トレーナーは、ケベックタンゴの敗北を悟ったのだった。

 

 

────────

 

 

「ちょっと!? なに勝ったつもりでいるんですかカレンチャン!? 私負けてないんですけど!?」

 

「おー、帰ったか。結果は……聞かなくてもわかるわ」

 

 1時間ほど経って、2人は再びトレーナーの元へ。勝敗の行方は余裕たっぷりのカレンチャンとその後ろで何やら怒っているようなケベックタンゴを見ればなんとなく察することができた。

 

「だから言っただろ……どうせ負けるんだからあんま調子乗んなって」

 

「だから違いますって! 負けてないです、今回私断じて負けてないです!」

 

「じゃあ何が起きたか説明してみろよ」

 

「それは……その……ほら、ね? あの……」

 

「答えられねぇってことは負けてんじゃねぇか!」

 

 トレーナーが問い詰めるも、負けてないの一点張りで会話が堂々巡りになってしまう。そんな様子が見てられなかったのか、はたまたもう十分楽しんだからなのか、カレンチャンが口を開く。

 

「あっそうだ、ケベックちゃんのトレーナーさん。ケベックちゃん、さっき足攣っちゃったみたいだから、なんともないか診てあげて?」

 

「あっちょっとこらカレンチャンなんでバラすんですか……って、トレーナーさん? ちょ、顔怖いんですけど。い、一旦落ち着きましょ? ね?」

 

「……ケベック?」

 

「い、いやいや! 本当になんともないですから!? 別に準備運動怠ったわけじゃないですし! てか今日一日の疲れが溜まってたせいなので勝負としてはノーカンじゃないです!?」

 

「疲れのせいならなお悪いわアホ! お前本当に競走ウマ娘か……?」

 

 トレーナーは頭に昇った血を落ち着かせるように深呼吸を一つ。ここで声を荒らげたところで自分が疲れるだけだというのは理解している。

 

「すまないなカレンチャン。どうせ迷惑かけたろ」

 

「いえいえ。大丈夫です! まあ、ちょっとびっくりはしましたけど……」

 

「そうか……本当にすまない。よく出来た子だな……どうしてアレとはこんなに差が開いてるのか……」

 

 その内面も完璧美少女と呼ぶにふさわしい対応を見せるカレンチャン。その自称ライバルは未だ不満をぼやいていた。そのくせ、トレーナーの言葉に過剰に反応する。

 

「ちょっとー! 聞き逃しませんよ、こんな美少女に向かってアレとはなんですか!」

 

「行動に美少女感がゼロなんだよお前! ちょっとはカレンチャンを見習え!」

 

「はー!? なんですかトレーナーさんは私よりカレンチャンの方がいいっていうんですか!? ダメですよ、そんなの認めません! トレーナーさんは私の味方でいてくださいよ!」

 

「そういうことを言ってるんじゃなくてだな……そもそもお前はいつも」

 

「おっと説教の気配。トレーナーさん相手は分が悪いので撤退します!」

 

 そう言うとケベックタンゴは回れ右、その場をそそくさと後にする。カレンチャンへの捨て台詞を残して。

 

「おのれカレンチャンめ〜! これで勝ったと思わないでくださいよー!」

 

「あっ、こら逃げるな! ……行きやがった……」

 

 トレーナーはため息一つ吐いたあと、ケベックタンゴを追いかける準備をしつつカレンチャンに話しかける。

 

「……なあカレンチャン、どうしてケベックの勝負を受けてくれたんだ? お前にとっちゃ得はないだろ」

 

「ううん、そうでもありませんよ? 得るものはいっぱいありましたから! それに、ケベックちゃんと一緒に遊ぶのは楽しいです!」

 

「そうか? ……ありがとう。今後もどうせあいつが迷惑かけると思うが、まあ出来る限り仲良くしてやってくれ。……おいこら待てバカぁ!」

 

 カレンチャンへ感謝の言葉を伝えた後、トレーナーはケベックタンゴの方へ駆け出す。1人その場に残されたカレンチャンは、その様子を微笑ましそうに見ながら佇むのだった。

 

「……ほんと、学ぶことがいっぱいだよ。これはカレンも、うかうかしてられない……かな?」

 

 プールの喧騒の中、そう呟いた言葉の中には、カレンチャンの確かな闘志を宿していた。




今回は掲示板回はありません!楽しみにしてた人がいたらごめんね
感想・評価があれば次話を投稿できるようになるまでが早くなるのでぜひぜひ、ちょっと下にあるそれぞれのリンクから入れてくれればとっても嬉しいです……読了報告をTwitterに上げてくれる人も、実はしっかり見てるし拝んでるからね!これからもバンバンかわいいケベたんの画像をTLに流そう!

更新遅れてごめんなさい!予約投稿したと思ってたらできてなかった……
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