世界一『かわいい』ウマ娘によるトレセン学園侵略計画☆   作:それおすとろ

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かわいい私と新年の幕開け:後編

「アストンマーチャン……チャン……? まさか、カレンチャンの刺客……!?」

 

「んなわけあるか。えーと、アストンマーチャン。で、カメラがなんだって?」

 

 ケベックタンゴとそのトレーナー、2人の前に突如現れたアストンマーチャンというウマ娘。彼女は、2人に「カメラを持っていてほしい」とお願いをしてきた。

 

「そうなのです。中央広場で歌っている様子を撮っていてほしいのです」

 

「はぁ、構わないが……」

 

 困惑しつつもトレーナーは手持ちのカメラを受け取る。するとそのとき、アストンマーチャンの背後から2人分の足音が聞こえてきた。

 

「おいおい待てよマーチャン! こんなところで『うまぴょい伝説』とか、意味わかんねーんだけど!?」

 

「ちょっ、2人とも、待ちなさいよ!」

 

 アストンマーチャンの元に駆け寄ってきたのはアストンマーチャンのクラスメイト、ウオッカとダイワスカーレット。この2人はケベックタンゴも知っていた。

 

「あーっ! ダイワスカーレットちゃん! 思い出した、この子も廊下で見たことあります!」

 

「あれ? あなたは、隣のクラスの……えっと、変な子」

 

「変な子!? ケベックタンゴです、お忘れなく! このっ、ちょっと胸が大きいからって……!」

 

 ダイワスカーレットは同年代の中でもかなり発育の良い方だ。ケベックタンゴと並ぶと身長も同じ歳とは思えないほどに離れている。

 ケベックタンゴは成長する希望を捨てきれず牛乳をがぶ飲みしては腹を下した過去があるのでダイワスカーレットを羨んでいた。

 

「……えーっと、結局撮るのか? 撮らないのか?」

 

「ぜひぜひ、お願いするのです。動画はあればあるほどいいのです」

 

「動画? 踊る様子を撮るんですか? ウマチューブにアップしたり?」

 

「おおー……! それはいい考えです。さっそく試してみるのです」

 

 目を輝かせるアストンマーチャンの様子を見て、ケベックタンゴはあることに気づく。

 

「ほほーう、なるほど。わかりましたよ! アストンマーチャン! ずばり、あなたもかわいいを目指す者でしょう?」

 

 ビシィ!と指を指してそう宣言する。それに対して、アストンマーチャンは特に驚いた様子もなく──驚いているにしても表情には出さずに──答えた。

 

「おおー。見破られてしまったのです。そうなのです。マーちゃんは、マスコットになりたいのです。それもただのマスコットではありません。世界を股にかけるウルトラスーパーマスコットです」

 

「うーん、なるほどなるほど。奇遇ですね! 私は世界一かわいいウマ娘を目指す者! すなわち超ウルトラスーパーハイパーマスコットでもあるのですが……」

 

「変なとこ張り合うなよ」

 

「……ともかく、同じ道を目指す者。もちろん、1番は譲れませんが……時に、アストンマーチャン。カレンチャンを知っていますか?」

 

「もちろんです。カレンチャンさんはすごいのです」

 

「私の目標は世界一かわいいウマ娘。つまりカレンチャンを超えねばなりません。そこで! アストンマーチャン、あなたの力を借りたいのです! 2人ならば倒せるはず!」

 

「一人で打倒することを諦めたな……?」

 

「違いますぅ! トレーナーさん、占いの内容を忘れたんですか? 三女神像の前で出会ったこの人たちはすなわち、私たちの助けとなる運命の人ですよ!」

 

「なるほ……ど?」

 

 トレーナーはケベックタンゴがそう思ってるならそうなのだろうと思うことにした。そもそも占いは気の持ちよう次第なのだから、と。

 

「利害の一致、というやつですね。わかりました、マーちゃんはあなたに協力するのです」

 

「よぉし! そうこなくては!」

 

「それにしても、カレンに勝つって一体何するのよ」

 

 ダイワスカーレットが口を挟む。それは当然の疑問だろう。しかしそれを聞いたケベックタンゴは、固まった。

 

「え、えーと……うん、今から考えます」

 

「アンタねぇ……え、大丈夫なの?」

 

 呆れを通り越して心配されてしまった。

 

「ま、まずはトレセン学園中に私の名を広げることが第一です。つまり、トレセンの生徒に『この学園にはカレンチャンに勝てるすごいウマ娘がいる!』と思わせることです。そのためにも、何か人が集まって、勝敗が決めれるような……」

 

 ケベックタンゴが悩んでいると、ウオッカが何かを閃いたようだった。

 

「あ、それだったらいいのがあるぜ。寮の広間に貸し出しで置いてあった──」

 

 

 

 

 

「──羽根つきだ!」

 

 

────────

 

 

 その日、カレンチャンは自室で動画を編集していた。先日行ったお正月ファンミーティングでの動画だ。それも終盤に差し掛かり、ひと息つこうと伸びをする。ちょうどその時、机に置いたスマホが鳴った。

 それを手に取ると、画面にはケベックタンゴの表示が。マヤノトップガンと3人で遊びに行った時に交換したものだ。

 ケベックタンゴは最初、連絡先を教えることに難色を示していたがそれっぽい理由をつけたらすぐに承諾してくれた。友達との楽しい時間を思い出して自然と笑みが溢れる。

 

 メッセージアプリを開くとそこには、『中庭の運動場にて待つ!!』とだけ。これだけだと何の用か全くわからない。

 

 カレンチャンはなんだか面白そうな予感を感じながら、出かけるための用意を始めるのだった。

 

 

────────

 

 

 ケベックタンゴがメールを打ってからしばらく。カレンチャンが中庭に現れると、ケベックタンゴはいち早く気づいて一目散に近づいた。

 

「あ、ケベたん。明けましておめでとう」

 

「あ、明けましておめでとうございます。……って、そうじゃなくて。やっと来やがりましたねカレンチャン!」

 

「えっとこれ……羽根つき?」

 

「そのとおりですよ! さぁ、さっさと勝負です!」

 

「あ、うん。……でもちょっとその前に」

 

「おや? どうかしましたか? もしや、怖気付いたのではないでしょうね?」

 

 カレンチャンはケベックタンゴの顔を見て言った。

 

「あの……ケベたん、もしかしなくても、既に誰かに負けてない?」

 

 ……ケベックタンゴの、墨だらけの顔を見て、言った。

 

「辛く厳しい戦いだったのです。でも、マーちゃんは勝ちました」

 

「あれ、マーちゃん。それに、スカーレットちゃんにウオッカちゃん?」

 

 カレンチャンはしばし考えた後、結論に達した。

 

 ……うん、これみんなで遊んでるだけだね!

 

「なにやら失礼な勘違いをされている気がしますが……ともかく! 勝負ですよ勝負! さぁ、さっさとこっち来てください!」

 

「……まぁいいか! うん、受けて立つよ」

 

「ふっふっふっ、余裕こいてられるのも今のうちです! なんたって今日の私には考えがありますので」

 

 並んで歩きながら、今回の戦場となる白線で引いたコートへと向かう。

 

「今回の私はひと味違いますよ! なんたって、ここには協力者がいるんですからね! さぁさぁカレンチャン、私と勝負です! 2対2で!」

 

「2対2? いいけど……それが考え? どうして?」

 

「はーっはっはっ、教えてあげましょう! ダブルスということはつまりコンビネーション! 私はアストンマーチャンと先ほどまで練習していましたからね、お互いのことを理解した私たちの方が有利ということです!」

 

「ふぅん……ちなみにどれくらい?」

 

「ざっと1時間程度ですね!」

 

「それじゃ大差ないんじゃ……」

 

 加えて言うなら、ケベックタンゴが練習していた時間のうち半分くらいは1対1の勝負である。ケベックタンゴ自身の実力も、他の3人の顔が綺麗なままであることとケベックタンゴが墨だらけなことを見れば明らかであった。

 つまりそこまでアドバンテージがあるわけでもないのだが、ケベックタンゴは自信満々だ。自身の作戦が完璧だと信じるあまり、いろいろと足りていないことに気づいていない。

 

「ケベたん、学校の成績は良いはずなのになぁ……」

 

「なんか言いました?」

 

「……いや、何も。じゃあ……カレン、スカーレットちゃんを取ろうかなっ。一緒にやってくれる?」

 

「え、どうしてアタシなの? いいけれど……」

 

「だって、世界一を目指すケベたんに、世界に羽ばたくマスコットになりたいマーちゃんでしょ? そしたらこっちは、カワイイカレンに、1番になりたいスカーレットちゃん! ね、ぴったりだと思わない?」

 

「なるほど……?」

 

「よっし、決まりだな。じゃあ俺は審判やるぜ」

 

 こうしてチームが決まり、ケベックタンゴ、アストンマーチャンペアとカレンチャン、ダイワスカーレットペア、審判ウオッカでの試合が始まった。

 

 

────────

 

 

「よぉっ! ほっ!」

「やぁっ! たぁっ!」

 

 ウマ娘の身体能力での羽根つきはもはや超次元だ。弾丸のような速さで羽根が舞い、応酬する。しかしさすがというべきか彼女らは競走ウマ娘、鍛えられた動体視力でしっかりと返し、ラリーは続いていた。

 

「ふっ! なかなかに、やりますねっ! ですが最後に勝つのは私たちです!」

「なのです」

 

「それはどうかな〜、っと! スカーレットちゃん、いけるよね!」

「当然でしょ! アタシが、負けるわけ、ないでしょうが!」

 

 純粋な体力勝負での決着になるかと思われたそのとき。カレンチャンが天高く羽根をつく。

 

 それまでのものよりもはるかに遅い速度で、ヒラヒラとケベックタンゴの方へ落ちていく。その絶好のチャンスに、ケベックタンゴは嬉々としてかけつけた。

 

「よーし! もらっ──」

 

 瞬間、運動場に風が吹く。季節相応の、強い北風だ。その風に吹かれ、羽根は──わざと速度を落とされ、風の影響を受けやすくなった羽根は、ケベックタンゴの羽子板に触れる直前で、その進路を変えた。

 

「何ィィィ!?」

 

 慌てて対応しようとするももう遅い。構えも、位置も、当たることを前提として渾身の一撃を放つ姿勢で固定してしまっている。一度力んだ体は容易には戻せず、あえなく空振り。ゆっくりと、羽根は地面に落下した。

 

「イェーイ! カレンの勝ち!」

 

「バ、バカな……!?」

 

 ケベックタンゴは落ちた羽根をじっと見つめるが、再び羽根が浮くわけもなく。

 

「勝者、スカーレット、カレンチャンペア!」

 

 審判の宣言によって、勝敗が確定してしまった。

 

「すごいわね、カレン。まるであそこで風が吹くってわかってたみたい」

 

「映える画を撮るのに、風を読むのは必須だよ☆」

 

 カレンチャンの卓越した自撮りスキルの賜物である。自撮りの天使からしてみれば、風をはじめとした自然現象を使いこなすことなど造作もないのだ。

 

「さてさて〜、ケベたん? 勝負は勝負、羽根つきで負けたからには〜?」

 

「なっ、まさか、待てっ!? 筆を持って近づくなぁ〜! うわっ何するんですか離せっ、私を裏切るんですか!?」

 

 じりじりと後ずさりをして逃げていると、ウオッカ、ダイワスカーレット、アストンマーチャンの3人に後ろから捕縛されてしまった。これでは逃げられない。

 

「オイオイ、逃げるなんてカッコ悪ぃぜ〜?」

 

「そうよ、諦めて受け入れなさい」

 

「マーちゃんも後でやるのです。道連れなのです」

 

「そんなぁ〜!? 他の人ならまだしも、カレンチャンにやられるのは屈辱……! あっあっ待って、冷たっ!? ちょ、くすぐった、ひゃあああ!?」

 

 抵抗虚しく、あえなく筆の穂先はケベックタンゴの頬へ伝う。10秒もしないうちに終わったが、ケベックタンゴにはとても長く感じられた。

 

「うん、うん! ケベたん、よく似合ってるよ〜!」

 

「よくも……よくも私を辱めてくれましたね……! で、何描いたんですか」

 

 ケベックタンゴは携帯していた手鏡で自分の顔を見る。すると、右頬になにやら文字が書かれている。鏡写しになっているためぱっと見では読めない。

 

「えー、なになに……『カ、レ、ン』……? はぁぁぁぁ!?」

 

 一文字ずつ読んでいくと、そこには今しがたこの文字を書いた宿敵の名が記されていた。

 

「ちょっとちょっと、なんですかこれ!?」

 

「ぷっ……あははは! ケベたん、それ今日は落としちゃダメだよ? ケベたんはカレンのモノだって、みーんなに知ってもらわなきゃ、ね?」

 

「くぅ〜! 調子に乗るなよカレンチャン! もう一度勝負です! 次は負けませんから!」

 

「いいよ。うーん、次はどこに落書きしちゃおっかな〜?」

 

 バチバチと視線が交わり、第二回戦が始まろうとしていた。だがしかし、割って入ってきたトレーナーによって止められた。

 

「おう、お前らちょっとは休んだらどうだ? ほら、飲み物買ってきてやったぞ」

 

「あ、トレーナーさん!」

 

「わぁ、トレーナーさん、優しい〜!」

 

「ケベック、お前あれからぶっ続けでやってたのか? ……って、ぶははは! どうしたお前その顔、ボロ負けしてんじゃねぇか!」

 

「う、うるさいですね!」

 

「ほら、再戦は勝手だがオーバーワークは厳禁だ。10分くらい休んでからにしたほうがいい」

 

「わかりました」

 

 ケベックタンゴはトレーナーに促されるまま、近くにあったベンチに腰掛ける。すると、隣の席に、頬にバツ印をつけたアストンマーチャンが座ってきた。

 

「残念だったのです。すっかりさっぱり、惨敗なのです。やはりカレンチャンさんはすごいのです」

 

「惨敗じゃないです、惜敗ですぅー! 次こそは勝てますから! むぅ……ともかく、付き合ってくれてありがとうございました」

 

「よいのです。これも超絶ウルトラスーパーエクストリームハイパーマスコットへの地道な一歩なのです」

 

「お前も張り合ってんのか……」

 

 しばらくケベックタンゴとアストンマーチャンは何も言わず、ただ思い思いに休んでいたが、やがてケベックタンゴが口を開いた。

 

「そういえば……あなたはどうしてマスコットになろうと思ったんです? なにか私の参考にもなるかもしれません」

 

「そうですねぇ……マスコットになれば、世界中のマーちゃんファンがマーチャン人形を手に取ってくれると思ったのです。一家に一台、アストンマーチャン。それが理想なのです」

 

「マーチャン人形……? ふむ、自分の分身をたくさんの人に持っててほしいということですね。確かに、ぬいぐるみをはじめとしたグッズというものは記憶を形にできますからね。見れば思い出す、記憶と共に生きる……うん、いい目標だと思いますよ!」

 

「……! おお〜。ケベたんさんもすごいのです。まるでなんでもお見通しなのです」

 

「え!? ふふ、煽てたってそう簡単には靡きませんよ〜……でへへ。私はそんなにチョロくないですからね〜……ぐふふ」

 

「めちゃくちゃチョロいじゃん」

 

 同じような目標をもつもの同士の勘の良さとでもいうのか、ケベックタンゴは一つ聞いただけであっさりとその真意を読み取っていく。

 

 アストンマーチャンはペットボトルの水を一口飲んだ後、おもむろに語り始めた。

 

「マーちゃんの計画を見破るとは、只者ではありません。……2人はマーちゃんのこと、覚えていてくれますか?」

 

「……あ、ええ、もちろんです!」

 

 急に歯切れが悪くなったケベックタンゴを、トレーナーは不審に思う。すると、ケベックタンゴがトレーナーに耳打ちした。

 

「トレーナーさん……なんか急に私、この子と相性悪い気がしてきました……」

 

「は? なんで?」

 

 こそこそと小声で話す二人をよそに、アストンマーチャンは語る。

 

「命は流れるものなのです。上流から下流へ、生まれて流れて、全て必ず海へ行くのです」

 

 アストンマーチャンは続ける。

 

「これは当たり前のことで、怖くはありません。本当に怖いのは、いつか忘れられてしまうこと。……だから、私は消えない跡を残したいのです。10年、100年、1000年先も。心の片隅に残るマーちゃんで居たいのです」

 

 ほわほわとした彼女の裏側にあったのは、ただ、『忘れないでいてほしい』という、シンプルで、純粋な願いだった。

 それを受け、ケベックタンゴは──

 

「……鮭って成長すると元の川に戻ってくるらしいですよ?」

 

「何の話!?」

 

 ──冷や汗をダラダラ流しながら聞いていた。

 ケベックタンゴは転生者である。なんとなく、罪悪感を感じずにはいられなかった。

 

「……ケベたんさんは、どうですか?」

 

「へ?」

 

「ケベたんさんの理由です。あなたのこと、知っておきたくなりました」

 

「え、ええ……? そうですね……私が、かわいいを目指す理由……?」

 

 ケベックタンゴはしばらく考え込む仕草を見せる。そして、絞り出すようにこう言った。

 

「……目立ちたいから?」

 

「ぶふっ」

 

 トレーナーが吹き出した。

 

「な、何笑ってんですかー! だから嫌だったんですよ、こんな真面目な話の後に言うの!」

 

「いや、いいんじゃないか? お前らしくて」

 

「あー! 絶対バカにしてる! だってしょうがないじゃないですか、私美少女なんですよ!? 他の追随を許さないレベルの超絶キューティー美少女なんですよ!? それに加えてウマ娘として生まれたんです! こんなの、レースに出てちやほやされるしかないじゃないですか!」

 

「なるほど〜。ケベたんさんは、『そうありたい』のですね」

 

「う、なんか変なとこまで見通された気がする……。でも、しょうがないじゃないですか。やりたいことは全部やる、そう決めたんです。……だって、今ならそれが出来るんですから」

 

「ふむふむ。なるほど。……とっても、良いことですね」

 

 アストンマーチャンは変わらずニコニコと笑顔を崩さない。ただ、ケベックタンゴは少しだけ彼女との距離が縮まったような気がした。

 

「さてと。そろそろいいですよね、トレーナーさん! 再開しても!」

 

「ん? まぁ、そうだな」

 

「よっしゃあ、さっそくリベンジですよおらぁ!」

 

 ケベックタンゴがベンチから立つ。すると。

 

「あー! やっぱり、ケベちゃんだ!」

 

 突如、後ろから自分を呼ぶ声が聞こえた。振り返ってみると、そこには見慣れたオレンジ色の髪。マヤノトップガンが、そこにいた。

 

「マヤノちゃん!? どうしてここに……」

 

「んー、部屋にいてもつまんないから、学園を冒険してたんだー! ケベちゃんは……羽根つき?」

 

「うん! マヤノちゃんもやる!?」

 

「いいね、面白そう! やろやろー!」

 

 そうして、カレンチャンとのリベンジマッチになる予定だった第2回戦はマヤノトップガンを交え全員での和気藹々とした交流戦になり。そのうち、賑やかさにつられて通行人が足を止め、カレンチャンがそれを招き入れる。

 

「なんだなんだ?」

「何をやってるの?」

「羽根つきだって! 面白そう!」

 

 そうして、噂が噂を、人が人を呼び、気づけば羽根つき大会へと変貌していた。

 

「なんだいなんだい、随分騒がしいじゃあないか!」

 

「あ、ヒシアマさん! 今、皆で羽根つきをしてるんです!」

 

「ほーう。そりゃあちょうどいい! 実は今、食堂のおばちゃんから餅の余りをいただいてね。どうしたもんかと悩んでいたんだが……こん中で、餅が食べたいヤツはいるかー!?」

 

『はーい!!!』

 

 全会一致、羽根つき大会はお餅を食べる会へ。ケベックタンゴは幸せそうな顔をしながら、餅を頬張った。

 

 ……あれ、そもそもどうして羽根つきしてるんだっけ?

 

 ケベックタンゴは何かを忘れている気がしたが、お餅が美味しいのでヨシとした。

 

 カレンチャンにリベンジマッチが果たせなかったことに気付いたのは、翌日の朝のことであった。顔の落書きを大勢に見られたことにもその時初めて気づいた。

 

「はぁ……超絶最強ゴッドウルトラスーパーエクストリームハイパー無敵マスコットへの道は遠いですね……」

 

 だが、地道な宣伝を続けるアストンマーチャンの姿勢は見習ってもいいかもしれない。そう思ったケベックタンゴだった。




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