トーカちゃんに命を捧げる 作:コヨーテ
小坂依子はピエロの新参メンバーだ。加入したのはいつだったか、確か何年か前にウタが連れてきた気がする。見たことないタイプの人間だった、ヒトだというのにあたしらの中で居場所を獲得していく面白い人間。そして気づけばピエロになっていた。
「風の噂で聞いた話だけど・・・・・・リゼ、一昨日死んだんだってね」
依子は酒を飲みながらあたしに話しかけた。何故依子が酒を飲んでるのかと言うとあたしが勧めたからだ。コーラを飲み干した依子に押し押しで行ったら見事飲んでくれた。未成年なのに大丈夫?ってからかい混じりに聞くと『合計年齢は20超えてるからおけ』と返されてしまった。なんのことだろう。
しかしリゼのことをどこで聞きつけてきたのやら。実際にリゼに鉄骨を落としたのは同じピエロのメンバーである喰種捜査官なのだが、依子はそれを知らない。
それどころかその喰種捜査官と会ったことすらない。あの子はたまにフラッとくるだけ。ピエロの策謀陰謀享楽活動にはあまり関わってない。
本人は加入直前に『ピエロに加入はしたいけど、活動はあんまりできないと思うよ?僕学生だから』と言い残している。その言葉を聞いたあたしは大笑い、そのままどこかズレてる少女を歓迎したことを覚えている。
「お、耳が早いねぇ。流石は情報通ってとこかな?」
「やっぱイトリも知ってるんだ。ま、本職の情報屋には敵わないか」
飲み終わったコーラ瓶をテーブルに置くと、依子はバックから薄い紙束を取り出しあたしに差し出した。
「これ何?」
「とある香水会社に作ってもらった書類。流し見でいいからとりあえず読んでみてよ」
「ふむふむなるほど・・・・・・・・・」
それはとある香りの香水を作成する過程を記したものだった。題名は『
「そこの社長と個人的な繋がりがあってね、香水作成を手伝ってもらったんだ。毎回毎回喰種の死骸から服ぶんどるのも面倒じゃん?」
喰種の集まりに行く時、依子は死骸から取った服を着る。流石に人間の匂いのまま行くわけにはいかないからだ。だが確かに毎回そうするのは手間がかかる。なるほど、だからこんな香水を考えたのか。
「それで、今からその香水をつけてくるからどんな感じか見てくれる?実際喰種の嗅覚を誤魔化せるのか心配なんだよね」
「おーこのイトリ様に任せなさい」
その後香水をつけた依子の匂いは完全に喰種のものだった。それに驚きつつ、有効活用したら面白いことになりそうだなと内心ほくそ笑む。そんなこんなで今夜はお開きになった。
ただ一つ気になったのは依子が持ち歩いてた白いアタッシュケース、いつもは拳銃しか持ち歩いてなかったと思うけどクインケを持つようになったのだろうか。喰種の匂いでクインケを持つとか面白いね。
───────
「満月が綺麗だなぁ」
二十区の道路を歩きながらそう呟いた。喰種香水は大成功、イトリの嗅覚すらも誤魔化せるなら並の喰種なんてお茶の子さいさいだろう。特に何に利用しようとかは考えてないが、これを使うことでやれることの幅が広がるのは確かだ。
今日せっかくの香水が実戦で使えると判明して気分がいい。更に酒の酔いも合わさって最高の気分だ。てかなんで喰種のバーに普通のお酒が置いてあるんだよ。そうツッコミたくなるのを抑えた、夜道で一人でツッコんでたらそれはただの危ない人だ。
そして酔いと高揚が
「よし、この勢いで金木研に会ってみるか」
どうせ退院したら接触するつもりだったんだ。今会ってもいいだろう、今は九時だしどうせ起きてる。小説でも読んでる気がしてきた。そんなことを考えながら歩いていたら、前方にとある二人組を発見した。一人はどこかで見たことある男だ。
「嘉納院長か!」
朝の謝罪会見で見た顔だ。遺族に無断で行った臓器移植手術、実際はリゼの赫包を金木研に移植しただけなのだが。僕の言葉に反応した男は僕問いかけた。
「ああ、私に何のようかな?」
「いやいや別に用とかないんだけど・・・・・・」
一瞬頭によぎる思考、この男を今殺したらどうなるか。少なくとも東京喰種と言う漫画において展開されたストーリーは粉々になり、この世界は全く別の道筋を辿ることになるのは確定だ。そんな思考が脳内を駆け巡る中、嘉納の隣の男が僕の方に近づいてきた。
「あれ?貴方が持ってるのクインケじゃないですか。その割には背もちっちゃくてとても喰種捜査官には見えないんですけどねぇ」
目の前の男の正体には心当たりがあった。嘉納と一緒にいてCCGの知識がある黒髪の男、それでいてこの喋り方。そして今はリゼ確保から二日。
「おいおいおい、いきなり旧田かよ。この時間は愛しのリゼと一緒時いると思ってたけど」
その言葉を二人が耳にした瞬間、世界が静止するような感覚がした。そして目の前の男が僕を捕まえようとしてきた。流石に今の言葉は失敗だった、酒のせいだ。
全部酒のせい。普段の僕がいきなり路上で喧嘩を売るわけがない、生まれて初めての酒だったからこうなってしまったんだ。恐らく旧田は怒っている、表情を見ればわかる。顔は笑ってるけどあれは怒りの笑いだ。
「なんで僕の名前知ってるんですかねぇ。ただの厨房が」
「旧田君、一応捕まえてくれるかな。どこから情報が漏れたのか興味がある」
「あれ、これもしかしてヤバいパターン?」
慌てて僕は逃げる、だが旧田相手に生身で逃げるなんてことは不可能だ。
「さぁ纏え」
アラタ proto
「全力で逃げる!」
僕は馬鹿だ、なんでこんなことしたんだろう。多分全国の酒飲みもみんな同じこと考えてる。今までは酔っ払いの心理を理解できなかったけど今は理解できる。酒飲んでる時って正常な判断ができない。
「纏うクインケ・・・・・・・・・」
流石の旧田も驚愕しているか。そう、この前1区で捜査官の死骸を漁ってたら見つけたものだ。僕は時々クインケ調達のために捜査官の死骸を探す、クインケは愛蔵用としても価値があるし高値がつくからね。
「ごめんね旧田!アラタキック!」
「ガハッ!」
そのまま旧田に蹴りを一発食らわせる。この時点ではまだ喰種化手術を受けていないようで、やけにすんなり蹴りが入った。しかしそこは旧田、そのまま起き上がって僕を追ってくる。
しかしそんなのは意に介さず僕は逃げる、路地裏に逃げ込む。するとそこには目が赤い青年がいた。
「おいお前喰」
「囮になってくれ!」
喰種の言葉を聞き終える前に旧田を喰種に押し付ける。全くもって外道のやり方だ、だが効果はあったらしい。後ろで旧田と喰種が戦闘になった音が聞こえた。
その音を聞かずに僕は逃げる、そのまま市街地の屋上を駆けて行って少しした頃、旧田の気配がしなくなった。逃げ終えたかと思ったその時、全身に苦痛が走った。
「アラタが僕を食べてる・・・⁉︎そういえばあったな、原作でそんな描写」
痛い、全身を虫に喰われるような痛みだ。まずい解除しなければ、そう思い背中のスイッチを押す。するとみるみるうちに全身に纏っていたアラタがアタッシュケースに収納されていく。
「クソッ、鍛えてなかったせいか」
体がもう動かない、特等なら喰われながらも戦うことすらできそうだが、あいにく僕は一般女子高生。そんなことはできないのだ。どうしよう、意識を失うことはないけどこのままずっとここにいるわけにもいかない。
本当に嘉納に話しかけなければよかった、もう酒は二度と飲まない。そう考えてると後ろから誰かが駆け寄ってきた。
「依子!依子!大丈夫!ッ⁉︎この匂い・・・・・・喰種⁉︎」
声の主は親友。ああ、最悪だ。
オリ主は普通に倫理観ないです