未だ暗闇に囚われている。
仕方の無いことだ。
諦めにも似た、心の持ち様。
それは慣れた感覚だ。
私には、自分自身の居場所がなかった。
当たり前だ。
ずっと力が使えなかった。
双子の姉とずっと比べられた。
しかし、そのことに恨みなどない。
なぜなら、姉だけが私の居場所だからだ。
ねぇ様の居場所が私の居場所。
他の誰にも邪魔させない。
「きこえるか?」
目を開けば、私がいる。
「聞こえているならそのままの聞いてくれ」
「大丈夫だ、助けられた」
「お前は、お姉ちゃんが助けた」
だから、そろそろお目覚めの時間だ。
その言葉と共に光が私達を包む、光の向こうから声が聞こえる。
だれだっけ、聞いたことのある声……
ああ、これはあいつの記憶……
なら、呼びかけているのは……
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彼女の目が開く。
どこか、いやどこも見ていない瞳に光が宿り俺を見る。
???
「誰?」
マスター
「目が覚めたか?」
???
「うん」
コクンと静かにうなずく。
そして同じ事を聞く。
俺は、その問いに
マスター
「マスター……そう呼んでくれ」
???
「マスター……うん、マスターさん」
少しずつ潤んでゆく瞳、袖を摘まんだ手はおびえを含みしかし力強く、紅潮した頬はそれを望んでいた。
???
「酷いことをされました、抵抗もできなくて。なんども何度も……」
???
「今、ねぇ様がいなくてよかったです」
???
「きっと、もう立ち上がれなくなるから」
???
「でも、立ち上がりたいから」
???
「ねぇ様と歩いて行きたいから、だからーー」
???
「上書きして……下さい」
その言葉を退けることは、俺にはできない
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「すごかったな」
暗闇の中、私が言う。
膝から崩れ落ちて今も両手で支えなければそのまま倒れそうなのだ。
心が弱っていた。
そんな言い訳で自分自身が納得できるのかと言えば、そんなわけが無い。
何よりも彼がやりすぎる男だと知っていて、望んだのだ。
そのツケが羞恥心をぐさぐさ刺されている現状なのだから甘んじて受け入れるべきだ。
と理性が言っている。
だが、心がそれについて行かない。
もはや、悶える以外の行動をとれない。
うめき声しかでていない。
「おーい、そろそろ戻ってこーい」
戻ってこいといわれても、しばらくは無理!!
「ま、そうなるよな」
うーあー、唸っていると世界が緩やかに光り輝いてゆく。
「目覚めの時間だ」
白に染まる世界でーー
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見知った天井を眺めながら、
「ピンポンパンポーンーー当艦はこれより浮上航行を開始します、若干の振動があると思われますので搭乗員は注意して下さい。繰り返しますーー」
「あぁ、旅が始まる」